※この作品はR-18です。

アオの夜R18SS   作:扇町グロシア

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甘くてアオい雛の宵  (雛×晴人)

 どうにもならない時というのはあるものだ。そんな時は、別の事でも考えて忘れる他に手はない。将棋じゃあるまいし前だけ見てたってどうなるもんじゃない、足踏みも転進も無駄ではない。なにもしない、という事さえ結果的には大事かもしれない。抜け出せないと嘆くより、楽しめ一瞬を。それこそ真(まこと)の人生だ。

 ――とは言えど、限度ってもんはあるんじゃないかなぁ。

 こんなんで良いんだろうか、私の人生。芯がないというか流されすぎと言うか。

 もっとしっかり考えていかないと、とは思うけど。

 

 

 過ぎた事を引きずっていても辛いだけ、切り替えて行くべきだ。そう実感したのは二年生になった頃で、正確には「先輩と付き合いだした」と大喜に聞かされた少し後。多少は傷付いたけど、でもいっそ諦めが付いて良かったくらいだ。思えば私はずっと、勘違いをしていたんだろう。大喜は一緒にバカやって盛り上がれる友(・)達(・)で、好きか嫌いかで言えばもちろん好き。でもそれは恋愛という形には最初からなり得ない、そこが見えていなかった。

 匡にも言われたし、友達に戻って背中を押してやろう。大喜だってきっと、それを望んでくれる。……と良いなぁって。

 まあ、それはそれとして。

「おめでとうございます……ですかね、千夏先輩」

 行き付けの整体院でバッタリ会った千夏先輩に、私は笑って手を振る。一瞬見えた動揺は予想の内、そりゃそうだよねって感じ。「大喜に告白したんです」と先輩に鞘当てしてからもう半年以上経つけど、それからは殆ど話していない。先にツバ付けたの私なんだからね、なんて牽制かけておきながら結局失敗している辺り気まずいったら。

 まあそれは、向こう様も同じだろう。 

 明らかに弱ってる、どうやって場を納めようか考えている。目が泳ぎまくってるしあうあう言ってるし、さてはこの人実はポンコツだな。それは別に構わないけど、でも。

「あー……大喜が話してくれたんです、先輩との事。あぁ私はとっくの昔にフラれましたんで、気にしないでくださいね」

 一方的にでも伝えておかないと、この先もずっと惑わせてしまう。大喜がフラフラするような奴じゃないのは知ってるだろうけど、一応はね。

 とりあえず今現在私にはもう大喜への恋愛感情はない事、二人を応援したいという事、幸せになってほしいと願っている事を矢継ぎ早に捲し立てる。

 こういうのはスピードだ、勢いで押し通すべきだ。細かい事は後でいい、今のうちに言うことだけ言ってしまえ。

 さすがの千夏先輩も目を白黒させているけど、多分少ししたら呑み込む筈。多分きっと、……うん。大喜みたいなバカならともかく、この人はそこそこ優等生な人だもの。そうであって欲しいなぁ、本当に。

 そして私は最後に一言言って歩き出す。

「私もね、こないだ――彼氏が出来たんです」

 

 誰かと付き合うとか、そういう明確なイメージは今まであんまり無かった。大喜相手でさえ、友達関係の延長でしか思い描けなかった。

 そんな私がまさか、こうも変わるなんて。いやはや全く、色気付くって大変だ

 別に大喜を忘れる為に無理をしたとかじゃなく、気が付けばそういう間柄になれていたから不思議だ。そう言えば菖蒲にも誰か紹介してとか頼んだっけ、結局一人も出てこなかったけど。『菖蒲のお古ってわけにいかないし、雛っちに釣り合いそうなのいなくてさ』とか言ってた。

 しかしまあ、こんな感じなんだな。好きになって貰う、って言うのは。

 第一印象は決してよくなかったというか悪かったけど、今ではそれさえ笑い話だ。

 まさか一個下の後輩相手に、こういう気持ちを経験するとはね。全く人生ってわからないな。

 体育祭辺りまではホント失礼なだけで、大喜に「下への教育がなってない」と文句言ったりもした。人のレオタ姿を変な風に言いおってからに、ひっぱたいてやろうかと何度思ったか。それが変わったのは、夏の終わり。去年の私と同じように、晴人は言ったのだ。好きです、と。

