申し訳ない。
#1その華はアオく咲き誇る
菖蒲は奔放だ、ってみんなが言う。でも自分ではそんな風だとは考えてなくて、逆にみんなが慎重過ぎるんじゃないかなーくらいに思ってる。だって人を好きになるのもなられるのも、特別なことじゃないんだから。付き合うのだって、友達と遊ぶくらいに普通のこと。キスもえっちも、その延長線にある。
それなのに、だ。みんな躊躇ってばかりで足踏みしてて、なんだかつまらなそう。恋愛って、そんな我慢したり悩んだりするものじゃないよ。もっとキラキラして、楽しいものなんだから。いっぱい好きになってなられて、色んな人といっぱい楽しんだ方が良いに決まってる。
最近はホントにそう思ってばかり、特に雛ちゃんを見てるとそう感じる。
大喜くんが好きなら、押していけば良いのに。大喜くんも大喜くんで、なんで気付かないのかな。割と露骨に好き好きオーラ全開なのに。まあただでさえ男の子ってバカなもんだし、大喜くんそういうの苦手そうだから仕方無いか。顔は可愛いんだけど部活バカで、女子馴れしてなさそうだからなあ……。
雛ちゃん良い子だし、にいなちゃんたちも応援しようって言ってるし。ここは菖蒲が、
菖蒲は面倒なことが嫌いなタチだから、一度決めたら後は直球。男の子を恋愛へ積極的にさせるのも、別に難しくなんかない。一度女の子の気持ちよさを仕込んでしまえば、それで済む。
菖蒲は男の子を攻めるの好きだし初めての子も大好き、大喜くんは
だから今、菖蒲は大喜くんを適当な理由で体育倉庫に呼び出して、合気道部エースの実力で組倒している。体力とか単純な腕力なら負けるかもしれないけど、合気道は仮にも格闘技。
「……、なにす、……や……めっ」
力任せにもがいたところで、跳ね除けられるわけがない。揉良く剛を制す、合気は理詰めの技術なんだから。それに身体はどうやったって、痛みを嫌がる。力を入れれば入れるほど自分が痛くなるのに、抵抗を続けられる人はそうそういない。
――それに、抵抗出来なくする方法は他にもある。
腕を極めたまま、ずいっと顔を寄せて。大喜くんの口を、菖蒲の唇で強引に塞いであげた。
困惑したせいか半開きの歯列を舌で押し広げて、大喜くんの中へと分け入って行く。暖かく柔らかい、この感触はいつだって大好き。隠れるようにしている大喜くんの舌を絡め、口内を舐め上げ、唾液を啜り。口の中を隅々まで、犯していくんだ。こうやってあげると、どんなにガードが固い子でも一発で落とせる。菖蒲のキスは、魔法のキスだからね。
そのまま味わっていると、不意にかくんと大喜くんの手足が脱力するのが分かった。一度こうなれば少しの間は力が入らない、それどころか喋ることさえ億劫になる筈だ。
「んー……っ」
どうやら菖蒲の予想は当たってくれた、顔を離しても大喜くんは身動ぎもしないで呆然としたままになっている。
あまり長くは持たないけど、ちょっとの間動かないでくれればそれで十分。
「さーてとぉ、じゃぁ脱ぎ脱ぎしましょうねぇー」
脱力した身体から上着を剥ぎ取ってからシャツで腕を後ろ手に縛り、下も下ろして足首を結んでおく。制服ダメにしちゃうと悪いから、破ったりはしない。本当は切って縛り上げる方がいいんだけどね、でもそれやると後が大変なんだよ。
……しかし結構たくましいなあ、可愛い顔してさ。大喜くん意外とモテそうなんだよなあ、雛ちゃんがいつも一緒にいるから他の女子が近付けないだけで。いやでもそうなると、雛ちゃんが過保護だから女子馴れしてないってことになるか。それはちょっとなあ、なんか良くないかも。
ま、それはそれとしてだ。
「おまっ、さすがに、怒……るぞっ」
どうやら意識がフリーズから戻ってきたらしい大喜くんの、露になった胸板に軽くキス。
僅かな汗の気配が混ざった男の子の匂いを胸いっぱいに吸い込みながら、唇を滑らせて――。
「! あ、あぁ……っ!?」
菖蒲は大喜くんの乳首を、思いきり吸い上げた。そしてもう片方を、指で捏ね潰していく。
左右別々に、思いっきり強く攻めてあげる。経験のない男の子が、これに耐えられる訳がないんだ。ほんの数秒、それだけで大喜くんの乳首が堅く隆起していくのが感じられる。でもまだまだ、こんなもんじゃない。舌先でそして指先で、更に激しくイジめてあげるんだ。
大喜くんの口から溢れるのは抵抗の意思じゃなく、可愛い喘ぎ声。
もっともっと感じさせたいんだけど、でも。まずは一回、終わらせておこう。そうしないと、落ち着いて話せないからね。
左手と口で乳首を攻めながら、空いた右手を大喜くんの腰の方へと伸ばしていく。目指すは男の子の、オトコノコだ。
最後に残ったトランクス越しにも分かるほどガチガチに張り詰めたそこを、ツーっと指先でなぞり下ろす。上から下まで行ったら、また上へ。それだけ、だ。ただずっと、なぞるだけ。大喜くんが普段どんな風にするのかは知らないけど、こうやって焦らすようにただ触ってあげるのがオトコノコには効くんだ。
だからこそ、大喜くんの身体は震えだしている。早くイカせて、と訴えている。ああ、男の子って可愛いなあ。触られたらすぐにこうなるんだから。
――と。
ドクン、と指先に拍動が伝わる。それは熱く激しい、決壊の印。それでも菖蒲は止めてあげない、舌も指も。
すべては抵抗する気力を奪いきる為に。射精で弛緩していく身体を尚も攻めて、身体の芯まで刻み込むんだ。逆らっても無駄だ、と。
「うっわぁー……出た出たぁ。大喜くんさぁ、ちゃんと抜いてる? 溜めすぎは身体に悪いよぉ?」
大量の精液を手で掬い取り、見せ付けるようにその掌を向ける菖蒲。いや実際スゴい濃いんですけど、トロロみたい。元気だなーホント。
これだけ精力溢れてるのに恋愛に興味が向かないって言うのも、不思議な話だ。せっかく雛ちゃんがいつも側にいるのに、手を出しもしないんだもん、やっぱり一度経験させて、そっちに目が向くようにしてあげないとダメだな。
荒い息を吐きながらも倒されたまま動けない大喜くんを跨いで、そのお腹に腰を下ろす。そして制服のスカートを持ち上げて――
だろうなあ、見たことなんか無いだろうし。女子のスカートの内側、その更に中なんて。
でもまだ、足りないんだ。精液がまだこびりついた指で閉じた肉の裂け目を拡げ、菖蒲の中を大喜くんに見せてあげる。
「ほらほら、見えるかなー? これがぁ、オンナノコですよーぉ」
顔を真っ赤にしても、視線は逸れようとしない。いくら部活バカでも、ここまですれば他のことなんか考えられるわけがない。身体は身体で、素直になるから。
男の子なんて、ここの事だけ考えるくらいでちょうど良いんだ。
さてと、ここからだ。
「大喜くんはさぁ、部活ばっかりしてるじゃない? 少しはこっちのお勉強もしなくちゃ、ねぇ? 雛ちゃんが困ってるみたいなんだし、さ」
囁いてあげると、菖蒲の下で大喜くんの身体がビクンと震えた。おや、おやおや? これは、ひょっとして。
――気付いては、いるんだろうかな。しかしそうなると、それはそれで問題だ。自分に好意を向けて貰ってると分かってるのにこの有り様となると、不器用通り越してる気がする。
