これは握手だからセーフね、なんて言っていたのが遠い昔のようにも思えてしまう。実際には、ほんの数ヶ月前なのに。
先日バレンタインを迎えた時も、したのはキスまで。いやあれこれ悩んでいた時からしたら物凄い勢いでオトナの階段を昇ったわけではあるけれど、それでもまあ振り替えれば可愛いものだったと思う。
一度火が点くと止まらないのは私の良いところであり欠点でもある、バスケに邁進できたのはそのお陰だけど今悩んでいるのもそのせいだから。
そしてどうにも私は依存体質らしい、思えば夢佳にもベッタリだった。思い返せばバスケ始めてからは常に夢佳と一緒、隣にいないと落ち着かないくらい。だからこそ辟易していたんだろうな、そりゃ嫌いとか心にも無いこと言うよ。……多少は有ったかもしれないけどね、うんまあ。あの子そもそも口悪いんだけどさ、昔から。
多少でも僅少でも、大喜くんにそんな思いはさせたくない。そうは思えど、私は不器用かつワンパクでたくましい子だ。真っ直ぐしか進めないし、ギアは一速と幻の七速しか無い。勿論ブレーキはない、燃費も悪い。そうなれば、そうくれば。自ずと先は、見えてくる。
別に後悔はしていないけど、でも少しだけ思う事はある。
少しは頭を使おうとしろ、私。
握った手の感触は、肌に染み込んだかのように何時間も残っている。一昨日車の中で触れあった時よりも時間的には短かったのに、こうも熱いなんて。
そりゃあまあ考えて見ればそうだろうな、だって大喜くんは私の――初めての彼氏なんだから。両想いだとわかった直後はまだフワフワした気分だったけど、今はもうそうじゃない。恋人同士になれたのだから。
顔が焼けそうだし、なんなら意識まで飛びそうだ。気を抜くと歓喜の声を上げそうで、気が気じゃない。由紀子さんたちには暫く隠そうと約束したけれど、上手くやる自信は全くと言って良いくらいに無い。むしろ態度でバレてしまっているかもしれないな、これは。
だって、だって。……大喜くん、可愛いんだもん。
声が漏れないよう枕に顔を埋め、私は呻くように悶える。大喜くんに聞かれたら心配かけるどころかドン退きされかねないけど、収まらない。
好きを自覚したせいか、去年の末までとは見え方が全然違う。
大喜くん可愛い大喜くん超可愛い、好き好き大好き愛してる。頭の中はそれ一色、そして当の大喜くんはすぐ隣にいる。
これは不味いなあ、色々と。
だけど、だ。大喜くんの可愛さを口実にして、バスケを疎かにするような事は絶対に出来ないししてはいけない。針生くんと花恋だって、「どちらかが自分の
そもそも私、バスケの為にここにいるんだし。バスケなんか知らない大喜くんとイチャイチャしたい、なんて言い出したら蹴り出される。……いやその前に、家主の息子さんに手を出したって事で追い出されるかな。それにもし大喜くんが私のためにバドを諦めるなんて事になったら、それこそ最悪だ。私は大喜くんの努力をずっと側で見てきた、あんなにも真面目で夢に対して真摯な子を堕落させたりしたら世間に顔向けできなくなる。
つまり私は恋に溺れず自分を律し、大喜くんと節度あるお付き合いをするしかないのだ。
「……あれ、それって改まって誓うような事かな……」
うん、別にそこまで大層に考える事じゃないな。高校生同士なんだから、世の中的には「真面目なお付き合い」をして当然。卒業したら結婚を前提にするとかそういう方向へ進めていくんだろうけど、今はそんな時期じゃない。
大喜くんだってそれは分かってるだろうし、不埒な事を考える性格じゃないのも知ってる。と言うかもし大喜くんが「そういう事」を考える子だったら、落ち着いて住めないだろうし。現状私は部屋を覗かれた事も下着を盗られた事も、夜中に忍び寄られた事もない。渚の弟くんは最近そういう事ばっかりするらしくて、ちょくちょく鉄拳制裁してるそうだけど。
だからうん、私が我慢すればそれでどうにかなる。多分。
大喜くんの誕生日があって、そこから少しして蝶野さんに「別に構わないけど一発だけ殴らせて貰って良いですよね?」と鳩尾に一撃重いのを叩き込まれたりしつつ、気が付けばバレンタインを迎えていた私たち。特別な日なんだから、と説き伏せ交わした最初のキスはきっと、一生の思い出だ。
