だってかなり前だから……。
申し訳ない限りです、ホントに。
どんなに痛くてもちゃんと考えろよ、と匡は言った。そうしなければならないのは、分かっていたんだ。
千夏先輩が好きで、でも雛に告白されて。先輩を好きなままで良い、フェアに戦いたい、と笑う雛に俺は。――どうして良いか、分からなかった。
千夏先輩が好きだから、と言うのは拒絶の理由にはならない。だって雛はそれを知った上で告白してきたんだから。それでも振り向かせてみせる、好きになるまで返事はしなくていいと。そう言われて俺は実際、悩んでしまった。
千夏先輩が好きなのに、雛にも心を揺らされて。どうしようもない俺は、無い頭を搾るのに疲れ果てて、そして逃げ出していた。
ありもしない選択肢にすがり、都合の良い夢に溺れた。
でも、まさか。そんなのが
俺は今もなお、思ってしまう。これは夢の中なのではないか、と。
「大喜くぅーん、ちょっと良いかなぁ?」
鼻にかかった甘ったるい声、その主は見慣れない顔だ。放課後にこうやっているってことは多分同じクラスの筈だけど、誰だったか。クラス全員と友達ってわけじゃないし、女子は特にうろ覚えなのも多いんだよな……。文化祭の準備作業でも見かけなかった気がするけど、もしかしたらサボっていたのかな。それに栄明にしては珍しく部活をしていないのか、体育館やグラウンドで会った記憶もない。
そもそも俺、あんまクラスの事に参加しないからな。部活優先でやってるから、どうしてもその辺曖昧になるんだ。いやまあ単に、俺の頭が悪いせいかもしれないけどさ。
「菖蒲聞いたんだけど、さぁ。雛ちゃんと付き合ってんの?」
……なんだ、またそれか。文化祭の時に否定したんだけど、それでもまだ結構聞かれる。誰と誰が付き合おうと、そんなのは当人達の勝手だろ。それに、俺たちは――。
「付き合ってない。あとさ、そういうの止めてくれないかな。悪趣味だよ、実際」
ちょっと言い過ぎかな、とは思うけど。でも半端な形でお茶を濁すと後が厄介だ、どうせなら毅然としておこう。
今俺たちの関係は曖昧で微妙で、お互いにどう触れて良いかさえ分からない。赤の他人が踏み込んでくるのは、正直困る。
彼女――「菖蒲」さんで良いのかな――は目をしばたたかせ、じっと俺の顔を見詰めている。まるで値踏みするかのように。
うう、なんか気まずい。俺は何も悪いことしてないのに。どうも女子と話すのは得意じゃないな、やっぱり。
とりあえず切り上げて早めに行こう、とバッグを持ち上げたその時。
「ふぅー……ん。大喜くんってさあ、童貞っしょ?」
…………ろくでもない角度から、わけわからない爆弾が飛んできた。
いや、いやいや。いやいやいやいや、そりゃまぁそうだけどさ。でも何で今ここで言った、この女。どういう了見と距離感だ。
俺がフリーズしているにも関わらず、菖蒲さんは更に畳み掛けてくる。
「ちょーっと恋バナ振られて即過敏に反応するってぇ、経験無くて怖いから触れないでって言ってるようなもんだしぃ。重く考えすぎてる辺りが童貞っぽいよねーウケるー」
なんなんだよコイツ、距離感バグってないか。
猥談に抵抗が無さすぎるバカな男子の友達はいるけど、女子でこれかよ。
得体が知れない、そして意図が読めない。逃げ出そう、と思いながらも身体が付いてこない。
それが、致命的な隙になってしまった。
気が付けば距離を詰められ、俺はネクタイをひっ捕まれて――。
「ん……むぅっ」
キス、されていたのだ。
何が起こったのか把握するまで、どれくらいかかったか。数秒か、もっと長い時間か。なんにせよその間、俺は息も出来ない状態に追い込まれていた。
そんな俺をからかうように、菖蒲さんは笑っている。遊びの延長であるかのような、さも愉快そうな顔で。
「やぁっぱり、そうなんだねえ。これくらいで動けなくなるとか、さぁ」
たかだかキスひとつで何キョドってんの、とヘラヘラするその仕草。俺の――俺たちの常識が通用しない、異端の言動。
一体、なんなんだ。
あの文化祭でのアクシデントから、どれくらい悩んだか。
この女は、何も気にしていない。挨拶の延長くらいにさえ思っている。