まったく、世話が焼けるんだから。もっと気軽に恋愛できるように、菖蒲が最後までしてあげよう。
ひょいっと身体を浮かせて僅かに下がり、背後で膨れ上がっているオトコノコを掠めるようにして腰の先へとお尻を下ろし直す。私のオンナノコに触れるか触れないか、そんな微妙な距離で。改めて視界に入れると、可愛い顔に似つかわしくない結構な大物がそこにある。でも、だ。皮に隠れてる辺りはやっぱり可愛いかな。
指先を皮の先に押し当てて精液の残滓をまとわりつかせ、そして――。
「えーいぃ、っとね」
指を食い込ませてにゅるりと押し下げると、軽い抵抗と共に先端が露になる。初々しいピンク色に、黄色がかった乳白色の塊が僅かにこびりついているのが丸見えだ。普段から綺麗にはしてるつもりなんだろうけど、詰めが甘いかな。こういう所なんだよね、未経験な子ってさ。ちゃんとお手入れしないと、モテないぞー。
ま、菖蒲はそういう隙のある子も好きだけど。
「ほら、大喜くん。ちゃんと見てね。これから、オトナにしてあげるから」
腰を浮かせて、少しだけ前へ。天井を向いているオトコノコの真上に、菖蒲の入り口が来るように。
何も考えなくて良いんだよ、恋愛なんて。好きとか嫌いとかも、もっと簡単で良い。ヤりたい、で十分なんだから。こうやって特に理由もなくえっちすれば、そう思えるようになるんだよ。
くちっと粘膜が触れあう音がした、その刹那。大喜くんが絞り出すように、声を上げた。
「ダメ……やめ、てぇ……。俺、は……こんな、の……」
か細くて弱々しい、でも確かな拒絶。ここまでされて、それでも性欲に負けないってスゴいな。雛ちゃんが気になるから他の女子とはしたくない、とかそういうやつかな。
……そうなると、ここまでする必要も無かったかな? て言うか逆に菖蒲を好きになられてもちょっと困るかも、雛ちゃんと上手く行くように童貞切ってあげたいだけだもん。その辺誤解されてもなあ。
うーん、ちょっと考え足りなかったかな。
でも、まああれだ。
「んー……ま、良いか」
膝立ちも疲れるし、菖蒲は考えるのを止めてそのままズンッと腰を落としてしまう。一気に大喜くんのオトコノコが菖蒲のオンナノコに埋まり、中を押し上げられる心地良い衝撃が身体を貫いていく。大喜くんは完全にフリーズし、瞬きさえ忘れてしまったかのようだ。
まあ、本人の意思は別にどうでも良い。考えるの好きじゃないし、これで良いや。
胸に手をついたまま腰を上げ下ろすと、菖蒲の中がゴリゴリ抉られていく。見た目通り、これはなかなかの出物だ。雛ちゃんの事がなかったら、しばらく菖蒲が使ってあげてても良いんだけどな。まあ雛ちゃん怒ると怖いし、にいなちゃんたちにも叱られそうだから止めとくけどさ。
お腹の中ではち切れそうなくらいに興奮しているオトコノコを締め上げながら、大喜くんのほっぺにキスを一つ。
こういう時に反応が無くなるのは、未経験の子ならではだよね。きっと朧気でも
だからそう、さっさと初めてなんか済ませてしまうべきなんだ。そして自信をつけて、色んな恋をすると良い。菖蒲が応援してあげるから、さ。
接合部から溢れる音はどんどん粘っこくなり、抜き差しの度に菖蒲の深い部分へと熱い塊が押し込まれていくのが分かる。
もうすぐ、もうじき。その時は、迫っている。
だから――もっともっと、加速しよう。その方が
全力で腰を振り、一気呵成に攻め立てていく。ラストスパートは激しくなくちゃ、サマにならない。
大喜くんが漏らす切れ切れの喘ぎを聞きながらお腹に思いっきり力を込めて、何度目かの
期待通りの強烈な熱さが、菖蒲の中で弾けとんだ。
「あ、あー……、出てる出てる……っ」
一番奥に叩き付けられる、灼熱の塊。子宮口で感じる精液は、さっき指先で弄んだ分よりずっと粘性が強く感じる。こんなに濃いと、うっかり孕みそうだな。まあそうなったらそうなった時だ、菖蒲赤ちゃん好きだしね。
後から後から湧き上がってくる精液は逃げ場を失って、お腹の中を押し拡げていく。ああ、お腹いっぱい。
大喜くんも余程気持ちよかったんだろう、涙を流して喜んでいるみたい。
とりあえずこれで、半分は終わりかな。女子への意識は変わった筈、後は――。
……後はまあ雛ちゃんに恋の矢印を向けてくれれば良かったんだけど、な。
長い長い放精が終わり、ようやく言葉が発せられるようになった大喜くんが震える声で言い出した事は、菖蒲の想像とは大きく違っていた。と言うより、予定外だったのだ。
「えー……雛ちゃんにはもう告白されてて、でもその千夏って先輩が好きと。だから断りたいけどどうして良いかわからない、……あー……うん」
てっきり女子馴れしてないせいで何にも気付いてないタイプかと思ったのに、そっちか。そういうアレか、それで雛ちゃんとくっつかなかったのか。
さっきまでと同じく菖蒲の下で、大喜くんは怯えた顔をしたまま震えている。好きな人がいるのに別の女子とえっちした、って気にしてるんだろうか。いやそんなもん一々気にすることじゃないでしょ、もっと軽くいかないと疲れちゃうよ。それにその先輩さんが好きなのに何も出来てない、ってそっちの方が良くないでしょ。どうしてこう、考えすぎるのかな。
「んじゃさぁ、先輩さんに告白できるように菖蒲が鍛えてあげるぅ」
にいなちゃんたちには悪いけど、こりゃ雛ちゃんには脈無いわ。早く見切りつけさせて、別のを探させた方が良いな。人生有限なんだから、無駄な時間は使わせたくない。ああ、菖蒲って優しいー。
よっと軽く立ち上がると、大喜くんのオトコノコが菖蒲から抜け落ちて太股を精液の塊が伝っていく。……うわ、濃いなー。これ固まったら菖蒲の中塞がっちゃいそう。そんでもって手足を縛っていた布をほどいてから、四つん這いでお尻を向けてあげる。
「ほら、入ってきて。菖蒲で練習して自信ついたら、告白だってなんだって出来るでしょ」
正直、完全に後ろを向くのはあんまり良くはない。逃げられたら嫌だし、さっきまで童貞だったわけだから少し心配もある。でも男の子に自信を付けさせるには、お初で気持ち良くなった後で「自分からもう一回させる」ってのが大事なんだよね。自分の力で快感を再現させる事で成功体験を蓄積させるー……とかなんとからしいけど、菖蒲には良く分かんない。でもま、どうにかなるでしょ。
遠慮がちに菖蒲の腰が捕まれ、おずおずと身体が近付いてくる。押し当てられるオトコノコはずるりと上滑りしたり、お尻の方へと向かってしまったりで上手く的に当たってはくれないけど、でもそれは仕方ない。だから最初のうちは、経験者相手が絶対良いんだ。菖蒲も小学生の時に近所のお兄さんとしたのが初めてだったけど、たっぷり解してくれたお陰で痛いとか血が出るとか全然なかったもん。処女と童貞で初えっちなんて絶対大惨事でしょ、菖蒲も結構聞くもん。痛いのになかなか終わんないから思いっきり顔蹴りあげてやっただの何だの、みんな苦労してるっぽい。
