普段なら、聞き流してしまうような雑談の声。わざわざ気にも止めないで、歩き去るべきだろう。
でも俺はそうするわけにも行かず、すぐ脇となる鉄扉の影まで近付いて聞き耳を立てている。
だって、その雑談の主たちが話題にしているのは。
「千夏、今日来ないってさ。練習終わったらまっすぐ帰るって」
「あー、最近付き合い悪いよねナツ」
……他ならぬ、千夏先輩なのだから。
前に籠原の事で怒ってた渚さんと、あとは女バスの人たちだろうか。千夏先輩を何かに誘って、断られたらしい。
正直、こういう時の女子は怖い。いない人の悪口大好きだからな、みんな。
もし千夏先輩を悪く言うようなら、ようなら……。どうしよう。
ここで俺が敢然と出ていっても、返り討ちに会うだけだ。
でも付き合い悪い、か。俺は同居が始まってからの千夏先輩しか知らないけど、高一までは誘われたら断らないタイプだったりしたんだろうか。居候だからとかそういう遠慮で、友達付き合いを減らしているんだとしたら、それは良いことじゃないよな。
千夏先輩は、バスケのために日本に残った。でも、バスケ以外の全てを棄てる必要なんかない。千夏先輩に幸福になって欲しい、それが俺たちみんなの願いなのに。でも千夏先輩は気遣いと気配りの人だから……。
「まあ、ナツはバスケ一筋だからね。練習しに部活来てるだけで、他は興味無さそうだもん」
「真面目っちゃ真面目なんだけど、さ」
練習以外に部活来る目的なんかあるのか、とも思うけど。でも、まあ確かにあるか。俺もずっと運動部にいるわけだけど、練習して上にいきたい人と楽しく盛り上がりたい人は相容れないから。俺も前はバドが好きだからバド部にいたわけで、上を目指してはいなかったし。先輩と出会って、上へいく覚悟を知って。今ではすっかり変わったけどさ。
そうなるとこの人たちは、部活早めに切り上げてどっか遊びにいく気だったのかな、それで千夏先輩に袖にされた、と。
「仕方ないっしょ、バスケの為に家族と別れて親戚だかの家に居候してんだもん。そりゃ来ないわ、努力家過ぎる」
「偉いよねえ、ナツがいたおかげで今年はインターハイだし。アタシらだけじゃ、籠原に勝てるわけ無いもん」
「ホント偉人だよアレはさ、そのうち校庭に銅像立つよ」
……でもどうやら、怒るわけでも貶すわけでもない。先輩をちゃんと理解してくれているんだな、この人たちは。
このまま聞いていても、別におかしな方向へはいかなそうだ。
そろそろ俺も立ち去ろうか、と思った矢先。
「あーでも千夏、彼氏出来たっぽいよ」
……とんでもない一言が、俺の足をこの場に縫い付けてしまった。
なんだと。千夏先輩に、彼氏だと。俺があれこれ言えた義理じゃないけど、でもそれは。いくらなんでも。
何処のどいつだ、俺の先輩に手を出しやがって。いや俺のものじゃないけど、でも。
「なんか最近、後輩の子とよく一緒にいるじゃない? あれが彼氏らしいのよ」
「え"、あのじゃがいもみたいな? ナツってあんなのタイプだっけ?」
後輩のじゃがいも野郎、か。よく一緒にいる、ってそれは。
……いやまさか、俺かそれ。まさか俺が彼氏扱いされてるのか。そりゃ光栄だし勘違いを続けて欲しいけど、でもなあ。と言うか学校ではなるべく近づかないようにしてるんだけど、いつの間に。同居バレを防ぐ為にも、手を打たないといけないか。
「まあ、ホントに彼氏かどうかは知らないけどさ。――本人に、聞いてみるかなっ!」
突然の大声に、身体が縮こまった刹那。身を預けていた鉄扉が、轟音と共に弾ぜた。
いや実際には、鉄扉をブチ抜くような凄まじい衝撃が俺を吹き飛ばしたのだ。体当たりか蹴り飛ばしたのか、それは分からないけど。
不意討ちに対処できなかった身体は廊下に転がり、頭を打ったせいか目の前は激しく歪んでいる。
「あ、ホントにいた。生きてるかーい」
てちてちと俺の頭をつつく渚さん、返事をしようにも俺は動けないままだ。
三人に囲まれて、身体が麻痺した俺は。助け起こされるしかなかった。
「大喜くん、だっけ。奢ったげるからさ、好きなの頼みなよ」
気の良い先輩モードの渚さんはメニューをパタパタさせつつカラカラと笑っているが、俺は気が気じゃない。
