※この作品はR-18です。

アオの夜R18SS   作:扇町グロシア

68 / 109
最近あまり書いていない、バッドエンドSSを三本ほど纏めました。
かつてはこんな風なのも書いてたんだな、と御笑読下されば幸いです。
ええまあ、今書いてるのが進まないというのもあります。



初期闇落ち系詰め合わせバリューパック  (千夏×大喜)

 その花はアオく(2021/10/22)

 

 まったく、大喜くんは可愛い。

 そう、可愛い。あんまり可愛くて、からかいたくて仕方がない。

 ほんの少し肌を見せるともう真っ赤になるし、ちょっと近づいて話しただけでアウアウしてしまう。あんなに可愛い男子もそうそういないだろう。一緒に住んでいて、飽きるという事がない。

 もっともっと、可愛がりたくなってしまう。

 そんな事を思いながら、私はベッドの上で目を閉じる。

 神経を耳に集中し、微かな音も残さず拾っていく。バスケで鍛えた空間把握能力は、こういう時にも役に立つのだ。

 反響しあう音の差から少しずつ、周囲の状況を組み上げていく。精度はそこまででもないけど、こうすれば隣室の様子も感じ取れる。

 大喜くんは、まだ起きているようだ。

 僅かに漏れる微熱混じりの吐息、水気の混じる摩擦音。ナニをしているか見当はすぐにつく。大喜くんは、シてるんだ。きっと、私を思い浮かべながら。

 もし今こっそりと部屋を出て、そっと入っていったらどうなるだろう。私的には可愛い姿を拝めて眼福だけど、大喜くんは恥ずかしさで真っ赤になる所か泣いちゃうかもしれない。きっとその泣き顔も、やっぱり可愛いんだろうな。

 でも、我慢だ。他の家族に気取られると不味い。なにかあったら、今のように大喜くんを愛でられなくなってしまう。

 節度をもって、大喜くんをからかって遊ぼう。

 

 そんな大喜くんだけど、とても距離が近い女子がいる。

 蝶野雛さん、英明の生徒では私より有名な子。そして、周囲に感情がダダ漏れな子。

 本人は大喜くんを好きなのを隠しているつもりなんだろうけど、はっきり言って大喜くん以外の全校生徒にバレてるレベルだと思う。

 ……大喜くんは可愛いけどバカだから、多分このままだと一生気付かないだろう。蝶野さんが告白したら、まあさすがに分かるだろうけど。

 現時点では、ラブコメでよくいる幼馴染みポジションの子だ。「仲の良い女子」とは認識されているけど、恋愛にはならないタイプ。大体途中で負けヒロイン扱いされる子かな。

 まあ、大喜くんと蝶野さんが仲良くするのは構わない。構わないけど、でも。

 私のオモチャでいてくれなくなるのは、ちょっと困る。いっそ蝶野さんも巻き込んじゃおうかな、でもあの子結構濃いからキツいか。

 初対面で彼氏いるんですかとか聞いてくるし、嫌いじゃないけど圧がちょっと……ねえ。

 どうしようかな、と思いつつ体育館の中。部活の合間に、視線だけで大喜くんを探していく。

 一応同居の事とかは隠さないといけないから、校内では基本他人のフリなのが一々面倒。

 でもまあバドのエリアは決まっているから、程なく大喜くんの姿が視界に入る。

 今日も大喜くんは頑張っているけど、やっぱりそこまでの成果は出ていないようだ。

 大喜くんの仕事は可愛い事だから、別にバドを極める事もないと思うけどね。でも、頑張っている大喜くんも可愛いから良いか。

 ふと、視線が交差する瞬間。私に気付いた大喜くんは、赤くなって顔を背けてしまった。

 可愛いなぁ、オトコノコって感じで。

 ……そろそろ、頂いちゃいたくなる。でもまだ、我慢だ我慢。準備はしっかりとしておかないと。

 

 猪股家の面々は、私を信頼してくれている。

 鍵も渡されてるし、家の事は殆ど何でも任せてくれる。留守を預かる事さえある。

 個人的には赤の他人をここまで信頼するのは、ちょっとおかしいとも思うけれど。

 でも、お陰さまで動きやすくて良い。私表向きは優等生だし、信用を築くのはもはや特技のレベルかもしれない。

 そんなわけで、私のコンディションと家族の不在が重なるチャンスを狙って数ヵ月余り。

 その日が、とうとうやって来た。大人三人がそれぞれの理由で明日の夕方まで家を空ける、そして私の方も準備万端。そんな日が。

 大喜くんは今日明日私と二人きりだと知ると、すぐ真っ赤になってしまった。可愛いなぁ。

 ここでチャンスだって襲いかかってくるような勇気はないだろうし、でも私と二人だけという事に期待はしている筈だ。

 だって大喜くん、私の事好きだから。

 一応裏は取ってある。私が中学バスケ引退試合の後で練習してるのを見て、それで好きになってくれたそうだ。

 大喜くんと多分一番仲の良い友達、笠原くんから聞き出したから多分間違ってはいないはず。笠原くんは如才ない子で、可愛いとは思わないけどスゴく便利。あれこれと大喜くんの情報を聞かせて頂いている。

 それに大喜くん、照れながらも私と一緒にいたがるしね。蝶野さんから好かれてる事に気付いてないくらいだし、私に気付かれてる事も分かってないだろう。本当に可愛い子だ。

 二人きりの家のなかで、少しずつ距離を詰めていく。ほんの僅かずつ、大喜くんの間合いを侵食していく。ゆっくりと、ゆっくりと。

 そして、ほんの少しだけ。大喜くんの手に、私の手を触れさせる。アクシデントを装って。

「あ、……っ」

 頬を染めた大喜くんが、恥ずかしげに手を引っ込める様がなんとも可愛らしい。

 私は元々体温低いし、今時期は特に低いはずだからすぐ気付いただろう。まあこれは明日明後日辺りまでで、そこからは上がるんだけどね、多分。そのために調整してきたんだから。

