※この作品はR-18です。

アオの夜R18SS   作:扇町グロシア

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悩めるアオい夜は更けて #E  (雛×晴人)

 一体どうなっているんだろうか、実際。足掛け三年の片思いを終えて、やっと傷も癒えて来たというのに。

 何でまた、色恋沙汰に巻き込まれないといけないのか。しかも失礼千万な後輩なんかと。

 思えば初対面の印象は良くなかったな、うん。

 ピッチリしてて記憶に残ってた、ってなんだオイこら。伊達や酔狂でレオタード着てんじゃないぞ、これだって必要にかられてだ。

 しかし男の子なんてそんなもんだ、ガキっていうか野良犬みたいな。むしろ全然そういう目で見てこなかった大喜たちが特殊なのかもしれない、まあ匡は昔色々あって懲りてるんだろうけど。

 ああいう男の子な男の子ってあんまり周りにいなかったわけで、戸惑う事も多い。とは言えそれ自体がそこそこ楽しめてしまっている。

 要するに私は、晴人を好きになっている。多分、確実に。

 

 

 ふとした拍子に顔をあわせては悪態吐きあう、そんな仲になって久しい。年下の喧嘩友達、というカテゴリで周りからも認識され出しているし。

 相方来たよー、とにいなちゃん達から冷やかされる事も増えた。いやあれ冷やかしてんのかな、どうだろ。

 多少ギクシャクしたままでいた大喜との関係が改善されたのも、晴人のお陰という面が大きいかもしれない。空気読まない後輩って、ありがたいな。まあいきなり『蝶野先輩、聞きたいんスけど大喜先輩って不倫してんスか?』って真顔で言い出した時は、さすがに殴ったけど。本人がいなくて良かったね、もしいたらステレオで顔面に握り拳叩き込まれてたぞ。

 そんなこんなを経てとある放課後、晴人は突然言ってきた。

 好きです、と。

 今まで言ったことはあっても、言われた事は一度もない。ああそうか、こんな感じか。そりゃ大喜が固まるわけだわ。

 言う重さは知っているけど、まさか言われる側もこんな重いとはね。

 ただ、なあ。言っちゃなんだけど、なあ。

「いやさ、何でアンタなのよ」

 嬉しくないとは言わない、嫌いでもない。生意気な後輩ではあるけれど、大喜との緩衝材になってくれてるし。

 でもなー、どうして晴人なんだろうなー。

 選りにも選ってさあ、うん。

「あーいや、今言った通りです。俺は蝶野先輩が、好きです」

 真っ直ぐな瞳には嘘の色なんか何一つ見えやしない、からかうような素振りもない。真剣に、好きだと言ってくれている。

 ――新しい恋をする、と言う考えは実際ある。菖蒲にも男の子紹介してと頼んだ記憶がある、いやま「菖蒲のお古って訳にもいかないよね」って事で未だに保留されっぱなしなんだけどさ。……うんそりゃいくらなんでもそれは断るよ、普通に。

 でも考えてみれば、選ぶ権利は双方にあって然るべき。私を好きになる男子がいたって、別段おかしくはないのだ。多分きっと、メイビー。

 ならばここから、踏み出しても良い筈だ。このまま終わった恋を引きずり続けるには、残りの人生長すぎる。

 馬には乗ってみよ人には沿ってみよ、とも言うし。

 なんのかんの思いつつ、私は照れ隠しに頭なんかかいたりしながら晴人を見据える。

「……まあそう、ね。私なんかで良ければ、だけど」

 

 相談を持ちかける相手を間違えたかもしれない、とは薄々感じてしまいそう。失礼ながら、うん。

 目を輝かせて嬉しそうに聞いているのは、どういう感情なのやら。

「そっか。蝶野さんが……そうなんだね」

 コーヒーを一息で飲み干して一言、千夏先輩は万感の思いを込めて頷いている。一応この人には報告しなければ、と義理を果たすべく呼び出したは良いんだけど、ちょっと大袈裟だなこの人。

 大喜に告白したと一方的に宣言して以来、気まずすぎて顔もあわせていなかった。もう千夏先輩と大喜は付き合っているし、波風立てても仕方ないし。だけどさすがに、このまま何も言わないままではいられない。

