好きだから、好きだけど。時にはそれが、重くなる。
そりゃまあ、嫌だとか言う気はない。こっちだって好きなんだから、それは当然の事なんだ。それは分かっているんだけど、でも。
――さすがに千夏先輩、奔放すぎる。そのうち身体壊すんじゃないか、ってくらいに。
いや先輩は自分を曲げない人だ、もしかしたらずっとこうだったのかもしれない。関係性が変わったからグイグイ迫っているように見えただけで。
最初のキスは付き合いだしてから十日、俺の誕生日。なんとなく浮わついた心持ちで一人の時間を過ごしていた時に、突然千夏先輩が部屋に入ってきたんだ。何事かと思う暇も無いままキスされ、去り際に「付き合ってるからセーフ」とか言ってたな。あれは何の言い訳だったんだろう。
でもそこから段階をすっ飛ばして、一気に突っ込んで来るとは思っても見なかった。
二人同じ部屋にいると、ちょっとだけ居心地が悪く思う。付き合っている、恋人同士という事実が何処かくすぐったいからだろう。付き合っているからこそ、そこに浮かれすぎてはいけない。千夏先輩がこれからも俺を好きでいてくれるように、部活も勉強も頑張らないと。でも正直、好きな人が側にいれば意識せざるを得ない。
ああ、付き合うって、恋愛って、難しい。
千夏先輩がどう思ってるかも知りたいけど、まあこの人表情が読めないからな。どういう感情なんだか分からない顔してることが多いし。今はジャンプ片手にぼんにゃりしてるけど、何を考えているのやら。
今の千夏先輩は、パジャマ代わりにしているオーバーサイズのシャツ姿。……なんだか身体の線が出ている感じだし、下がやけに涼しげなのが少し気になる。そして触れようと思えば触れられる、だからこそ理性を保って平静を装うのが俺だ。
全く無防備だよな、この人は。前一緒にお昼食べた時も、目の前に俺がいるのにそのまま寝ちゃうんだもん。……なにもしないけどさ、そりゃ。でも少しくらいは警戒してほしいかも。そういや来たばかりの頃も「一緒に住むのが大喜くんで安心した」とか言ってたな、あの頃とは全然違う関係になったとは言え――俺が危険だとは思いもしないらしい。
――と。
「大喜くん大喜くん、こっちおいで」
こっちの考えを知ってか知らずか、正座した千夏先輩が手招きをしている。なんだろうかと寄っていくと、先輩は自分の太股をぺしぺししながら「膝枕したげる」なんて変わったことを言い出した。
一体どういう風の吹き回しなんだろうか、と思わなくもない。だけどまあ、それってなんだか凄く恋人っぽいし憧れはあった。……良いのかな、とも躊躇いそうになるのを抑え、俺は言われるまま先輩の太股へとゆっくり後頭部を下ろし――。
「う、ぁ」
……驚愕の呻きを上げていた。
下から見上げる形になった俺の視界には、シャツの中がはっきりと見えてしまってた。いや、自然にこうなるわけがない。先輩は俺が横たわった瞬間、頭を覆うように布地を持ち上げたのだ。なぜそんなことを、と考える暇なんかあるわけがない。なにしろそこには、有るべきものが無いのだから。
本来ならば胸部を隠しているはずのブラジャーは影も形もなく、布越しに入る明かりで二つの膨らみとその頂点にあるピンク色の突起まで写し出されてしまっている。まるで最初から、こうしようとしていたかのように。
「サービス、だよ」
小さな呟きはでも、俺の理解を越えすぎている。こんなにも薄い服なことか、ノーブラなことがなのか、それとも――もっと先があるのか。心臓がドクンと大きく鼓動を打った衝撃と、なんとかおっぱいから目を逸らさなければという意識がない交ぜになり、混乱のなか顔を横向けた俺。そこにはやはり、またしても有るべきものが無かった。
何も、無かった。
黒々と繁った毛は遮られる事なく、暗がりのなかでさえ自己主張を緩めない。そしてその奥には、確かに見えている。先輩の一番深い場所へと繋がる、肉の裂け目が。
