さて、どうしたものか。考えてみれば、私はこの手の話に疎すぎる。クラスの友人たちがコイバナで盛り上がっている間もただただバスケに励んで、その結果夢を果たしたのだから、間違ってはいないんだろうけど。
人生を楽しみつつ栄光も手にするなんて、よほど器用でもないと不可能な話だ。それくらいの天才であれば悩まないんだけど、所詮は私だし。
加減が効かない不器用なバカ、と来たもんだ。
大喜くんを大事にしたい、それに間違っても幻滅されたくない。そうは思えど、身体の欲求は止まってくれない。
どうしたものか、どうなったものか。
押し寄せる疼きを堪えながら布団を掻き抱き、動きそうになる腰を力尽くで押さえ込み私は今夜も溜め息を吐くばかり。どうせすぐに我慢できなくなるとは言え、素直に欲望を解放するのも決まりが悪い。
それもこれも大喜くんが悪いんだ、あんなに可愛いのに無防備だから。
幽かに聞こえる寝息、それにさえ聞き耳を立ててしまうようになって久しい。壁越しに隣り合って眠っている、その事実が余りにも愛しく思えて仕方がない。
思えば去年の春からずっとこうしているのに、この距離を意識し出したのは付き合いだしてから。全く私と来たらガサツなもんだ、異性がすぐ側にいる事の意味を理解できていない。もしかしたら、もしかしてしまうかも知れなかったのに。
とは言えまあ、それは大喜くんの人柄でもあるんだろう。あんな小動物みたいな可愛い生き物相手に、どうやって気を張ればいいんだ。大喜くんが大喜くんであるが故に、私は一切身の危険も感じずホエホエと呑気な顔をして過ごせていたのだ。向こうがどう思ってたかはともかく。
しかし二人の関係が同居人でも先輩後輩でもなく彼氏彼女になった以上、そうも言ってはいられまい。
私が17歳で大喜くんが16歳、大人ではないが子供でもない。そんな年頃でこうも近くにいて、しかも交際中。これはもう、どうなってもおかしくはない――筈なんだけどなぁ。
大喜くんと来たら、想像よりお子さまなのかもしれない。家族がいない間に迫ったり、「カップルだぞ」と言って抱きついたりはしたけど全然
ああ、まったくもう。
健やかな寝息を伝える壁からそっと身を離し、音もなくベッドから降りていく。バスタオルを敷いた床の上に寝そべり直すと、私はそのまま上から下まで着衣を緩め始める。僅かな寒さは肌に感じれど、それよりも興奮で上がる体温の方がずっと強い。
全て脱ぎきるのももどかしく、半端に脱いだ状態で私はショーツの中へと指を這わせる。硬い毛質の陰毛を掻き分けてまだ濡れてもいない谷間を擦りあげ、その上にある肉芽も摘まんで弾いて弄ってあげるのだ。同時に空いている手は胸元を滑り、自分で自分を焦らすように乳雲周囲を回りながら爪の先で乳首をつついていく。
オナニーなんてものを覚えたのは、中学に上がってから。世の中的には大分遅いんじゃないかな、とは思うけど私はそういう子だ。その分溺れずに済んではいたけど、最近はもうこの有り様。毎日のようにオナニーしなければ落ち着かないなんて、すっかり習慣になってしまった。
もちろん罪悪感はある、借り物の部屋を余り汚したくはないし大喜くんに見られてしまったらどうしよう。こんな浅ましい姿を見たら愛想を尽かされるかもしれない、そう思うと――
有り無いし有ってはいけない事を私はどこかで願っている、大喜くんが性欲に身を任せてしまう事を。獣のように襲い掛かり、モノ扱い……単なる穴として私を
「……っ」
思わず声をあげそうになって、唇を噛み締める。危ない危ない、一瞬本気で「そうなってくれても良い」と思いかけてしまった。そのせいか脚の間に入っていた指には生ぬるく粘つく水気がまとわりつき、乳首は堅く隆起して自己主張を止めない。
本当に困ったものだ、大喜くんの事を考えただけでこれか。大好きな人に生臭い想いをぶつけたくなんかないのに、身体がそれを求めてやまない。
いつしかグチュグチュと音は高まり、お腹の奥から何かが降りてきている。指では届かない所、きっと一人では決して満たせない欲求の具象。それを感じながら膣口と肉芽を激しく捏ね潰すようにして、私は一気に性感を爆発させた。
「ー、ぅ……ぁ」
ガクガクと腰を跳ね上げ身体を震わせ、頭の芯には弾ける稲妻。その暴力的な絶頂は塊になって脳にこびりつき、身体が弛緩しつつも快楽の波は衰えていかない。多分このまま眠ってしまうんだろうな、と私は他人事のように考えたり考えなかったり。ほぼ毎晩の事だ、一々考えても仕方ない事ではある。
もし今大喜くんがドアを開けて入ってきたら、なんて都合の良い妄想をしながら放り投げてあった毛布を引き寄せて、丸まりながら目を閉じた。