 大喜にフラれた事も友達に戻りたい事も話して、その流れで晴人との件を相談したのだ。

 しかしなんだろう、この後方保護者面は。いやまあ後方っていうか、今は対面にいるんだけど。

「突然『告白したんです』と来たときはちょっと退いたけど、そういう事があったんだねぇ」

 退いたんかい、あの鞘当てでもその程度の反応かい。真正面から張り合わなくて良かったな、こりゃ勝てないわ。

 それにしたって、なんかこの人最近ツヤツヤしてる気がする。大喜はカッサカサなのに、なんだこのカップル。

 ナニしてんだろうな、本当に。

 いやまあ今聞くことでもないけど。

「蝶野さんが幸せそうで、私もお姉ちゃんとして嬉しいよ」

「いや貴女を姉にもった記憶はないですけど」

 まあ幸せではありますよ、と私もコーヒーを一啜り。……改めて思うけど、酸っぱいなコーヒーって。苦いか酸っぱいかって触れ幅に魅力がない。良いけどさ別に。

 しかし祝福されるのは、そりゃ悪い気しないな。私なんか二人の仲を羨んだりしてしまっていて、大喜はともかく千夏先輩にはそんな事言えてないのに。そうやって去り際を飾って良い女ぶって、私って性格悪いかも。

 こんなのを好きになってくれた晴人、大事にしないといけない。

 ……そのせいで悩んでいるわけなんだけど、ね。

 

 

 あの日を思い出すと、やっぱり思う。菖蒲にでも相談すれば良かった、と。

 千夏先輩は大物なんじゃなくて底が抜けてるんだ、分かってたじゃないか。

 あの後良い機会だから『初(・)め(・)て(・)ってどういう感じなんですか』と声を潜めて聞いたのに、『勢いで襲っちゃったから、ハイになってて良く覚えてない』だもんなぁ。大喜くんが可愛いから我慢できなかった、今も反省していないとかなんとか。そりゃ可愛いのには同意するけどさ、なんでそうも暴れん坊なんですか千夏先輩。

 倣うより慣れろとは言うし気後れなんて柄じゃないけど、やっぱり私としても緊張はしてしまう。一生に一度の事だし。

 だからこそのらりくらりと後回しにしては来た、でもさすがにも限界だろう。

 晴人が嫌な訳じゃないし、正直に言えばもう私は晴人を好きになっている。お互い高校生、身体は既に大人だ。だから別に――そういう事をしたって構わないんだけど。

 だけどぶっちゃけ、さすがに怖いな。

 それに他にも悩み所はあるし。

 ――今のままじゃいけないのは分かってる、一歩踏み出すべきなのだ。不死身の身体不屈の闘志でお馴染み無敵の蝶野雛が、怯えて縮こまっててどうするよ。

 一度逃げ出したら、世界のはてまで後ずさることになる。

 頑張れ私、つよいぞ私。

 

 迎えた週末、いつものデート。……まあ悪友同士の休日って感じではあるけど。

 でも今日はいつもと違い、日が落ちても解散はしない。手を繋いで黙ったまま裏路地を歩いていった。

 向こうとしてもなにか感じるものがあったんだろう、いつもの軽口も影を潜めて戸惑った感じ。

 そんな晴人を引きずるように入ったラブホテル、オレンジ色の灯りの下で私は溜め込んでいた思いを今しがたブチまけた所だ。

 私は大喜を好きだった、そう伝えた。中学時代から続き、去年の夏に告白したこと。秋合宿で正式にフラれたことまで、全て。

 お仕舞いまで聞かされて晴人は――思いっきり首を傾げてしまった。何で今それを言うのか、みたいに。

「あの、それって別に悪いことでもないですよね。今は大喜先輩じゃなくて、俺を好きでいてくれてるんですし」

 う。まあそれは、そうなのだ。過去は過去ではある、それでも私としては、誰かを好きでいた時期があるというのは重要な事。それを晴人が受け入れてくれるか、と悩んだというのに。

 なんだその投げっぱなしジャーマンな反応は、少しは気にしろよ。

 とは言えあんまり追求されてもそれはそれで困る、結局私は何がしたいんだか。

「俺も昔、好きだったやつはいますよ。……まあ、あかりなんですけど。アイツ兄貴が超人なんで、本人もヘラヘラしてる割に理想高いんです。中学の時、三回フラれてるますし」 

 いや、いやいや。いやいやいやいや、何で全力でカウンター叩き込んでくる。にしてもあれか、あかりって大喜にやたらなついてる女バドの子か。千夏先輩が時々人殺しそうな目で睨んでるけど、全然分かってなさそうだった。ゆるふわで男子受けする要素を片っ端から詰め込んだ感じの、なんかあんまり友達にはなれなさそうな後輩女子。