これは――危険だ、危険すぎる。ショックを受けている場合じゃない、一刻も早く抜け出さないと。
頬に伸ばされようとしていた手を振り払うように身を跳ね上げ、背中を向けて走り出そうとしたのがまた、不味かった。
「おぉーっと、待った待ったぁ」
後ろから首根っこを捕まれ、俺の身体は意に反して動きを停められてしまう。
視界から相手を外したのは悪手だ、何処までも俺と来たら間が悪いったら。いや、自嘲してる場合じゃないって。
どうにか離れようともがいても、動きようがない。そうこうする間にそのまま引き寄せられ、仰向けで床に転がされてしまった。どんな腕力だよ。
「取って食おうってわけじゃぁ無いんだからさぁ、そうやって逃げないでよぉ」
呑気な声で言いながらも、倒れた俺の胸に手を置いて完全に身動きを封じてくるのが恐ろしい。そもそも現時点で実際に襲われている訳なんですが、その辺はどうなっているんでしょうか。まさか俺が間違ってるのか、そんなわけないよな。
明らかに間違っているのは――向こうだ。でも、それでもこれは不味すぎる。
もし誰かが入ってきたら、こんな姿を見られたら。変な噂じゃ済まない事態にも成りかねない。
――と。
まるで俺の考えを察したように、菖蒲さんは小さく呟いた。
「大丈夫だよぉ? 菖蒲が邪魔しないでって思ってるから、誰も来ないよ」
どんな自己中思考だよ、ともがこうとして俺は気付いた。
「菖蒲はいつも、
ぞわり、と背筋が粟立つ。これは、おかしい。何もかもが、おかしい。明らかに何かが狂いだしている、壊れだしている。
その笑顔さえ、違和感しか覚えない。
でもそれを気にする余裕はすぐになくなってしまった、いや奪い取られてしまった。
俺を押さえつけていた手が、ワイシャツの上から少しずつ移動して――腰の方へと這い寄り始めたのだ。
そしてモゾモゾと動き回る指は、すぐにその中へと入り込んでいく。他人に触れられる事なんかありえない、その場所へと。
「ぁー、結構たくましいぃ。可愛い顔してるのにねぇ」
引きずり出したもう一人の俺を、菖蒲さんはニヤニヤしながら弄び出す。なんだこの、安いエロコメみたいな状況。顔も知らなかったような間柄の女子が、なんでこんな事を。頭はそう混乱しているのに、身体だけがただ刺激に反応して猛っていく。こんな異常事態の中で、どうしてこうも素直なんだ。
遠慮のない力と速度でどんどん追い込まれていく俺と、それを楽しむ菖蒲さん。教室の真ん中で、俺は声も出せないままに愛撫され続ける。
それも、執拗に。
頭の中を読まれているように、気持ちの良い場所を指先がピンポイントで擦ってくる。そうかと思えば手のひらで先をなで回したり、とにかく責め方が凄まじい。
自分で弄っている時でさえ、ここまでの快感を抱いた事は無いかもしれない。
こんなこと、してはいけない。そう分かってはいても、抵抗する気力さえ性感に変換されていく。
それでも、それでも。屈しようとする心を、無理矢理奮い立たせ俺はどうにか口を開く。
「や、め……てぇ……っ」
弱々しくか細い声に、菖蒲さんが薄い笑みを浮かべた瞬間。その手が、一気に加速した。
どれだけ俺は愚かだったんだろう、懇願すれば逆に攻めて来るに決まっているのに。俺の意思を一つでも汲んでくれたか、強引にキスしていきなり組倒すような奴じゃないか。文字通り、手のひらの上で転がされている。そう思い知った、数秒の後。俺は更に、もう一段深くへと落とされてしまった。
「そろそろ出そうかな、……っとぉ」
小さな声と共に手の動きが止まり、そして――菖蒲さんの頭が俺の下半身に覆い被さってきたのだ。手よりも柔らかく熱い何かが俺を包み込んだ、それだけは辛うじて理解できた。でもその先は、全て快感の霧に呑まれていく。ただただ、気持ちいい。包まれたまま蠢く何かに擦り上げられ吸い上げられ、もうなにも考えられない。
気が付けば腰がガクガク震えるままに、精液が尿道を駆け抜けていく。こんなにも大量に、一度に。
体感では何分も続いたかのような長い長い射精が終わると、ようやく菖蒲さんの頭が俺から離れてそして。何が起こっていたのかが、露になった。
妖艶に笑うその口元には、白く泡立つ飛沫がこぼれ落ちていく。