恋愛もえっちも、気持ち良くて楽しいものなんだ。だからもっと軽く考えていかないとね。
何回かの失敗を経て、ついに。
「お"、あー……そうそう、そこぉ……」
大喜くんのオトコノコは、菖蒲の入り口を捉えた。そのままずぶずぶと進んでいくその動きは緩慢で不器用、でも情熱的だ。
さっきとは向きが違うし体重もかからないから、中を抉る形も全然違う。奥へ進む勢いより、背中側の壁がガリガリと削れていく方がハッキリと感じられる。オトコノコって面白いな、同じモノでも一回ごとに変わって思える。
大喜くんも大喜くんで、オンナノコってスゴいとか感じてるんだろうか。……そんな余裕ないかな、まだ二回目だし。
さっき出されて中に溜まった精液が潤滑油になっているのか、大喜くんの動きは少しずつ速まっていく。ちょっと力が入りすぎてて捕まれた腰が痛いけど、我慢我慢。わざと大きく喘ぎながらオトコノコを締め上げて、気持ち良くさせてあげる。初心者相手なんだから、気を遣ってやらないとね。
「ん。上手、だよぉ……。これな、……ら先輩さん、も、喜んで、くれるか……もっ!?」
褒めてもっと自信を付けさせようとした、その瞬間。再び脈動した、大喜くんのオトコノコ。とくとくと勢い良く放たれる奔流は、三度目とは思えないほど力強い。
……そうか先輩さんの事考えさせると即イキしちゃうのか、これは直した方がいいかも。別に速いのが悪いとは言わないけど、でも下手すると入れる前に全弾撃ち尽くしそう。そういえば先輩さんはもう開通してるかな、先輩だしさすがにもう膜は無いか。でも万が一膜付きだと、今の大喜くんじゃ荷が重そう。上手くいかなくて酷い空気になる未来が、簡単に想像できてしまう。
これはもうちょっと、時間かけて鍛えてあげないといけないな。
「大喜くーん? 元気に出せて偉いけどさぁー、出すときはちゃんと言おうねぇー?」
やんわり注意しながらも、菖蒲は自分から腰を前後させ始める。今日はまあ初日なんだから、限界まで抜いてあげよう。指摘も指導も、急ぐ必要はない。大喜くんは頑張り屋さんみたいだし、運動部で体力はあるだろうからすぐえっちも上手くなるさ。
菖蒲は頑張る子の味方だよ、ホントに。
おっぱいの谷間に顔を埋め、一心不乱に腰を叩きつけてくる大喜くん。今日も熱心で大変よろしい。……よろしいんだけどね、うん。
アレから一ヶ月くらい経つけど、大喜くんはまだ先輩さんには告白できていないし雛ちゃんにもお断りできてない。まだ自信が足りないそうで、菖蒲が時間あるときは毎日のようにえっちして鍛えてあげている。ぎこちなかった腰の振りもしっかりしてきたし、出す前にはちゃんと言えるようになって、菖蒲的にはそろそろ一人前かなって感じ。
だからもう練習は良いんじゃないかなーとは思うんだけど、本人はまだまだ未熟さを感じているんだとか。あと時々、菖蒲に向かって好きとかなんとか言おうとしたりするんだよね。大喜くんがそれでいいなら菖蒲は構わないけど、でもそれならそれで二人にごめんなさいさせないとなぁ……。
菖蒲揉め事嫌だし、どうしようかな。
ま、良いか。恋愛もえっちも、あれこれ考えることじゃない。どうにでもなるさ、菖蒲はずっとそうしてきた。
楽に楽に適当に、渡る世間はチョロかった。それが一番気楽な生き方だ。多分、ね。
#2色付くことのないアオ、開くことのないハコ
どんなに痛くてもちゃんと考えろよ、と匡は言った。そうしなければならないのは、分かっていたんだ。
千夏先輩が好きで、でも雛に告白されて。先輩を好きなままで良い、フェアに戦いたい、と笑う雛に俺は。――どうして良いか、分からなかった。
千夏先輩が好きだから、と言うのは拒絶の理由にはならない。だって雛はそれを知った上で告白してきたんだから。
千夏先輩が好きなのに、雛にも心を揺らされて。どうしようもない俺は、無い頭を搾るのに疲れ果てて、そして逃げ出していた。
ありもしない選択肢にすがり、都合の良い夢に溺れた。
でも、まさか。そんなのが
俺は今もなお、思ってしまう。これは夢の中なのではないか、と。
「大喜くぅーん、ちょっと良いかなぁ?」
鼻にかかった甘ったるい声、その主は見慣れない顔だ。放課後にこうやっているってことは多分同じクラスの筈だけど、誰だったか。クラス全員と友達ってわけじゃないし、女子は特にうろ覚えなのも多いんだよな……。文化祭の準備作業でも見かけなかった気がするけど、もしかしたらサボっていたのかな。それに栄明にしては珍しく部活をしていないのか、体育館やグラウンドで会った記憶もない。
そもそも俺、あんまクラスの事に参加しないからな。部活優先でやってるから、どうしてもその辺曖昧になるんだ。いやまあ単に、俺の頭が悪いせいかもしれないけどさ。
「菖蒲聞いたんだけど、さぁ。雛ちゃんと付き合ってんの?」
……なんだ、またそれか。文化祭の時に否定したんだけど、それでもまだ結構聞かれる。誰と誰が付き合おうと、そんなのは当人達の勝手だろ。それに、俺たちは――。
「付き合ってない。あとさ、そういうの止めてくれないかな。悪趣味だよ、実際」
ちょっと言い過ぎかな、とは思うけど。でも半端な形でお茶を濁すと後が厄介だ、どうせなら毅然としておこう。
今俺たちの関係は曖昧で微妙で、お互いにどう触れて良いかさえ分からない。赤の他人が踏み込んでくるのは、正直困る。
彼女――「菖蒲」さんで良いのかな――は目をしばたたかせ、じっと俺の顔を見詰めている。まるで値踏みするかのように。
うう、なんか気まずい。俺は何も悪いことしてないのに。どうも女子と話すのは得意じゃないな、やっぱり。
とりあえず切り上げて早めに行こう、とバッグを持ち上げたその時。
「ふぅー……ん。大喜くんってさあ、童貞っしょ?」
…………ろくでもない角度から、わけわからない爆弾が飛んできた。
いや、いやいや。いやいやいやいや、そりゃまぁそうだけどさ。でも何で今ここで言った、この女。どういう了見と距離感だ。
俺がフリーズしているにも関わらず、菖蒲さんは更に畳み掛けてくる。
「ちょーっと恋バナ振られて即過敏に反応するってぇ、経験無くて怖いから触れないでって言ってるようなもんだしぃ。重く考えすぎてる辺りが童貞っぽいよねーウケるー」
なんなんだよコイツ、距離感バグってないか。
猥談に抵抗が無さすぎるバカな男子の友達はいるけど、女子でこれかよ。
得体が知れない、そして意図が読めない。逃げ出そう、と思いながらも身体が付いてこない。
それが、致命的な隙になってしまった。
気が付けば距離を詰められ、俺はネクタイをひっ捕まれて――。
「ん……むぅっ」
キス、されていたのだ。
何が起こったのか把握するまで、どれくらいかかったか。数秒か、もっと長い時間か。なんにせよその間、俺は息も出来ない状態に追い込まれていた。
そんな俺をからかうように、菖蒲さんは笑っている。遊びの延長であるかのような、さも愉快そうな顔で。
「やぁっぱり、そうなんだねえ。これくらいで動けなくなるとか、さぁ」
たかだかキスひとつで何キョドってんの、とヘラヘラするその仕草。俺の――俺たちの常識が通用しない、異端の言動。