しかしまあ、キスってのは難しいな。鼻ぶつけたりして何度かやり直し、やっとこさ私たちの唇は接触を果たせた。まあ、その分気持ちよかったのだけれどね。粘膜の接触だからか、艶かしくて心地いい。不覚にも理性が飛びかけたくらいには。
軽く当てるだけ、そう思ったのにくっついてしまったらもう止められない。唇を全部使って密着し、それでも止まらない。
鼻息も荒く顔を押し付けている内に、ふと気が付いた。この先に進む手段がある、という事に。
伸ばした舌は大喜くんの歯列へと沿って動き、その隙間を捉える。グッとそこを抉じ開け、私は大喜くんの
その瞬間は、どう表現していいか分からない。ただ得体の知れない達成感と、タブーを犯したという禁忌の快感が沸き立つばかり。
酸欠をお越しかけて崩れ落ちるまで、私はそのまま大喜くんを抱き締めてキスを続けていたのだ。
いやー……気持ちよかったなぁ。
思い出すだけでお腹の奥がキュッと疼き、身体全体で大喜くんを求めたくなってしまう。そんなことは許されないけれど、それでも。
我慢我慢、私は堪え性のある子。
だからこそ、毎晩のキスだけで踏みとどまれているのだ。それも極浅い、短いキス。こういうキスは挨拶みたいなものだからセーフだ、セーフに決まっている。
でもお休みなさいのキスをしてからこうやって部屋へ戻ると、あの日交わした深い深いキスの味が甦る。そうなるとまたしても、私は止まらなくなってしまう。
ああ、また――してしまうのか。
僅かな罪悪感を覚えながら、私は
「んー……」
ふにふにと胸元を弄くりながら想像するのは、やっぱり大喜くんの事。この手が大喜くんのだったら、なんてね。
初めての彼女って言ってたし、きっと触るにしてもおっかなびっくりだろうな。私が痛くないように、とても優しくしてくれるだろう。そしてその手は段々と下へと降りていく。脇腹をなぞり臍をかすめ、そして更に下へ。
陰毛を掻き分け肉の裂け目を弄ぶ指は、すぐドロドロになってしまった。大喜くんの事を考えているといつもこうだ、私って変態なんだろうか。まあ変態でも構わないか、気持ちいいんだから。
入り口をグチュグチュ音をたてて掻き回すけれど、指先を僅かに入れるだけで中は弄らない。だってしたことないし、なんか怖いし。でもいずれは大喜くんとするんだよね、
とりあえず良いか、どうでも。まず今は、とにかく集中だ。
頭の芯へと快感が集束するイメージを描きながら肉芽をこね潰し、一気にとどめを刺すべく指を加速させていく。
沸き上がる快感の波を捉えて舞い上がり、爆発的な悦楽に身体を貫かれて私はガクガクと痙攣しながらタオルの上で崩れ果てた。
一仕事終えてウトウトとしかけたまま、それでも視線はドアへと向けたまま動かさない。もしかしたら大喜くんが、そこにいるのかもしれないから。そんなことをする子じゃない、何度も何度もそう思っておいてまだ私は、何処かで
一方的に襲われた、だから
大喜くんが好き、愛している。でも自分から動くのは怖い、だから向こうから来てほしい。こんなの、告白前と同じじゃないか。
私はきっとかなり前から、大喜くんが好きだった。なのに目を背け、その想いに名前を付けなかった。怖いから、失敗したときが辛いから。
――それは大喜くんだって、同じだったはず。でも大喜くんは私を真っ直ぐ見つめ、好きですと言ってくれた。私は返事をするだけでも震えたのに、大喜くんは自分からぶつかってきたんだ。
私だって、そうしなければならない。纏わりついてくる不安の鎧は脱ぎ捨てるんだ、勇気だけの素肌で。……いやまあ現状既に素っ裸ですけどね。
考えるのはもういい、私に必要なのはたったひとつ。踏み出す勇気だ。
これが熟考の結果なのか眠気のせいなのか、それは分からない。どちらでも変わらないし、どうでもいいけど。今の私に必要なのはたった一つ、踏み出す勇気だ。
ここで動けないなら、もうこんな身体はいらない。バカが無駄に考えるな、黙って突っ込め。
さぁ――行こう。
でもって短絡的な私と来たらだ、そのまま――大喜くんを押し倒してしまったのだ。
まあ考えてみたら夏風邪の看病した時も押し倒したけど、今回はそのまま跨がってそして、……してしまった。最後まで、ガッツリと。
大喜くんは呆然としたまま動かなくて、私が一方的に満足して身体を離した辺りでようやく口を開いたくらいだったな。