「んー……、ごちそうさまぁ。スゴい濃いねぇ、呑み込むの大変だったよぉ?」
まだこびりついてるかなー、と開けられた口の中は白く染まっている。
明らかにそれは精液の残滓、他のなんだというのか。フェラチオという行為の存在は知っている、でもまさか。それをされる日が、来るなんて。
衝撃と快感で何処かが壊れてしまったのか、射精して尚勃起が鎮まらない。せめて治まってくれなければ、
しかしその思考さえ、先回りされてしまう。
「んー……童貞なのはともかくぅ、フリーなのにそうやって怖がるって事はぁ、ひょっとして好きな子がいるのかなぁ?」
妖しい笑みは、こちらの抵抗を許さない。俺はただ、頷くしかなかった――。
千夏先輩が家にいる事を嬉しく思えないのは、春以来初めてだ。夕飯いらないよとだけ母さんに言って部屋へ飛び込み、ベッドに横たわりながらそんな事を思う。もし今先輩の顔を見てしまったら、俺は罪悪感で死ぬかもしれない。……様子を見に来たりしたらどうしよう、来てほしいけどほしくない。壁越しに聞こえる音さえ、なんとなく怖くなる。
それにしても俺の顔には、電光掲示板でも貼り付けてあるんだろうか。なぜあんな短いやりとりで、こうもバレてしまうんだ。もしかしたら先輩にも全部筒抜けだったりするのか、それはさすがに辛すぎる。
あれから俺は、促されるままに全てを話してしまった。先輩を好きなことも雛に告白されたことも、何もかも。どういう訳か俺は、隠せなくなっていたのだ。動揺しすぎたせいか、それとも何か別の要因か。
『そっか、そかそか。じゃぁ、菖蒲が
ついさっきまで人を押し倒していたとは思えない爽やかな笑顔でそう言われはしたけれど、正直不安しかない。どんな余計なことをしてくるんだろう、と思うと。
考えてみればそもそもあれ、誰だ。あんな目立つのがクラスにいて、気が付かないなんてこと有り得るのか。それにどう考えても、おかしすぎる。言うこともすることも、全て。何者なんだというか、何なんだ。とは言え誰かに相談なんか出来るわけもない、こんなもん。
――一体どうなってしまったんだ、俺は。
ついこの間までは、色恋沙汰とは無縁な普通の男子だった筈だ。先輩を好きになってからも、それは変わらなかった。顔を見ただけで声を聞いただけで、心が張り裂けそうになるくらいの恋愛下手。そんな俺が寄りによって教室でキスされて押し倒され――射精させられて、なんて。どこのエロゲー主人公だよ、本当に。あり得ないにも程がある。
世界が全て塗り潰されたような、異質で歪な違和感。まるで俺だけが取り残されて、紛い物に代えられてしまったみたいだ。
どうすれば良いのか、どうなれば良いのか。何一つ分からないまま、ただ夜が更けていく。明日が休みなのは救いだった、まさかこんなメンタルで学校になんか行けるか。丸一日使って、頭を建て直そう。
何もかもおかしくなっている中で、ただ一つ確かな布団の温もりに包まれて俺は、ただ目を閉じた。
眼が覚めたら悪夢は終わり、全てが元通り……なんて事は無い。何事も、だ。なんとなく拳を握りしめたまま昼下がりの街を歩きながら、そんな風に考えてみる。
今朝はいつもより大分遅く起きて、母さんの小言を聞きながらの朝だった。千夏先輩はとっくに出掛けてしまったらしく、家の中は静か。昨日の混乱が嘘みたいだな、なんてぼんやりと思ってみたり。
いっそ覚悟を決めて匡にでも相談してみようか、と置きっぱなしのスマホに目を落としたまさにその時。
液晶が光を放ち、ブーブーと喚き出した。おいおいなんてタイミングだよ、と苦笑しながら手に取ったそこには見慣れない番号。
イタ電か、と無視することも出来た。だけどどういうわけかそうする気にならず、通話を開始してしまう俺。
止めておけば良かったかもしれない、いや止めるべきだった。そう自分の短慮さを恥じたのは、僅か数秒の後聞こえてきた能天気な声のせい。
『大喜くぅーん、お疲れー。菖蒲だよー』
……何で。何で番号知ってるんだ、この人。
昨日
『菖蒲の家マップアプリに登録したげたからさぁ、今から来てよー。応援する約束だしさぁー』
そんなもんいつの間に、というか昨日の時点で俺のスマホ弄ってたのかコイツは。文句を言おうにも言うだけ言って通話は切れてしまい、こちらからかけ直しても繋がらない。
