実を言えば我慢をするのは苦手な方だ、忍耐力なんてのは備わってない。ただ愚直に進んできただけ、習慣を守っただけ。その結果として、栄明女子バスケ部のリーダーになれた。そんなものだ、特別な力なんか有るものか。前にしか進めない、ただ突っ込むだけの人間なんだから。
だから私は、いつだって直進だ。遮る全ては殴り飛ばし蹴り飛ばし、力尽くで道を切り開く。
文句があるなら世界を率いて挑んでくれば良い、私は負けないけどさ。
大喜くんにも考えはあるんだろうけど、それを考えてあげられる程私は頭が良くないんだ。
馴れない我慢はもうお仕舞い、ここで一気に進んでしまおう。ベッドへと大喜くんを組み倒し、そう決意をあらたにする。いつだって大事なのは勢いとノリとパワーだ、どうにかなるさ。
時間をずらして戻ろうと提案して、大喜くんが先に浜を離れるのを見届けて数分。岩に腰掛けて思うのは一つ、惜しかったなという事。
大喜くんはきっと、気付かなかったのだろう。これが水着でなく、下着だと。まあ男子にその辺は区別出来ないか、見慣れてる訳じゃないから。それに私は『水着』と言ったし、大喜くんはそもそも直視出来なかったようだし。
全く可愛いなぁ、可愛いねぇ。可愛くてそして、……なかなかに大胆だ。大喜くんの唇が触れた左頬を撫でながら、そんな風に思ってみる。まさか不意討ちでああ来るとは、そりゃキスしたいとこっちが言ったけどさ。言ったけど、これは流石に驚いた。とは言え付き合いだして七ヶ月を越えたんだ、そうなってもおかしくない処か遅いくらいか。
……付き合う前から思っていた、大喜くんに触れたいと。でもいざ隣にいると怯んでしまう、どうにも度胸が足りない。それに大喜くんは居候先の子で、私には果たすべき夢がある。我慢しないといけないんだけど、なぁ……。
ああ
こうして一人になると汗顔の至りだけれども、顔が火照るのはそれだけじゃない。明らかに身体が
どうしよう、かな。どうせ誰もいないんだ、ここで――オナニーしてしまおうか。宿に戻ってから、なんてのは絶対無理だ。そりゃ修学旅行や合宿で雑魚寝してる中でもこっそりオナニーする子はいるけど、さすがに部長だしなあ……。とは言えここまでしておいて、帰るまで我慢できる訳がない。
ここでして戻る、というのも……うーん。よもや渚たちが覗きに来てたりはしないだろう、しかし私は立場がなあ。
ああ、我慢するのは辛いものだ。早く大喜くんが男を魅せてくれないかな、本当に。
あれからもう何ヵ月も過ぎた、ウインターカップも終わったのに。私たちと来たら、いまだにキスが精一杯。大喜くんは誠実で真面目だから仕方がないんだろうけど、でももうちょっと考えてほしい。となりの部屋で寝起きしてて、手も触れないとか逆に失礼だとは思わないんだろうか。そこまで奥手ならこっちが動く他無いな、と思ったのがついさっき。
本日は付き合いだしてから丸一年の記念すべき日、関係を進めるにはちょうど良い。それに由紀子さんたちは年始回りで明日の午後まで帰らない、タイミング最高。
躊躇う理由など、もう何処にもない。
ギシリとベッドを軋ませてキスを交わし、私は大喜くんを見据える。怯えた様子はわずかにあれど、抵抗する感じは見られない。覚悟はしていたのだろう、いずれは来ると。……うんまあ、何度も襲いかけてるしね。その度にウインターカップや夢佳との決着をネタにされてきたけど、あれこれの蟠りは既に解決した。私はもう、止まらない。
唇を再び合わせ、そのままゆっくり肌の上を滑り降りていく。
舌先に感じる大喜くんの熱を味わいながら、乳首をかすめ臍をなぞってそして。……その下へと、私は顔を落としていくのだ。
ムッとくる牡臭さとでも言うべきなのだろうか、そんなものが鼻を突く。尚も私はその根元目掛けて手を伸ばす。勿論生で見た事など有るわけもない、自分には存在しない器官へと。
「わ。あー……こうなるのかぁ……」
大喜くんのその――オトコノコは、まるで一つの武器のように聳えて見える。これがもし愛しい人のものでなければ、怖じ気づく処か嫌悪感さえ抱いただろう。しかしこれは、大喜くんの一部なのだ。
参考資料にした動画ではモザイクまみれだったから良く分からなかったけど、とりあえずはその真似をして手で擦ってみる。手コキとか言うそうだ、男子のオナニーもこうするらしい。
力加減が下手な私の事だからうまくいかないかもだけど、でもまあ大喜くんは荒い息を吐いているから気持ち良いんだろう多分。
――と。不意に大喜くんの腰がガクガクと揺れ、何事かと思わず手を離してしまった私の顔へと、
「あ、あ。ん……っ」
……大量の生臭い半固形をした白濁液が迸っていく。あぁそうか、これが射精か。こんな感じで、しかも塊に近い濃度なんだな。
私の手で気持ち良くなってくれた、それが何よりも嬉しい。
口の端に付いたのを舐めとると、それは苦くて熱い。そして口が内側から腐るかと思うくらいにすえた臭いが込み上げてきて、どういう訳か身体が興奮に包まれていくのが分かる。
そうだ、私はこれを求めている。
ならどうするか、そんなのは考えるまでもない。
「大喜くん、……良いよね。私もう、我慢の限界なんだ」
