千夏先輩は、あまりにも無防備だと思う。
意外と自己評価が低いせいか、それとも誰にでもフランクな性格のせいか。
とにかく、女子としての自覚が無さすぎる。
一応居候として大人相手には気を遣って過ごしているけれど、後輩である俺の前ではそこまで警戒しない。
だから、あちこち透けたり見えたりが結構あるのだ。
油断できるくらい親しく思ってくれているのは光栄だけど、俺だって健康な高一男子な訳で。
目の毒です、先輩。そんな事を言うわけにも、いかないんだけどさ。
俺は、男扱いされていない。それはそれで、寂しい。と言うか哀しい。
「大喜くん、お風呂空いたよー」
今日も先輩は、部屋に戻りがてら俺に声をかける。同居初日から、先輩は風呂上がりにこうやって来てくれている。
湯上がりのホコホコした先輩は色っぽくて、それになんだか恋人同士のような距離感。毎日の事なのに、まったく慣れない。慣れる気がしない。
ジャンプを読む振りして背中を向けていなければ、卒倒しているかもしれない。あまりにも刺激的過ぎる。
こんなドキドキなんか、先輩は気付いていないだろう。気付かれたくもないし。
「あ、分かりましたー」
できる限り平生を装ってはみるけれど、なかなか難しい。
いずれは平気になるんだろうか、そんな日が来るんだろうか。来なさそうだけど。
――と。
いつもなら去っていく足音が、今日に限っては向きが違うのに気が付く。
近づいてくる。先輩が、こっちに来る。
なんで、と思う暇も無かった。
「えい」
先輩の手が、肩越しに伸びてきて。俺は、気が付けば、先輩に後ろから――ハグされていたのだ。
「な、なにすっ、せんぱっ」
ちょっと湿り気を帯びた温かさ。良い匂い。背中に当たる柔らかいものは、きっと。きっと、先輩の。
……どうしよう。これは、不味すぎる。
この有り得ない状況に、身体が敏感に反応してしまう。
正確には、一部位が反応する。硬直していく。
でも当の本人は。
「いつも思うけどさ、背中向けて返事するのは良くないと思うよ。なるべくでいいから、ちゃんとこっち見なさいね」
まるで子供をたしなめる親のように、優しくそう言って。立ち去って、しまった。
残されたのは、混乱した俺と先輩の残り香だけ。
なんなんだ、一体。
背中を向けっぱなしなのが気に障ったというのは、俺が悪い事だけど。だからって、あんな。風呂上がりの状態で、あんな。
血が下半身に行っているせいか、いつにもまして頭が働かない。
男扱いされていないどころか、同世代とすら思われていないのか。先輩は俺を、小さい子だと思ってるんだろうか。
むしろ、本当にそうだったらいいのに。今の俺は高校生だから、欲望が猛ってきて堪ったもんじゃない。
「腹筋、しようかな……」
雑念どころか煩悩まみれ、果たして腹筋で振り払えるんだろうか。
それでも、しよう。少しでも気を紛らせないと、このまま風呂に行ったら先輩の妄想で動けなくなる。
堪えろ、俺。頑張れ、俺。
とりあえず風呂に入ってはいるけど、落ち着く筈がない。
うっかり溢したのか、先輩のボディーソープの匂いが今日に限って強く立ち込めている。
そのせいであの柔らかさを思い出してしまい、あちこちが硬直していく。ああ、男って面倒すぎる。
背中に感じた、あれはどう考えても。明らかに、先輩の。胸、バスト、――おっぱい。
うう、響きがもう恥ずかしい。ふにょんとした柔らかさと確かな重さ、あれは破壊力が高すぎる。あんなもん押し付けられたら、正気でいられる方がおかしい。
先輩をそんな対象にしちゃいけない、と分かってはいるんだ。でも、我慢にも限界はある。
先輩の部屋は、俺の部屋の隣。どちらもドアに鍵はない。
風呂上がりにやろうと思えば、色々出来てしまう距離。
「ああっ、もう……」
お湯のなかでも元気に自己主張する愚息を鎮めるべく、意識を集中させていく。
千夏先輩は、尊敬できる立派な人だ。俺の前で無防備なのは、それだけ信頼してくれているからだと思う。それを、裏切るわけにはいかない。