『いや、えー……バカですか千夏先輩』
うんそうだね、バカだよね。事前のオナニー後と同じく性欲が充たされたお陰で理性が戻ってきた私は、まるで他人事のようにそうやって応えたのを覚えている。て言うか、どう考えてもバカだ。いくらなんでも無茶な理屈を付けて男子に跨がり強引にセックスするとか、バカじゃなかったら痴女だよ。むしろ両方だな、絶対。
まあそれでも大喜くんはブレることなく部活に邁進し、そして私も負けじと頑張ってきた。セックスは絶対ダメではないけど積極的にはしない、と約束したのが効いたんだろう、お陰さまで栄明女子バスケットボール部は見事に全国制覇。大喜くんも大喜くんでライバルに雪辱を晴らし、お互い笑顔で夏を終える事が出来た。
良い機会だからと私は冬を待たず引退を宣言し、万雷の拍手の下ユニフォームを壁にかけ普通の女の子に戻りました。……いやうん、それは栄光の証。輝かしく誇らしい、青春の轍。しかし、だ。その瞬間私には、今まで背負ってきた「責任」が無くなってしまった。
もう堪える意味がない、これからは全部――好きにしていい。
そんな状態で迎えた本日は8/26、つまりは不肖この私め19歳の誕生日。まさか落ち着いて過ごせるわけがない、前日から興奮しすぎて寝不足もいいところだ。
去年は学校へ敗戦報告の後で向かった道を、日が高い時分に辿っていくのは楽しかった。だけどそれより楽しいのはきっと、あの民宿でこれから繰り広げられる大喜くんとの逢瀬。ああ、楽しみすぎて死にそうだ。
あの日ケーキを食べた浜はあの辺だったかな、なんて言いながら歩いていてふと思う。夏も終わりの時期、海水浴客はもうまばら。この状況なら、
旅の恥は掻き捨てと言うし、日差しもそこまで強くない。いっそ外で、なんてのも興奮するかもしれない。
一旦そう考え出したら止まらない、それが私という女の悪いところだ。人気が更になさそうな場所目掛け、私は足を速めていく。全く私と来たら、本当に。
多分悪い予感はしていたんだろう、岩陰に連れ込まれた大喜くんの顔には諦観が浮かんで見えた。うう、見下げ果てた先輩で申し訳ない。申し訳ないけど、でも私はこういう女だから。
「えっと、大喜くん。……私は今ここで、したいです。……大喜くんがイヤなら民宿まで我慢するけど、どうかな」
ああ、本当に私は悪い女だ。大喜くんが私にノーを突きつけられるわけがない、それを知った上で選択を託すのだから。
想像通り大喜くんは少しの間黙って、そして。返事する代わりに、口付けをしてくれた。言葉はなくても、それで良い。ちゃんと伝わるから。
そのままゆっくり、大喜くんの身体を岩の方へと押し付けていく。背中がちょっと痛いかもしれないけど、まあ平気だろう。鍛えてるんだし。
所謂壁ドンみたいな姿勢でキスしながらも、私の手はそっと大喜くんの肌を滑り降りる。腰を通り越し、その下へと。
「ん、……っ」
指先で布越しに軽くオトコノコをつついただけで、合わさった唇から切なげな吐息が漏れていくのが愛らしい。8月に入ってから二人とも忙しくて「お預け」だったせいもあって、膨らみ方が強い気もする。パンパンに膨れ上がった布地は今にも破れそうだ。
これは、解放してあげないと可哀想か。するりと指を這い寄らせて戒めを解くと、待ち構えていたように大喜くんのそれが顔を出す。窮屈な環境に置かれたのが不満なのか、大きく反り返って。
さすがにまだくわえたりするのは怖いけど、それでも愛しさを込めて触れていく。いずれはもっと色々してあげたいけど、それはオトナになってからで良いと思う。私たちは私たちの速度で歩んでいこう、まあ今でも十分一足飛びな気もするけど。
そんな事を思いつつ手を速めていくと、大喜くんの身体がビクンと跳ね、そのまま――。
「ぁ、あぁ、あー……っ」
手の中で大喜くんのオトコノコがトクントクンと脈打ち、熱い精液が放たれていく。それはまるでゼリーのような密度で、ずしりと重く感じる程。
こういうのを「溜まっている」と言うんだろうか、それとも興奮すると濃くなるものなのかな。
まぁ、良いか。手から溢れず残る精液を舐めとりながら、私は岩に手をつき大喜くんにお尻を向ける。汗とその他でグシャグシャのショーツは砂の上に脱ぎ捨ててしまう、どうせもう使い物にならないし。