フラフラの状態で、腕を捕まれたままカラオケボックスへと連れ込まれ。ドアから遠い奥の席で、しかも両側を挟まれて。これはもう、尋問ではなかろうか。
不味い。物凄く、不味い。もし同居がバレるような事になったら、それこそ大惨事だ。
何があっても余計なことを言うわけにはいかないけど、俺の頭でなんとかなるんだろうか。
「遠慮しなくて良いよ、ここの店長うちのOGだから。最悪足りなくても、先輩後輩の絆でどうにかするし。だよねー、紗菜?」
「それに確か朱里、親のカード持ってたよね。ここの払いくらい余裕でしょ」
「いや当てにすんなし。こないだもそれで怒られたんだから」
タチ悪いなこの人たち。にしても、どう切り抜けたもんか。
そもそもが歴戦の勇士だもんな、この人たち。千夏先輩がいくらスゴいったって、チームスポーツはエース一人じゃ勝てない。一緒にいて仲が良いってことは、そういうことだろう。
逃げ道を考えていると、朱里……さんがズイッとメガネをかけた顔を寄せてきた。近い近い近い。
「んー……。やっぱナツの彼氏にしては、ちょいとばかーり地味すぎるかな。針生くらいデーハーじゃないと、釣り合わないよ」
う。痛いところを突かれ、思わず顔がこわばってしまう。
そんなの、分かってる。もし俺が針生先輩くらい才能と自信を持っていたら、とっくに告ってる。
今の俺が、先輩にそんなこと出来るわけ無い。
「まあ、……ハイ。俺はそんな、大層なもんじゃないです。……好きは好きですけど、只のファンっていうかそういう……えと……」
言ってて、情けない。俺は所詮、そんなもんでしかない。
どんなに近くに行ったって、なにも言えない。出来ない。嫌われるのが、怖いから。
俺なんかじゃ、あの人の横には立てないんだ。
どんどん気持ちは沈んでいくけど、それでいい。とにかく、ここを脱出しよう。帰ってからゆっくり、自己嫌悪で潰れよう。
「ちー相手にそんなこと言ってたら、キリ無いけどね。あれは魔人なんだから、理屈で勝てる相手じゃないぞー。どっかで力押しに出て一発逆転狙わないと、勝ち目は無いぞ一年生」
うう。今度は紗菜さんに痛いところを突かれ、更に俺は小さくなってしまう。泣くぞ俺。
「ま、千夏相手に縮こまるのは仕方ないっしょ。おねーさんたちも協力したげるからさ」
頭をぽふぽふしてくる渚さん、有りがたいけどちょっと困る。
どうするんだよ俺。この流れだと、散々オモチャにされた上に遊び半分で告白させられかねない。
それはそれで、気まずいんだよ。
千夏先輩の友達と仲良くなるって、色々不味そうだし。て言うか同居バレしたらどうするんだよ俺。
とりあえず話だけ合わせて、逃げよう。そう思った、その瞬間だった。
「顔は可愛いんだから、あとは自信だよねぇ」
そう言いながら、渚さんは。俺の身体を、ソファに押し倒したのだ。
突然視界が90度上を向き混乱する俺の上に、渚さんがのし掛かってくる。
「自信が付くように、おねーさんが色々教えてあげようねえー」
血走った目、拘束する手。これは、不味い。非常に、不味い。
助けを求めて声をあげるも、他の二人は驚いた様子さえ無い。まるで、日常の光景であるかのように。
「渚ー、今日その子にすんの? 私は良いけど、朱里どう?」
「んにゃ、良いんと違う? 今から新しく、男引っ掛けて来んのめどいし」
事も無げな態度に、背筋が凍り付く。この人たち、こんなことを平然と何度もやっているようだ。
それはつまり。彼女らの友人である、千夏先輩も。まさか、でもそんな。
頭の中に、考えてはならない映像が次々と浮かび上がる。千夏先輩の、淫らな姿が。
やめろ、思い浮かべるな。許されない、ことだ。あの人を、穢してはいけないんだ。
必死で妄想を振り払おうとする俺の様子から、感付いたのか。渚さんが薄く笑いながら、耳元で囁く。
「心配しなくて良いよ、千夏はこういうの絶対しないから。堅物のバスケ馬鹿だからね、多分まだ膜付きだよ」
それが本当の事なのか確かめる術はないけれど、でもどこか安心して多少気が緩んだその刹那。
「んむ……っ」
俺の唇は、柔らかく熱いもので塞がれてしまった。
それが渚さんの唇だと認識したのは、顔が離れて少し沈黙が流れてからだ。