一体、なんなんだ。
あの文化祭でのアクシデントから、どれくらい悩んだか。
この女は、何も気にしていない。挨拶の延長くらいにさえ思っている。
これは――危険だ、危険すぎる。ショックを受けている場合じゃない、一刻も早く抜け出さないと。
頬に伸ばされようとしていた手を振り払うように身を跳ね上げ、背中を向けて走り出そうとしたのがまた、不味かった。
「おぉーっと、待った待ったぁ」
後ろから首根っこを捕まれ、俺の身体は意に反して動きを停められてしまう。
視界から相手を外したのは悪手だ、何処までも俺と来たら間が悪いったら。いや、自嘲してる場合じゃないって。
どうにか離れようともがいても、動きようがない。そうこうする間にそのまま引き寄せられ、仰向けで床に転がされてしまった。どんな腕力だよ。
「取って食おうってわけじゃぁ無いんだからさぁ、そうやって逃げないでよぉ」
呑気な声で言いながらも、倒れた俺の胸に手を置いて完全に身動きを封じてくるのが恐ろしい。そもそも現時点で実際に襲われている訳なんですが、その辺はどうなっているんでしょうか。まさか俺が間違ってるのか、そんなわけないよな。
明らかに間違っているのは――向こうだ。でも、それでもこれは不味すぎる。
もし誰かが入ってきたら、こんな姿を見られたら。変な噂じゃ済まない事態にも成りかねない。
――と。
まるで俺の考えを察したように、菖蒲さんは小さく呟いた。
「大丈夫だよぉ? 菖蒲が邪魔しないでって思ってるから、誰も来ないよ」
どんな自己中思考だよ、ともがこうとして俺は気付いた。
「菖蒲はいつも、
ぞわり、と背筋が粟立つ。これは、おかしい。何もかもが、おかしい。
その笑顔さえ、違和感しか覚えない。
でもそれを気にする余裕はすぐになくなってしまった、いや奪い取られてしまった。
俺を押さえつけていた手が、ワイシャツの上から少しずつ移動して――腰の方へと這い寄り始めたのだ。
そしてモゾモゾと動き回る指は、すぐにその中へと入り込んでいく。他人に触れられる事なんかありえない、その場所へと。
「ぁー、結構たくましいぃ。可愛い顔してるのにねぇ」
引きずり出したもう一人の俺を、菖蒲さんはニヤニヤしながら弄び出す。なんだこの、安いエロコメみたいな状況。顔も知らなかったような間柄の女子が、なんでこんな事を。頭はそう混乱しているのに、身体だけがただ刺激に反応して猛っていく。こんな異常事態の中で、どうしてこうも素直なんだ。
遠慮のない力と速度でどんどん追い込まれていく俺と、それを楽しむ菖蒲さん。教室の真ん中で、俺は声も出せないままに愛撫され続ける。
それも、執拗に。
頭の中を読まれているように、気持ちの良い場所を指先がピンポイントで擦ってくる。そうかと思えば手のひらで先をなで回したり、とにかく責め方が凄まじい。
自分で弄っている時でさえ、ここまでの快感を抱いた事は無いかもしれない。
こんなこと、してはいけない。そう分かってはいても、抵抗する気力さえ性感に変換されていく。
それでも、それでも。屈しようとする心を、無理矢理奮い立たせ俺はどうにか口を開く。
「や、め……てぇ……っ」
弱々しくか細い声に、菖蒲さんが薄い笑みを浮かべた瞬間。その手が、一気に加速した。
どれだけ俺は愚かだったんだろう、懇願すれば逆に攻めて来るに決まっているのに。俺の意思を一つでも汲んでくれたか、強引にキスしていきなり組倒すような奴じゃないか。文字通り、手のひらの上で転がされている。そう思い知った、数秒の後。俺は更に、もう一段深くへと落とされてしまった。
「そろそろ出そうかな、……っとぉ」
小さな声と共に手の動きが止まり、そして――菖蒲さんの頭が俺の下半身に覆い被さってきたのだ。手よりも柔らかく熱い何かが俺を包み込んだ、それだけは辛うじて理解できた。でもその先は、全て快感の霧に呑まれていく。ただただ、気持ちいい。包まれたまま蠢く何かに擦り上げられ吸い上げられ、もうなにも考えられない。
気が付けば腰がガクガク震えるままに、精液が尿道を駆け抜けていく。こんなにも大量に、一度に。
体感では何分も続いたかのような長い長い射精が終わると、ようやく菖蒲さんの頭が俺から離れてそして。何が起こっていたのかが、露になった。
妖艶に笑うその口元には、白く泡立つ飛沫がこぼれ落ちていく。
「んー……、ごちそうさまぁ。スゴい濃いねぇ、呑み込むの大変だったよぉ?」
まだこびりついてるかなー、と開けられた口の中は白く染まっている。
明らかにそれは精液の残滓、他のなんだというのか。フェラチオという行為の存在は知っている、でもまさか。それをされる日が、来るなんて。
衝撃と快感で何処かが壊れてしまったのか、射精して尚勃起が鎮まらない。せめて治まってくれなければ、
しかしその思考さえ、先回りされてしまう。
「んー……童貞なのはともかくぅ、フリーなのにそうやって怖がるって事はぁ、ひょっとして好きな子がいるのかなぁ?」
妖しい笑みは、こちらの抵抗を許さない。俺はただ、頷くしかなかった――。
千夏先輩が家にいる事を嬉しく思えないのは、春以来初めてだ。夕飯いらないよとだけ母さんに言って部屋へ飛び込み、ベッドに横たわりながらそんな事を思う。もし今先輩の顔を見てしまったら、俺は罪悪感で死ぬかもしれない。……様子を見に来たりしたらどうしよう、来てほしいけどほしくない。
それにしても俺の顔には、電光掲示板でも貼り付けてあるんだろうか。なぜあんな短いやりとりで、こうもバレてしまうんだ。もしかしたら先輩にも全部筒抜けだったりするのか、それはさすがに辛すぎる。
あれから俺は、促されるままに全てを話してしまった。先輩を好きなことも雛に告白されたことも、何もかも。どういう訳か俺は、隠せなくなっていたのだ。
『そっか、そかそか。じゃぁ、菖蒲が
ついさっきまで人を押し倒していたとは思えない爽やかな笑顔でそう言われはしたけれど、正直不安しかない。どんな余計なことをしてくるんだろう、と思うと。
考えてみればそもそもあれ、誰だ。あんな目立つのがクラスにいて、気が付かないなんてこと有り得るのか。それにどう考えても、おかしすぎる。言うこともすることも、全て。何者なんだというか、何なんだ。とは言え誰かに相談なんか出来るわけもない、こんなもん。
――一体どうなってしまったんだ、俺は。
ついこの間までは、色恋沙汰とは無縁な普通の男子だった筈だ。先輩を好きになってからも、それは変わらなかった。顔を見ただけで声を聞いただけで、心が張り裂けそうになるくらいの恋愛下手。そんな俺が寄りによって教室でキスされて押し倒され――射精させられて、なんて。どこのエロゲー主人公だよ、本当に。あり得ないにも程がある。
世界が全て塗り替えられたような、異質で歪な違和感。
どうすれば良いのか、どうなれば良いのか。何一つ分からないまま、ただ夜が更けていく。明日が休みなのは救いだった、まさかこんなメンタルで学校になんか行けるか。丸一日使って、頭を建て直そう。