 いや……うん、最初はそりゃ戸惑ったさ。だけど大喜の気持ちも多少は理解できた、多少はね。突然告白されると、人間あんな風になるんだな。

 違いがあるとすれば、私は返事を保留しなかったという事か。

 その場で断る事も出来た、それで責められる道理も無い。そうは思っても私は首を縦に振った、受け入れた。こういうのも良いかな、と。

 

 

 今になって振り替えると、私は――逃げたんじゃないだろうか。今年も全国制覇はならず、天井を感じはじめて。それで恋愛を口実にして引き下がろうとしているんじゃないか。

 ……なんてめんどくさい事を考えてしまう辺り、私も相当だな。これ以上考えたって仕方ないのに。

 別に背を向けた訳じゃない、筈なんだけど。何処かに罪悪感を抱いてしまうのは、楽しすぎるからかもしれない。

 中学の頃から去年まで大喜と過ごした時間と同じような、バカやって笑いあう日々はとても幸せで、だからこそ僅かに心の底へ澱が積もっていく気がする。

 それを放置するのは、私にも晴人にも望ましいことではないとは思うけど……ねえ。じゃあどうすればいいのか、風が冷たくなってもまだ考え中。

 もうこのままで良いんじゃないかな、どうせ人間思った通りになんていかないんだし。いやそれこそ逃げだ、無敵の蝶野雛がそんなんでどうする。

 迷いながらよろめきながら、それでも進まなければいけない。過去を振り切って、明日へと。

 そう覚悟を決める為、先日ようやく私たちはキスをしたのだから。今時小学生でも普通にしているのに、二人揃って初心者なもんであれこれ失敗しまくったけどさ。

 顔を傾けるという発想が無くて盛大に鼻を打ったのが一回目、鼻血が出ていないのを確認してからの二回目は唇を切って中断。翌日の三回目でやっとこさ成功したんだから、不器用だな私たち。ア痛かったと目に涙、じゃ都々逸じゃないか。

 もちろんレモンの味なんかしないし、これはゴールでもなんでもない。まだまだ先はある、そこへも進んでいかないと。

 躊躇いもあるし正直ちょっと怖いけど、だからってこのままでいるのも停滞だ。

 また一歩進む、大人の階段を登る。晴人がどう思ってるかは知らないけど、私はそうしたい。

 

 ハロウィンが過ぎ去ると、街は一足も二足も早くクリスマスムード一色。そのなかを二人、手を繋いで歩いていく。目的地はとっくに決まっているのに、寄り道ばかりで困ってしまう。

 そう、する事なんか一つだ。その為にスケジュールも体調も調整して来たんだ、むしろ今日でないと困る。その気配は晴人も感じているんだろう、握った手はいつもより熱い。

「あ、……の。蝶野先輩……その」

 小さく呟こうとする晴人、でもそれを征するように私は開きかけた唇を指で押さえる。

 言わなくて良い、大丈夫。

 そのまま脚を進めたどり着いたのは、駅裏の路地の更に奥。いわゆる一つの、……ラブホテルという所だ。入る目的はそ(・)う(・)い(・)う(・)事(・)以外に有り得ない、専用の場所。

「……晴人が構わないなら、このまま入るよ。嫌ならそう言って良いから、さ」

 ああ、全くもう。もう少しムードのある誘い方は出来ないのか、私と来たら。とは言え相手は失礼千万でお馴染みのバカ晴人だ、この程度で愛想を尽かしはするまい。

 どうせ男子ってのはそんなもん、と菖蒲にも聞いている。このままなし崩しに進めてしまえば、多分古傷の事なんか忘れてしまえる。

 ――なんて思っていたのだけれど。私が想像するよりか少しだけ、晴人は冷静だったようだ。

「そりゃ、……したい、です。でも蝶野先輩は、それで良いんですか」

 交わす視線は生意気なくらいに真っ直ぐで、まるで――私を振った時の大喜みたいにも見える。

 晴人は、なにも知らない筈だ。大喜と私の間に起きた事は、菖蒲やにいなちゃん達くらいしか把握していないから。

 なのにそう言っている、それはつまり。今の私が、それほど迷いを見せているという事か。

 それは……それは。確かに私はずっと、迷っている。なにもかも脇に置いたまま、晴人とイチャイチャして過ごしている。それに負い目はあって、だからこそ生き急いでいる。その自覚はあるけど、でも。

