新年最初の陽が昇り、また一年が始まった。卒業まで4ヶ月を切っている、一日一日が大切な時間。記念すべきその最初を私は、――大喜くんと抱き締めあったまま迎えている。と言うか大喜くんを抱き枕にしてる感じだな、うん。身体中ガビガビで部屋は散らかり放題、頭は蕩けきり手足は大喜くんをホールドしたまま動かない。……固まってるな、これは。体温が上がるまではどうにも出来ない、もう少し微睡んでいようか。毎朝早起きして体育館へ駆けていく日々を送っていた私たちが、こんなにダラけてしまうとは。――まあ、良いよね。めでたい日だ、サボろう。
大喜くんが起きたら二人で片付けだな、そしたら朝の身支度を一応して何か食べよう。さすがにお節はないけど、餅は売るほどある。
――と。腕のなかにいる大喜くんがモゾモゾと動くのを感じ、私は思わずその顔を見つめてしまう。可愛いなあ、本当に。こんなに可愛い子を前にして、私はよく我慢できてたものだ。
これからもずっと、こうしていたい。この先も、長く永く。……そんな爽やかな事を思っているというのに、私はやっぱり
「わ、……ぁっ」
ドクンと脈打ちながら吐き出される精液、それは液と言うかもう白い塊だ。手にベットリと絡み付き、重力に逆らって落ちようとしない。朝イチだからこうなのだろうか、良くは分からないけど結構スゴいものだとは思う。顔の前に手を持ってくると、生臭い雄
さて、だ。どうしようかな。このまま大喜くんが起きるまで待とうか、それとももう一眠りしようか。時間はまだまだたっぷりあるから、いくら悩んでも構わないのだけれど。
結局。私は大喜くんに気を遣って口を拭った後しばらくウトウトとし、今度こそ目を醒ました大喜くんに起こされる形で起き上がった。むにゃむにゃと寝惚け顔で明けましておめでとうを言い合い、なんだかそれが馬鹿馬鹿しくてどちらともなく笑いだして。
そんなこんなで、朝も食べないまま私たちは一緒に湯槽へ浸かっている。寒い日だしお風呂は良いね、まだ朝だけど。朝湯朝酒貧乏の素、なんて事を申しますがまあめでたい日なんだから良いだろう。あとお酒はさすがに自重だ、また理性が負けかねないしお風呂場では危険すぎる。このままもう一回戦、というのも考えはしたけどとりあえずはこれも自重。こうして二人でイチャついて過ごすのも、なかなかに楽しいから。
パチャパチャとお湯を弄びながら、健全に良い湯を味わうのだ。
「明けたねぇ大喜くん」
「明けましたねぇ千夏先輩」
熱に緩んだ頭で出てくるのは、その程度。特に意味もなく、ぽつりぽつりと会話は流れていく。今までのこと、これからのこと。そんな話を。
私にとっては高校最後の4ヶ月が始まったわけだけど、実感はないな。そりゃあ猪股家を出て大学生になる算段ではあるけれど、だからって私たちはそこまで変わらない。大喜くんが栄明を卒業するまでは、あまり大っぴらには出来ないから。大喜くんが最後の一年を悔いなく過ごしてほしい、あまり周囲から余計なことを言われず済むようにしておかないと。付き合ってる事は公言して久しいけど、こういう関係なのは隠そう。配慮は大事だ。
「大喜くんさぁ、私が卒業しても浮気しないでよ?」
「しませんって、失礼な」
まあそんな器用じゃないって知ってるけどさ、一応釘は刺しておきたい。蝶野さんはもう恋人も出来て心配ないけど、あのゆるふわ後輩がなんか油断できないからなぁ……。
そもそも大喜くん可愛いからモテるんだよね、女子にも男子にも。私に関してはそういう事はない、こんなワンパクで逞しい子だもの。
にしても一年離れて過ごすのか、寂しいな。このまま猪股家に居座る訳にもいかないし、だからって大喜くんを連れていくことも問題だ。次の夏こそ夢を果たしてほしい、私のように闘うことさえ出来ないまま終わってほしくない。その為には、ちゃんとした環境においてあげないと。