後始末は起きてからで良い、それで良い。
口のなかだけで小さくおやすみなさいを呟いて、そのまま私は意識を手放した。
何があろうと毎日規則正しく夜は明け、今日も今日とて練習にいく時間が来る。
一応ウェットティッシュであちこち拭いて、着るものは着直して。今日もやっぱり、ちゃんとした『千夏先輩』でいなければ。
……なんて思いはすれど、なかなか上手くはいかない。朝練が終わってシャワーを浴びる頃には、またすっかりムラムラが戻ってきてしまう。
ああ、まったくもう。
勉強にだって手は抜けないのに、集中できないったら無い。まさか休み時間に手洗いで、なんてのは論外だ。色々気まずい。
そしてお昼が来たら、また大喜くんと過ごす
これはきっと贅沢な悩みで、あんまり深く考えるべきではない。考えすぎるから上手くいかないんだ、無い頭で悩むから私はこうなんだ。
「千夏先輩? ……どうかしました?」
おっと、いけないいけない。どうやら顔に出ていたようだ、こういう所だぞ私。何でもないよと軽く笑って、由紀子さんが作ってくれたお弁当に箸を落とす――筈だった私の手はでも、意に反する形で大喜くんの頬へと伸ばされていく。
わずかにかさつくその肌は、温もりに溢れていて。それは余りにも、魅力的過ぎた。
理性が奏でる警鐘では止まらない、そのまま顔を引き寄せ私は吸い寄せられるように自分の顔を近づけてしまう。
ダメだ、これは大馬鹿者がする事だ。そうは思っても尚、身体は止まらない。ふっと視界が翳り、唇へと触れたのは熱く艶かしい感触。
キスした、してしまった。こんな勢いで、昼食中に。広がるのは玉子焼きの味と、頭を焼いていく混沌の焔。
気が付けば私は大喜くんに覆い被さるように、夢中で唇を貪っていた。
粘膜が接しあい熱を帯び、それが全身へと伝播していくのが分かる。オナニーの時と変わらないくらいに、興奮が高まっていく。
もう無理だ、もう止まらない。何もかも投げ出してでも、大喜くんが欲しい。
ゾワゾワと沸き上がる情動に身を任せようとした、その刹那。
まるで待ち構えていたかのようにやって来た号音が、消えかけていた私の理性を引き上げてくれた。
「――……予鈴、だ……ね」
「です……ね」
まるで発条仕掛けの人形のように自身を跳ね上げて、他人事のように呟く私とそれに応える大喜くん。
さっきまでは嘘だったのかと思うほど淫熱は冷め、跡形も無くなっている。単なる気の迷いだった、と言えるくらいに。
そうだ、これで良い。片付けて教室へ戻ろう、五限が始まってしまう。
ああ、それなのに。余程名残惜しいのか、私の口は余計な事を付け加えた。
「……大喜くん。また後で、ね」
後で、後で――どうする気なんだ私は。
いつもの通りに時間は過ぎ、考える間も無く再び夜は訪れた。
そう、来てしまった。壁一枚を隔てて、大喜くんとすぐ側にいる時間が。
心臓は早鐘を打ち逸る想いも止まらないまま、私は今――大喜くんを押し倒している。どういう経緯でこうなったかはもう分からない、考えたくもない。ただ唇を併せ、骨も砕けろと抱き締める。
息苦しさを感じて顔を離しても、昼間のように熱は引いていかない。むしろ高まるだけだ。
「私は、……大喜くんが好き、です。だから、……したい、です。恋人同士ですることを、したいです」
一方的に押し付けた気持ちは、届いたのかどうなのか。確かめるのももどかしい、でも大喜くんの意思を踏みにじりたくはない。そんな二律背反を感じていた、その時。密着する身体の下の方に、何か堅いものが当たっている事に気が付いた。
これは、……これは。その位置と伝わる熱、それが朧気に脳内を漂っている知識を引きずり上げる。
「あ、……そっか。大喜くんは男の子、だもんね」
男の子が相手を受け入れようとする証、一つになりたいという欲望の形。男の子のオトコノコは、堅く大きくなるものだと何処かで聞いたようなそうでないような。
つまり大喜くんは、嫌がっていない訳か。それはそれは結構じゃないか、これで同意は成立した。
じゃあもう、我慢する必要はなにもない。
恥ずかしいのか赤くなった大喜くんの頬を舌でなぞり、私は笑みを浮かべながらゆっくりと服を緩め出す。
楽しい夜は、ここから始まるのだ。
むっと来る牡臭さ……としか言い様のない匂いを嗅ぎながら、大喜くんのオトコノコを両手で扱き立てていく。確か男の子はこうやってオナニーすると渚辺りが言ってたような。弟くんがしてるのを見ちゃって『汚ないもん見せんな』と怒ったそうだけど、私はそうは思えないな。あんなにも激しく擦って痛くないのかな、とかは思う。
その大喜くんがどういう表情をしているかは分からない、今は私のお尻の下にいるから。顔面騎乗というらしい、大喜くんリクエストの姿勢だ。……うん、何がどう良いのかは知らない。
