最近みんな色気付いて、なんだろうな。ちーちゃんといのたが付き合いだしたし、お姉たちはまあ相変わらずとしても菖蒲の周りは交際ラッシュ。しかしまさか、雛っちがあの後輩とくっつくなんてね。てっきり陰険メガネとフラグ立ってるもんだと思ってた、まああれは幼馴染みと寄りを戻したそうだけど。
菖蒲には関係ないと言えば関係ない話だし、別に良いんだけどさ。良いんだけどね、うん。
なんとなくモヤモヤしてしまうのは、なんなんだろう。こんな風に思うなんて、菖蒲らしくないのに。
菖蒲は男の子に好かれて、女の子に嫌われてきた。皆と
菖蒲は可愛いから、男の子たちは菖蒲と
……でもそれが普通だと思ってたんだけど、なぁ……。
最初は確か、小四の時。担任の先生が菖蒲を可愛い可愛い言ってくれて、時々学校が終わってからも遊びに連れていってくれるようになって。頼めば何でも買ってくれるし遅刻とかテストの点なんかも誤魔化してくれるし、菖蒲が可愛いから贔屓してくれてるんだろうなーとか思い始めた頃だった。日曜日に呼び出されて、知らない場所へ二人で行って。そこが所謂ラブホテルだと知ったのは、全部終わってからだ。
うちはパパいないから男の人のはだかなんて見たことなかったけど、でも怖いとは思わなかった。綺麗だね可愛いねって言われるのがうれしくて、恐怖も恥ずかしさもどっかへ行ってしまったし。
シャワーを浴びてベッドに転がると、菖蒲の脚を拡げて先生の顔がそこへと潜り込んできた。まるでミルクを舐めるワンちゃんみたいで、大人なのに可愛いなって思ったりしたようなそうでもないような。まあでも、先生が夢中になって菖蒲の身体を舐めていると言うのはなんか不思議な気がしたのは確かだ。
そして、そして。息も荒くのし掛かってくる先生が少しだけ怖く思えたのも一瞬だけ、わずかに走る痛みも一瞬だけ。気が付けば串刺しにされるような感じになっていて、お腹の一番奥がグリグリと押し潰されていく事だけが分かった。普段は意識さえしていない部分が異物に突き乱されるのは、なんだか落ち着かない。だけど当の先生は心底気持ち良さそうにしてるから、どうも口を挟めない。
鏡張りの壁に映る必死でヘコヘコと腰を振る先生の姿が、なんだかとても滑稽だったのを覚えている。
気持ちいいかって言ったらそこまでじゃないし、こんなの早く終わらせて他の所で遊びたかったけど、でも先生は凄く楽しそうだったから菖蒲は黙ってたんだ。んでもって何回か菖蒲の中で射精して力を使い果たしたんだろう、その日はお小遣いだけ貰って駅で別れた。昼過ぎに放り出されて後は暇をもて余す羽目になった菖蒲の事も考えてほしかったな、うん。
あれから月に何度か同じような事はしたけれど、段々御呼びがかからなくなってそのまま自然消滅。今でも生徒を引っ掛けてるんじゃないかな、捕まってなければ。そういや中学上がってからはやたら男の子に声かけられるようになったんだよね。もしかしたら色々バレてたのかもしれない、先生大丈夫かな。
――良いんだけどさ、それはそれで。
中学でも菖蒲は可愛くて綺麗だからモテちゃって、男の子は選び放題。カッコいい子も優しい子も、みんな菖蒲が大好き。……その筈だったのだけれど、どうも違うかもしれないと気が付いたのは二年の中頃。クラスの結構良い感じの男の子と仲良くなって、えっちな事がしたいと頼まれた時だ。
うんいいよーと行きつけになっていたホテルへと手を繋いで出かけ、まだキスもしたこと無いって言う彼をはだかに剥いてベッドへと座らせて。真っ赤になって顔は隠しているけど、屹立するオトコノコは期待にうち震えていた。
そこへと小さくキスを落とし、舌先で穴をなぶりながら竿をゆっくりとしごいていく。ツンとくる生臭い牡の匂いを感じながら先走りを舐め取っていくと、程無く根本がピクピクと震え始める。
「ん、良いよ。このまま出しちゃおっか」
れろっと舌を絡めて一気に全体を呑み込み、頬をすぼめて吸い上げると――すぐにそれは訪れた。
ドクンドクンと脈打ちながら放たれる熱い精液を胃の腑へと送り込みながら、菖蒲は舌を止めない。濃厚で量も多いし、きっと相当オナ禁したんだろう。無駄にしたら可哀想だ、一滴残らず飲んであげないと。その頃の菖蒲は、いつだってそんな使命感みたいなのを持っていたのだ。