 なら私は、晴人を単なるストレスの捌け口としてしか見ていないんだろうか。

 ……そんなわけ、有るわけがない。

「……うん。全部が全部思い通りじゃないけどさ、私を好きだって言ってくれるアンタの事が、……好きだもんさ」

 そうだ、それだけは確かだ。どうでも良い相手をこういう相手になんか選ばない、晴人を好きになっているからこそだ。大喜の時とは違って当然、別人なんだから。

 自暴自棄になったんじゃない、逃げ出すだけじゃない。好きな相手に、自分を委ねたい。それもまた、本心だ。

 ――と。

 決意の一言へと返された言葉に、私は思わずつんのめる。

「あ……それ、と。俺経験ないんで、蝶野先輩がどうにかしてくれないと無理っすよ?」

 う。えー……男子ってそういうの詳しいんじゃないの? 常日頃からそんなことしか考えてない生き物だと思ってたのに、なんなんだ。チャラついた顔してるくせして、こういう時には使えないんだからさ。

 て言うかコイツが躊躇った理由、実はそれだけだな。考えてみたらこのバカに人の気持ちなんか読めるもんか、その辺は大喜よりヒドイもん。

 ああ、ったくもう。

 仕方ない、な。

「はいはい、お姉さんがリードしてあげるわよ。まあこっちも初めてだけど、なんとか頑張ってみる」

 湿っぽい空気も無駄な悩みも今は止めだ、勘とノリと勢いでいくさ。

 

 …………うん、出来るものならそうしたかったけどね。出来るものなら。仕方ないじゃないか、こんなの。

 不自然な色合いの薄暗い間接照明の中、私たちはベッドの上で四苦八苦していた。

 だってさ、こんなのどうすれば良いんだか。お互いに異性の身体なんか触り慣れてないし、どこをどうすればどうなるんだかもサッパリだ。一応「お勉強」としてAVなんかも流してみたりはしたけれど、うーん……よく分かんない。

 ちゃんと灯りつければ見やすくはなるだろう、でも恥ずかしい。

 何処触ってんのと蹴り入れたりもっと優しくしろと殴ったり、いい加減挫けそうだ。いやそれは向こうの台詞かな、うん。私って実際手が早いんだな、言う前に殴ってる。

 それでもどうにかこうにか格好をつけ、薄闇の中で脚を広げて晴人を待ってみてはいる。これでまた失敗したら今日は切り上げて帰るか、と思い始めた時。

「ぁ、……っ」

 上手く角度が合ったのだろう、まるで私自身を割り広げるように異物が入ってくる感覚が訪れた。それは堅く熱い、晴人の一部だ。見えなくてもそれは感じられる、理解できる。ミシミシと骨盤が軋み、今まで触れたことのない場所へとそれが浸食してくるのがわかる。気持ち良い悪いより、とにかく経験の無い情報の洪水で頭が煙を噴きそうだ。さすがにこれは、かなり難しいぞ。少なくともこれを習慣にはできないかもしれない、なんて考えはしたけれど――でも。

 必死で腰を動かす晴人の顔は、良くは見えなくともセクシーで好ましいと思える。これを味わうためなら、こういう事をするのも悪くないな。お腹の奥を突き上げられて漏れる私の嬌声に晴人の息遣いが混ざっているのも、なかなか良い。さっき観たAVでは女優さんの派手な喘ぎや男優のヌルっとした声が耳障りだったけど、いざ自分でするとなると違うものだな。後は抜け落ちそうになる時に不快感が若干あるけど、それ以外は慣れれば平気になれそう。

 しかしまあ、もっとロマンティックな行為だとイメージしていたのだけれど。実際には汗だくでケダモノっぽいな、本当に。……これに限った話でもないか、告白もキスもなにもかも思ってたのとは違ったじゃないか。

 それを悪いとは思わないけどさ。

 ぼんにゃりと考えながらも晴人に合わせて腰を動かしていくと、不意にその動きが止まる。そしてやってくるのは、まるでお湯をいれた風船が膣内でふくれていくかのような灼熱感。

 ……これはまさか、そういうことか。

「すいません……出ちゃいました…………」

 バツが悪そうに俯く晴人、その頭をペチりと一発叩いてやる。幾らゴム着けさせてるからって、なにも言わずに出すんじゃないっての。どんな風に出るのか見てみたいから、一旦抜いて目の前でさせようとか思ってたのに。 