見えてはいけないと思いながらも目を閉じることは出来ず、しかも身動きは取れない。被せられたシャツ越しに頭を押さえられ、その上更に。
「わ。……そっか、こんなになるんだね」
もう一方の手が俺の足の間を這い回り、攻め立てていく。あっさりと引きずり出され、しなやかな指先に弄ばれる俺自身。この有り得ない状況でも、どんどん自分が隆起していくのが止まらない。たちまち痛みさえ感じるレベルにまで勃起が極まり、意識が屈しそうになっていく。
状況が分からない、なにもかも分からない。こんな状態で、何をどう耐えれば良いのか。寸断される理性の果てに、快感がついに噴き上がった。
「ぅあー……出てる出てる。こんな感じなのかー……」
無邪気ささえ覚える声に促されるように、奔流は収まらない。羞恥と罪悪感と、それを吹き飛ばす程の快感。ただそれに導かれ、呻きながら俺は射精し続ける。
どれくらい続いたか、放出がようやく止まった時。不意に戒めが解かれ、暗かった視界がクリアになる。千夏先輩が立ち上がり、支えを失った頭が床に着地し僅かな痛みを立てるけれど、俺の耳はそんな些事よりもずっと大事な声に支配されていた。
「触っただけだからセーフ、だよね」
悪戯っぽい囁きだけを残して千夏先輩はまるで風のように立ち去り、後には呆然とする俺一人が残される。何もかも、夢だったかのように。でも千夏先輩が腰を下ろしていた所には粘り気の強い液体が染みをつくり、これが現実なのだと告げている。
一体何が起きたのか、何がしたかったのか。射精後の気だるさで脳が働かないまま、俺の思考は蕩けて消えていった。
一夜開けても疑問は晴れず、でも千夏先輩はさっさか朝練に行ってしまった。まさか体育館でそんな話は出来ないし、真意を確かめようもないままにもうお昼だ。
起きた事が事だから、匡に相談もできない。どうしたもんかと無い頭を悩ませていると、スマホが着信を知らせてきた。
もしかして、と視線を落とすとそこにはやはり。一緒にお昼食べよう、と千夏先輩からのメッセが飛んできていた。ブレ無いな、あの人は。何を考えているのか、健闘も付かない。でも待たせるわけにはいかないし、それに――二人きりになれば話もしやすい。
訝しげな顔をする雛たちを残し、俺は弁当の包みを掴んで立ち上がる。いつもの場所まで急ごう、そして腹拵えが済んだらちゃんと話し合おう。
いくらなんでもあんな、ああいう事を何の気無しにするものじゃない。距離感が独特すぎるのは知っているけど、その辺は言っておかないと。
薫風吹く屋上で二人、ならんで弁当を広げる俺たち。天気がいい日は大抵ここでお昼を過ごすのが、最近俺たちの日課になりつつある。あの体育倉庫も勿論使うけど、ここなら更に安全だから。立ち入り禁止扱いとは言え、別に見回りが来るわけじゃない。前にジャージを交換した時もそうだけど、そもそもこんな所に来る人自体がいないのだ。一応屋上へ上がる階段は一年生が掃除するけど、開けて外へ出ようとする奴は聞いたことがない。
まあそれ以上に、鍵を持っているのが千夏先輩とその友達くらいだから出たくても出られないんだけど。本当は職員室で一括管理するべきモノのはず、けど使う機会がとにかく少ないって事で天文部の部室が定位置になっている。その部員さんから鍵を借りたのが例の時で、その後返す前にコピーしたのを千夏先輩はコッソリ隠し持ってるのだ。…ホントに何なんだろうな、この人。色々と謎が多すぎる。
なんて考えているのを悟られたのだろうか、千夏先輩が箸を止めてこっちを見詰めているのに気が付いた。
食べながらする話ではない、だけどこの機を逃したら先輩寝てしまうかもしれない。食べたらおねむ、千夏先輩はいつだって本能に忠実だ。今のうちにどうにか、問いただすべきではないか。
「あ、の……千夏先輩っ」
夕べはどうしてあんな、と言い掛けたその時。千夏先輩は微笑んでそして。
「ねえ大喜くん。昨日の