私がずっと大喜くんを想いながらオナニーしていたように、大喜くんもまた同じことをしていた。ついさっき、そう告げられたから分かる。全く私たちは、余りにも似すぎている。大好きで触れたくて、でも嫌われるのが怖くて堪えるだけ。思えば告白する前から、私たちは同じことばかり考えていたんだろう。
――と。手の中のオトコノコが蠢動し、何事かと身構える暇もないまま、一気に何かが迸った。
ドクドクと噴火のように溢れるこれは、多分精液というものだろう。生臭くて熱くて、どうにもならない程興奮を煽る蠱惑的な白濁液。そのせいか私も身体の芯が痺れ、栓が壊れたように潮を撒き散らしていた。
……あ。
「ぇあ大喜くん、その、……大丈夫?」
腰を上げて問い掛ける声に応えるのは、小さな呻き声。人の顔の上でなにしてんだ私は、でも大喜くんも大喜くんで大概だ。息も苦しいだろうに、オトコノコを更に膨張させているのだから。
大喜くんはやっぱり、苛められるくらいが良いんだろうか。
まあそれは今度考えよう、今はするべきことがある。
仰向けに寝た大喜くんの身体を跨ぎ、天井を指すオトコノコへと私自身を押し当てていく。指もロクに入れない場所だ、押し返されて入ってはいかない。でもそこを文字通り押し通し腰を沈めていくと、ゴリゴリと隘路を掘削して大喜くんが私の中へと入ってきた。
一瞬何かが裂ける感覚はあったけれど、それはすぐに消えてしまった。それよりも強いのは、粘膜が産み出す灼熱色の性感だから。
自力では届きようもない深い場所がぐにゅりと押し上げられ、息が止まりそうになりながら大喜くんへと着地する。
一番深いところ、きっと子宮の入り口辺りまでみっしりと膣内が埋まっているのが感じられた。
痛みすら打ち消す快感は、でもまだほんの僅かだけど
「う、……ぁぁ……っ」
さっき感じた挿入感、それが再度奏でられていく。入ってくる、私の最深部へと大喜くんがめり込んできている。
知らず知らず歯の音が合わなくなるも、それさえ唇を噛んで振り払いながら――私は一気に腰を沈めきっていた。
ずにゅり、と入り込むその感覚。頭の奥で弾けたイメージは二度目の破瓜、子宮を撃ち抜く一撃だった。それが事実なのかどうなのか、そんなの分かる訳がない。ただ私は今、実感している。大喜くんの存在が、子宮の中にまで達しているのだと。脳裏に描くその様子は、一秒毎にリアルさを増していく。
それを加速させたのは、胎内で巻き起こった粘液質の凄まじい衝撃。今しがた目にした射精、それが私のなかで再び起こったのだ。想像のなか、白濁した精液は私の子宮内膜を汚し卵管の先まで充たしていく。……まあ実際にそんなことは有り得無いんだろうけど、でもそう妄想を広げるだけで頭の中にはアオ色の激情が駆け抜けて快感の火花を散らすのだ。
それが私の身体も変えていくのだろう、大喜くんの射精は収まることを知らない。私のお腹を内側から押し広げ、結合部からブシュブシュと飛沫を上げながらもまだまだ出続けている。
身体の全てが大喜くんの精液で変換されていくような、荒れ狂う絶頂の嵐。その只中で意識を白く染めながら、私は獣の喘ぎを放つばかり。
夜は壊れながら深まって、終わらない。
ちょっと考えなしではあった、それは反省したいと思う。思うだけでしないかもしれないけど、というかしないな絶対。反省だけなら私だって出来るのだ。
本懐を果たしても気持ちが衰える事はなく、あれから毎晩のように愛しあっては倒れるように眠る日々が続いている。
それでちゃんと朝練もするんだから、私たちって意外と真面目かもしれない。どんなに精魂尽き果てても、するべき事には手を抜かないのが私たちだ。
………………いやまあ、どのツラ下げて言えるんだって話だけれど。そもそも真面目な人間が、こんなふしだらな事をやらかす訳がない。だから由紀子さんに叱られたり蝶野さんに殴られたり、花恋や夢佳に呆れられたりしている。……蝶野さんには殴り返しても許される気もするんだけど、どうかなー。
とは言えども、なかなか思うようにはならないものだ。
「〽️こうしてこうすりゃこうなるものと、知りつつこうしてこうなった……って昔から言うのになあ」
都々逸なんか口ずさみつつ視線を落とした先、カレンダーアプリを見ながら溜め息を一つ。
全く私と来たら嫌になるくらいに健康体だ、元来不順気味で数ヵ月止まったりしていた生理も、ここ暫くは順調に
いやまあ、それはそれで仕方無いんだけどさ。卒業前にお腹が目立つと面倒なのは確かだし、どうせなら後顧の憂い無く嫁ぎたいし。
さてま、どうしたものだろうな。
幸せすぎて、死にそうだ。