 照れてはいても逃げ出さない辺り、期待はあるのだろう。オトコノコとして、そういう期待が。

 視線が、絡み合う。「その気配」を感じたのか、それとも。大喜くんは、何も言わないまま私を見詰めている。

 ああ――可愛い。あんまり可愛いから。

「ごめんね」

 スッと顔を近づけ、一応謝って、そして。

 私は、大喜くんにキスをした。

 ちょっとだけかさついた唇を、私の唇で塞ぐ。

 そして歯列をなぞり、舌を絡め、唾液を交換し、――口腔を犯していく。

 美味しくて、気持ち良くて、気が狂いそうな程愛しい。キスなんて初めてだけど、ここまでスゴいとは思っても見なかった。

 それはきっと、大喜くんも同じだろう。長い長いキスを終えて口を離しても、大喜くんは惚けたまま身動ぎもしない。

 虚ろな瞳に光が戻るまでの、ほんの短い時間。それでも、私には十分すぎる時間。

 大喜くんを抱き締め、そして。その顔を、服の上から私の胸に埋めてあげる。……まあ、大したサイズでもないけれど。バスケやってると育ちにくいらしいけど本当だろうか、逆にバレーボールしてると大きくなるとか。……転向しようかなぁ……。

「先輩、な、……っ」

 正気に還った大喜くんは、自分がどうなっているか理解したようだ。

 私の位置から見えるつむじの辺り、頭皮まで赤くなっている。相当に、興奮しているんだろう。もがく事さえせず、再び固まってしまった。

「可愛いなぁ……大喜くん本当に可愛い」

 抱き抱えるように、もしくは捕まえるようにして。思わずそう囁いてしまう。

 でも、仕方がない。だって大喜くんは、可愛いんだから。

「好きだよ、大喜くん。大好き」

 続けて、そっと。耳から大喜くんの心を犯していく。

 心臓の鼓動がうるさい程に強まって、私の胸は張り裂けそうだ。大喜くんはもっと激しくそうなっているんだろうけど。

 身体を離したその時に、大喜くんは――固まったまま泣いていた。

 嬉しいのか、困惑してるのか。それとも、私がこんなことをしたから哀しいんだろうか。

 大喜くんは、私に憧れてくれている所もあるから。

 ショックだろうな、と思わなくはない。でも、これが私だから。私は、こうなんだから。

「私はね、バスケの為だけに日本に残ったんじゃないよ。大喜くんが、欲しいから。大喜くんを逃したくないから、ここにいるんだよ」

 それは私の、偽らざる本音。

 お母さん同士の事はずっと前から知っていたし、大喜くんの事も知っていた。朝練で会う度に抱き締めたくなっていたし、あの日は私に話しかけてくれるのを待っていた。……悔し泣き自体は本当だけど。

 同居が決まって、どれだけ嬉しかった事か。でも大喜くんは、そんなの気付いていなかったんだろう。

 私がバスケ一筋のストイックな人で、夢の為に他人の家に身を置く決意をしたんだと思っている筈だ。――そんなの、ほんの一面なのに。

 私は貪欲だし、手段を選ばない。

「全部、大喜くんのせいだよ。大喜くんが可愛いから、悪いんだからね」

 そしてもう一度、キスをする。今度はただ唇を合わせ逢うだけの、短いキス。

 拒もうと思えば拒めるキスを、大喜くんは拒まなかった。彼は、私を受け入れてくれた。

 受け入れるしか無いんだと、分かってくれた。

 そして。

 私たちの、楽しい夜が、始まる。

 

 涙の跡を拭うように、舌を這わせていく。

 目尻から頬へ、そして唇の端を舌先でなぞりながら、大喜くんの服を少しずつ剥ぎ取っていく。

 そのまま舌は首筋を通りすぎ、ゆっくりゆっくり降りていって。

「あ……っ」

 小さな乳首をつついてあげると、女の子みたいな可愛い声が漏れてきた。

 男の子でも、ここは気持ちいいんだろうか。つつくだけでなく吸い上げたり指で弄んだりすると、すぐに喘ぎ声が立って可愛いったらない。

 ……そう言えば、大喜くんはドMなんだっけ。試しに軽く噛んであげると、小さく悲鳴のような嬌声と共に少しずつ乳首が隆起していく。

 どうやら苛めてあげた方が喜ぶみたい、でもあんまり最初から強くするのも良くないかな。

 それに乳首ばかり弄っても仕方無い。もう一ヶ所、固くなってきている所もあるんだし。

 まだ下は脱がせていないけど、布の上からでもそれはわかる。手を滑り込ませてなぞると、ハッキリ伝わってくる。

 ――大喜くんの、オトコノコ。期待して熱く震えている、大喜くんの一番大切な場所。

 あまり手荒にしちゃいけないらしいから、ゆっくりと。そっと軽く、その形を指先で確かめていく。

 ――と。

「あっ、先……輩、やめ……っ」

 さすがに羞恥心が勝ったのか、大喜くんは身を捩って逃れようとし始めた。

 まあ、こうなるのは想像していたけど。

 私から逃げ出そうと後ろを向けた所で、そのまま布地を掴んでやる。そうすると、勢いがついた身体は止まらないまま――下だけをするりと剥ぎ取れた。可愛いお尻も、何もかも、丸見えだ。

 そして脱がされた事で一瞬動きが止まった大喜くんを、仰向けに引っくり返してあげる。

 当然大喜くんは抵抗し、脚だけでも閉じようとするけど――無駄だ。抵抗も反撃も、出来るわけがない。

「大喜くんが私に、力で勝てるわけないでしょう?」

 私は幼稚園の頃からずっとバスケをしてきて、ミニバス時代から今までずっとエース。大喜くんがバドに本気になったのは、私に会ってから。そして精々が部内中位止まり。

 地力がそもそも違うし、バドは瞬発力と持久力のスポーツだけどバスケはそこに腕力とタフネスが加わる。そこらの男子程度なら、力尽くで制圧するくらい朝飯前だ。

 ケンカして負けた事なんか一度もないし、試合では私よりタッパのある選手相手でも当たり負けるどころか押し勝つ自信がある。私が小柄ながらに雑誌で取り上げられる地元の有名プレイヤーなのは、この腕力有ってこそ。

