※この作品はR-18です。

アオの夜R18SS   作:扇町グロシア

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夏の終わりに、アオい風を  (千夏×大喜)

 苛々する。

 苛々する。

 苛々する。

 気を遣っている……、いや遣っている風に振る舞う事にも、なにもかも勘違いしたままでいる事も。どうしてこうも不器用なのか、苛々して仕方がない。

 いつ私が言ったというんだ、こっちの為に距離を取ってくれなんて。

 せっかくの花火大会なのに、こんな気分を引きずって帰る羽目になってしまった。お陰で部屋に上がってからもモヤモヤが収まらない、楽しい思い出が台無しだ。

 ……私は大喜くんが好きだし、大喜くんも私を好きでいてくれる。それだけで良いのに、どうしてこうも面倒なのか。私が気にしている事があるとすれば、うちの親に関する事だけだ。お母さんはまだ良いとしても、お父さんはどう出るか予想できないから。その辺があって「付き合っているのは秘密にしておこう」と言ったけど、別にそこまでガチガチに隠す気なんか無い。そりゃ同居までバレたら大変だけど、それでも大喜くん大好きだから可能な範囲で一緒にいたいのに。全くもう全くもう、分かってないにも程がある。

 そもそも、だ。こうして壁一枚隔てただけで寝起きしてるのに、何一つ過(・)ち(・)が起きないとかどうなってるんだろう。付き合いだしてもう半年だぞ。そりゃあ――手が触れただけでドキドキが止まらなくなるし、一人の時たまに「大喜」って呼び捨てにする練習するけど毎回頭から蒸気噴きそうになるけどさ。たった一言で人間がスチームポットになるんだから、日本語ってスゴいな。

 でも私たち高校生なんですよ、もっと踏み込むというか少しくらい親に言えないような事をしたって良いじゃないか。

 や(・)り(・)方(・)なんか知らないし知ったところで出来るとは思えない、それでも恋人同士なんだから。

「ぁー……もう」

 ぺしんと壁に手を当てても、伝わるのは残留する昼間の熱だけ。

 大喜くんが分かってないのは、私が言わないから。結局私の苛々は、私のせいなんだ。

 どうしたもんだろう、いやそんなの分かってるじゃないか。

 いつだってそうだ、死なない限り立ち上がる。立ち上がれる限りは負けない、そして負けない限り死なない。私は鹿野千夏だ、そんじょそこらの連中とは作りが違う。二枚三枚上手の神も仏も付いてる、困ることなんかさらさら無い。

 じゃあもう、やってしまえ。動かない言い訳なんかもう繰り飽きてしまった、バカは黙って突っ込めば良いんだ。

 身体髪膚に気合いをみなぎらせ、私は決意を胸に部屋を躍り出ていた。

 

 そして、そして。大喜くんの部屋へと突撃を敢行した私は――。

「いやあの……大丈夫、ですか?」

「あんまり大丈夫くない…………っ」

 …………今現在、股を押さえて踞っている。完全に誤算だったというか、思ってたのと違ったのだ。勢いさえあればどうにかなるもんだよ、なんて花恋は言ってたけどこんなのをどうしろと言うんだか。跨がっちゃえばその方が楽だなんて大嘘じゃないか、そもそもあんなもんおいそれと入る訳がない。一人でする時も殆ど指は入れず、浅いところを掻き回すのが好きなんだから。

 大喜くんのが大きすぎるのか私のが狭いのかは知らないけど、これは結構キツいぞ。と言うかそもそもそれを見た時点で怯んだし、なんなら日和って逃げようかとも思ったくらいだ。

 いやー……逃げてりゃ良かったかな、うん。

 大喜くんも大喜くんでオロオロしているけど、とりあえず下は穿いて欲しい。目のやり場に困る、いやまあ剥ぎ取ったのは私だけど。

 収穫が有ったとすれば、花火大会での行動について知れた事。「もし誰かと付き合っていてそれを隠すつもりなら、相手との距離を考えた方が良い」、とか後輩に言われたらしいのだ。つまりは近づきすぎてはいけない、もっと離れるべきなのだと。私の大喜くんに余計なことを吹き込むなんて、何処の誰だか知らないけど一発殴ってやろうかな。