……ろくでもない言葉の爆弾を、叩き込んできた。
アレって、昨日のって、それは――それは。あの異常な時間を思い出し、ブワッと血管が拡張する感覚。指先から力が抜け箸を取り落としても、それを意識できない。頭と身体が切り離されていくような、奇妙な焦燥感。
コンクリの地面から不安が這い上がって、四肢を押さえ込んでいく。俺がそんな状態だと認識していないのか、はたまた認識した上で無視しているのか。
千夏先輩は顔を近付けて妖しく笑うばかり。
「生臭くて苦くて、あんまり美味しくはなかったけどさ。それでもね、凄く愛しく思えたんだ。大喜くんの精液だからかな、多分そうなんだと思うんだよ」
考えてみれば違和感はあった、あの後残っていた染みは千夏先輩からのものだけなように見えていたから。拭き取る間も無く千夏先輩は立ち去ったのに、飛び散ったであろう精液の痕跡は全くなかった。それはつまり、その全てが千夏先輩の手の中に収まったと言うこと。そしてその全てが、千夏先輩の――
あんな穢らわしいものを、一番大切な人がその身に取り込んだ。申し訳無さと背徳感で背筋が凍り付きそうだけど、固まっている事さえ出来ない。千夏先輩の顔がすぐ目の前に来て、囁いたから。
「ねえ大喜くん、普段はどんな風にして出すのかな。私に見せてくれない?」
一体何が起きているんだろう。何度こうやって同じことを思えば、日常が戻って来るのだろう。いや、もう二度と戻れない。きっと何か大事なものが、決定的に欠けてしまったのだ。
ぺたんと座ってこっちを見上げる千夏先輩の前で、俺は今自分自身を扱き続けている。じっと見つめるその顔は、何を考えてるのかやっぱり分からない。何もかもが、理解できない。それでも俺は、手を止められない。
千夏先輩をこんな風に扱って良いわけがない、許されるわけがない。でもこれは、本人が望んでいる事だ。
「おぉー……、男の子のやり方って激しいねぇ。私ももっと、強く触った方が良かったかな」
驚きと好奇心が浮かぶ声、輝く瞳。こんな行為を目の当たりにして、どうしたらここまで平和な表情でいられるのか。そしてなぜ、距離を詰めてきているのか。
この人、何処かがおかしい。いや、全部か。
どう考えても歪なこの事態の中、それでも摩擦の刺激には身体が敏感に反応していく。腰の奥から込み上げてくる熱いたぎりが知らせている、射精の時が近いのだと。
「ん、昨日みたいにビクビクし始めたね。そろそろかなー、じゃあちょっとだけ待っててね」
揺らぎつつある視界の中で、千夏先輩がつっと前に進むのがわずかに見えて、そしてそのまま。
――千夏先輩は、俺をぱくりと咥えてしまった。
あたたかくやわらかい唇が幹を包み、先端を蠢く肉厚の感触はきっと舌。一瞬にして根元まで呑み込まれ、口腔の全てに締め上げられて。その状態から、どうして堪えられるものか。
「っ、ぅ……う"……っ」
千夏先輩の喉の奥へと、精液が迸っていく。大好きな人の内側を、取り返しが付かないくらいに穢している。さっきの話は只の嘘かもしれない、でも今この感触は紛れもない現実。千夏先輩の口内へと
喉を鳴らして止めどなく放たれる精液を嚥下し続ける千夏先輩。ややあって漸く放精が終わると、その顔がゆっくりと引き抜かれていく。
「ふぅ……直だとスゴいねぇ、喉が焼けるかと思ったよ。まあ制服汚さなかったしセーフだよね、一応」
けぷっと満足げに息を吐くその姿は、いつも通りに可愛らしい。でも状況が状況なのにこうなのは、明らかに異常なのだ。もしかしてこの人の内面は、壊れかけているのかもしれない。俺が告白なんかしたせいで、ストレスが臨界を越えてしまったとかか。
どうしたら良いのか、どうするのが最善なのか。そんな迷いを抱えようとしたその時、まるで狙い済ましたように予鈴が響き渡り千夏先輩がバッと立ち上がった。
「っと、不味い不味い。大喜くん、
