※この作品はR-18です。

アオの夜R18SS   作:扇町グロシア

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煌めくアオい星の下で  (千夏×大喜)

 星空は痛いほどに饒舌だ。私の嘘を告発する、或いは私を嘲笑うかのように瞬いている。

 これに抱かれて眠るのは、どうにも落ち着かない。落ち着かないけど、でも今ここから立ち去ろうとは思わない。隣で聞こえる健やかな寝息が、それを許してくれそうにないから。

 まったく、どうしたものだろうか。

 意地っ張りで甘えるのが下手な良(・)い(・)子(・)で通してきた私が、今やこのザマだ。

 人を好きになると言うのは、難しいんだな。よくもまあ挑もうと思ったものだ、こんな無器用なバカがさ。

 

 

 憧れを抱いてくれていた、その事実は嬉しい。だけど大喜くん――大喜は知らないのだ、そうなるように誘導しようとしている部分があった事を。泣きながらもひたすらシュートを打ち続けたあの日、私は悲劇に酔っていた。力足らずの自業自得でありながら、何処かでそれに浸って楽しんでいる自分がいたのだ。私は夢佳のように真剣ではなかった、という事。夢佳は自分の弱さに悩み自ら道を閉ざしたけれど、私にはそんな覚悟はない。

 負けても勝っても、私はただバ(・)ス(・)ケ(・)が(・)好(・)き(・)なだけ。命を賭けていない、賭けられない半端者。

 何時からだろうか鉄扉の陰に感じていた気配、それが誰なのかまでは分からなかった。でもその「誰か」は私を救おうとしてくれる、そんな都合の良い事を考えてしまっていた。

 ああ、だから罰が当たったんだろう。夢佳はいなくなり、私は一人ぼっちになってしまった。依存体質の私なのに相手がいないまま過ごした一年は、空虚なものだったと思う。だからこそ朝練で一緒になる大喜に私は、少しずつ期待するようになっていたんだ。

 頑張り屋で一本気な大喜を見ているのは心地良いし、それを楽しむために私は努力を重ねた。私へ向ける視線に憧憬が混ざっていると気が付いていたから、それを煽ってやった。相方を失った私にとってそれは魅力的な暇潰しであり、バスケそのものより大事になっていたかもしれない。親の都合で栄明を離れると知ったときも、気になったのはそれだったのだから。

 ――そして私はその時、思い知らされた。自分の愚かさを、性根の悪さを。

 大喜は私が真剣にバスケに打ち込む、真摯な女だと信じている。負けた悔しさに涙し、それを振り払って進む救道者だとさえ思ってるかもしれない。

 私はきっと、忘れない。あの眩しい眼差しを、不器用に言葉を選んだ声を。こんなにも純粋な子を弄んで、許されるわけがない。

 私が日本に残る理由は、大喜がいるから。何を犠牲にしようとも、大喜の近くにいたい。嘘まみれの私をそれでも疑わない大喜の信頼に、ちゃんと向き合わなければならない。そう覚悟して余り有る程に、彼の思いは熱かった。

 ただ、まあ。まさかその大喜の家に居候するとは、まさか思っても見なかったけど。

 

 大喜は本当に素直で可愛らしい、嫉妬するくらいに。隣の部屋で寝起きしても身の危険を感じることはない、だって大喜だから。

 それより問題なのは、私の腐った性根の方だ。いつも隙だらけの大喜は可愛くて可愛くて、いつ理性を失ってしまうか分かったもんじゃない。居候先の子に手を付けた、なんて事になったらさすがに追い出される。いやそれじゃ済まないか、ここどころか鹿野家からも蹴り出される。苗字が無くなってしまう。

 だからどうにか堪えないといけないんだけど、だけど。だけど大喜は可愛いのだ、どうしようもないくらいに。それを思うとついついオナニーが捗ってしまって困る、まったくもう。そして終われば罪悪感で凹む、その繰り返しだ。