……ちゃんとした環境、か。蝶野さんの気持ちに気がついたときも、私はそんな言い訳をしたな。バスケの為だから同居は続けないと、なんて。
あの頃にはもう、私は大喜くんを好きだったのに。
お湯のなかで大喜くんにしなだれかかりながら、思いを馳せてみる。あの過ぎ去った日々に、そしてこれから来る季節へと。
もしも何処かで歯車が狂っていれば、今の私たちはない。奇跡みたいな確率で成り立っているこの日々は、些細なことで失われるかもしれない。
だからこそ、私は止まりたくないのだ。
いつだって、愛を確かめあいたい。
「大喜くんさぁ――私のこと愛してるって言ってよ」
「愛してます、千夏先輩」
手のかかる先輩を持って大変な我が恋人は躊躇わず真っ直ぐにそう言い、熱いキスを私にくれた。
あんまりお風呂を正当な用途以外で使うものじゃないな、と湯中りしかけて熱りを持て余しながら思う。普段あまり長風呂しないし、ちょっとイチャつきすぎた。とは言え私と言う人間は、懲りはしても反省はしない。一旦休憩挟んで、またしてもベッドでむつみあっているのだから。
しかしながら今回は私が下になり、平時とは違うスタイルなのだけれども。思えば最初からずっと跨がってばかりだし、正月という非日常を味わうためにも一回変えてみようよ、と私提案いたしました。
いわゆる正常位という奴で、大きく股を広げて大喜くんを受け入れるのはなんだか可笑しいな。間が抜けているというか、なんというか。
ベクトルが横向き加減になったせいだろう、いつもほど深くは入ってこない。でも入り口から中腹近辺がゴリゴリと擦られるのは、これはこれで悪くないな。それに必死で腰を振る大喜くんも、やっぱり可愛いし。ぱちゅぱちゅ音を立てて応える私の下半身も、そう思っていることだろう。さっきから脳へ快感の伝播が止まず、頭がどうにかなりそうだ。
一突き毎に視界が歪み、抉り出される勢いで息が詰まる。自分から動かなくて良いと快感に集中できるんだな、始めて知った。
大喜くんも大喜くんで悦んでいるのか、可愛い喘ぎが切れ切れに届いてくる。……こんなとこまで可愛いんだからずるいな、可愛いだけじゃなくて頑張り屋でもあるし。
何度も何度もガクガクと痙攣し射精を繰り返して尚、その動きは緩まない。何処までも私を愛してくれる、私が満足するまで引き下がらない。それに応えて上げる嬌声は、我ながら不格好。長く尾を引く自分の呻きを何処か遠くに感じながら、私は自分の制御をオフにしていく。
私の我慢のスイッチ、オフ。
私の理性のスイッチ、オフ。
私の意識のスイッチ、オフ。
後はもう動けなくなるまで獣のように暴れるだけだ、大喜くんには悪いけど私はそういう人間なのだから。
私が最後の力を使い果たし糸が切れたように眠りについてから、大喜くんは正月の些事を一人でこなしてくれたらしい。らしい、と言うのはどうもまだ意識がフワフワしているから。身体はとりあえず目を醒ましても、頭が九割くらい寝たままだから大きい赤ちゃんみたいな有り様だったとか。まあそれはそれとして、家事が一段落した大喜くんに手を引かれて私は初詣へと繰り出している最中だ。
いつぞやに訪れて以来の小さな神社は雪化粧し、新年など何処吹く風と鎮まりかえっている。そう言えば去年は来ていないから、一昨年の夏が最後か。あの時は願いを叶えきれてなかったけど、今回はどうだろうな。
型通りに二礼二拍手一礼を終え祈るのは、在り来たりだけど大それた事だ。この絆が変わり無く続きますように、別れの時が来ませんように。
私はこの先もずっと、大喜くんを愛したいし大喜くんに愛されたい。結婚したいし子供も欲しい、死に水取ってあげたいし同じお墓に入りたい。
それが果たされるなら、そうなれるなら。私は他になにもいらない。