何もかもおかしくなっている中で、ただ一つ確かな布団の温もりに包まれて俺は、ただ目を閉じた。
眼が覚めたら全てが元通り、なんて事は無い。何事も、だ。拳を握りしめたまま昼下がりの街を歩きながら、そんな風に考えてみる。
今朝はいつもより大分遅く起きて、母さんの小言を聞きながらの朝だった。千夏先輩はとっくに出掛けてしまったらしく、家の中は静か。昨日の混乱が嘘みたいだな、なんてぼんやりと思ってみたり。
いっそ覚悟を決めて匡にでも相談してみようか、と置きっぱなしのスマホに目を落としたまさにその時。
液晶が光を放ち、ブーブーと喚き出した。おいおいなんてタイミングだよ、と苦笑しながら手に取ったそこには見慣れない番号。
イタ電か、と無視することも出来た。だけどどういうわけかそうする気にならず、通話を開始してしまう俺。
止めておけば良かったかもしれない、いや止めるべきだった。そう自分の短慮さを恥じたのは、僅か数秒の後聞こえてきた能天気な声のせい。
『大喜くぅーん、お疲れー。菖蒲だよー』
……何で。何で番号知ってるんだ、この人。
昨日
『菖蒲の家マップアプリに登録したげたからさぁ、今から来てよー。応援する約束だしさぁー』
そんなもんいつの間に、というか昨日の時点で俺のスマホ弄ってたのかコイツは。文句を言おうにも言うだけ言って通話は切れてしまい、こちらからかけ直しても繋がらない。
そして俺は馬鹿正直に、その場所へと向かっているわけだ。いや馬鹿正直というか、馬鹿だろ俺。
溜め息を吐きながらも、何処かで期待はしている自分がいる。強引でメチャクチャだけど、異常なまでの行動力が確かに菖蒲さんにはある。千夏先輩でさえ取り込めてしまえるくらいに、超人だ。応援するつもりらしいし、あれで案外親切で面倒見が良いのかもしれない。
そう楽観視してしまえるのは、現実逃避でもあったのだろう。
正しく認識していたら、耐えられないから。
アイツの場合に限って常に最悪のケースを想定しろ、奴は必ずその少し斜め上を行く。どこかにあった気がするそんな言葉が、実感を持って理解できた。
こういう人相手に、心配しすぎるという事は無いんだ。杞憂で終わってくれたら万々歳じゃないか、うん。
「あ、っしゃーい。
鍵もかけられていない玄関を通って導かれるように知らない家の中を進み、辿り着いた先で彼女はひらひらと手を振って俺を迎えてくれた。
その粘液で塗れた手が動く度、腰かけているクイーンサイズのベッドに飛沫が落ちて染みを作っていくのが見える。でもそれよりも、その脇で起きていることの方がずっと――重大だ。
菖蒲さんを
俺は、知らない。こんな姿になった、――千夏先輩と雛を。
「どうせだしぃ、二人とも頂いちゃったら良いんじゃないかなーって。仲間外れは良くないもんねぇ、みんな仲良しが一番良いよぉ」
菖蒲優しいでしょーと無邪気げな笑みさえ浮かべる菖蒲さんの手が、千夏先輩のオンナノコへと滑り込む。
ぐちゅりと重い粘液質の音と共に露になってしまう、千夏先輩の
濃く繁った陰毛と肉の裂け目は割り拡げられ、サーモンピンクの内壁は奥から溢れてくる蜜でドロドロ。あまりにも卑猥で、でも美しい。
鼻を突く生臭い匂いを吸い込むだけで、身体は抑えがたいほどに発情していく。
こんな事が許されて良い筈はない、でも。でも、止まらない。ここに、入りたい。千夏先輩を、抱きたい。
二人で過ごしてきた穏やかな時間も、先輩の優しさも、頭の中から消えていく。
狂暴な衝動だけに突き動かされ、俺は。
「たーっぷり解してあげたからねぇ、
囁くような妖しい声に応え、そのまま――千夏先輩の中へと自分を捩じ込んでいた。
「――っ!?」
ほんの一瞬、苦痛じみた声は聞こえた気がする。でもそれさえ、空耳かもしれない。千夏先輩は声にならない
「そぅそぅ、上手上手ぅ。大喜くんって意外と器用だねぇ、初めてで腰振れるなんてぇ」
からかう声に反応する程の余裕なんて、あるわけがない。本能のままただ無我夢中で動き続けるだけ、それ以外の全てがどんどん朧気になっていく。こんな事がしたかったんじゃない、でもずっとしたかった。矛盾する思いが溶けて混ざりあい、マーブル模様の影に心が支配されてしまう。
「じゃーぁ、そろそろ……
心臓がドクンと一際強く打ち、身体がその声に反応して加速していくのが分かった。このまま、射精する。昨日のように、誰かの中で。柔らかく熱い肉に包まれたまま、欲望をブチまける。
したい、そうしたい。このまま、千夏先輩の奥の奥まで汚し尽くしたい。その思いは止まらない、もう止まれない。
「あ、あぁー……っ」
まるで相手の事など考えず、性欲に任せた突撃。その果てに俺は、何の遠慮もなく射精していた。
千夏先輩の奥へと目掛けて精液を撃ち込みながらも、頭の芯が焼き切れたように思考が回らない。ドクドクと輸精管が音を立てる度に、魂まで流れ出ていくようだ。
射精が終わってようやく、僅かに罪悪感というモノが芽生えそうになる。でもその芽はすぐに摘み取られ、俺は再びケモノへと堕ちてしまう。
「ほらほらぁ、休んでる暇ないよぉ? 大喜くんの
ぐったりと崩れ落ちている千夏先輩から身体を引き離され、今度は雛の前へ。菖蒲さんの指でかき混ぜられ白濁した粘液で満たされた雛のオンナノコが、誘うように蠢いている。その表情は開館に蕩けきり、目の前にいるのが俺だとさえ分かっていないだろう。
告白されたあの日に感じた鼓動はもう胸から去り、いきり立った股間だけが雛を求めている。先輩の中へ
でも、それで良い。気持ちいいから。
先輩より入り口の抵抗は弱いけれど、締め上げてくる筋力は強い気がする。二人の違いはよくわからないけれど、どちらの中も俺を包み込んで放そうとしないのは同じだ。雛の小さな身体を抱き締めて突き上げ、あの日未遂に終わったキスをして。あうあう喚くだけの雛を
先輩より薄い胸に顔を埋め、その見た目よりも強い弾力を楽しみながらも腰は止まらない。
やがて込み上げてくる射精欲求を、俺は拒もうとさえしない。垂れ流すように精液をただただ注ぐだけ、他は何も考えない。考えられない。
きっと今、雛の中は真っ白に染まっている。それを思い浮かべる事さえ億劫になってきて、意識を放棄しようとした俺の身体はでも、倒れ込む寸前に菖蒲さんの手で受け止められていた。
「――ね? 簡単でしょ。好きになるのもなられるのも、軽くて良いんだよ。気持ちよければそれで、ね」
失神しそうになる俺を支えながら、菖蒲さんは妖しく微笑む。
ああ、そうか。それで良かったんだ。考えなくて良いんだ、どうせ俺にはそんな頭無いんだから。立場とか気持ちとか、どうでも良いじゃないか。もっと早く気付くべきだった、こんなにも遠回りする必要無かったんだ。
俺は何処まで行っても、この程度なんだから。
――なら。だったら、ワガママも許される筈だ。誰が誰を好きであろうが、誰とどんな関係であろうが、それは些細なことなんだから。
「んー? どうしたのかなぁ大喜くん、もしかして菖蒲ともしたいのぉ?