ベッドで仰向けになった大喜くんを跨ぎ、ゆっくりと腰を落としていく。上から下へのベクトルなら間違えようがないし、大喜くん主動にすると日和りかねない。どうしても今ここで繋がりたいから、私が跨がる事にしたんだ。
粘膜が接触し、骨盤がミシリと音を立てた――気がする。最初は痛いと聞いていたけど、特にそれは感じられない。来るのは異物が入ってくる事への混乱と、それを上回る凄まじい熱量だ。
「あ、……重くない? 私そこそこ肉付き良いから……」
実際数字だけ見ると、そこそこ処じゃないんだけどね。鍛えてる分筋肉で重いのよ、結構。
ふるふると首を振って応える大喜くんを見下ろしながら、フルスクワットの要領で私は腰を振り始める。動画を見た限りではこれで良いはずなんだけど、どうなんだろう。
まあ良いか、大丈夫大丈夫。私たちなんだから。
しかしこれは、思ったよりも大分良いな。腰を上げると中がゴリゴリ削られ、一気に降りるとお腹の一番奥が押し上げられる。オナニーとは全然違う、別種の快感が心地良い。一人だと少しずつ色付き開いていく花が、二人だと蕾のまま大きくなっていく。きっとこれが開花した瞬間は、途方もなく気持ちいいのだろう。
そこへと至りたい、でも一人で至っても仕方がないな。大喜くんと一緒に、可能な限り近く寄り添うようにしてイキたいな。
なんて思ったせいだろうか、大喜くんは再び身体を震わせた。ドクンドクンと私のなかで濁流が放たれ、粘膜が焼かれそれがまた快感の燃料になり、頭の芯が煮えていく。
なるほど、なるほど。膣内で射精されると、こうなるのか。そりゃあ人類70億にもなる、こんなの癖になって当然だもの。
しかし、だけど。だけどまだ、終わってもらっては困るな。
射精し終えた大喜くんを追い立てるように腰を振り、私は舌なめずりを一つ。
「大喜くん、もっとしようよ。何回でも何十回でも、さ」
寝起きで目が開かない、というのはいつ以来だろうか。元気なときはたんと食ってたんと寝ろ、そうでないならもっと食ってもっと寝ろ、が信条の私がこうも消耗するとは。
いや――……疲れた疲れた。大喜くんの部屋は持ち主同様に汚れはてている、これはさすがに色々手伝わないとだな。原因はほぼ私だ、あの後どれくらい暴れまわったか。
ベッドもシーツ代えるくらいじゃ済むまい、最悪マットレスまで交換だ。他人の家でよくもまあ、と我ながら呆れるな。……こっちに来る前、どうせ処分するんだからと丸一日部屋でオナニーし続けた事もあったけど、その時もこんなだったっけ。家族はとっくに海外へ出て私一人だから、と全力でやりまくったんだよね。捨てる予定だとは言え汗と潮でドロドロのベッドを放置したまま家を出たけど、あれどうなったのやら。処分業者も困ったろうな、あんなもの。
冬の遅い夜明けもとっくに過ぎているのに、大喜くんは起きる気配がない。疲れたのは向こうも同じ、か。
名実ともに大人になって迎える朝は、気だるいけど何処か晴れやかに思える。
さて、もうちょっとしたら大喜くんを起こそう。二人でお風呂に入って、それから片付けだ。
由紀子さんにはどう言おうかな、あの人結構鋭いから気が付くかも。まあその時はその時、どうにかするさ。
そして時間は過ぎていき、夏を迎えた時分。大学進学で猪股家を離れた私は、大きいお腹を揺らしながら陽炎立つ街を歩いている。
うう、バス待てば良かった。只でさえ長時間歩くのは辛いのに、この暑さだからなぁ。
でも今日は大喜くん最後のインターハイ、応援にいかないわけにもいくまい。久し振りだしね、うん。
あの後目を覚ました大喜くんに、節度を弁えましょうと正座で御説教されたのだ。……確かに、抵抗しないのを良いことに好き放題したからなぁ……。お互いちゃんとしないといけません、なんて言われては打つ手も上げる手もない。そこからは高校生らしい清いお付き合いをしつつ、栄明卒業を機に一旦距離を置いた。互いの人生を大事にするために、目指すもののために。
私だって高校三年生がどれくらい忙しいかは実感として知っている、欲望のままに過ごしたらなにもかも破綻してしまう。だからせめて新生活が落ち着くまで、夏が終わるまでは我慢しましょうね、という話になったのだ。
私は気を許すと過剰に寄り掛かってしまう悪癖がある、夢佳の時もそうだった。大事な人だからこそ半歩離れよう、同じ方向へと進めばそれで良い。
ちょこちょこと連絡はするけど、顔を合わせるのは春以来。
だから大喜くんは、知らないのだ。私たちの赤ちゃんが秋には産まれる事も、なんなら妊娠している事自体さえも。……サプライズというか言い出す口実が無かったというか。幸いなのかどうなのかわからないけど悪阻は殆ど無かったし、食欲もいつも以上にあったから卒業まで見た目は健康そのものだった。もうちょっと体調崩すとかしてくれたら、なんてのは贅沢な話だな
まあ久々の逢瀬にちょっとしたアクセントを添えると思えば良いだろう、そもそもの原因はあの一晩で当たるほど大喜くんの遺伝子がワンパクだったからだ。私が悪いのも認めるけど責められては困る。
しかし果たして大喜くんは、何処まで勝ち進めるんだろうかな。目指せ全国制覇とは言ってたけど、全国の壁は何処の競技でも厚い。私の愛で背中を押してあげても、越えられるか否か。
まあ、大喜くんならやってくれるかな。だって私が好きになった人なんだから。
さあ――そろそろ会場だ、元気を出して応援しよう。