どうも思ったのと違う、果たして世間的にこれって
周囲からは恋人って言うより舎弟と言うか、なんだかガキ大将と子分みたいな関係に見えているようだ。まあそりゃバスケ始める前の私は天才的なセンスとフィジカルを持て余す、どっからどうみても普通のクソガキだったけどさ。当時は喧嘩でもなんでも男子相手にさえ負けた事無かったし、バカ共をアゴで使っていたっけ。
上には上がいると思い知って、上へと行きたくなって。クソガキは卒業し、バスケに全てを賭けて戦いに出た。しかしそれも中学になると通じなくなり、情熱も枯れ果て親の都合で栄明を去ったのがもう二年も前。やさぐれきった私は新しい環境でもろくでなしで居続けたけど、まさかそれを好きになってくれる男がいるなんてね。
別にこっちから頭を下げた訳じゃない、自分から地獄に突っ込んできたんだからせいぜい振り回してやろう。……なんて、思ってきたのだけれど。
もしかしたら振り回されているのは、私の方なのかもしれない。
女子女子した格好は似合わないと親に言われてきたし自分でもそう思ってきたから、制服以外でスカートなんかまず穿かなかった。でも宗介のバカが「夢佳は脚綺麗だし背も高いからスカートの方が美人に見えるよ」なんて言いやがって、初めてのデー……お出掛けの時渋々穿いて待ち合わせに行ったら本気で喜んでくれたんだよなぁ。バスケで挫折して以来誉められる事も無かった身としては、恥ずかしいけど嬉しかった。
ただ、なあ。クソ寒い時期にニーハイでミニスカート穿いて欲しいと言ってきた時は、教室だけどさすがに殴ろうかと思ったよ。たまに人目のあるとこでひっぱたかないと、すーぐ調子に乗りやがる。そういう所が困るんだよ、あの変態メガネ。
――最初からずっと、そうなんだ。
付き合い出して半年、秋の風が吹き始めた日。私たちは初めてのキスをし、また明日と手を振って家路に着いた。
宗介の前では意地でも取り乱したくなくて我慢したけど、頭から蒸気噴きそうなくらいテンパってたな。帰宅後も母さんの顔さえ見られないくらい、酷く興奮していた。ゴツゴツした肌、僅かにかさつく唇。伝わってきた体温が、脳を焼き続ける。
ああ、もう。らしくねぇな、こんなの。向かうところ敵無しの天才様だった時期もあるんだぞ、もっと落ち着け私。そう念じながら一晩中転がっていたっけ。そのせいで母さんも色々察したらしく『あんたがそんな女子みたいな顔するなんて』、とニヤニヤしてたな。あんたの股から出てきた瞬間から女子だよ、あのニヤケ面思い出すと腹立ってなあ。それにキスは「ゴール」じゃない、この先まだまだ色々と起こる。頭ではそう知ってもまだ、当時の私は油断していた。どうせずっと先の話だ、と。
……まさかキスしたその翌週、一泊するとは思わなんだ。いや早ぇよ、今思い返しても早ぇよ。尻が軽すぎるだろお互い。
遊び行こうにも地元だと知り合い多くて面倒なんだよ私はさ、と渋る私に『じゃあどっか遠く行こうよ』と笑った宗介。いやそこまでは良いんだ、でもなんで泊まりなんだよカップルだぞ気まずいぞ。……まあ、正確に言えば日帰りにしなかったのは私のせいなんだけどさ。どうせ日和るだろ、なんて『なら泊まりがけにするか』と軽く提案したのは確かに私だ。でもそこは拒めよ宗介、お前メガネなんだから常識を振りかざせや。それどころか真っ赤になって黙りやがって、否定しないからそのまま話が進んだんだぞ。
後悔はしないけど、さ。
ビジネスホテルのツインルーム、宿代は勿論折半。ベッドに腰かけて私たちは、付けっぱなしのテレビをBGVにして黙りこくる。
……私たちは付き合っている、同意の上でこうしている。ここから起きる全てが、そのつもり。なんだけど、なあ。
さっきからモジモジしやがって、生娘かよ。いや生娘は私だ、落ち着け。
「あー……、シャワー浴びっか?」
我ながらガラッパチではあるが、こっちから動かないとどうにもならない。受け身はダメだ、うん。
顔を赤らめて頷く宗介の手を取り、私は立ち上がる。こういうのって普通逆じゃないかな、なんて思いながら。……男子がリードするもんじゃないのか、まったくさ。
背中を向けあって服を脱ぐのは、まるで学校の更衣室のよう。漫画なんかだと下着のままワイワイ喋ってたり平気で肌をさらしあうけど、私はそういうのが苦手だ。身体を見られるのも見るのも気恥ずかしい、黙々と着替えるのがずっと習慣になっている。そもそも友達いないし。
でも、だ。そんな私でさえ、どうにも沈黙が気に障る。何か言って空気を動かさないと、このままだとなんとなく気分が良くない。
ブラのホックをはずそうと手を背中に向けた辺りで、ふと悪知恵が頭をもたげる。そうだ、宗介をからかってやろう。そうすれば気も晴れる、私のペースになる。
そうと決まれば、だ。
「宗介ー、……背中のホック外してよ」
「えっ!? あ、……う、うん」
ビクンと宗介の身体が跳ね上がる気配に、私は内心ほくそえむ。思った通りの反応だ、動揺しまくってら。ここからもっと振り回して、主導権を握ってやろう。いつも通り、私が主役なんだから。