そう言いながら菖蒲さんは、雛から抜け落ちた俺にキスをする。射精直後の敏感な粘膜が唇と舌で巧みに愛撫される悦楽が、それこそ脳を溶かしていく。
ピチャピチャと立つ水音が刺激になったのか、千夏先輩と雛まで蕩けきった顔でその真似をし始める。都合三本の舌が這い回るその姿は例えようもない程に淫靡で、二度の射精が嘘だったかのように俺は隆起していった。
そして雛と千夏先輩が四つん這いになった菖蒲さんのオンナノコを左右から割り開き、甘く熟れた中身をさらけ出した。早く入れてあげて、と言わんばかりの仕草にさそわれて、俺はそこへと歩み寄っていく。
「うぁ、……っ」
菖蒲さんの中は、雛とも千夏先輩とも違う。中が別の生き物のようにうねり、しかも握り締めるようにギリギリと締め上げてくる。その上吸い上げられるような感触さえする。――経験が豊富だからか、それともこれも個体差の範疇なのか。分からないけど、でも気持ちいい。
そこへ更に千夏先輩が後ろから俺に抱きついて乳首を弄りだすし、雛は雛でキスしながら俺の手を自分のオンナノコへと押し付けて腰を振り始めた。もう何が何だか本当に一切分からない。身体の境界さえ、曖昧になっていく。
でも、でも。
ひたすらに、気持ちいい。
我慢しない、考えない、
考えないから、気持ちいいんだ。
汗と精液と愛液と、そしてその他全ての匂い。それが立ち込める部屋の中、俺たち四人は絡み合う。
一体どれくらい射精したのか、何時間経ったのか。それさえよく分からないくらい、頭が鈍っている。でも、かなり時間は過ぎたような気がする。
そろそろ帰らないと、と言おうとしたのを先回りするように、菖蒲さんが優しく微笑んだ。俺の上に跨がったまま、唇を指先で制止して。
「まだそんな時間じゃないよぉ?」
確かに窓の外から降り注ぐ日差しはまだ大分高い、まるでまだ真昼であるかのように。
でもここに来たのが昼過ぎだから、もう夕方近いはずなんだけど。
時間が過ぎていない、そうじゃなければ巻き戻っている……?
そんな事があるんだろうか、そんな風になるものだろうか。でも口にしようとした疑問は、すぐに掻き消されてしまう。ー
「言ったでしょ?
有無を言わせない、その言葉。どう考えてもおかしいのに、逆らえない。
――でもそれを考えるほどの時間は与えてもらえない。先輩と雛と菖蒲さん、三人が競いあうようにキスしてきたせいで、そんな余裕は無くなってしまったから。
まあ、良いや。気持ちいいから。どうでも、良いや。
どこか捨て鉢になりながらも俺は三人がかりで愛される、そして死に物狂いで三人を愛する。
幸せな時間は終わらない、多分ずっと。
俺たちは歪なまま、終われない。
#3叶えられたアオい祈り
どうにもならない事を
まあ、ある意味では想いは叶ったわけだ。大分想定外だけど、形の上では確かに。
ただ素直に喜んで良いのか悪いのか、それはもう分からない。
俺の恋は、ゴールへと辿り着けた。それ自体は良いことなんだけど、でも。
「――良いのかな、これで」
隣で健やかな寝息を立てている、千夏先輩に気付かれないように俺は何度目かの溜め息を吐いた。幸せ過ぎて、そして良心の呵責で死にそうだ。
まったく、どうしたもんだろうな。
こんな時期にマネージャーが入ってくるとか、珍しいこともあるもんだ。
と言うか今までうちの部には特にマネージャーはいなかったんだけどな、雑用は手が空いてるヤツがやることになってたし。でも他所では大体新年度になった時点で新入部員として入ってくるのが定番だから、そういうもんだと思ってた。
まあ、良いんだけどさ。部活ってのは本人が望んでやるもんだ、急にマネージャーがやりたくなったから入ってきたんだろう。
にしても、なんか匡や針生先輩はイヤそうな顔してるんだよな。知り合いなんだろうか、俺は見たこと無い女子なんだけど。気になるとしたらその苗字くらい。千夏先輩の幼馴染みで針生先輩のカノジョさんも、確か同じ守屋だ。
でも姉妹で違う学校ってのもなんかなあ、スポーツがしたくて栄明に来たなら前から体育館とかで見掛けてただろうし。
とは言え、だ。俺があれこれ考えても仕方ない、それより練習だ。あの日遊佐くんに勝てたのは、殆ど運みたいなもの。実力ではまだまだ及ばない、もっともっと強くならないといけない。そうでないと、千夏先輩と
――と。
「猪股くぅん、ちょっと良ぃ?」
甘ったるい声で呼び止められた俺は、思考を切り上げて振り返る。
噂をすればというかなんというか、そこに居たのはやっぱり件の菖蒲さん。……マネージャーとしては少々不真面目だけど、人気はあるんだよな。こうやって話しかけてくるだけで、周りが……というか西田先輩が嫉妬の目を向けてくるし。まーた裏切り者だなんだと拗ねるんだろうな、あの人のことだから。占い師になれるくらい霊感あるんだし、それを活かして上手くやってくれないもんだろうか。
「ん、なんです?」
「あのさぁ、みんなの練習メニューの事とかで色々聞きたいからぁ、練習終わったら付き合ってくれない?」
――む。付き合う、という単語に周りが反応したのが一瞬だけど感じ取れた。いや俺も多少は気にしたけどな、雛の一件もあるし。
まあ、別に大したことでもないか。どういう理由かは知らないけどやる気を出してるみたいだし、メニューの見直しは確かに必要だろう。うちは個々で頑張ってはいるけど、統一した指導がないから。針生先輩みたいに上手い人が自分の時間を削って下を指導してるわけで、効率は悪い。
そこを改善する一助になれるなら、幾らでも手を貸すさ。
「ああ、こっち片付けたら行くよ。ノートとかそういうの、出しといてくれると助かる」
わざと声を大きめに、「これから打ち合わせです、練習サボって遊びにいくわけじゃ有りません」とアピールしつつ俺はラケットの片付けに入った。
いや、しかし。これは下手をしたら、サボりかもしれない。そんな風に思ってしまったのは、学校を出て暫くしてからだった。
明らかに相手の足取りが軽すぎる、真面目な話をする感じじゃない。
警戒はしながらも、腕を捕まれている以上立ち止まるわけにも行かなくて。
そして――。
「……打ち合わせ、するんですよね?」
「だねぇ」
ケラケラ笑っている菖蒲さんの手には、ペンでもノートでもなくあろうことかマイクが握られてる。
ああ、どうして。なぜ俺は、カラオケボックスにいるのだろうか。
そりゃまあ、課長バカ一代でもカラオケボックスで会議してたけどさ。あれは産業スパイ対策だったんだし、て言うか単に悪ふざけだったよな。
ここで毅然と席を立ってしまえるくらい、俺がハッキリした性格だったら良かったのに。
呆れながらも座ってる辺りが俺の悪いところだな、うん。
まあそれに、こういう事は近頃よくある。ナイショ話をしたがっている、そんなのが最近俺の周りには多いから。
「ねぇ猪股くんさーぁ、新体操部の子と付き合ってるってホント?」
……ああ、やっぱりそれか。まったく皆、そればかりだな。
そう見えているのは分かるし、野次馬根性を非難する気もない。節度さえ弁えてくれれば、だけど。