そして俺は馬鹿正直に、その場所へと向かっているわけだ。いや馬鹿正直というか、馬鹿だろ俺。
溜め息を吐きながらも、何処かで期待はしている自分がいる。強引でメチャクチャだけど、異常なまでの行動力が確かに菖蒲さんにはある。千夏先輩でさえ取り込めてしまえるくらいに、超人だ。応援するつもりらしいし、あれで案外親切で面倒見が良いのかもしれない。
そう楽観視してしまえるのは、現実逃避でもあったのだろう。
正しく認識していたら、耐えられないから。
アイツの場合に限って常に最悪のケースを想定しろ、奴は必ずその少し斜め上を行く。どこかにあった気がするそんな言葉が、実感を持って理解できた。
こういう人相手に、心配しすぎるという事は無いんだ。杞憂で終わってくれたら万々歳じゃないか、うん。
「あ、っしゃーい。
鍵もかけられていない玄関を通って導かれるように知らない家の中を進み、辿り着いた先で彼女はひらひらと手を振って俺を迎えてくれた。
その粘液で塗れた手が動く度、腰かけているクイーンサイズのベッドに飛沫が落ちて染みを作っていくのが見える。でもそれよりも、その脇で起きていることの方がずっと――重大だ。
菖蒲さんを
俺は、知らない。こんな姿になった、――千夏先輩と雛を。
「どうせだしぃ、二人とも頂いちゃったら良いんじゃないかなーって。仲間外れは良くないもんねぇ、みんな仲良しが一番良いよぉ」
菖蒲優しいでしょーと無邪気げな笑みさえ浮かべる菖蒲さんの手が、千夏先輩のオンナノコへと滑り込む。
ぐちゅりと重い粘液質の音と共に露になってしまう、千夏先輩の
濃く繁った陰毛と肉の裂け目は割り拡げられ、サーモンピンクの内壁は奥から溢れてくる蜜でドロドロ。あまりにも卑猥で、でも美しい。
鼻を突く生臭い匂いを吸い込むだけで、身体は抑えがたいほどに発情していく。
こんな事が許されて良い筈はない、でも。でも、止まらない。ここに、入りたい。千夏先輩を、抱きたい。
二人で過ごしてきた穏やかな時間も、先輩の優しさも、頭の中から消えていく。
狂暴な衝動だけに突き動かされ、俺は。
「たーっぷり解してあげたからねぇ、
囁くような妖しい声に応え、そのまま――千夏先輩の中へと自分を捩じ込んでいた。
「――っ!?」
ほんの一瞬、苦痛じみた声は聞こえた気がする。でもそれさえ、空耳かもしれない。千夏先輩は声にならない
「そぅそぅ、上手上手ぅ。大喜くんって意外と器用だねぇ、初めてで腰振れるなんてぇ」
からかう声に反応する程の余裕なんて、あるわけがない。本能のままただ無我夢中で動き続けるだけ、それ以外の全てがどんどん朧気になっていく。こんな事がしたかったんじゃない、でもずっとしたかった。矛盾する思いが溶けて混ざりあい、マーブル模様の影に心が支配されてしまう。
「じゃーぁ、そろそろ……
心臓がドクンと一際強く打ち、身体がその声に反応して加速していくのが分かった。このまま、射精する。昨日のように、誰かの中で。柔らかく熱い肉に包まれたまま、欲望をブチまける。
したい、そうしたい。このまま、千夏先輩の奥の奥まで汚し尽くしたい。その思いは止まらない、もう止まれない。
「あ、あぁー……っ」
まるで相手の事など考えず、性欲に任せた突撃。その果てに俺は、何の遠慮もなく射精していた。
千夏先輩の奥へと目掛けて精液を撃ち込みながらも、頭の芯が焼き切れたように思考が回らない。ドクドクと輸精管が音を立てる度に、魂まで流れ出ていくようだ。
射精が終わってようやく、僅かに罪悪感というモノが芽生えそうになる。でもその芽はすぐに摘み取られ、俺は再びケモノへと堕ちてしまう。
「ほらほらぁ、休んでる暇ないよぉ? 大喜くんの
ぐったりと崩れ落ちている千夏先輩から身体を引き離され、今度は雛の前へ。菖蒲さんの指でかき混ぜられ白濁した粘液で満たされた雛のオンナノコが、誘うように蠢いている。その表情は開館に蕩けきり、目の前にいるのが俺だとさえ分かっていないだろう。
告白されたあの日に感じた鼓動はもう胸から去り、いきり立った股間だけが雛を求めている。先輩の中へ