そうさ、先輩はリラックスしているからああなんだ。それはとても、良いことじゃないか。俺は先輩に伸び伸び生活して欲しいし、その方が部活にもいい影響を与えるに決まっている。それが一番だ、そうなってほしい。
俺が変なことさえ考えなければ、何の問題もないんだ。
湯槽に沈みながら、ぼんやりと思う。
上がったら、とっとと寝よう。煩悩は明日の朝練で汗にしてしまおう、気合いいれてバドに取り組もう。
そう、思っているのに。現実は、いつだって予想外だ。
「あ、お帰り大喜くん」
……部屋に戻ると、先輩がジャンプを読みながら転がっていた。いや、あんた何やってんだ。
そう言えば今週はまだジャンプを貸していなかった気がするけど、だからって。だからって、人の部屋でこんな。
どうしよう、勝手に入ってきたことをたしなめるべきか。それとも、せめて座らせるべきか。
あちこちチラチラ見えているし、すごく目の毒だ。わざとやってんじゃないか、この人。
「あー……先輩、貸しますから自分の部屋で読んでくださいよ……」
もし俺にお姉ちゃんがいたら、きっとこんな感じなんだろうな。部屋も二部屋あるわけだし、そんな家族計画もあったのかも。
まあ、気にするまい。平常心、平常心。
心の億に煩悩を押し込んで、平静を装おうとする俺。なのに先輩は。
「うりゃさー」
無邪気な顔で、抱きついてきた。今度は真正面から。
寝転がった所から飛び付いてきたから、当然ハグの位置も低い。と言うより、レスリングのタックルに近い。
よろけたところをなんとか踏みとどまるも、それは倒れるよりも危険だった。
そうなってみて、ようやく分かったのだ。
先輩の身体が、俺の腰辺りに突撃してきている。つまり、それは。
――とても良くない位置に、先輩の顔が来てしまう、という事。
「う、ぉあっ」
先輩の身体が、再び跳ねる。飛び退いたその顔は、困惑混じりというかなんというか。
「大喜くん、あの、……ごめん……」
「あ、いえ……えーと……」
ごめんはごめんだろうけど、こっちもごめんだ。
さっきまで悶々としていたのもあって、再び欲望が猛り出してしまう。
このまま寝るつもりだから薄着だし、下手をすると気付かれかねない。そうなったら、地獄絵図だ。
腰を引いてなんとか抑えようとするも、それが却ってよく無かった。
「あ、大丈夫? 私けっこう頭固いから、どっか怪我した?」
口より手が速い先輩は、そう言いながら。さっきぶつかった、俺の股間へと手を伸ばしてきたのだ。
頭が沸きそうな俺が、咄嗟に動ける筈もない。そのしなやかな指先は、阻まれることなく、俺に――触れてしまった。
「ん、……あ。あー……っ」
僅かな間を置いて、先輩の顔が真っ赤に染まる。
気まずそうにモゴモゴと言いながら手を引っ込める先輩を、俺は俯きながら呆然と見送るしかなかった。
最悪だ。最悪だ、最悪の中でも最悪だ。
先輩に、こんな。こんな、とんでもない事を、させてしまった。
全部俺が悪い、悪くなくても悪い。
恥ずかしい。消えてしまいたい。
「あ、あはは……。まあ、大喜くん男の子だもんねー……」
年上としての矜持なのか、場を取り繕おうとする先輩。でも、それがあまりにも辛い。
先輩を、こういう事に触れさせたくないのに。ひたすらに、夢を追って欲しいのに。
俺は最低すぎる。
千夏先輩だって、そう思っているだろう。
侮蔑と嘲笑を覚悟しながら、気分は御白州に上がった罪人のように沈んでいく。
でも。
やって来たのは、それではなかった。
先輩は、俺の頭をポフポフしながら、こう言ったのだ。
「大丈夫だよ。私はその程度で、大喜くんを嫌いになったりしないからね」
ハッと顔を上げた瞬間、視界が影に染まった。そして唇に感じた、柔らかく熱い何か。
瞳に入る光量が回復してようやく、何が起きたか把握できた。
視界が陰ったのは、先輩が目の前に来たから。あの熱さは、唇にキスされたから。
……なにもかも、有り得ない事。でも、これは現実だ。
「ちょっと、やりすぎたね。大喜くん可愛いからさ、ついついからかっちゃうんだよ」
悪戯っぽく笑うその顔は、どこか妖艶な空気を湛えている。