 その両腕に力を込め、脚を押し拡げていく。

 抵抗が成立したのは、わずかな間だけ。

 すぐに大喜くんの脚は屈服し、その間にあるすべてをさらけ出してしまった。

「ほーら御開帳~」

 泣きそうになりながら顔を手で覆い抵抗の意思を示す、可愛い大喜くん。でも、その抵抗はきっと形だけ。

 だって大喜くんのオトコノコは、天を向いて聳えているのだから。期待している、という何よりの意思表示だ。

 本気で抵抗するなら、顔を隠すより両手も使って暴れれば良い。まあそうしてきたら、私だって本気で武力制圧するけどね。殴りあいになれば私の土俵だ。

 脚を押さえて動けなくしたまま、顔を近づけていく。ムッとくるオス臭さは決して愉快なものではないけれど、大喜くん相手なら我慢は効く。

 まずは一つ、キスをして。ビクンと震える幹を、舌でなぞっていく。……うん、美味しくはない。と言うか、不味い。世の中のお姉さん方は、こんなことを日常的にしているんだろうか。女子力低いからね私、そういうのはよく分からない。でもま、大喜くんだから。大喜くんがよがる姿は、見ていて楽しい。

 そして、その先を咥えてみる。僅かに歯を当てると、張り詰めた肉の感触に押し返されるのがなんだか面白い。大喜くんは逆に歯の感触が不安なのか、いつのまにか顔を隠していた手が外れ私を怯えた目で見つめている。……可愛いなぁ、このまま噛みきって女の子にしちゃいたいくらい可愛い。

 溢れてくる生臭い汁と唾液が混ざりあい、口を動かす度にじゅるじゅると音が立っていく。歯と舌と唇、口の中全てを使って大喜くんのオトコノコを愛撫し続ける。手を使えればもっと楽だろうけど、今は両脚を押さえるのに文字通り手一杯。

 息も出来ないくらいの集中で、大喜くんを追い込むこと暫し。体感的には何十分も楽しみ続けた、でも多分本当はもっと短い時間。それが、終わるときがやって来る。

 脚を押さえつけている手がずれるくらいに、腰が大きく震える。そしてその拍動は、大喜くんの身体を通じて私の口にも伝わって――

「あ"、ぅあ"っ、ぁ……っ」

 大喜くんが漏らした声にならない喘ぎ、それに応えるように。大喜くんのオトコノコが、破裂したかのように脈打った。

 ドクンドクン、と断続的な震えと共に、熱く生臭いものが私の口に広がっていく。これが、射精っていうものなんだろう。

 もちろん美味しくはないけど、でも大喜くんのだから。大喜くんの全ては、私のものだから。一滴も、逃がしてあげない。

「ん、――っ」

 覚悟を決めて、喉の奥へと呑み下していく。その量は思った以上に多く、その上濃い。これは、結構大変かもしれない。

 でもここで吐き出すのも悔しいし可哀想だから、なんとか気合いで飲み干してあげる。そして中に残っていた分も吸い上げて、やっと口を離す。

 ヒクヒクと名残惜しげに揺れるその姿は、だんだんと可愛くも思えてくるから不思議だ。可愛がってあげたら楽しいだろうな。

 しかし思った以上に、これは疲れる事なんだと実感した。まあ大喜くんはもっと疲れてるだろうけど、こういうのを何時間も続けるのは無理そうだ。世の中には一晩中続ける人もいるらしいけど。体力には自信があるつもりでも、使う部位が違うせいかな。

 とりあえず口がスゴく疲れた、顎おかしくなりそう。別の事をした方が良さそう。

 

 さっき唇でしごいたように、幹を手で握ってしごいてみる。さっき私の口のなかでは、こんな感じだったんだろうか。

 確か男子はこうやってスるそうだけど、大喜くんはどんな速度どんな力具合でしてるんだろう。

 よく分からないから、適当だ。そしてそのまま、尖端をなで回したり肉の袋をつまみ上げたり。どこをどう弄れば気持ちいいのか、実地で調べながらだから上手く行っているかは微妙だけど。

 でも、大喜くんは切なげな声を上げているし脈動はどんどん強まっていく。たぶんこれは、成功している部類なんだろうな。可愛い可愛い。

 とは言えやっぱり、これ腕が疲れる。よくこんなのを毎晩のように出来るもんだ、と変に関心してしまいそうになってくる。男の子はサカリがつくと激しいって言うけど、こういう事を言うんだろうな。

 ――と。大喜くんのオトコノコが、再び蠢動する。

 ドクン、と力強い拍動を手に感じた刹那。まるで噴水のように、白く濁った粘液の塊が打ち出された。

 その勢いは結構な強さで、私の手を染め上げるどころか顔まで届くほど。ああ、こんな風に私の口の中で射精したんだな。実際に見ると、これはなかなかに壮観だ。

 小さな口から頑張って精液を吐き出す大喜くんのオトコノコは、なんだか愛らしい。さすが大喜くんの一部。

 でもさすがに、こうも飛び散られると回収は無理だ。残らず飲み干そう、とさっき思った手前出来れば飲んでしまいたかったんだけどな。まあ考えてみたら、露出状態で射精させた私が悪いか。

 それはそれ、別にそれだけが目的でもないし。

 そう、この先だ。これからが、正念場だ。

 

 普段はあまり中までは弄らないけど、することがすることだから。指を深めに入れて、内側を解していく。

 身体の中を掻き回すと言うのは馴れないけど、指よりは大分長い太いモノが入るんだし一応準備は必要だろう。

 ……勢い余って裂けたりしたら嫌だなぁ。そういう意味じゃ男の子は楽なんだろうな、きっと。

 もう抵抗しようとさえ思えなくなったのか、大喜くんは虚ろな目で遠くを見ている。……こういう顔はあんまり可愛くないけど、とりあえず今は仕方ない。後でまた、だ。

 中から溢れる液を指で掬い上げ、大喜くんのオトコノコへと垂らしてみる。落滴が感じられるのか、ビクビクと反応するのは何処か可愛らしい。やっぱり大喜くんの一部なんだな、と改めて思う。

 面白いから何度も何度も汚していくけれど、その反応が止まることはない。口のようになった部分が物欲しげに見えて、まるで誘ってるようだ。

 そこへ、そっと指の腹を当てて揉み解していく。このまま解していけば、色々入れても平気だろうか。……さすがに無理かな。それに、あんまり急ぐ必要もないんだし。明日も明後日も、同居は続く。隙はいくらでもある。