「勘違いだよ、俺と雛は――そんなんじゃないからさ」
嫌いだとは言わない、でも好きだとも言えない。
俺は中途半端で弱い人間だ、何もかも曖昧なまま雛を悩ませている。
それでも、それでも俺は千夏先輩が好きなんだ。だからどうあっても、雛と付き合う未来は無い。そしてそれを突き付ける、勇気も無い。
結局俺の頭の悪さが、全ての原因なんだろうな。
「ふぅー……ん。そっか、そうなのかぁ」
マイクを放り出し、俺の隣で菖蒲さんは複雑そうな顔。まあ、納得してくれればそれで良いんだけど。
変に食い下がられても困るし、でもこれ以上強く言っても仕方ないかな。
目的は済んだだろうし、話を切り替えてメニューの事でも……と考えたその時。
膝の辺りに、何かが触れた。それは明らかに、人の――菖蒲さんの手。
なで回すその仕草は這うように少しずつ位置を上げ、太股を通り抜けていく。
「な、……っ」
俺が困惑している間に、足の付け根へと達していた。
ゆっくりと誘うように蠢く指が、そっと金具を下ろし
そして――。
「おぉ、顔の割に随分立派だねぇ~」
菖蒲さんの手は何の躊躇さえ無く、もう一人の俺を引きずり出した。
なんだ、一体どうなっているんだ。どうして俺は、こんな事をされている。どうして、抵抗できない。
グチャグチャになっていく頭、それを加速させたのはやっぱりその手だ。しなやかな指が幹を握り、弄ぶように扱き始めたから。
自分でするのとは全く違う快感と、事態が呑み込めない混乱と。そして込み上げてくる、罪悪感がない交ぜになっていく。
こんなのはおかしい、異常だ。止めさせなければ、逃げなければ。そう思いながらも、身体は金縛りにあったように動かない。
程なく擦る音はグチュグチュと粘っこく変わって、腰の奥からは射精欲求が襲ってきた。でもそれを、全力で堪える。それだけは、ダメだ。そんなのは、許されない。その思いだけが、なんとか自分を制させている。
でもそれが伝わってしまったのか、菖蒲さんは俺の耳に顔を寄せて囁く。
「なんで我慢してるのぉ? 別に誰かと付き合ってる訳じゃないんでしょ、気持ちよくなっちゃいなよぉ」
甘い誘惑は、あまりにも強すぎる。そうだ、俺に我慢する理由なんか無い。無理矢理扱いている方が悪いんだ、俺は被害者だ。
でも。それでも。
付き合ってなんかいない、想いを伝えられもしない。それでも俺は、千夏先輩が好きだ。だから他の人相手に、そうなってはいけないんだ。
歯を食い縛り快感と戦う俺に、再び菖蒲さんが囁いた。
「ふーん、頑張り屋さんだねぇ。さすが
その瞬間、心臓が張り裂けそうなくらいに鼓動が瞬く。
ちーちゃん、という親しげなその呼び方。守屋という苗字。まさか、まさか。この人は、千夏先輩を知っているのか。知っているどころじゃなく、もっと近い存在なのか。
意識をそちらに向けた、それが――最悪の判断だった。
「ぅあっ、わぁ……出た出たぁ」
一瞬の隙が堤防を決壊させ、かろうじて防がれていた快感が一気に爆発してしまう。もう、止まらない。それに普段なら出始めた時点で手を止めるのに、菖蒲さんは全く速度を緩めてくれない。
迸る精液は手筒を通り抜けて床を汚し、白いシミに変わっていく。取り返しがつかない事をしたという喪失感さえ、白く塗り潰されてしまう。
意識の奥で、声が響く。もっと、もっと。もっともっと、気持ちよくなりたい。目の前のこの人に従うだけで良い、そうしておけ。
唆す声を押し込めようとしても、身体は既に快感を知ってしまった。
ソファに押し倒され跨がられようとしているのに、抵抗する気力さえ湧いてこない。
このまま黙っていれば良い。千夏先輩はどうせ気付かないし、気付かれたって俺が悪い訳じゃない。
――そう、その通りだ。それはきっと正しいんだ。
だけど、それでも――。
「やめ、て……」
なんとか気持ちを振り絞り、俺は声を上げた。
弱々しく情けないその声は、どう聞こえたのだろうか。菖蒲さんは目をパチクリとし、少しの間考えるような顔をして。
「なんで?」
嘲りでも挑発でもなく、ただただ不思議そうに呟いた。
好きな人がいます、だから他の人と
「んー……分かんないなぁ。付き合ってるならともかく、まだ告ってもいないんでしょ? じゃあ別にいいんじゃない? 菖蒲は楽しいし猪股くんは気持ちいいし、誰も困らないでしょ」
……理解はして貰えなかったようだけど。
常識が違う、何もかも違う。これは俺とは違う次元の存在だ。
でもとりあえず、今この場を切り抜けられれば良い。
「ちーちゃんもそうだけどさぁ、皆お堅いよねぇ。なんでそんなに慎重なんだかさぁ」
俺が慎重というかそっちが無頼派過ぎるんだと思うけど、それは個人の感性だし構わない。構わないけど、さ。
また言ったな、ちーちゃんって。もしかしてやっぱり、それはまさか。
でもそれを確かめる程の自由が、俺に有るわけがない。
向こうの気紛れひとつで、俺の意思なんか簡単に踏みにじられてしまうのだから。
現に俺を跨いでいるその身体は、少しずつ高度を落としつつある。熱気が伝わるほど粘膜同士が近付いている、あとほんの僅かで俺は彼女に――
もう俺には何も出来ない、ただ顔を背けるだけ。そして覚悟を決めた、その時。
肌に伝わる熱が、不意に遠ざかった。
「まあ、良いか。好きな人がいるなら、
そう言いつつすいっと離れた菖蒲さんが、さっき置き捨てたマイクを俺の顔に突き付けた。――これは、誰が好きなのか言えということだろうか。
唐突で身勝手な事だ、でもここで言わなければまた襲われかねない。たった一言で話を終えられるなら、それで御の字だ。
「二年の、……鹿野千夏先輩……です」
言ってしまったのは、悪手だったかもしれない。解放されて漸く俺は、そんな事を考えられるようになっていた。
何事もなく帰して貰えたのは良かったけれど、これで良かったかどうかは分からない。あんな無茶をする人間に秘密を開かして、余計な気を回されたらどうしよう。下手をしたら千夏先輩へ一方的に伝えてしまわれかねない、それはあまりにも気まずい。気まずすぎる。
それにそうなればきっと千夏先輩は優しく言葉を選んで、俺を傷つけないように拒絶するだろう。同じ家で寝起きしているに、そういう事になってはいけないから。
ああ、――どうしよう。
同じことだけが頭のなかをグルグルと回り、何も手につかない。それでも夜が明ければ朝が来る、朝になれば学校に行かなければならない。学校に行けば当然――。
「あ、猪股くんだぁ。おはよーぉ」
会いたくない相手にも、会ってしまうわけだ。
お陰で昨日からこっち千夏先輩の顔も見れなくて、何だかギスギスしてるような雰囲気になってしまっているだけど。ここで文句を言いやしないけど、さ。周りの目もあるし。
まあ、あれで話が終わってくれているならそれで良いんだ。あとはもう最低限の関わりだけで済ませれば問題ない。
幸い外面を取り繕うくらいのメンタルは戻ってきているから、挨拶だけしてすれ違おう。それで良い。
「猪股くんさーぁ、多分これから
なにか思わせ振りな言葉に愛想笑いだけ返して、俺はいつものように教室へ向かう。大事な日常を守るために。