 それはつまり、――去年の私ではないか。大喜くんとの距離が近付くことが少しだけ怖くて、そして由紀子さんたちとの事もあり「あまり仲良くなりすぎてはいけない」と線を引いた。それがどれだけ大喜くんを傷付けるか、考えもせず。私が我慢すればみんな今まで通りにしていられる、なんて。

 そんなのは間違っている、私の悪い頭でもそれだけは理解できる。

 私は大喜くんが好き。それを恥じる気も後悔する気も、何一つとして有りはしない。

 かつて夢佳から投げ掛けられた、バスケを諦めて恋愛に逃げたという言葉。それを私は、全力をもって否定した。大喜くんを好きになって、失ったものも衰えたものも何一つ無いから。心の一番奥に火を灯し、最強無敵で不倒不屈な不滅の私を形成するのは大喜くんへの想いなのだ。

 だからこそ、愛したい。全てを賭けてでも、大喜くんが欲しい。

「……ごめん、私色々先走った。でもさ、本気なんだよ。私は大喜くんと、そういう事をしたいのです」

 痛みを堪えて再びのし掛かろうとした私を、大喜くんの手が静止させた。それは拒絶ではない、優しさだというのは伝わってくる。

 でも、だけど。私にはそれが、辛く思えてしまうんだ。

 だからその手を払い除けてでも、もう一度挑む……つもりだったのだけれど。

「あの、千夏先輩。わかって欲しいんですけど、俺もうじきインターハイなんですよ。……集中できなくなるって言うか、確実に俺ダメになりますってば」

 大喜くんの真っ当な言葉に、燃え上がっていた士気は文字通り水を差されてしまった。

 ぬ、ぬう。まあそりゃあ、確かに。私の夏は終わったけれど、大喜くんは全国大会という新たな戦場へ行くのだ。試合前の自身を研ぎ澄ますべき時に、競技以外の事を考えている暇はないだろう。

 ……うん、そりゃそうだ。間違っているのは、苛立ち任せの思い付きで跨がろうとしている私に決まっている。

「俺、頑張りますから。インターハイが終わるまで、待っててください」

 黒い瞳は真っ直ぐに私を見据え、その思いを告げてくる。木々を揺らし吹き抜ける、夏を呼ぶアオい風のように。 

 ――何をあれこれと無駄に悩んだのか、全てはたった一言で済むのに。いや、言葉さえ必要ない。

 熱い気持ちを受け止めながら私は大喜くんを抱き締め、キスをする。色々台無しな格好だけれど、それはそれで構わない。ただ一つ、愛してるという事さえ伝われば。

 

 私は思った以上に大喜くんへと依存していたな、と実感したのが初日の事。まあ去年の夏は私が猪股家を開けたけど、その時は寂しがる暇がない程忙しかった。それに秋の時はお母さんと一緒だったから、甘える相手がいたんだよね。……とは言え由紀子さんに甘えると、後から気まずくなりそうでイヤーンな感じ。

 早く帰ってきて欲しいけど、勝ち進んで欲しいとも思う。大喜くんも去年、こんな風に迷ったんだろうか。

 そんなこんなで待つことしばし、まるで永遠のような一週間を経て。

「改めて大喜くん、インターハイお疲れ様」

「あ、……りがとうございま、す」

 今私と大喜くんは並んでベッドに腰掛け、先日の続きをしようとしている所だ。

 大喜くんの戦績はダブルス三回戦突破で全国二位、シングルス四回戦突破全国四位。素晴らしい成果だと思うけど、本人としては天に触れど天を掴めずと言った感じだそう。舞台にさえ立てなかった私としては羨ましい限り、でも大喜くんはいつだって上を見ている。こんな人に恋をしたのが、心底誇らしいと思える。

 そして、そして。

 ここからはもう、部活の時間じゃない。恋人同士の時間だ、気兼ねなくイチャイチャして良いのだ。 

 大喜くんを待つ合間にあれこれと根回しをし、大喜くんが帰ってくるであろう時期に合わせ、大人たちがいなくなるよう渡りを付けた。上手くいかなかった時を想定し二の策三の策も用意していた、この周到さをほめてほしい。余程のアクシデントがない限り、明後日の昼過ぎまでは私たち二人きり。どんなに声を出そうとあられもない格好をしようと、常識の範囲でならば問題ない。