 ずにゅりと引き抜かれたゴムはパンパンにふくれ、その一部には赤い欠片が着いて見えた。

 騒々しい初体験が終わり、やって来たのは脱力感。あれこれ反省はあれど、まあ――良いか。

 今は一先ず、浸らせてもらおう。

 

 

「あー……忙しかったわ」

「俺もです」

 なんて笑い合いながらも、「これで良かったんだろうか」と思ってしまうのが私の弱さ。いっそあのまま勢いだけで押しきれば良いのに、それを吐露してしまうのも救えないな。一仕事終えたらテンションが下がってしまったのか、弱気になっているようだ。

 もしかしたら逃げてるだけなのかもしれない、と弱音を吐く私。だけど晴人は、それを責めはしない。否定もしないけど。

 大喜との件や部活で伸び悩んでいる事まで話して尚、口調は軽いし。

「俺も一緒ですよ、兄貴と比べられるのが怖くなって栄明に逃げ込んだんですから。逃げられる場所があんなら、別に良いんじゃないでしょうかね。自分さえ納得してりゃ、逃げても構わないでしょ」

 裸のまま笑うその顔は、でも真剣だ。

 ああ――そうなんだな、結局はそれなんだ。自分で自分を許せるか、それだけ。

 大喜にフラれて、新体操でもうまくいかなくなってきて。今の私は、逃げてばかりだ。でもそんな私を、晴人は好きだと言った。全国トップクラスなんてスゴい、とも。

 じゃあ私にとってそれは、耐えられない程に辛いのか。そんなわけがない、幸せなんだから。

 お互い逃げたから、こうなれた。じゃあ現状、これは最善手なのではないか。

 折れたって曲がったって、遠回りでも横路でも、それで良いさ。

 さて、じゃあどうするか。

「とりあえず、今日はこの辺にしとこうか。シャワー浴びて帰って、んでまた明日学校で会いましょ」

「うぃ、そうしましょう先輩」

 先伸ばしでも現実逃避でも、とにかく楽しもう。これからもずっと、そうしよう。後の事は後で考えれば済むんだから。

 

 荒々しくも想い出にはなった初体験から少し経って、新しい年を迎えた私たち。

 回数をこなして慣れてきたのか、所謂姫始めなんて事に挑んだりもしてみたり。お腹の内側をゴリゴリと削られる感触にも、どうにかこうにか適応しつつある。

 好きになられてなり返して、抱いて抱かれて日々は流れる。滑って転んで悩んで、嬉しい楽しいエブリデイ。

 私の上で揺れる晴人の身体は筋肉質で、でもしなやかで優しい。

 こういうのを、幸せと言うんだろう。

 そう言えば大喜たちもヨロシクやっているらしく、整体院で会う度千夏先輩からノロケ話を聞かされるようになってしまった。……あの人は我慢できなくなって自分から跨がったそうで、やっぱり規格外なんだなって。まあ良いけどさ、よそ様の事だから。ただ「もうじき卒業だし、そしたらお嫁に来ようかな」とか言ってるのはどうかと思います、人生なんだと思ってんですかアンタは。大喜の事も考えてやってくださいよ。

 などと余計なことばかり考えてはいたけれども。

「ん……っ」

 私の中で膨れる衝動、それを感じ思考を中断して私は声を漏らす。この瞬間、膣内が拡げられるようでなんだか毎回驚いてしまう。構造考えたらそりゃそうなんだろう、と分かりはするけど。

 ――もし、だ。ゴムの中でなく直に射精されたなら、いったいどんな風になるんだろう。精液自体は見せてもらったし触りもしたけど、受け止めた事はない。とは言えそんな事したらどういう事態を招くかは知っている、だから実行はしないだろう。……今はまだ。

 いずれは考えるべきなんだろうな、将来に向けて。

 この先私たちがどうなるかなんて、誰にも分からない。何かの拍子に歯車がズレてしまえば、離れ離れにもなるかもしれない。まあそれも含めて人生だ、どうにかなるさ。

 逃げて転んでぶつかり合って、それでも終わる訳じゃない。楽に楽に適当に、こけつまろびつ過ごしていこう。

 大丈夫さ、だって私は無敵の蝶野雛なんだから。赤毛の美しい女舐めんなってもんよ、伊達や酔狂でこんな頭してる訳じゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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