からかう。俺は、からかわれていたのか。
「もしかして大喜くん、私が素でああだと思ってたの?」
幾らなんでもあんなバカじゃないよ、とほっぺを膨らませて言う千夏先輩。
じゃあ、全部。俺をからかう為に、わざとやっていたのか。
そんなの、……そんなの。
「先輩、やっぱバカですよ……」
身体中に張り詰めていた何かが、急激に蕩けていく。
俺もバカだ、底無しのバカだ。
一個上の先輩だぞ、英明のスターだぞ。子供みたいに、無防備なわけがないじゃないか。子供みたいに、理由もなく人をからかうわけがないじゃないか。
そこにあるのは、無邪気な悪戯心なんかじゃない。
つまりは、もしかしたら――。
息を呑む音が、やけに大きい。それは、俺にとって夢のような話。でも、先輩はそういう人ではないとも思う。
思うけど、でも。
「大喜くんが、好きです。好きだから、からかいたくて仕方無かった。毎日、大喜くんで遊びたかった」
千夏先輩はアッサリと、言ってしまった。
そして、その手が俺へと向かう。
でも、それは、それは、本当に良いのだろうか。
「先輩は、だって……バスケ一筋で……」
「大喜くん、私をバスケする機械とでも思ってない? 私はバスケもするし大喜くんでも遊ぶし、由紀子さんにお料理も習うし学校の勉強もします。全部が全部、私です。何もかも、大事だからね」
ふと思い出したのは、針生先輩の言葉。バドも彼女もモンハンも全部大事、比べるものじゃない、と。
ああ、そうか。全部大事にして、全部残さず手にしようとする。それを為し遂げられるのが、こういう人たちなんだ。
そうだ、俺は先輩が好きだ。一面だけじゃなく、全てが好きだ。それと同じ、簡単なことなんだ。
俺は何処までも、大バカなんだな。いや先輩も大バカだけどさ。
大バカ二人、向かい合って。
「千夏先輩、好きです」
「うん、私も」
不格好な告白をしながら、抱き締めあう。何もかもがメチャクチャだけど、良いや。
だって、バカなんだから。
固く抱き合いながら、キスをする。こうやっていると、ついさっきまでの自分達が、はるか遠くなったように思ってしまう。
まるで将来を近いあった恋人同士のように。まるで仲の良い夫婦のように。一心不乱に、貪りあう。
箍が外れたように、どちらも止まらない。息をするのも忘れるほど、胸の鼓動が激しい。
酸欠で目の前が暗くなってようやく、唇同士が名残惜しげに離れていく。それでも、心は止まらない。
ベッドに倒れ込んだ所に、先輩がのし掛かってくる。受け止めるようにして、しっかりとそれを抱き締めた。
愛しい。欲しい。先輩を、愛したい。その感情は、決して止まらない。
先輩も、きっとそう思っているだろう。そう確信せずにいられない、好きだから。愛しているから。
そして、再び俺たちはキスをする。今度は軽く、囁くように。何度も、何度も。
しばらくそうしてから、どちらともなく自分の服に手を掛けだした。
そういうことを、する為に。なのに下着を脱ごうとしたときは、示し会わせたようにお互い動きが一瞬止まったのが、なんだか可笑しい。バカ同士だから、かな。やけに恥ずかしいけど、お互い様だ。
「あー……恥ずかしいね、これは」
「死ぬほど恥ずいです、先輩」
全裸のバカ二人、笑いあう。ああ、良いなぁ。スゴく好きだ。
「あのさ、大喜くん。ちょっと、ワガママ言って良いかな」
先輩は基本ワガママ放題だと思うけど、まあ良いや。「勿論ですよ」と笑って返すと先輩は、やっぱり笑ってキスしてくれた。
唇を離した先輩は、ベッドの上で四つん這いになりお尻を掲げる。あまりにも淫らで、でも美しいその姿。
これから、するんだ。先輩と、俺は。
「ね、お尻に……欲しいな」
「えあ、はいっ」
それはワガママでもなんでも無いような、とは言え本人が御望みなんだし喜んでしますとも。
そう思って、先輩のお尻にそっと触れていく。吸い付くような肌目の細かさと柔らかさ、心地良い以外の言葉が出てこない。
「ん、そうじゃなくて。……もっと、中の方」