 今だけはそう、誰の目も有りはしないのだから。

 そんなんでなければ、いくら私室とは言え全裸で過ごしたりは出来ない。いや、普通はしないもんなんだけどさ。バカな空気にしないとやってられないと言うか、照れて仕方ない。勢い任せで行ったのも悪くない選択だったかもしれないな、手を繋ぐことさえ躊躇っていたのだし。私たちはきっと、切っ掛けがなければ動けないんだ。

 だから――これで良い。

 キスをしながら身体は少しずつ倒れていき、やがて完全に横たわる。視界は大喜くんでいっぱいになり、心臓が早鐘を刻んでいく。

 私たちの関係を、もっともっと進めよう。愛しているから、愛されているから。

 

 二度目ましてな大喜くんのオトコノコ、こうしてまじまじと見ると結構エグいかも。大きいし太い、そりゃ痛い思いもするだろう。荒い息を吐きながら上下にしごかれていく様子は、なんだか不思議だ。あんなに擦って痛くないんだろうか、それとも痛いくらいが良いんだろうか。それは分からないけれど、てらてらと溢れていく透明な液体を纏いながらグチュグチュ音を立てているのを見る限り、よっぽど気持ちいいんだろう。

 だって私もまた、同じような音を奏でているから。

 大きく足を開き殆ど仰向けに寝転がるような姿勢で、私は今オナニーに耽っている。大喜くんからはもう、なにもかも丸見えになっている筈だ。解しておけばまだマシかも、じゃあ見てても良いですか、というやり取りがあっての現状です。分かりやすいですか。

 正直恥ずかしいし何処に興奮しているのか今一つだけど、まあ大喜くんが良いならそれで良いや。考えるのも億劫な程、頭のなかは快楽で塗り潰されていく。

 瞼の裏ではバチバチと火花が散り、一瞬おきに身体が痙攣するのが分かる。何度も何度も声を上げ、朧気になりつつある視界でどうにか私は大喜くんを視認して。

 そのまま私自身を、くちゅりと割り拡げた。

「ぁー……多分、もう平気……かなぁ……」

 まあ何とかなるんじゃないか、くらいの気持ちで身体の内側を晒すのも大概ではあるけれど、それはもう今さらか。

 ベッドを軋ませ、ゆっくりと重なってくる大喜くん。その先端が僅かに当たり、一瞬だけ背筋に冷たいものが走りはする。でもそれは、辞める理由にはなり得ない。進んでくる熱く硬い塊に、私の中が押し広げられていく。それは異物感こそあれど、決して不快ではない。

 そして小さな痛みを経て、――お腹の深い部分へと大喜くんが到達したのが感じられた。どうにか向けた視線の先にある私たちの下半身は、ぴったりと密着しあっている。

 大喜くんと繋がった、特別な関係をさらに進めた。その事実がもう、狂おしいほどに愛しい。

 それは多分、大喜くんも同じなんだろう。必死の顔のままピクリとも動かず、何かを堪えているような……って。それはもしかして、まさか。脳裏を保健体育の知識が過った時にはもう、遅かった。

「……っ、ぁあ……うぁ」

 大喜くんの身体が跳ねるように震え、それに応え私の中にいる大喜くんもまた大きく蠢働する。数コンマの間をおいて、私の最深部目掛けて熱い何かが打ち付けられていくのが分かった。……これがまさしく、射精というものなんだろう。出口を求める粘液はでも行き場を無くし、私のお腹のなかでグルグルと駆け巡る。

 膣内が焼け落ちる程に熱くなり、愛しさで頭が壊れていく。大喜くんにとっても、こ(・)れ(・)を気持ちいいと思ってくれたのだ。私が一方的に貪るだけじゃない、愛し愛されているという事。

 これが幸せでなくて、なんなのか。

「あ……先輩、すいません、その俺……」

 何(・)故(・)か(・)申し訳なさそうな顔をする大喜くんを、私は下から抱き締める。謝る事なんか何もない、最高の時間を過ごしているのだから。願う事があるとすれば、一つだけ。

「ねぇ大喜、もっと。もっともっと、いっぱいしたいな」 

 

 夜はまだまだ続く、動けなくなるまでひたすら愛し合おう。そう誓いあって繋がったまま、もう何時間経っただろう。痛みどころかすっかり違和感も消え失せ、中を掘削される事に快感しか覚えない。射精を繰り返しながらも抽挿は止まらず、結合部からはブシュブシュと卑猥な音と共に飛沫があふれでる。