 二人の粘液でドロドロになったオトコノコを跨いで、腰の位置を調整して。

 ――さあ、いよいよだ。

「じゃあ、行くよ……?」

 内心不安はあるけど、それでも顔には出さずに微笑んでおく。この瞬間、それだけが気掛かりだけどきっと大丈夫。

 根拠はないけど、きっと。

 腰を沈めていくと、お腹を押し広げる感覚と共に大喜くんの先が私の中に埋まっていく。

 さっき解し足りなかったのか、それとも別の理由なのか。私の内側は意に反して若干の抵抗を見せ、大喜くんの侵入を阻んでくる。……持ち主に逆らうとはナマイキな。教育を、くれてやろう。

「ん、……っと」

 力を込め、更に腰を深く落としていく。お腹の奥で何かが破ける感触を経て、「はぃ、ったぁ……」私の身体が大喜くんの上に軟着陸を果たした。

 これは、スゴいかもしれない。内臓が押し広げられる圧迫感と、私を灼き尽くすかのような熱量。放心していた大喜くんも目を見開いているから、あちらとしても想像を越える感覚なんだろう。

 それでも、これで終わりじゃない。もっともっと、先がある。

 それをイメージしながら、ゆっくり腰を揺すろうと――

「お"、あぁ……!」

 した、矢先。大喜くんがまた悲鳴のような声を上げて身体を震わせた。

 お腹の奥へと広がっていく、熱の波。大喜くんがまた、射精したんだ。さっきブチまけられたのと同じ大量の精液たちが、今度は私の子宮目掛けて突き進んでいくのがイメージ出来た。

「ふふー、出しちゃったねぇ……」

 幸せそうな頬を、指でなぞってあげる。

 ここで私が本当の事を言ったら、どんな表情になるんだろう。少なくとも、こんな顔ではいられない筈だ。

 今の私は基礎体温から計算すると排卵予定日前日か前々日、スゴく危険な日だから。それを知ったらきっと、悩みに悩むだろう。もし当たったなら、本当に絶望するかもしれない。間違いなく当てるために、この日を待ったんだけどね。

 私は大喜くんが好きだから、大喜くんのすべてを支配したい。台無しにしたい。私以外に何もかも、一切残らないくらいに。

 でもそれは、少しずつで良い。今急いで大喜くんを潰してしまうより、時間をかけて楽しまないと。じっくりじっくり、私のモノにしよう。蝶野さんの事も何もかも、忘れさせてあげよう。

 だから今は、何も言わない。

 繋がったまま、その唇にキスをする。キスしながら、腰を振りたくる。上と下、両方で大喜くんを愛する為に。

 大喜くんのオトコノコは焼けた鉄の棒のようで、私が動く度にお腹の中をゴリゴリと抉ってくれる。初めての事だけど、これはなかなか気持ちいい。

 内側から快感が吹き上がる感覚に、普段一人でする時とは比べ物にならない速度で高まっていくのが分かる。

「うわ、……あー……」

 絶頂を飛び越え、更に高く。

 油断すると意識まで刈り取られる快感の濁流は、きっと大喜くんにも伝わったのだろう。

 私の奥で震えた大喜くんのオトコノコは、ドクドクと精液を放ち続けている。まるで箍が外れたように、止まることさえ忘れてしまったのかもしれない。私のと違って持ち主に忠実なんだろう、大喜くんは可愛いけどバカだから。

 

 何度精液が注ぎ込まれただろう、何度目の前が白く染まっただろう。私のお腹の中は容量をすぎたのか、抜き差しする度にぶしゅぶしゅと音を立てて精液が溢れ落ちてくる。

 果てることなく、延々と愛しあい続けた私たちにも、ついに限界が来ようとしていた。

 腰も頭も、既に持ちそうにない。明日は一日立てないかもしれない、どころか暫く腰痛が残りかねない。

 それでもこれが最後、と激しく腰を上下させ続ける。

 頭の奥で、バチバチと火花が散っていく。

 意識が焼けて、脳がショートしていく。

 身体の奥で、声がする。――いのちは、ここです。

 暴力的な快感の応酬が、遂に致命傷を与えあう。

 もう、終わる。そう本能が感じ取った。

 身体も心もグチャグチャにしてしまう、凄まじい奔流が私たちを呑み込んでいく。

「あっ、はぁ……あぁあ、――っ!!」

 その喘ぎがどちらのモノか、もう分からない。

 ただスイッチが切れたように視界がブラックアウトし、そのまま私は倒れこんだ。

 その直後に聞こえた粘液質の音はきっと、私の中から萎えきったオトコノコが抜け落ちる音。

 幸せだ。そう、幸せすぎる。一番好きな子を、独占することが出来る。ずっとずっと、私だけのモノに出来る。

 これが幸せでなくて、なんだろう。

「ごちそうさま」

 そう呟きながら、目を閉じる。幸せの続きを、瞼の裏に描きながら。

 

 楽しい夜が終わって、私たちは元の関係に戻った。私は期限付きの同居人、先輩後輩の間柄。あの日のことは、一時の気の迷い。大喜くんは、そう思い込む事で自分を守ろうとしている。

 敢えて蝶野さんとも仲良くし、必死で振りきろうとしている。

 そんな後輩の可愛い抵抗を、先輩としては立ててあげなければ。大当たりの事も、今は黙っておくし。

 まあそれに便乗して、蝶野さんが告白準備に入ったのはちょっと見過ごせないけれど。

 整体院で私に相談してきた辺り、鞘当てのつもりなのか単に頭が悪いのか。

 別に構わないと言えば構わない、どうせ玉と砕けて終わる話だ。大喜くんは、私が好きなんだから。押しきって完全勝利、オーバーキル上等の総攻めが私のスタイル。

 それに長くても半年程すれば、嫌でも気付くことだ。その時に大喜くんがどんな顔をするか、今から楽しみで仕方ない。

 ああ、やっぱり大喜くんは――可愛いなぁ。

 

 

 

 眩しくアオい輝きを背に(2021/09/18)

 