 つくづく思う、私って本当にダメ人間だなと。

 そんなだから蝶野さんに先を越されそうになるんだ、て言うか越されたんだ。

 私が悶々と堪えている間に、あの子は大喜に告白していた。その事実は大きすぎて、重すぎた。 

 それでもまあ紆余曲折を経て、大喜は私に告白して――付き合いだした。どうにかこうにか、両想いにはなれたのだ。

 ただ、うん、そうなると、そうなってしまうと。私はもう、我慢する理由が無くなってしまう。

 本日は大喜の誕生日、もし由紀子さんたちの帰りがもう少し遅かったなら。きっと私は大喜を押し倒していただろう。いやまあそうならなくて良かった良かった、正直ちょっとだけ惜しいけどさ。

「んー……」

 ベッドに転がりながら思うのは、さっきの楽しい時間。髪を弄るくらいならセーフだろうと敢行したけど、まさかあんな風に見つめあうなんて。お腹の奥がきゅんとして、体温はどんどん上がっていくのが分かった。大喜はきっと、まだ分かっていない。きっと姉弟のじゃれあいくらいにしか思ってないだろう、まあ大喜も私も一人っ子なんだけどね。あんなにも近付いて、ふれあって、それで――発情せずにいられるものか。

 まだ熱が残る指先を、そっと口に含んでみる。ほんのりと感じる汗の味、目を瞑るとその興奮の味が余計に強調されてしまう。くちゅくちゅと口内を掻き回していると、だんだん感覚は曖昧になっていく。大喜と熱くキスをかわしている、そんな妄想ばかりを広げながら。

 濡れた指は顎を伝って首筋をゆっくりと滑り、その下へと降りていく。もう意識のなかでは、これは自分の指なんかじゃない。大喜の舌だ。平原と言うほどではないけど大してボリュームもない、そんな胸元を熱い舌がはい回っている。乳暈をなぞり乳首を弾き、その動きは止まらない。

 思わず声が出そうになって、――私は全力で硬く口を閉ざす。さっき大喜は部屋に入った筈だ、嬌声なんか聞こえてしまったら取り返しがつかない。

 それにドアノブへかけておいたプレゼントにも気が付いただろう、遅い時間とは言えお礼を言おうとこっちへ来たりするかもしれない。こんな姿を見られてしまったら……!

「ぁ……っ」

 圧し殺した呻きと共に身をよじると、脚の間でぐちゅりと湿った音が立った。……あー……これは、これは。想像以上に濡れている、まだ下着を脱いでないのに。このショーツはもうダメだな、でもお陰でシーツまでは汚さずにすむかもしれない。浸りきってオナニーなんかするもんじゃないな。

 恥ずかしさを感じながらもノロノロとベッドから這い降り、何もかも脱ぎ捨ててドアにもたれ掛かる。内開きだからこうして全身で塞げば開けられはしない、それに大喜の部屋の配置からしても多分ここが一番聞こえにくいだろう。壁を挟んでベッドが隣り合っているから、そこでオナニーしてたら壁越しに分かってしまう。……大喜が一人でしてる気配は感じたことないから、あくまで憶測なんだけど。

 火照りきった身体を僅かに震わせながら、私は人差し指と中指を揃えて脚の付け根――自分自身へと向ける。指の先が柔らかくほとびた肉の裂け目に当たり、そこから小さく揺れながら第一関節までが呑み込まれる。私はこのやり方が一番好きで、小学生の頃からずっとこう。だけどきっと、もうすぐ私は変わるだろう。大喜のその、……オトコノコを受け入れる時は恐らく遠くはないから。

 話に聞いた限りでは深く深く、内臓がズレるかと思うくらいに奥まで入ってくるらしい。私は怖くて弄れない、弄ることが出来ない場所まで大喜が到達するんだ。私のここは、どういう「造り」なんだろう。大喜を受け入れられるかな、気持ちよくしてあげられるかな。

 そんな事をぼんにゃりと思いながらも、まるで別の生き物のように指は私の入り口を掻き回して止まらない。

 いつもと同じ、登り詰める快感がやって来る。それに身を任せ私は、一気に意識を飛翔させた。

 ドクンドクンと心臓は早鐘を打ち、溢れた粘液が床を汚していく。……このまま寝るわけにはいかない、早めに拭かないとシミになるかも。あぁでも、心地良いし倦怠感で手足はもう萎え果てた。どうせ明日も朝早く起きるんだ、多少の時間は作れるだろう。