「あ……じゃあ千夏先輩、ちょっと待って……」
ゴソゴソとポケットを探りだした大喜くんに、私は小さく「そのままで良いよ」と囁く。そう、何も準備なんかいらない。直接そのまま、私の中に来てほしい。
そんなの不味いですよ、と狼狽える大喜くんの顔はここからでは見えない。だけど私を気遣ってくれているのはしっかり伝わってくる、だからこそ私はそれを撤回はしない。
言うべき事は、そんな事では無いから。
「私は大喜くんが好き。結婚したいし子供もほしい、死に水取ってあげたいし同じお墓に入りたい」
私が見る新しい夢は、大喜くんと過ごす未来。この命が続く限り、いや終わってもまだ共にありたいと願う。その為にここで、大喜くんの全てを受け入れたいのだ。勿論それは大喜くんにとって、負担になるかもしれない。そもそも同じ夢を見てくれるかなんて、まだ分からない。どんなに愛し合ったって、ふとした拍子に別れてしまう可能性はある。出逢った人と一生一緒にいられるなんて、奇跡と変わらない確率だろう。
でも私は、その奇跡を手にして見せる。万に一つなら一万回、億に一つなら一億回挑んでやる。それに百回やられたら百万回やりかえせ、が栄明魂だし。
「だから、さ。……大喜くん、来て」
返事は無い、でもその気持ちはすぐに分かった。視界の端にあった汚れたショーツの上に、封を開けないままのコンドームが落ちたのが見えたから。
そしてそれを視認して数秒の後、私のお尻に手が置かれ。……僅かな間を経て、私のオンナノコを割り開くように熱い塊が入ってきた。
「ぅあ、あ"、……ぁっ」
今までとは全く違う、凄まじい灼熱感。粘膜同士が離れまいと吸い付きあい、ゴリゴリと膣肉が抉られていく。薄いゴムの被膜がないだけで、こうも変わってくるのか。
突き上げられる度、引き抜かれる度、バチバチと額の裏側で稲妻が瞬いては消える。
呻くような低い喘ぎは止まらず、腰を打ち付ける音とユニゾンするのが遠い世界のように聞こえる。
白く染まる意識の隅で気付くのは、お腹の中に生まれた小さな惷動。
ああ、来る。大喜くんが、射精する。ゾワゾワと背筋に広がる快楽の波動はそれを歓迎し、そしてそれは脳を経由せず身体を駆け抜け、勝手に口を抉じ開けていく。
「い、い……よっ、出……し、てっ。奥に、飲ませ……てぇっ」
瞬間、私の一番深い部分で爆発が巻き起こった。
いつも感じるコンドームがブクリと膨らんでいく様子ではなく、熱い迸りが粘膜を焼いていく。子宮口が溢れる精液の勢いで押し込まれ、更に奥へと精子が殺到していくのが分かる。
取り返しがつかない事をしている背徳感がその快感を底上げし、後戻りできない程の高みまで意識が押し上げられてしまう。
目の前が真っ暗に染まっていく中、私は譫言のように大喜くんの名前を繰り返し叫んでいた――……。
「やー……ゴメンゴメン、ちょっと理性飛ばしすぎたよ」
あれがちょっとですかっ、と呆れ顔の大喜くんに進められたお茶を一啜りして私は息を吐く。
あのまま私が気持ちよく失神したあと、大喜くんは一人で私を民宿まで運ぶ羽目になったのだ。それもあちこちから色々なものを漏らしたまま動かない19歳の女子を、なのだからさぞ大変だっただろう。まあ本人としては、目が覚めたら浴衣着せられて布団で寝ていたから実感はないけど。なんかもう要介護だな、私は。
しかし窓の外を見れば、すっかりと陽も落ちきっている。岩陰に引きずり込んだのが昼前の筈だし、随分よく寝ていたものだな。
まあまだ
せっかくの機会だもの、楽しまなければ。
「さてと大喜くん、私はもっとしたいんですけど如何でしょうか」
またまた呆れ顔をする大喜くんだけど、それが拒絶でない事はよくわかっている。
だって私たちは、いつだってこんなもんなのだ。考えるより行動するのが性に合う、バカ二人。それでいい、それがいい。
さあ、愛し合おう。これからもずっと、ずっと。
「そういや私のショーツって、あのまま? それともコンビニのゴミ箱とかに捨ててきた? 」
「……すっかり忘れてました、今から拾ってきましょうか」
「いや、うーん……。さすがにそれは汚ないし嫌かな。まあ良いでしょ、地元の小学生とかが拾って宝物にするかもだし」
「見ず知らずの小学生の性癖歪めちゃダメですよ、俺帰りに拾ってきます」