 でもそうか、考えてみなくてもそうだ。生きていれば、恋の一つもするよね。そしてそれは、成就するとは限らない。人を好きになるって、ありふれているけど特別な事なんだ。

 まあそれはそれとしよう、大事なのは今ここでどうするかだ。

 ……まさかここから、日和って逃げるわけにもいかないか。こっちから誘いこんで、それで一休みだけして帰るとか無いだろ。むしろどんな嫌な女だよ私はさ。

 意を決して私は晴人と向き合い、服を緩めていく。

「まあその、さ。とりあえず私は告白までしか経験ないからね、優しくしなさい」

 俺だって同じです、と微笑む晴人にキスをして。私たちはゆっくりと、ベッドへと倒れていった。

 

 薄暗がりの中で絡み合う手と手、触れあう肌。

 何がどうなっているのかは良くわからない、でも本能はそ(・)れ(・)を知っている。普段はそこまで燃え上がらない、お腹の奥の疼きがどんどん高まっていくのが感じられた。

 多分晴人も同じなんだろう、息も荒く私を求めてくるから。

 何をどうしたいのか、どうなりたいのか。私には、それが分かっている。晴人は私のなかに、来たいのだ。

 他人の一部を受け入れるという行為には怯えが走るけれど、でも大丈夫だろう。晴人は私が好き、私は晴人が好き。それは確かなのだから。

 軽く上体を起こして脚を開き、私自身を指先で割り拡げる。いつもは弄っても入り口だけ、中には殆ど触れた事がない。触った感触がぐにっとして怖くて、それ以来なんとなく嫌だ。拭く時もあんまり力は入れたくない。

 まあでもそれは、私側の感覚だ。晴人がどう思うかは、これから考えていけば良い。

 そして、そして。

「えー……っと、失礼しま……すっ」 

 失礼だと思うなら帰れ、なんて悪態を吐く暇も無いままその時が訪れる。

 ミシリと骨盤が軋み、何かが裂けるような痛みが僅かに感じられる。でもそれよりずっと強いのは、灼熱感だ。熱い塊が身体の中を逆行していく、不可思議極まりない感覚。だけど決して不快ではない、むしろ心地良いのが不思議だ。

 そこに抽挿の動きが加ると、次第にそれが快感として結実し始める。ゆっくりと進んでくる動きで深い部分が押し上げられ、そこから引く動きで内側の粘膜が抉られていく。イメージとしてのセックスは穴と棒の摩擦運動だけど、これはどうも違うな。粘膜同士が密着して蕩けそうだ。

 呻き声は晴人からか、それとも私からか。気が付けば声はユニゾンし、部屋の中を反響していく。

 いつしかそれに粘ついた水音も加わり、勢いは加速する。

 瞼の裏にはバチバチと稲妻が走り、オナニーでの高まりとは違う境地まで意識が突き上げられてしまう。

 目の前が白く跳ね上がるのと合わせるように、ドクンと胎内で何かが――爆ぜた。

 次の瞬間訪れたのは、脳を焼き尽くす圧倒的な快感の暴風。粘膜が一瞬毎に爆発し、凄まじい勢いで絶頂へと何度も何度も押し上げられて逃げ場がない。

 声にならない獣の呻きを垂れ流し、視界は闇よりも深い黒に染まっていく。意識を失う間際、最後に思い浮かべたのは。

 初めてあったときの、晴人の顔だった――。

 

「アンタねぇ、少しはモノを考えるとかしなさいよ!」

 ほっぺたを両手でつねってやりながら、私は晴人にお説教中。

 快楽の余韻から醒めて、さすがにそろそろ帰らないとと思い後始末してて、私はようやく気がついたのだ。このバカが、何も着けずネイキッドで私とし(・)て(・)い(・)た(・)事に。あの訳がわからない爆発感は、精液の熱さだったというわけ。

 ……下手したら二人揃ってとんでもないことになるんだけど、コイツ何も考えてないんだな。そんなだから同じ相手に三回もフラれるんだろ、絶対。

「いやま……もし当たってたら、責任は取ります。蝶野先輩、結婚しましょう」

「あーあーはいはい、愛してる愛してる」

 ああもう大喜と違って手がかかるな、こっちのバカは。

 まあそういうのも、ゆくゆくは有りかもしれないけど。

 とは言えそれは、ずっと後の話か。とりあえず帰って寝て、それからゆっくり先の事を考えよう。

 時間はまだまだあるんだ、どうにかこうにかやっていけば良い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「晴人、歩くのかったるいからオンブして」

「えー蝶野先輩重いじゃないっすかー」

「殴られんのが嫌なら少しは頭使いなさい、あとアンタのせいで歩くと痛いのよ」

「それは……すいませんとしか言えないです」

 

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