キス、された。
一方的に。
初めての、キスを。
こんな、形で。
呆然とする俺、相手は悪戯な笑顔。
「お、やっぱ初物? 可愛いねえ可愛いねえ」
言いながら俺の顔にキスの雨を降らせていく渚さん、そして抵抗も出来ない俺。
意識が遠退きかけ、でも。それを引き戻すように、新しい刺激が脳を焼いていく。
渚さんの手が淀み無く俺の腰をなで回し、更にその奥へと入ってきたのだ。
蛇のように這い回る指先に捕らえられ、露にされてしまう。もう一人の、俺が。
顔から火が出そうな程の恥ずかしさ、そして出所の分からない興奮が襲ってくる。なにもかも、メチャクチャだ。
「何よ、顔は可愛いのに意外と凶悪じゃないの」
「ちゃーんと使い方覚えて、皆の役に立とうねー」
いつの間にか紗菜さんと朱里さんも、無責任に囃し立て始める。それを受けて、渚さんは――
「あー……むっ」
俺を、その口で呑み込んでしまった。
一瞬の後にやって来たのは、暴力的な快感。温かく包み込まれ、中で俺を擦りあげるのはきっと、渚さんの舌。そういう行為の存在くらい、知っている。知っては、いる。でも、まさか。される事なんて、考えた事もない。
それだけでも凄まじいのに、そこから渚さんは顔を上下させだした。唇で幹をしごかれ、舌で小突き回され、息が止まる程快感の暴力に苛まれる。
ゾクゾクと背筋を駆ける冷たい衝動が、一気に弾けとんだ。
「ん、んんー……むっ」
渚さんの顔が僅かに微笑んだ気がしたが、それさえ定かにならない。誰かの内側に精液を放つという非日常の体験で、頭がおかしくなりそうだ。その上射精が終わって尚も口の中で愛撫され、余韻に浸るどころか再び自分が奮い立っていくのがわかる。
このまま、ずっと。この先も、してもらえたら。心の底で、そんな欲望が芽を出していく。
でも。ダメだ。
そんなの、ダメだ。
俺が、好きなのは。好きなのは――。
「あ……、ぉれ、は……」
千夏先輩だけが、好きだから。他の誰とも、そんなことをするわけにいかない。
喘ぎに渇ききった口から出るのは、切れ切れの掠れた声だけ。それでも拒絶を示そうとする俺を、朱里さんがペシリと叩いてきた。
「あのねー、出すなら言うのがマナーなんよ? ほら見てみ、これじゃ不意討ちよ」
そう言いながら翳されたスマホの画面に映るのは、俺の姿。顔を蕩けさせ快感に酔った、最低の姿がそこにあった。
撮られていた。気がつかないまま、撮られていた。
俺の精液を呑み込んだ渚さんも、その画面をニヤニヤしながら見てくる。全て予定通り、という笑み。
「あら可愛い、千夏に見せたらきっと喜ぶよー?」
ゾクリと脊柱が凍り付く感覚。これを。千夏先輩に。
そんなことをしたら、そんなことをされたら。
俺は、終わる。
もう、終わってしまう。
「……ありゃ。ねー渚、おばちゃ……店長からLINE来てるよ。それ以上は他所でやんなさい、ってさ。どうする?」
紗菜さんの声が、やけに遠く聞こえ。俺は囲まれたまま身動ぎも出来ず、裁定を待つより他になかった。
フラフラのまま引き摺られる様にして、裏路地のホテルへと。何も出来ないまま、絶望感に苛まれるばかり。
「良い子にしてたら、ちゃーんと消したげるからねー」
朱里さんの声はどこか無邪気で、だからこそ怖い。もし俺が歯向かったなら、きっと躊躇わない。あの動画は千夏先輩の下へと送られるし、あれこれと尾鰭を付けて俺の話をしまくるだろう。そう確信するほど、黒みが透けている無邪気さだ。
「朱里、そういう事しないの。黙って着いてきたんだから、それでいいでしょ」
ヒョイっと取り上げたスマホを操作し、俺の目の前で「削除」をタップしたのは紗菜さん。一応助けてはくれたが、でも逃がす気もないようだ。見据える眼光が、明らかにそう告げている。
その目力に気圧されていると、脇から渚さんが軽いステップで入ってきて――俺の唇に襲いかかってきた。またしても。今度は一層強く、深く、熱く。
舌が歯の間に入って強引に口を開かせ、そして口の中を掻き回していく。口を、犯されている。そんな感覚と共に、身体が後ろへ引かれていくのが分かった。
見えないからどっちなのかは分からないが、渚さんの押しと同調するように身体が倒されていく。