 山賊と戦ってから濁流を泳いで動けなくなったメロスは、きっとこんな気分だったに違いない。珍しく文学的な感想を胸に、私は目を閉じた。

 

 季節は移り変わり、夏はもう終わろうとしている。恋愛の事ばかり考えていては示しがつかない、鋼の意思で精進した私はチームメイトに支えられ全国制覇を成し遂げた。大喜も大喜でライバルに打ち勝ちインターハイへと進出、さすがに勝ち上がれはしなかったし涙してはいたけれど――どうにか揃って夢を果たした。

 そう、もう私たちはやるべき事を終えたのだ。そして迎えた私の誕生日、大喜と一緒に歩いた海辺へとやって来ている。あの民宿は残念ながら無くなっていたから取ったのは別の宿だけれど、それは私たちがどうこう言うことじゃない。それよりも大事なのは、ここへ来た目的だから。

 陽は落ちかけ人影も殆ど無い晩夏の砂浜を抜けて、岩陰に腰を下ろす私たち。傍から見れば仲の良い姉弟にも見えるであろう私たちは、これから。これから……セックスを、する。

 特別な「ご褒美」が欲しいから、と大喜にこの提案をしたのはインターハイが終わった直後。勿論大喜は真っ赤になり、少しの間だけ黙って。小さく頷いてくれた。

 まあそこまでは予定通りだけど、その先が実は大変だったな。一生に一度の事だしいっそ思い出の場所で、とは思ったけどまさか体育館じゃぁ無理だし。……いや菖蒲ちゃんが体育倉庫に男子連れ込んで跨がってたりしてるけど、さすがに真似はしたくない。とは言え猪股家では難しい、由紀子さんにバレる。だからってそこらのラブホじゃ雰囲気が無さすぎる。どうしたもんかと悩みながら、ふと去年の記憶を辿っていて思い出した。あの浜辺は人が少ないし、隠れやすい岩場もあったという事を。

 初めてが野外というのはどうかな、とは思えどあの海は私にとって大きな思い出の場所でもある。蝶野さんが告白したと知って悶々としてた時にアクシデントで一泊する事になり、そこで大喜に「近づくのは良くないって言ったのは撤回させて」と言ったんだったな。本当はあのまま跨がってしまいたかったけど、気合いで我慢した。私は出来る子だ、うん。

 道路側から視線が通らない岩陰にレジャーシートを敷き、万が一に備えて1タップで警察を呼べるようスマホを設定しておく。高揚する意識をどうにか地上に留め、私は腰を下ろし大喜の前で脚を開いた。スカートの中がよく見えるように。

 遮るものもなく晒されたそこに、大喜の視線が突き刺さるのが分かる。下に何も穿かないままここまで来る事自体に興奮して、もう中はドロドロに蕩けてしまっている。このままオナニーしてしまいたい、でもそれじゃあダメだ。今から大喜に、させないといけないから。誘ったのは私、でも動いたのは大喜。そうしておかないと、後で厄介なことになりかねない。……まったく私は打算的でいけないな、少しは風情を考えろ。大喜なんて裏も打算もなく、心から私に本音を晒してくれてるんだから。それは見ていればすぐに分かる、脚の間にある膨らみがその証拠。あの中にあるオトコノコ、それはきっと猛っている。大喜が望む通りに。

 意を決してそこに触れ、布地を掻き分けると――とうとうそれが露になった。

 男の子のオトコノコ、生殖器。一応知識はあるはずなのに、ゾワリと背筋が震えてしまう。これが入るのか、うーん。

「あ、……のっ。千夏……先輩……っ?」

 大喜の不安そうな声に、私は思考を中断してスカートを更に捲り上げる。この子に気を遣わせてどうする、大丈夫大丈夫。

 手招きしながら逆の手で自身を割り拡げるのは、大喜が少しでも入りやすいように。心は歓迎しても、身体がうまくいくとは限らないから。

 夕暮れの空を差すように天を向き反り返るオトコノコが、そこに当たって僅かに水音を立てる。ここから先はもう、取り返しがつかない。大喜は良い子で真面目だ、きっと「責任」を感じるだろう。――それを望んでいる自分に、心底呆れてしまう。告白よりもキスよりも重い行為を交わして、他を見られなくしたい。ああまったく、酷い女だな。