でも先輩はそう言って自分の手で尻たぶを割拡げ、そこを俺に見せてきた。
「えとね、……こっちで、大喜くんにその……して欲しいなーって」
こっち。それはつまり。……そういう世界があるのは知っているけど、それは大分上級者向けではないでしょうか。
「大丈夫、ちゃんとお風呂で綺麗にしたから。ローションもあるし」
ああ、それでボディーソープ撒いたんですね先輩。完全に確信犯的な行動ですよね先輩。
でも凄く慣れてるんだな、この人は。
構わないけど、さ。先輩には先輩の歴史があるんだし。ちょっとだけ、悔しいけど。
でも、良いや。今の先輩は、俺を好きだと言ってくれたから。
先輩が過去にどんなプレイを経験していようとも、俺は――。
「たーいーきーくーん、今スゴく失礼な想像したでしょー」
明らかに、怒った声で。お尻をつき出したまま、呻くように先輩が不満げな声を投げ掛けてきた。
「私は誰ともなんの経験もないよ、ただ……怖いだけ」
格好は間抜けだけど、先輩の声音は真剣味を漂わせている。
「お尻だったら、慣らしておけば痛くないらしいから。それに赤ちゃんも出来ないし……さ」
そこまで聞いて、ようやく。ようやく俺は、自分のバカさ加減を思い知らされた。
先輩は、女子だから。受け入れる、側だから。怖くないわけがない。警戒しないわけがない。それでも先輩は、俺を愛そうとしてくれている。
そんなの、真っ先に考えるべき事じゃないか。俺は何処までも、バカ過ぎる。
「引退したら、その時はちゃんと……大喜くんにあげるから。だからそれまでは、こっちで……ね」
でも鈴の音みたいなその声が、へこみかけた俺を掬い上げてくれる。
先輩を、愛したい。心の底から、そう思う。
自分はもちろん他人のだって、目にする事はあり得ない場所。
そこを、言われるままに解していく。
先輩曰く普段から弄ってて、「お尻でするのけっこう好き」だとか。……壁一枚向こうでそんなことになっていたなんて、考えもしなかった。
「詳しいやり方はね、渚が教えてくれたんだよ。あの子こういう事やたら詳しいから」
「先輩、友達は選んでください」
うん、選んでください先輩。この間籠原の選手相手に怒ってた人だろうけど、何者だ渚さん。俺の先輩に変なことを吹き込まないで欲しいです、ええ。
ローションを塗り込むように弄っていくと、その下……先輩のその、「オンナノコ」からもトロトロと何かがこぼれ落ちていく。感じている、ということ。先輩は、気持ちよくなっている。
ついついそっちにも指を向かわせたくなるけど、じっと我慢。
先輩は、言ったから。引退したら、と。先輩との、約束だ。
だから今は、こっちに集中するんだ。
「あ、あー……っ、……ぁっ」
指が動く度に、先輩の口からは低めの喘ぎが溢れてくる。耳が犯されていく、そんな感覚。
俺の興奮も、天井を知らないほどに高まっている。このままだと、触れなくても出てしまうかもしれないくらいに。
それを察したように、先輩が囁いた。
「良いよ。……来て、大喜くん」
おっかなびっくり、慎重に。先輩へと、向かっていく。
弄り過ぎたのか僅かに開いたすぼまりに、ゆっくりと先をあてがい。
「ん、あ……」
輪を押し拡げるような感触と共に、少しずつ少しずつ先輩の中へと入っていく。
入り口がギチギチと締め上げるのとは逆に、内側は柔らかく俺を包み込んでくる。今まで感じたことの無い、不思議な快感。
程なく、俺の腰は先輩のお尻に密着した。根本まで、埋まりきったということ。全てを、先輩に捧げたということ。背筋がゾワゾワと粟立ち、身体が燃えるように熱い。繋がっている事実そのものが、狂いそうなほどに気持ちいい。
それでも、もっと先に進みたくて。先輩を傷つけないようにしながらも、俺は腰を動かしていく。
「お"、あぁっ、ぃう……っ」
先輩の喘ぎは低く太くなり、俺の動きに合わせて漏れ出てくる。先輩も感じてくれている、それが嬉しくて仕方ない。
もっと、もっと、もっと。先輩を、深く深く愛したい。
しかし身体が、その思いより先に限界へと達してしまう。