私鍵かけないといけないから先に行って、と背中を押されながら下を穿き直して駆け出す俺。今は考える暇なんか、与えてはもらえそうも無い。
この人の行動に、意味なんか求めてはいけないんだろうか。
セーフって、何がどうセーフなんだろう。
あれからずっと考えているけれど、今でも分からないままだ。
何かにつけて俺にあれこれとしてくるし、どんどん過激になっていく。全部アウトな気しかしないけど、千夏先輩としては色々あるらしい。
俺もそれを受け入れてしまえば、お似合いのカップルになれるんだろうけど。
そうなっても良いんだろうか、それこそアウトじゃないか、なんて思ってしまう。俺はどうにかして理性を保たなければならない、そうしないとバカの暴走特急になってしまう。
……なんて思ってはいたのだけれど、どうにも挫けてしまいそうだ。
「ねぇねぇ大喜くん、ほらおいでー。ちゃんと中キレイにしてきたからさぁ、早く早く」
千夏先輩の白いお尻が眼前に晒され、更にその手が尻肉を割り広げて中心の蕾さえさらけ出す。こんな姿を見せ付けられて、俺にどう抵抗の意思を示せると言うんだろうか。
この間から千夏先輩は、そこでのセックスを求めてくるようになっている。お尻なら子供も出来ないからセーフ、だそうだ。
本当なら、ひっぱたいてでも行動を改めさせるべきなんだ。いくらなんでも高校生として、節度が無さすぎる。もう少しは頭を使って欲しい。
そう、言えるものなら言いたいんだけど。
俺も俺で、こんな歪な関係を何処かで楽しんでしまっているのが問題だ。まあそりゃ、千夏先輩と致すのは気持ちいいし幸福だ。恋人同士なんだから、別に咎められる謂れは少ししかない。妊娠とか退学とかそういう事態にさえならなければ、それこそセーフとも言えるのではないか。
こんな堪え性の無い自分に少しだけ嫌気が指すけれど、それでも身体は身体で素直になってしまうから複雑だな。
苦笑しながらも俺は先輩の腰を掴み、薄く口を開けたすぼまりへと俺自身を押し当てる。出来ればその下、先輩のオンナノコにも触れてみたい。でも多分そっちはダメって怒るだろうし、千夏先輩を傷付けたくもない。今はこっち、セーフな方へと入っていこう。
ぐにゅりとめり込んだ先端がグッと締め上げられ、でもそこを越えると柔らかくみっしりと包まれる。注入されたローションの滑りもあって奥へと引きずり込まれ、直腸全体が俺を誘うように蠢いているのが分かった。
そこを敢えて引き抜くように腰を引くと、中が擦りあげられるせいか千夏先輩の口からは低い呻きが漏れていく。抜け落ちるギリギリで一気に反転し突き上げると今度出るは悲鳴のような短い叫び。それが楽しくて夢中で腰を振り、俺はどんどんと登り詰めていく。これがアウトじゃなくて何がアウトか、なんて頭の隅で思いながら。
「うぁ、……っ、お"……ぁっ」
リズミカルな水音に切れ切れの嬌声を混ぜ混みながら、握り潰される程の締め付けを感じ。限界を越えた俺の脊柱を精液が駆け抜け、一気に放出されていくのが他人事のように遠い。
お腹の中を汚されながら喘ぐ千夏先輩の表情はここからでは見えないけれど、でもその声音には満足気な色が混ざっていく。
今日もまた、千夏先輩を
千夏先輩が何を考えてるのかいないのか、何がしたいのかしたくないのか。本人が何も言わず行動だけ示すから、全く分からない。
ひとつだけ確かなのは、この異常な日常はこれからも続くと言うこと。それこそどちらかが別れを切り出さない限りは。そしてそんな日は、きっと来ないのだ。
俺は千夏先輩が好きで、千夏先輩は俺が好きだから。
このままでは良くないのだけれど、絶対良くないけれど、でも好きなのは確かなんだ。
ズルリと俺が抜け落ちても拡がったまま、白濁液を逆流させる千夏先輩の肛門を見つめながら、ぼんやりと俺はそんな事を考えていた――。
ちゃんと続きます、大丈夫です。
ただTwitterの不具合とかあって時間が……。