 ゆっくりとめり込んでくる肉の塊に、痛みは感じない。臓俯を押し上げる圧迫感と、あとは焼けるような熱さだけ。程無くそこに一つ、新しい感覚が加わった。

 コツンと一番深い場所が突き上げられ、脊髄を稲妻が貫いていく。私のすべて、奥の奥に大喜が到達したのだ。もうこの先にはあるのは子宮だけ、ここが行き止まり。それを感じたのと同時に、私たちの腰は完全に密着していた。大喜のすべて、先から根元まで全部を呑み込んだ。お互いに何もかも、知り尽くしたという事。それは脳を焼き払う程の、荒々しい快感を連れてくる。

「う、……ぁ。ちな……先輩、そんなに締めな……で、出ちゃ……うからっ」

 必死な大喜の声はでも、私にとっては快感を煽ることしかしない。と言うか締めるとか締めないとか、私にどうにか出来るもんじゃないんだけど。いや馴れたら出来るんだろうか、そんな風に筋肉使ったことないかも。

 だけど、だ。大喜が今どういう状態で何を恐れているのかは、大体理解できる。それが私にとって、受け入れるべきだと言うことも含めて。

「良いよ。そのまま……ね」

 掻き抱いて囁いた瞬間、ドクンと身体の奥で何かが瞬く。見えはしないけれど、何が起きているかは分かった。大喜が射精した、という事なんだろう。それがどういう意味でどうなるか、は理解しているつもりだ。むしろそっちが目的といっても良い。そうなってほしい、とさえ思う。その為には、まだ頑張る必要があるけど。

 幸せそうなでも少し申し訳なさそうな大喜にキスをしながら、私はそろそろと腰を動かし始める。確かこうやってやると、どっちも気持ちよくなれる筈だ。上手く行ったらお慰み、って感じではあるけど。

 下半身はブシュブシュと結合部から粘った水音を奏で、上半身は唇同士で繋がって抱き締めあう。誰が見ているかもわからない、後先も考えない獣の交わりは止まらない。目の裏で閃く稲光も口内で反響しあう御互いの嬌声も、ただそれを助長するだけで抑止力になってくれはしない。

 白く染まる意識の奥にそれでも残ったのは、隠しようもなくなった愛一つ。剥き出しの感情のなか、私は思う。もっと私が素直だったなら、もっと早くこうなれただろうか、と。

 

 

 嵐のような初体験が終わり、動く気力もないまま私たちは暫く岩に凭れたままでいた。動けないと言うか、動きたくない。全身運動のせいかあちこちがガタガタだ、これは堪えるな。引退後で良かったよ。

 しかし大喜がそのまま寝てしまうとは思わなかった、でもこの可愛い寝顔を見ていると起こす気にはなれない。宿へ戻るのは一眠りしてからで良い、例え野宿したってこの気温では風邪も引くまい。そもそもがバカ二人だ、風邪なんか……いや夏風邪はバカが引くんだっけかな。

 きっと大喜は、気づいてさえいない。私は大喜を愛している、でもそれ以上に怖いのだ。狡くて弱くて嘘吐きの私を、大喜はいつか見限るかもしれない。だからこそ、切れない絆が欲しい。そう、私は彼を縛り付けたいから子供を身籠りたいと思っているのだ。なんて愚かで恥知らずなんだろう。まったく見下げ果てた先輩だよ、本当に。

 でもそれで良い、今はまだこのままで良い。私も大喜も、少しずつ変わっていこう。その内私だって、下心なしで真っ直ぐに想いを伝えられるようになるかもしれない。その日が来るまで、騙し騙しやっていこう。

 宵闇の中で潮騒を聞きながら、私もまた目を閉じる。イヤミな星明りは瞼に阻まれて消え去り、残るのは心地良い熱だけ。

 私はまだまだ、燃えている。これからもきっと、熱い思いは消えることがない。何があろうとこの気持ちは、大喜への愛だけは変わらないだろう。

 18歳最初の日はこうして、愛しい人と共に過ぎていった――。

 

 

 

 

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