丁度さっきのように、のし掛かられた状態で。深い深いキスで、沈められていく。
ただでさえ悪い頭が酸欠で鈍るなか、右手が何かに触れた。柔らかくて湿った、でも熱い。触れたことのない、何かに。
「んー大喜くん、わかるかなー? これが、オンナノコ……だよ?」
朱里さんの言葉、そして僅かに視界に入ったその姿。俺の右手は、朱里さんの、下着の中へと導かれていたのだ。
オンナノコ。それは、つまり。
思考が沸騰するより早く、指先が押し潰される。濡れた温かい塊で挟み込まれ、呑み込まれていく。
入っていく。女子のなかに。
「よっぽど興奮してるんだね、スゴいスゴい」
紗菜さんらしき手は俺の下半身を掴み出し、ゆっくりとなで回し始めている。
恥ずかしい、温かい、苦しい、気持ちいい。感情はマーブル模様に混ざり合い、形を無くしていく。全部、消えていく。
ようやく渚さんが俺の唇を解放した頃には、もう完全に頭が働かなくなってしまっていた。
なんとか思考を整えようにも、状況はそれを許さない。
渚さんと入れ替わるようにして朱里さんが俺を跨いで、そして囁く。
「じゃーあ、……「初めて」しちゃおうか?」
グチュリと音を立てて拡げられたオンナノコ、その中は肉色の裂け目、それは捕食者の口。
溢れてくる期待と、それを上回る罪悪感が頭を塗り潰していく。
ここで屈してしまえば、もう俺は。千夏先輩を好きでいる資格を、完全に失うだろう。
どんな理由があっても、許されない。こんな事、許されない。
その意思に反してもう一人の俺が、l硬く屹立しているのが堪らなく恥ずかしい。
抵抗する力さえ無いのが、堪らなく悔しい。
それが伝わったのか、今にも落とされようとしていた朱里さんの腰が残り数センチで停止する。
「やっぱ最初だし、無理矢理は可哀想かな。……どうせなら、ナツとしたいよね?」
その名前にドクン、と心臓が一際強く脈打った。ナツ、千夏先輩。千夏先輩、と。
この人たちは、千夏先輩の友達で。
俺より千夏先輩に親くて。
だから、もしかしたら。
出来るのかもしれない。この人たちが、手を貸してくれるなら。
邪な期待が胸の奥で蔓延り始め、ほんの少し油断した、その刹那。
「ま、どうでもいいんだけどさ」
――その腰は、無慈悲に降り下ろされた。
腰と腰が密着し、俺が完全に視界から消えている。呑み込まれた、根本まで全て。
朱里さんの内側は歓迎するように蠢き、繋がっている熱が身体を焼いていく。
両手で潰されるような、あるいは食われていくような。そんな肉の感触。
「はーい大喜くんおめでとう、大人になれたねー」
嬉しそうに手を叩く渚さん、スマホを翳したまま笑っている紗菜さん。
「ちゃんと撮ってあげたから、後で一緒に観ようね」
そんな声も、どこか遠い。
意識が潰され、かき混ぜられ、俺が全く別のものに作り替えられていく。そんな、官能の暴力がやって来る。
ロデオのように激しく腰を振られ、もう何も分からなくなって。
粘っこい水音、激しい喘ぎあい、意味の分からない快感。それだけ、それだけしか残らない。
「ほらほら大喜くん、渚の口とどっちが気持ちいい?」
朱里さんの問い掛けに、応える余力なんか無い。比べる事も出来ない。
でも黙っていたら、渚さんにデコを弾かれてしまった。
「あのね大喜くん、そういう時は「君が一番気持ちいいよ」って言わなきゃダメだからね。それがマナーだから、ちゃんとしなさい」
そんなマナーがあると思わないけど、でも。歯向かう気力さえ、残って無い。
「いっぱいお勉強して一人前になったら、……千夏と出来るようにセッティングしたげるからね」
千夏、先輩。その言葉が、楔になって突き刺さる。
ヒビが入った壁は、止めようもなく決壊していく。
例え抗ったとしても只弾き飛ばされる、圧倒的な規模の濁流が迸って止まらない。
「んぁ、あー……れ? 出てるよ大喜くん、出てるってばー。出すとき言いなさいって教えたでしょー」
朱里さんがあきれ顔で立ち上がって、俺の額を小突いてくる。俺が抜け落ちたその隙間から、トロトロと白濁液を溢しながら。
射精、した。女の子の、中で。その意味くらい知っているけど、でも虚脱感がその重要性さえ覆い隠してしまう。