「先、輩……っ、もう……出ま……すっ」
「い…い"よ、来て、大喜く、ん!」
その一言が、すべての枷を吹き飛ばした。
強烈な締め付けさえ跳ね除ける、凄まじい脈動。尿道を精液が駆け抜けていく、魂まで放出してしまうような射精感。先輩の中に、自分の意思を撃ち込むという背徳感。何もかもが混ざりあい、意識がマーブル模様に蕩けていくのが分かる。
二人繋がったまま、ガクガクと痙攣しながら。俺たちは、静かに崩れ落ちていった。
先輩と同居が始まって、二度目の夏が過ぎた。
三年になり部長としてバスケ部をインターハイに導いた千夏先輩は、全国制覇を成し遂げ誇り高くコートを出たのだ。
母娘二代の夢を果たし、そして新しい夢を見出だした。
「大喜、結婚しようよ」
ベッドに向かうその直前、そう言って先輩は微笑んだ。
「大喜の赤ちゃん欲しい、大喜と一生一緒にいたい。大喜の全部が、欲しい」
真剣な眼差しで、でも言ってることはワガママ全開。
そんなワガママ放題な先輩に、俺も微笑みを返す。
「勿論です、愛してます」
この先に何があろうとも、それは絶対に変わらない。
死が二人を別とうとも、絶対に。
その思いだけを胸に、先輩と抱き合いながらベッドに倒れ込んだ。
何度交わそうと飽きることの無い、キス。キス。キス。
あれから何度、夜を重ねただろう。
ずっとずっと、愛が止まらない。
加速し続けて、収まる事を知らない。
もっと、愛したい。それはきっと、先輩も同じ。
僅かに不安げな顔はしたけれど、それでも。笑って、脚を拡げてくれた。
匂い立つ、その場所。先輩の、オンナノコ。
「大喜、良いよ。ここに、来て」
濡れた肉の裂け目は、誘うように蠢いて見える。
先輩と俺の、約束。それが、今日ここで。果たされる。
「先輩、好きです。愛してます。一生、俺と一緒にいてください」
胸の奥から溢れた思いを、力一杯ぶつけながら。俺は先輩と、繋がった。
感触は勿論お尻とは違うけれど、でも狂おしいほどに気持ちいいのは同じだ。いや、先輩は全身すべて気持ちいい。
先輩も先輩で入ったその瞬間は顔を強張らせたけれど、すぐにいつものように声を漏らし出した。
先輩の癖も仕草も、分かっている。本気で感じるとどうなるか、知っている。今の先輩は、俺と同じくらい高まっているんだ。
一心不乱に、お互い腰が止まらない。快感に勝てない、勝つ気がしない。ただ、お互いに溺れあうだけ。
先輩を突き上げながら、ふと悪戯心が芽生えてきた。この状態で、こっちも弄ったらどうなるんだろう、と。
好奇心は猫を殺すというけど、構うもんか。俺は物欲しげにしている先輩のお尻を、不意打ちでまさぐってしまった。
「あ"、ダメ、一緒ダメ、いぎ……っ!!」
瞬間、先輩の身体が大きく跳ね上がる。そしてその締め付けも千切れんばかりに強まり、全力で俺を押し潰しに来た。
不味い、これは不味い。耐えきれるわけが、ない。
ドクンと拍動が全身を貫いて、衝動が放出される。先輩のお願い事に、答えようと。先輩を、妊娠させようと。精液が、迸っていく。
「ああ、あ、あー……」
腰が砕けそうになりながらの射精は、死ぬほど気持ちいい。
快感の余韻が込み上げて、止まらない。
繋がったまま、二人揃ってしばらく惚けて。
もう一回したいな、と思い始めた頃だった。
ぺちん。そんな音を立てて、先輩の手が俺の頭を叩いたのだ。
「……大喜、ひどい。不意打ちとか、ひどい」
ぷーっとほっぺを膨らませて、拗ねたように。先輩は、俺をぺちぺちと叩き続ける。
「あ、はい……。すいません……」
まあ、確かに。あれは俺が悪いか。
「私は機嫌を損ねました、キスしてくれなきゃ治りませんー」
ぷっくり膨れっ面の先輩は、可愛いけど。でもまあご機嫌ななめなままじゃ、困ってしまうかな。
まあるいほっぺに手を添えて、先輩と唇を重ねあう。
きっと俺たちは、この先もこうなんだろう。
ケンカしたりすれ違ったりして、でもお互いを大好きだからすぐ元通りになって。
ずっとずっと、こうやって行くんだろう。
ああ、幸せだな。俺たちは、幸せだ。