 何も考えない、考えたくない。ただ本能に任せて暴れる二人の狂い獅子が、ここにいる。

 どうしてもっと早く、こうしなかったのか。ただ苛立つとか腹立ち紛れに跨がるとか、そんなのはいらなかったんだ。愛してると伝えあえば、すぐにでもこうなれていたのに。

 ――と。私は身体の奥底に、何かが沸き上がるのに気付いた。これは、予兆だ。もうすぐ、今までにない大きな波がやって来る。残り少ない理性を粉々に打ち砕く、最大級の絶頂が。

 そこまでの境地にはまだ一度も達したことはない、と怖じ気付く自分を私は力尽くで抑え込む。何を恐れる、大丈夫だ。どうなったとしても、大喜くんがいるのだから。

 意識までもろとも刈り取る快楽の大鎌を感じながら、私は本能のままに叫んでいた。愛する人の名を、そして全身全霊の愛を。

 

「んぁー……太陽が黄色いなぁ……」

 嵐のような夜が明け、私たちは朝食もそこそこにお片付けの真っ最中。あの後失神して穴という穴からあれこれ垂れ流したまま朝を迎えたお陰で、大喜くんの部屋はメチャクチャになってしまったのだ。やー……要介護先輩になってしまうなあ、ごめんね大喜くん。

 ドロドロになったシーツやら何やらを洗濯機に放り込んだは良いけど多すぎて回らず、大喜くんは大荷物を抱えてコインランドリーへ。

 思ったよりずっと疲れたけれど、とにかくまあ初心者同士にしては上手く行った方だろう……多分。全く大変なものだな、愛とか恋とかそういうのはさ。

 とは言えまだまだ夏休みは長いんだ、試せる事は山とある。それにもうすぐ誕生日、去年みたいに民宿に泊まっても良いな。あの時はアクシデントの産物だったし付き合う前だから何もしないで過ごしちゃったけど、今度はイチャつこう。思いっきり甘えて蕩けて、全力で楽しむんだ。

 他にも色んな事をしよう、一緒にあちこち出掛けよう。そして幸せな思い出と、あと――愛(・)の(・)結(・)晶(・)でも拵えようかな。さすがにちょっと気が早いか、でもいずれはそういう方面にも挑んでみよう。……いや待て、そういや昨日はスゴい量を膣内射精されたんだっけ。そうなるともう、当たっててもおかしくないというか当たってないとおかしいかな。大喜くんが謝ってたのはもしかしなくても、そのせいか。

「むー……ふむー」

 指折り数える迄もなく、花丸健康優良児である私は一ヶ月の大半が妊娠可能な状態な訳で。そうなると、そうなると。……そうなるか。

 いやまあ、別に構える事でもないな。とりあえず様子見て、そうなったらなったで正直に由紀子さんへ頭下げれば良い。まさか追い出されやすまい、進路も変える必要はない。妊婦だろうと子持ちだろうと大学には行ける筈だ、問題ない。不安があるとしたらウインターカップかな、妊娠したから安全優先で私は出ないとか言ったら渚たち怒るだろうなぁ。夢佳もブーたれるかも、まったく私の周りにはガラッパチな女しかいないから困ってしまう。

 まあいくら「統率の取れたゴリラの群れ」と名高い栄明女子バスケ部員ったって、話が通じない訳ではない。泣いてすがって歯茎を剥いて、わかってもらおう。そういうのは得意な方だし。

 なんにせよ、どうあっても。大喜くんが隣にいてくれれば、私は因果地平の彼方まで突き進める。だから大丈夫大丈夫、どうにかなる。命の限り好き勝手、それでこその私だ。

 ああ、全く。人生は余りにも、幸せすぎる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バカだバカだとは言ってきたけど、まさかナツがここまで本格的なバカだとは思わなかった」

「さすがに今回は夢佳の言い分に同意するわ。年に五分でいいから頭を使いなさい、腐るわよ?」

「えー花恋までそんなー……。蝶野さんはそんなこと言わないよね?ね?」

「なにも言う気しません、とりあえず一発だけ殴らせてください」

「なんで!?」

 

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