「蝶野さんを見て。――羨ましいな、って」

 それは、偽りのない、私の本心で。何処まで行っても、私はああなれない。

 あんな風に、笑えない。あんな風に、話せない。

 あんな風に、近付けない。

 ああ、羨ましい。誰がいても、何処ででも、ああやって素直になれて。

 私がもし、あんな風になれたなら。

 きっと。

 後悔する事なんて、無いんだろう。

 

 大喜くんは、私の背中を押してくれた人。日本に、英明に残らせてくれた人。あの日の悔しさを、思い出させてくれた人。

 だからそう。大切な人なんだ。

 同じ家に住むことになって、平生を装うのは大変だった。気を抜くと、大喜くんを傷付けてしまいそうで。

 大喜くんには、仲の良い幼馴染みがいる。蝶野雛さん。新体操部の一年生、中学時代全国4位だっていう有名人。明るくて、可愛くて、そして――大喜くんを大好きな子だ。大喜くんはオトコノコだから、その辺には鈍いみたいだけど。大喜くんが少しでも「友達」から踏み出そうとすれば、そこで二人は結ばれるだろう。だから、私は何もしてはいけない。自分の都合を、気持ちを、押し付けてはいけない。大喜くんに、幸せになって欲しいから。

 それでも、抑え込める気持ちには限りがあって。

 大喜くんと近付きすぎたり、ふと大喜くんの匂いを何処かに感じたり、そうすると――身体が、抑えきれなくなる。借り物の部屋を汚してはいけない、迷惑をかけてはいけない、と思うのに、疼いて止まらなくなる。何枚も厚く敷いたバスタオルの上で声を殺し、なるべく音を立てないようにしながら、自分を慰めなければ治まらない。

 思い浮かべるのは、大喜くんの姿。私だけを見つめ、一途に愛してくれる、――都合の良いマボロシ。大喜くんが私を求め、貪り、奪い尽くそうとする姿を思うと、それだけで頭の奥が焼けていく。

 そして身体が壊れそうなほどに震え、意識が僅かに遠くなる。でもその心地良い脱力感の後に来るのは、虚しさと罪悪感だけだ。ドロドロになったバスタオルを洗っていると、自分が浅ましい人間だとさえ思う。私は、何をしているのだろう。

 こんな弱くて、脆くて、愚かな私を、先輩として立ててくれる大喜くん。彼の思いに、報いたい。憧れられる、完璧な私でいたい。

 少なくとも、この家を去るその日までは。

 

 大喜くんと蝶野さんは、お似合いだ。私なんかが入り込む隙はないくらいに。

 だからこそ、胸が苦しい。大喜くんにとっての幸せは、蝶野さんと結ばれること。それは分かりきっている。居候として先輩として、二人を見守らなければならない。でも、それが辛い。私は大喜くんと結ばれ無い、例え結ばれても幸せになんかなれない。私も、大喜くんも、ただ苦しむだけだ。今まで過ごしてきた全てをかなぐり棄てて、それでも愛を貫けば幸せだなんて、そんなのは安いメロドラマの中にしかない御都合主義だ。

 それでも。ただ、苦しい。――愛されたい。愛したい。私の奥で、澱んでいく思い。胸の中で、濁流が渦を巻いていく。何もかも押し流し、打ち砕く、凶暴な感情が、私を塗り潰していく。

 ああ――嫌だ。私は、私が大嫌いだ。好きになって欲しい、なんて言えるものか。

 

 寝苦しい。寝苦しい。肌が、焼け付くように熱い。どんなに振り払おうとしても、身体の熱が引かない。幽鬼のように蠢く、何かの影が見えた気がする。身体の全てが、狂っていく。

 気が付くと、横たわっていた身体が立ち上がっていく。意識と手足が切り離されて、止まらない。ゆっくりと部屋を出た私は、すぐ隣の、……大喜くんの部屋の前で立ち止まった。

 この扉を開けてしまえば、そこで――私は。私は。

 頭の隅で警鐘が鳴るのが分かった。これ以上は、もうこれ以上は、ダメだ。戻らなければ、いけない。そう私が思うのを嘲笑うように、指先はいとも容易くそこを開けてしまう。

 灯りの消えた大喜くんの部屋には、ただ月明かりだけが薄く光を落としていた。片付けられた部屋、ベッドに横たわる大喜くん。昼間の部活で余程疲れたんだろう、すやすやと安らかな寝息を立てている。可愛い、と素直に思った。……少なくとも、私は。私の意識は、ただそれだけを思った。

 でも私の身体は、その先を求めて掛け布団を捲り上げ、大喜くんの脚を露にしていた。……私があげたミサンガも、ちゃんとそこにあって。約束は、ちゃんと結ばれたままで。――それを踏みにじろうとしている自分を止められないのが、私は苦しくて仕方がない。

 布地に手をかけ、ゆっくりと引き摺り下ろしていく。蒸れたような、汗とは違う――オトコノコの匂いが鼻に届き、そして、……大喜くんの……。

「――っ」

 息が、止まりそうになる。とてもじゃないが、触れたいとは思えない。私だって、知識はあった。でも、こうして目の当たりにすると、顔を背けたくなる。オトコノコは、みんなこうなんだろうか。

 でも、でも。私の手は、まるで躊躇おうともしない。いつも自分でする時のように、そっと指を這わし、撫で上げ、摘まみ、愛していく。指先につたわる熱と、硬く膨れていく肉の感触。私はまるで透明な壁の向こうからそれを見ているような、異質な感覚に包まれていく。

 と。大喜くんの身体が、僅かに揺れた。いや、そんな小さなものじゃない。

「先、輩……?」

 大喜くんは、目を覚ましたのだ。でも瞳の焦点が合い、大喜くんが状況を理解する刹那に、私の身体は飛び出していた。

 一瞬、だ。大喜くんがなにか言おうとする寸前に、その唇は私の唇が塞いでいた。初めての、キス。甘くも切なくもない、ただ口封じの為に、私の身体は唇を捧げてしまって。

 離れようとする大喜くんを、それでも私の身体は逃がさない。押し倒すように体重をかけてキスし続けながら、大喜くんのそれを愛撫する手も緩めない。逃がさない。逃がさない。逃がさない。

 大喜くんの口を舌で犯し、息さえ忘れるほど濃厚に唇を奪い続ける中で、大喜くんの顔が僅かに歪んだ。――手の中で感じる、激しい脈動。熱く粘付く感触が、肌の上へと広がっていく。心地良い熱を、私に刻みながら。