でも、それで良い。気持ちいいから。
先輩より入り口の抵抗は弱いけれど、締め上げてくる筋力は強い気がする。二人の違いはよくわからないけれど、どちらの中も俺を包み込んで放そうとしないのは同じだ。雛の小さな身体を抱き締めて突き上げ、あの日未遂に終わったキスをして。あうあう喚くだけの雛を
先輩より薄い胸に顔を埋め、その見た目よりも強い弾力を楽しみながらも腰は止まらない。
やがて込み上げてくる射精欲求を、俺は拒もうとさえしない。垂れ流すように精液をただただ注ぐだけ、他は何も考えない。考えられない。
きっと今、雛の中は真っ白に染まっている。それを思い浮かべる事さえ億劫になってきて、意識を放棄しようとした俺の身体はでも、倒れ込む寸前に菖蒲さんの手で受け止められていた。
「――ね? 簡単でしょ。好きになるのもなられるのも、軽くて良いんだよ。気持ちよければそれで、ね」
失神しそうになる俺を支えながら、菖蒲さんは妖しく微笑む。
ああ、そうか。それで良かったんだ。考えなくて良いんだ、どうせ俺にはそんな頭無いんだから。立場とか気持ちとか、どうでも良いじゃないか。もっと早く気付くべきだった、こんなにも遠回りする必要無かったんだ。
俺は何処まで行っても、この程度なんだから。
――なら。だったら、ワガママも許される筈だ。誰が誰を好きであろうが、誰とどんな関係であろうが、それは些細なことなんだから。
「んー? どうしたのかなぁ大喜くん、もしかして菖蒲ともしたいのぉ?
そう言いながら菖蒲さんは、雛から抜け落ちた俺にキスをする。射精直後の敏感な粘膜が唇と舌で巧みに愛撫される悦楽が、それこそ脳を溶かしていく。
ピチャピチャと立つ水音が刺激になったのか、千夏先輩と雛まで蕩けきった顔でその真似をし始める。都合三本の舌が這い回るその姿は例えようもない程に淫靡で、二度の射精が嘘だったかのように俺は隆起していった。
そして雛と千夏先輩が四つん這いになった菖蒲さんのオンナノコを左右から割り開き、甘く熟れた中身をさらけ出した。早く入れてあげて、と言わんばかりの仕草にさそわれて、俺はそこへと歩み寄っていく。
「うぁ、……っ」
菖蒲さんの中は、雛とも千夏先輩とも違う。中が別の生き物のようにうねり、しかも握り締めるようにギリギリと締め上げてくる。その上吸い上げられるような感触さえする。――経験が豊富だからか、それともこれも個体差の範疇なのか。分からないけど、でも気持ちいい。
そこへ更に千夏先輩が後ろから俺に抱きついて乳首を弄りだすし、雛は雛でキスしながら俺の手を自分のオンナノコへと押し付けて腰を振り始めた。もう何が何だか本当に一切分からない。身体の境界さえ、曖昧になっていく。
でも、でも。
ひたすらに、気持ちいい。
我慢しない、考えない、
考えないから、気持ちいいんだ。
汗と精液と愛液と、そしてその他全ての匂い。それが立ち込める部屋の中、俺たち四人は絡み合う。
一体どれくらい射精したのか、何時間経ったのか。それさえよく分からないくらい、頭が鈍っている。でも、かなり時間は過ぎたような気がする。
そろそろ帰らないと、と言おうとしたのを先回りするように、菖蒲さんが優しく微笑んだ。俺の上に跨がったまま、唇を指先で制止して。
「まだそんな時間じゃないよぉ?」
確かに窓の外から降り注ぐ日差しはまだ大分高い、まるでまだ真昼であるかのように。
でもここに来たのが昼過ぎだから、もう夕方近いはずなんだけど。
時間が過ぎていない、そうじゃなければ巻き戻っている……?
そんな事があるんだろうか、そんな風になるものだろうか。でも口にしようとした疑問は、すぐに掻き消されてしまう。
「言ったでしょ?
有無を言わせない、その言葉。どう考えてもおかしいのに、逆らえない。
――でもそれを考えるほどの時間は与えてもらえない。先輩と雛と菖蒲さん、三人が競いあうようにキスしてきたせいで、そんな余裕は無くなってしまったから。
まあ、良いや。気持ちいいから。どうでも、良いや。
どこか捨て鉢になりながらも俺は三人がかりで愛される、そして死に物狂いで三人を愛する。
幸せな時間は終わらない、多分ずっと。
俺たちは歪なまま、終われない。