「それ以前に、二回目なのに早いって。頑張って我慢しないと、ちーに愛想尽かされるよ?」
さりげなく酷いことを言いつつ紗菜さんの手が、圧迫から解放された俺を再び締め上げる。
ヌルヌルと粘る手の動きは独特で、そしてやっぱり気持ちいい。そう感じてしまうのを、食い止める事が出来ない。気持ちが折れた俺の意思なんか無視して、天を向いて収まらないのがどこか不思議でさえある。
俺の身体は、次を期待している。裏切りも屈服さえ快感に変換し、すっかり隷属しようとしている。持ち主の気も、知らないで。
「じゃ、今度は私。ちゃんと我慢するんだよ?」
朱里さんと同じく、紗菜さんもまた俺に跨がってくる。そしてやって来たのは、さっきとまるで違うねっとりとした絡み付きだ。
締め上げの強さは、朱里さんの方が強い。でも全体が細かい蛇のように絡み付いて、吸い付く感触が凄まじい。気を抜いていると、命まで吸い上げられそうになる。
女の子って一人一人、こんなに違うのか。こんなにも、みんな凄いのか。
それでも、命令された通り必死に快感を堪えて。少しでも耐えようと暴れまわる紗菜さんから目を反らすと、朱里さんと渚さんが絡み合っているのが見えた。
朱里さんのオンナノコから溢れる白い塊を、渚さんが舐めとり飲み下していく。女の子同士、という背徳的な光景に視線を奪われていると。
「あのね、余所見はしない事。繋がってる最中は相手をちゃんと見る、基本だから覚えておくように」
ガリッと胸に爪を立てられ、怒られてしまった。
でもその痛みさえ、ナゼか心地いい。
込み上げてくる衝動に、目の裏がチカチカと瞬き出す。
三度目の爆発は、もう間近だ。
「紗菜さ……ん、出……ますっ、ごめんな、さっ」
堪えきれない事を謝ろうとする俺の頭を、紗菜さんの手がそっと撫でていく。
「よく言えたね、良い子良い子。じゃあ、出して良いよ」
その笑顔に、何故か千夏先輩が重なって。まるで俺が、千夏先輩と――。
そう思った次の瞬間、背骨が弾けるかと思うほどに激しい電流が突き抜け、そして紗菜さん目掛けて噴き出した。
下半身どころか命そのものが熔けていくように精液が大量に流れていく感覚、さっきよりももっと激しい射精感。
罪悪感なんて、微塵も無い。もうそんなもの、何処にも残っていない。
全てが、遥か彼方へと消えていく。
結合部を見せ付けるように、ゆっくりゆっくり渚さんが俺の上に降りてくる。それをただ、ぼんやりと見ているだけ。
抵抗する事は出来るかもしれない、でもそんな事をする気にもならない。
気持ちいいから、もういいや。
そう思っていると、不意に視界が遮られた。俺の顔を、朱里さんが跨いだのだ。
そのまま自分でクチュクチュとオンナノコを弄っていくから、溢れた汁は俺の顔に降り注いでくる。
汚いとは思わない、思えない。俺のも混ざっているし。
そのまま顔に座られても、不快には思わなかった。ちょっと苦しいだけだ。
それよりも、渚さんの中に集中してしまう。さっき教わった通りに。
渚さんは朱里さんのよりも強く締め付けて、紗菜さんのよりも絡み方が激しい。そんな気がするし、実際気持ちいい。
「大喜くん、ちょっと腰動かしてみようか。練習だよ、ほら」
さっきからまたスマホを構えている紗菜さんに促されるまま、なんとか腰を突き上げようとするけれど。ぎこちない動きは、上からの圧力に潰されてしまう。
うまくいかないな、俺は。
練習、しないとな。
そんな事を考えながら、衝動に身を任せ。朱里さんのオンナノコで塞がれた口で、それでも言われた事を果たしながら。
「ー、出、ま……っ」
最後の力を振り絞るように、俺は射精していた。
「ま、頑張ったじゃない。千夏の相手が出来るように、鍛えてあげるよ」
別れ際に、渚さんはそう言って笑っていて。
でも嵐のように過ぎたあの時間の後、俺は冷静になった頭でただただ絶望していた。
こんな、穢れきった俺が。あの眩しい先輩を想うなんて、許されない。
なのに、身体が期待してしまう。この快感を、千夏先輩相手に味わいたい。そんな最低の期待が、止まらない。
頭では拒絶して、でもそれ以外では求めていて。
どうにもならない俺は、またあの人たちに、――犯されるんだ。