 ゆっくりと唇を離すと、大喜くんは、――何も言わなかった。ただ粗い息を吐き、困惑した目で私を見詰めるだけで。……それは、そうだろう。こんなの間違っている。大喜くんにキスをするのは、蝶野さんだ。大喜くんを愛撫するのは、蝶野さんだ。大喜くんと愛し合うのは、――。

「いや…だ」

 手の上に残された大喜くんの精液を、舌で舐めとり、呑み下す。青臭く苦い、吐き気を催すような味。

 何で、私じゃないんだろう。私がもし、先に出会っていれば。蝶野さんなんか、知らなければ。二人の関係に、気付かなければ。大喜くんは、私のものだったのに。私たちは、こんな風にならなかったのに。

 ああ、そうか。

 これは、私が願っている事だ。身体が言うことを聞かないなんて、そんなの嘘だ。我儘で浅ましくて情けない澱みきった、見下げ果てた先輩。許されない事を平気で求める、愛される資格の無い女。それが私なんだ。だから、だから――

「今だけ。今だけは……わたしをみて。蝶野さんを好きなままで良いから、わたしをうけいれて」

 一方的な、本当に都合の良い願い。最低だ。私は、本当に最低だ。答えを聞く気さえ、無いのだから。もう役割を果たせなくなったショーツで大喜くんの口を塞ぎながら、そんなことを考えた。

 そのまま大喜くんを仰向けに倒し、腰を跨いで。大喜くんの上で……私も、……私のいちばん穢れた場所を、指で割り拡げる。汚ならしい粘液を垂れ流し、もの欲しげに震える浅ましい肉の裂け目。視界に入れる事さえ躊躇われる、穢れきった場所。オトコノコも、オンナノコも、等しく醜悪だ。そこに愛があるなら、それは美しく神聖な行為にもなるだろう。でも愛も何も無く、ただ醜悪なもの同士をぶつけあう野蛮な行為に、何の価値があるだろうか。

 だからそう、私はこれから――大喜くんを、使うだけだ。愛する訳じゃない、愛される訳じゃない。私に、そんな資格はないから。

 グチュリ、と気持ちの悪い粘液質の水音がして。ほんの僅かな抵抗と、小さな痛みを感じながら。――私は、大喜くんを、……犯した。呆然と目を見開いたまま、大喜くんは私と繋がっているところを見つめ、身動ぎもしない。私だけが、一方的に身体を揺すり、跳ねさせ、叩き付ける。私のなかを、大喜くんで満たすために。ただ、自分の為だけに。

 やがて――その時はやって来た。お腹の奥で大喜くんがドクドクと震えて、私のいちばん奥まで染み透っていく。全て、犯し尽くした。大喜くんの全てを、踏みにじった。そう、確信できた。最低の満足感に包まれた私の下で大喜くんは、泣いていた。声を出せないまま、泣いていた。きっと蝶野さんを裏切らされた哀しみで、そして私に犯された哀しみで、泣いている。

 私は、私は。本当に、本当に――最低だ。これが私の望んだことか。自分が最低なのだと、確認したかったのか。その為に、大切な人を蹂躙したのか。自己満足の露悪に浸って、全てをメチャクチャにしたかったのか。

「ごめんね、大喜くん……。ごめん、ねぇ…」

 堰を切ったように、涙が溢れる。ベッドの上で、繋がったままで、私たちは泣き続けた。まるで、恋人同士のように。加害者と被害者は、抱き合って泣き続けた。

 

 あのあと、大喜くんは言った。それでも俺は、先輩を愛します、と。……でもそれは、余りにも苛酷過ぎる愛で。

 蝶野さんに全てを話して別れ、私だけを愛すると言ってくれた大喜くん。私には、眩しすぎて。余りにも、眩しすぎて。

 ……罪深い私には、その愛を受ける資格なんか無い。だから、私は大喜くんを拒絶した。私の弱さを、醜さを、全てさらけ出して。それでも受け止めてもらえるのではないか、と僅かに期待しながら。

 

 結局私は、今も猪股家にいる。でも大喜くんは、もう私を見なくなった。大喜くんの視線は私をすり抜けていく。もう、言葉を交わす事さえ無い。大喜くんが慕ってくれた、憧れさえ抱いてくれた「私」は、どこにもいないから。

 ――それで、良い。もう、それで良い。これ以上、大喜くんを傷付けずに済むなら。私は、大喜くんを傷つけるだけなんだ。

 砂を噛むような日々だけが、私に残った。この先には、きっと何もない。私以外誰も傷つかない平坦な地獄を、どこまでも。過ちの果てまで、真っ直ぐに進むだけ。

 それが、私に相応しい。

 

 

 絡めて繰るはアオい糸(2021/12/04)

 おかしな事は、起こるものだから。こちらが求めようが求めまいが、それはやって来る。

 だからこそ、警戒していかなければならない。

 私は常に、最善を保たなければ。そうでなければ、立場がないから。

 居候の身で、周囲を振り回してはいけない。

 そう、思っているのに。

 なぜそうも、大喜くんは無防備なのか。

 

 様子がおかしい事には、気づいてはいた。いたけれど、見ないふりをしていた。

 夢に敗れた大喜くんに、私がどんな風に声をかけられるのか。

 触れたら壊してしまいそうで、怖くて仕方がない。

 でも、それこそが。大喜くんを、追い詰めてしまった。

 僅かに開いていたドアの隙間から見えた大喜くんは、まるで別人のように窶れ果てていて。ボロボロになって、押し潰されて――。

 なんて、可愛いんだろう。そう、思ってしまった。

 胸の高鳴りに押され、静かに部屋へ入り。ベッドに臥せたまま苦しんでいる大喜くんへと、歩み寄る。

 私が近付いた事に気付けないほど、消耗しきっている。囈のように、自分を責め続けている。

 そんなこと、ないのに。大喜くんは、責められる謂れなんか無い。弱いことも負けたことも、自分を責める理由にするべきじゃない。私はそれを、よく知っている。自分を責めて得られる感情は、単なる自己憐憫でしかない。悔し泣きも慟哭も、それだけでは何の意味もない。踏みつけて上へいく為のもので、自分を押し潰す為のものじゃない。