拍動が収まってもまだ天井を向いて直下たつオトコノコを指で弄び、その合間に潤滑ローションを自分のオンナノコへと注いでいく。今回は童貞を食べてあげるのが目的だし、ここで時間かけて萎えても申し訳無い。最初の一回は受け身で良いんだ、頑張るのは次以降。まずは気持ちよさを知ってもらおう。
向かい合って微笑みながら腰を沈めていくと、すぐに硬い肉が菖蒲の内側を抉りだす。それを楽しみながら身体を上下に揺さぶり、お腹の奥でオトコノコを愛撫していくのだ。
しかし誰かと繋がっている、というのは何度しても不思議な感じがする。もっともっと長く続けていたら、その不思議さも解けそうなのだけれど――なかなかそうもいかない。
彼が上げる激しい喘ぎは、限界が近い徴。もう何分も持たないだろう、ならまあそれで良い。
誰だって、最初は初心者なのだから。
身体の内側で噴き上がる精液の濁流に身を任せながら思ったのは、そんな事だったと記憶している。
顔も悪くないし身体の相性もそこそこだったけど、彼と付き合ったりはしなかった。と言うか終わったあとで向こうが『お陰で自身が付きました、今度好きな人に告白します』、なんて言ってきたんだよねぇ……。頑張りなよーくらいは言ってあげたけど、そこで菖蒲は気が付いたのだ。
菖蒲、好きって言われたこと無い。
可愛いも綺麗もヤりたいもヤらせてもいっぱい言われたけれど、菖蒲を好きになってはくれていない。好きだと言われて付き合うなんて、遠い世界の話でしかなかった。皆菖蒲を抱きたがる、それは良いことだと思ってきた。
でもなんか違うんじゃないかな、えっち以外にも色々する方が普通なんじゃないかな。お姉と健吾は結構長く付き合ってもキスさえしてない、でも幸せそうにしてる。むしろ早々にえっちするのって、良くないのかも。
それに女の子からの嫌われ方が尋常じゃないと言うか、もう汚物呼ばわりだし。菖蒲だって相手は選ぶし色々考えてるのに、気軽な童貞捨て場だのチェリーバスターだのと蔑まれて正直キツい。
だから高校生になってからは身を慎むようになったけど、今までの事があってめんどくさくなった菖蒲は栄明へと転校した。ここは前の学校からは遠いし、ちーちゃんもいるしね。
今はもう女の子の友達も出来たし、校内での評判も悪くない。告って来る子はいるし付き合いもするけど、それは「好き」から始まる健全なもの。お別れの時だって、ちゃんと
――筈なんだけど、なあ。
別にあのメガネがどうなろうと知らないし雛っちが立ち直るのは歓迎する、でもどうしてこうも違和感があるのだろう。何処かでボタンがかけ違ったような、痛みの無い致命傷を受けてしまったような。薄甘く粘っこい奇妙な感覚が、いつまでもまとわりついてくる。
まさか菖蒲が陰険メガネを好きになりかけていたとか、そんなのは有り得ない。バレンタインの時のは只の気の迷い、関係ない。そうでなければ菖蒲らしくない、全くもってらしくない。そもそも遊佐くんがいるんだし、あんなのを好きになるわけ無いんだ。
なんて思いはすれど、悩みはすれど。好きですと言われたら付き合うのが菖蒲なんだし、そもそもえっち自体も好き。だからこそ今日も今日とて男の子と遊んでいる訳だけれど、ちょっとだけ困っている。
どうも今一緒にいる伊藤くん、雛っちが好きらしいのだ。いのたが好きだった頃の雛っちに声かけてうまくいかなかったけど、いのたがちーちゃんとくっついた今ならイケるかもしれない、自信つけたいから相手してくださいと真剣な顔で頼んできた。
昔の菖蒲ならその日の内に跨がっちゃうんだけど、なんだか今はそんな気分になれずにいる。まあ伊藤くん的にはデートの練習みたいな感じらしくて、なんか機嫌良いけどさ。
どうしようか、な。こういうの良くないよ、と言えるほどの純情が菖蒲に残ってるわけ無いし、ズルズル押されるままなのもそれはそれで楽だし。とりあえずこのまま暫く一緒にいても良いか、めんどくさい。考えるのは好きじゃないし苦手なんだ、どうせすぐ嫌になる。こうやってる事自体、菖蒲らしくない。
楽に楽に適当に、渡る世間はチョロかった。それが一番なのに、余計な事ばかり考えている。ああ――まったく、らしくないったら。