背中におっかなびっくりの手付きを感じる事数十秒。不器用な奴め、とにやけそうになって漸く、大して大きくもない胸がブラから解放された。……いや、された筈だった。
「ん?」
支えを失った筈の胸はまだ持ち上がったまま、いやでもさっきとは明らかに異なる点がある。私の胸はブラではなく、
それが宗介の手だと気付き、一気に頭に血が昇る。しかし振り返ろうにもそうはいかない、だって――
息も荒く体を擦り付けてくる宗介、布越しにも感じる凄まじい熱。それが私の身体も熱くし、内側からなにかが溢れ出していく。きっとこのショーツはもうダメだ、さようなら。
「お、い……っ、
漏れ出た声は信じられないほどに甘ったるく、そして熱を孕んでいる。宗介もそう思ったんだろう、擦り付ける速度はどんどん上がっていく。
粘りけのある摩擦音はでも、数分の後にピタリと止む。その瞬間摩擦の代わりに来たのは、熱い熱い迸り。
こいつ射精したのか、と察する暇さえ与えては貰えなかった。
そのままベッドへと俯せに倒されショーツの感触は消えて、……何か大きなものが足の間に入り込んだ。その質量、毛の感じ。きっとこれは、……人の頭だ。宗介が私の股へ、頭を突っ込んだのだ。身体の一番汚いであろう場所に顔を埋めて、宗介は何がしたいんだ変態メガネ。
蹴りでも入れてやろうにも股の間ではそうもいかない、なら太股で潰してやろうか――と思いはすれど実行には移せない。だって宗介と来たら、宗介と来たら。
「ど、どこ舐めてやが……るっ」
私の股を、舌で攻め始めたのだ。
指さえマトモに入れたことの無い場所を、掘削されていく。別の生き物のように蠢く舌が、股座をはい回る。前も後ろも、お構いなしに。
「あ、……っ、や……っ」
普段のオナニーではゾワゾワと少しずつ上がっていく快感が、凄まじい勢いで襲ってくる。頭の芯が痺れて、もう視界さえ揺らいでいく。
これは、不味い奴だ。宗介にされるがままじゃ、格好がつかない。
必死で意識を保とうと努力していた時、不意に股座を舐め続ける感触が止まった。そして、……そして。
「うぁ、――っ」
一際熱く長大な何かが、一撃の下に私を貫く。これが何なのか、なんて考える必要さえ無い。宗介が、私の中へと入ってきた。私たちは――
痛みより愛しさが込み上げるとか大きい方が気持ちいいとか、そんなのは嘘っぱちだ。普段閉じているところを抉じ開けるんだ、痛いに決まってる。でもその痛みに浸る余裕もなく、ゴリゴリと内壁が削られていくのが分かる。そのストローク毎に正体不明の快感が吹き上がり、痛みを覆い隠してしまう。
ああ、畜生。こんなのレイプと変わんないんじゃないか、変態め。興奮しやがって、こんにゃろう。
宗介も宗介で獣のように腰を振るばかり、さっきまでのオドオドは何処行ったんだ。こっちが主導権を握るのが私たちの関係だろ、空気読めよドスケベメガネ。
悪態は口から出ていかず、出るのは切れ切れの喘ぎばかり。ああ、もう。……らしくねぇな、こんなのは。まあいいや、好きにしろ。
枕を掻き抱いて口を塞ぎ、私はされるに任せていく。終わったら殴ってやろう、と思いながら。
あんにゃろが正気に立ち返ったのは、そこから一時間くらい後だった。勿論ちゃんと殴り飛ばした、壊す気か淫乱メガネ!と怒鳴り付けつつ蹴りも入れてやった。ったくあのまま何度も膣内射精しやがって、私はオナホかよ。元々体格のせいか不順で生理は来たり来なかったりするんだから、しばらく不安だったんだぞ。それに「拭く前に、拡げて中を見せて」なんて言うし。内臓だぞ内蔵、そんなもん見たがるなや。
まあ、……見せてやったけどさ。私の側からはどうなってるのか見えやしないけど、宗介はスゴい興奮してたな。興奮しすぎて、アレを扱き始めるくらい。え、と驚く暇もなく、宗介の手は加速していった。あんなに擦って痛くないのか、なんて心配してしまう程に。
まあそれはともかく、ともかくさあ。そのまま私の股目掛けて射精するのはどうなんだよ、変態メガネめ。だめ押しで妊娠してたらどうする気だったんだか。
味をしめたのか、毎回毎回変な注文をしてきやがるし。全裸のまま顔に乗ってくれとか、穿いてたショーツ被せてしごいてくれだとか、そんなのばっかりだ。私は比較対照がないからよく分かんないままだったんだが、ナツの話聞くと宗介は相当な変態みたいだ。……ナツはナツで『大喜くんがいつまで経っても手を出してこないから、寝てる隙に跨がってみた』なんて言い出す女だけどさ。あのチキンタツタ野郎も苦労してんだな、うん。
こないだ母子手帳の写真送ってきやがったけど、ちゃんと報連相したんだろうか。腹が膨れてから周囲に打ち明けてもおかしかないな、あのバカは。
……私はまた、ナツに先を越されたのか。でもなー、妊娠って大変らしいし出産めっちゃ痛いらしいしなあ。私はさすがに遠慮しとこう。
さて今週末もお泊まりだ、今度こそ私がイニシアティブを握り通す。てかそうでないと、なんか納得いかない。私は天才で無敵で、最強なのだから。