 だから。

「そんなことないよ。――お疲れ様」

 きっと大喜くんが求めているであろう言葉を、かけてあげる。弱っている心を、無理矢理開かせる為に。

 ようやく私に気付いて呆然とする大喜くんに触れると、その肌は酷く熱い。

 ……メンタルだけじゃ、なかったんだ。身体もボロボロだったんだ。

 息も絶え絶えで、瞳を潤ませて。ああ本当に、なんて――可愛いんだろう。

 心の奥から、衝動が上がってくる。気遣う思いに紛れて、背徳的な思いが。

 今なら、幾らでも大喜くんを弄べる。私のために、この子を使える。

 良くないことではあるけれど、好機を逃したくない。

「病人は大人しくしてなさい」

 慌てて身体を離そうとする大喜くんを、手で制する。

 由紀子さんたちは遅くまで帰ってこない、私が何をしようと誰にも気付かれない。

 頂いてしまおう、せっかくだから。

 

 あまり台所に立たない私だけど、最低限の事は出来るから。

 薬を飲ませるにしても何をさせるにしても、とりあえず何かお腹にいれておいて貰おう。

 そう思って作るのがお粥でもおじやでもなく只のうどん、という辺りやっぱり私は不器用かもしれない。

 まあ、いいや。血行を良くするために生姜を多目に入れて、一先ずこれでいい。

 うどんを持って部屋に入ると、ベッドの中でソワソワしている大喜くんが。可愛いな、子犬どころか天使だよこの子。

 萌えている場合でもないし、大喜くんに起きてもらってお食事タイムだ。一応看病を名目にしているわけだから、回復して貰わないと困る。

 少しずつ気が解れてきたのか、大喜くんの口からは今まで聞けなかった弱音が漏れてきている。

 上には上がいて、どんなに練習しても追い付く気配さえ掴めなくて。覚悟も、信念も、重圧に置き換わっていく。その怖さは、私も知っている。知り尽くしている。そこが付け入る隙なのだと、分かっている。

 辛いときに優しくしてくれる相手には、誰だって弱いものだ。あの日、大喜くんに背中を押された私のように。

 だから、そう。背中から警戒を解いていこう。

「大喜くん、汗かいてるし背中拭こうか」

 硬く絞った濡れタオル片手に、大喜くんの背後に回る。僅かに恥ずかしさのせいか驚いた声が出たものの、抵抗はしてこない。

 普段なら真っ赤になって逃げるだろうけど、弱りきった上に私を信頼してしまっている状態では、そんなことは出来そうもない。

 上を脱がせて背中に向き合うと、そこは思ったほど華奢でもない。毎日部活で鍛えているからだろう、結構たくましい。タオルで拭きがてら、その感触を味わっていく。

 いいなあ、大喜くんの身体。可愛いのにたくましくて、二倍美味しい感じだ。

 そして背中を拭きつつ、そっと。手を少しずつ、前側へと這わせていく。そして脇腹をなぞり、更に――下へ。

「えぁ、先、輩っ!?」

 隙を付く形で下半身に手を滑り込ませ、その中にいるもう一人の大喜くんへと指を触れさせると、流石に驚きの声が上がった。とは言え、もう遅い。

「んー、だいぶ毒が溜まってそうだね。出しちゃわないと……ね」

 本物は初めて触るけど、知識はちゃんとあるから。オトコノコの扱い方は、勉強済みだ。

 他のどの部位よりも強い熱、張り詰めた肉の感触。大喜くんの、オスの部分。

 傷付けないように気を付けながら、右手で握りしめて扱きだす。

 いくら弱っていても、本当に嫌なら抵抗くらいはできるはずだ。でもそれが全く無いどころか可愛い喘ぎが漏れてくる辺り、意外とノリ気なんだろうか。ま、良いけどさ。

 手の中に大喜くんの命を握っている、そんな快感。

 熱く固い塊が、少しずつ粘りけを帯びていく。布越しにもニチャニチャと音が立ち、指が汚れていくのが分かる。大喜くんが濡れている、ということ。

 指の動きを早めて、大喜くんを責め立てていく。ナマイキにも耐えようとしているのが、可愛らしいったらないな。

 無駄なのに。

「ほら、我慢しないの。ちゃんと毒を出しちゃわないと、治らないよ?」

 耳元で囁きながらギュッと力を込めて握りつつ、先の方を親指でなで回してあげる。

 その刹那、大喜くんの口から甘い叫びが漏れて。ガクガクと震える身体、手の中に感じる粘液質の奔流。

 引き抜いた手にベットリと付いた白濁液――大喜くんの精液。躊躇いなく舐め取って感じたその味は、生臭く苦い。その苦味が私の中で、ほんのわずか残っていた理性を目覚めさせていく。

 さすがにこの先は、不味い。取り返しが、つかなくなる。

 踏みとどまれ、私。これ以上やると、本当に壊してしまう。

「――毒抜きもしたし、これで大丈夫だね。大人しく寝てるんだよ?」

 放心したままの大喜くんをベッドに寝かせ、ギリギリの理性でもって部屋を出る私。

 台所に食器を下げたその途端、抑えがたい衝動に貫かれて床にへたりこんでしまう。

 お腹が、熱い。足を動かすだけでショーツの中がグチュグチュと音を立て、服を伝って顔まで匂いが上がってくる。

 あと少し、遅かったら。決壊していただろう。

 

 明けて翌日、私たちは「いつもの」関係に戻っていた。いや、戻ったように装っていた――が正しいか。

 ちょっと、不味すぎた。あれは危険すぎる。もう、やめておこう。

 大喜くんを、ダメにしたくない。私は私の立場を守るべきだ。

 だから、言わなければならない。

 二人で買い物に行くことになったのは、好機と言えるだろう。

「昨日の事、なんだけどさ。――忘れようよ」

 あれは一時の、気の迷い。そういう事にして、もう繰り返さないようにしよう。

 お互い気を付けて、ああいう事はしないようにしよう。

 そう言い終えた後の大喜くんは、明らかに不満げな顔をしている。

 ……まあ、そうだろうけど。お預けを喰わされてむくれる気持ちは分かるけど。

 大喜くんの為だから、線を引かなければならない。

 アイスも買ったし早く帰ろうと歩きだしかけた矢先、私は大喜くんに腕を捕まれてしまった。

 無言のまま、私を見詰めて。身体全体で、不満の意思を示している。まるで小さな子供のように。

 ああ、可愛いな。可愛いから、退こうとしているのに。

 せっかく――逃がしてあげたのに、自分から飛び込んでくるなんて。

「大喜くんは、本当におバカさんだね……」

 私は、大喜くんを壊したい訳じゃないけど。そうやって来たなら、仕方がない。

 悪いのは、大喜くんだから。

「そうだね、しょうがないよね」

 微笑みかけてあげると、大喜くんも笑って私の腕を放した。きっと、私とは理由が違うけど。

 

 歩きながら大喜くんの腕を掴んで重心を崩させ、外灯の及ばない暗がり目掛けて放り投げる。実際には引き倒す方が近いけど、イメージでは投げ飛ばす感じで。

 夏が近づき雑草も勢いついていて、丈の長い叢は人を隠して余りある。御誂え向き、というわけだ。

 突然の事に混乱したのか、仰向けに倒れて尚抵抗さえしてこない大喜くん。その顔に背を向ける形でお腹に腰を下ろし、デニムを下着ごと剥ぎ取ってしまう。

 夏の夜風に露となる、大喜くんのオトコノコ。昨日は触っただけで見られなかったけど、なかなかに凶悪な顔付きだ。それに元気に上を向いている辺り、興奮しているらしい。

「さっきは思い出させちゃったかな、昨日の事。そんなに気持ちよかったのかな?」

 大喜くんは私の背中目掛けて何か言っているけれど、話しかけているのは息子さんの方へだからね。まあそっちは嬉しそうに震えているし、抵抗してこないところを見ると大喜くん自身も嫌がってはいないんだろう。

 ふにふにと幹を擦り頭を撫でてあげると、昨日ぶりの粘液感がやって来た。小さなお口からトロトロと涎を溢れさせ、もっともっととおねだりしてくるのは結構可愛らしい。

 そのお口に指を当て、グリグリこねくりまわしていく。解していけば、指くらい入るかもしれない。……入るかも、か。これも大喜くんの「初めて」だろうし、奪ってしまおうかな。

 でも、だ。それはまた、今度にしておこう。私も私で、準備がいるわけだし。

「ん、と。……座ったままだと、やりにくいなぁ……」

 普段は横になって仰向けで弄るから、なんとなく勝手は違うけど。それでもショーツの中を弄っていれば、気持ちは良くなってくる。勿論その合間にも大喜くんのオトコノコへは刺激を与え、硬度は維持しておく。

 すぐにでも、出来るように。

 一旦腰を浮かせて身体を向き直し、大喜くんと向かい合う。その顔は怯えと期待がない交ぜになったのか、どこか惚けたようにも見える。

「大喜くんはさ、バカ過ぎるよ。そんなだから、ダメなんだよ」

 そう、すべては大喜くんのせいだ。私みたいに重くて不器用な女相手に、無防備な姿を晒して。せっかく与えた逃げ道に、背を向けて。目先の事に囚われて、何もかも奪われる。

 もっと警戒するべきなんだ。自分が可愛くて愚かなことを、自覚するべきなんだ。

 まぁこうやって私に襲われなかったとしても、いずれ誰かに食われていただろう。蝶野さんなんか、明らかに狙っていたし。

 だからこそ、今この場で。

「よっ……と」

 再び腰を上げて僅かに後ろへ下がり、ショーツをずらして――狙いを定める。反りたったままのオトコノコに、私のもうひとつの「口」がちゃんと当たるように。

 グッと力を込めながら、腰を沈めていく。僅かに走った痛みは、でもすぐに掻き消えた。

「う、あ……っ」

 私は苦もなく腰を落としきる。大喜くんのすべてを、呑み込んで。

 お腹の奥に大喜くんがいるという、不思議な感覚。捕食というよりは、征服感に近い快感。大喜くんに取り返しの付かない傷を刻んだという、背徳的な満足感。

 この先私たちがどうなろうと、それこそ私が突然死んだとしても。顔も名前も忘れてしまっても、大喜くんは私の存在を忘れないと確信できる。誰かとセックスする度に、これが甦るだろう。命絶えるその瞬間まで、縛られ続ける。

 それが大喜くんにとって、よい結果を産まないのは明らかだ。だから見逃してあげようとしたのに、わざわざあんなことするから。

 まあ、いいや。もう、どうでも。

 何もかも私のモノにしてしまえばいい。

 こうして繋がったまま、そんなことを考えても仕方がない。

 大喜くんの胸に手を付いたまま、上下に身体を激しく揺さぶっていく。削岩機か杭打ち機か、というくらいに。

 たちまち私の中にいる大喜くんが快感に耐えきれなくなり、激しく脈打ち、そして決壊する。

「ん、あー……、ぁ」

 私の奥で、大喜くんの精液が迸っていくのが分かる。

 それでも、私は止まらない。止まる気がない。

 腰を加速させ、只ひたすら大喜くんを責め立てる。まだまだ、まだまだ。もっと、もっと。

 いつしか大喜くんの顔は涙でぐしゃぐしゃになり、口からは苦しげな嗚咽しか漏れてこない。

 そのオトコノコも、幾度となくしぼみかけた。それでも無理やり元気にさせては、再び搾り取るのを繰り返し続け。

 中で精液が広がる感覚がしなくなり、どんなに弄っても反応しなくなるまで、私は大喜くんを犯し続けた。

 

 溶けてしまったアイスが二度と元に戻らないように、私たちの関係ももう戻らない。

 気が付けば私たちは揃って猪股家を出て、英明も辞めていた。

 事故物件を疑う程の激安物件に二人で入り、生活を維持する為私が最低限外出する以外ではほぼ繋がったままの退廃的な日々。

 そして大喜くんは部屋を出ることなく、ずっと私に犯されるばかり。可愛いだけの、壊れたオモチャだ。

 こうなってほしく無かったけど、望んだのはそっちだから。

 これからも、私の人形で居続けてほしい。

 私が、飽きるまでは。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。