恙無く一日は終わり、風呂上がりの俺はベッドに転がっていた。否、転がされていた。
覆い被さるように密着しているのは、まだ湯上がりの温もりが残るホコホコの千夏先輩。
いつぞやの夏風邪引いた時のようだけれど、あの日とは決定的に違う事がある。千夏先輩は足を滑らせてなんかいない、はっきりと自分の意思で俺を押し倒した。そしてその身には何一つ纏うものがない、完全なるネイキッドフォーム。
……いや、いやいや。いやいやいやいや。なんだこれは。急展開過ぎやしないか。そりゃまあ、考えたことがないとは言わない。思ったより無防備でポンコツな千夏先輩に良からぬ欲求を抱いてしまって、良心の呵責から必死で腹筋に励んだりしている。
でもいや、まさか。こんな都合の良い事が実際に起きるとか、それこそ異常だ。
とにかく落ち着け、そして落ち着かせなければ。
そうは思えど、千夏先輩は丸裸なわけで。そしてそれが密着してるわけで。
これで動揺せず行動できたら、俺はきっと悟りを開けている。
「花恋の妹ちゃんから聞いたよ、大喜くんが私の事好きだって」
ただでさえ激しい鼓動は更に加速し、胸が裂けそうな程に高まってしまう。
伝わっていた、千夏先輩に。俺の本心が、そのまま。じゃあやはり菖蒲さんは、そうだったのか。そして昨日言っていたちーちゃんと言うのは、やっぱりそうなのか。
俺がたじろぎながらも納得している上で、千夏先輩は真っ直ぐに視線を向けて。
「それでね、言われたんだ。両想いだって分かったんだから、すぐにでも動かないとって。誰かが割り込んでくる前に、大喜くんを全部――奪っておきなさいって」
――とんでもない事を言い放った。
不味い、なんだか不味い。これはさすがに、不味すぎる。
今の千夏先輩は、明らかに正気じゃない。色んな意味で、おかしくなっている。
ああ、でも。それを指摘しようにも、俺の口は塞がれてしまった。千夏先輩の、唇で。
熱く柔らかなその感触は、抵抗の意思を奪うには十分すぎた。初めてのキスは、それくらいに蠱惑的で俺を蕩かしてしまう。
思考力自体が吸いとられていく、そんな激しいキスはどれ程続いただろう。
息が苦しくなり目の前が白くなり始めた頃になって、ようやく千夏先輩の顔が俺から離れる。
手も足も重く脱力し、指先一本動かない。なのに、でも。
身体の熱は一点に集まり、そこだけが硬く隆起していくのが分かった。
「ん、んー……。あぁ、そうか。男の子って、
千夏先輩の指になぞられ、血流は更に加速していく。ぎこちなくも優しい指の感触と、胸の奥から込み上げる罪悪感に後押しされ興奮は治まることを知らない。こんなことをさせてはいけない、でも気持ちいい。
そっと沿わせられた遠慮がちな手はなで回すように動き回り、俺を追い込んで止まらない。
声にならない呻きと肌の擦れる音と、そして時計が時を刻むその音色に包まれて。異常な夜が、更けていく。
のし掛かるその重さと、粘りけの強い水音。俺の上に座る先輩のその――オンナノコから滴る液体は俺の下腹部へ溢れ落ち、わずかな動きでさえ大袈裟な音をたて続ける。そして伝わってくる、薄い汗の匂いに混じったムッと来る
「えへへー……、大喜くんの熱いねえ……。火傷しそうだよ……」
すっかり締まりを無くし蕩けきった顔で、先輩は腰をグリグリと押し付けてくる。このまま先輩が腰を浮かせて少し後ろに下がれば、それで俺たちは繋がれる。全てに決着がつく、中途半端な関係がようやく終わる。
それはきっと望ましい事、願っていた事。
千夏先輩にとってもきっと、幸福な事。
……そうであると祈りながら、ただ身を任せる俺。
先端に感じた熱さが全体に広がって、何かを押し広げていく形容しづらい感覚が少し遅れてやって来た。千夏先輩の眉間に一瞬寄った皺は、でもすぐに溶けて消えた。その口からは止めどなく涎が溢れ、俺の顔を汚していく。でもそれさえ、幸福感を煽るだけ。
途方もない快感の中で、ふと気付いた。俺の先端が、何かに押し当たって止まったことに。柔らかく熱い、壁のようなものがそこにある感触。
「ぅ、あぁー……ぁ。入っ、た……ね……」
声に誘われるように向けた視線の先、俺達の結合部はピッタリと密着しあっていた。まるで元から一つだったかのように、隙間一つさえ見えない。
千夏先輩の中に、俺の全てが埋まった。そして俺は今、千夏先輩の一番奥に触れている。
それはもう、堪えられる限界を完全に越え尽くしていた。
「あ、あ、あ……っ」
それはどちらの声か、もう分からない。
分からないけれど、確かな事は一つある。
俺が今、――射精している事。
千夏先輩の膣内で精液を放っている、それがどういう事か。そんなの、考えるまでもない。その事実さえ押し潰す程に、気持ちが良い。そしてそれを助長するように、千夏先輩は幸せそうに呟いた。
「あー……、大喜くん…大好き……」
その一言は、俺の心を全て塗り替えて尚余りある。
どうなっても良い、どうなろうと良い。この人が、好きだから。
歪でメチャクチャだけど、それが良い。
流石に酷使しすぎたせいか、身体は疲労感で一杯なのに眠れる気がしない。後、息を吹き返して来た罪悪感のせいも少し。
先輩は幸せそうな顔で寝ているけれど、どうしたものだろうかな。
て言うかどうなるんだ、俺。この先不安すぎるわ、実際。
にしても俺の先輩によくもまあ余計なことばかり吹き込んでくれたもんだ、明日学校で菖蒲さんに会ったら色々言ってやらないと。まあ一応、礼の一つくらいはついでに言うけどさ。
まったく、あれこれ引っ掻き回しやがって。お前のせいで、俺たちの関係グチャグチャだよ。
まあ――良いか。
どうにかなるさ、多分きっと。俺たちなんだから。
#4澱むアオはそれでも尚眩く
相談する相手を間違えた、とは言わない。見守ってくれる友達はいても、積極的に動いてくれるようなのはいなかったわけだし。
ただ、だ。この女は即物的すぎやしないだろうか。
それはまあ、
上手く行かないよりは良いんだけど、風情と言うか情感ってものが足りないと思うんだ。
でもま、今さら言っても仕方無いか。
大喜は私のモノ、誰にも渡さない。それは一応、私の意思なのだから。
「いのたと蝶野さんが上手く行くように、菖蒲が応援してあげる!」
そう言ってくれるのは多少なりとも心強さを感じはしたものの、それ以上に不安がやたらと大きかった。
なにしろこの子、私の名前さえ知らないまま声かけてきてるし。て言うか
これなら匡の方がまだマシかな、メガネの分だけ。あれもあんまり手伝ってはくれないからなぁ、不憫だとか言いやがるし。
まあ、とりあえず話を動かしてくれるなら悪くないか。今は正直、膠着状態だから。
大喜は千夏先輩が好きで、千夏先輩もまんざらじゃない。そして二人は同じ家にいるわけで、下手をすれば一晩で決着が着いてしまう。私が介入する隙なんか、どこにもなくなってしまう。
それを覆す切っ掛けになるなら、私としては御の字だ。
いやまあ、二人には少しだけ申し訳ないけど、さ。私だって大喜が好きなんだから、ちょっとだけ周りの助けを借りても良いじゃない。
――そう。これだってフェアな戦いのうちだ、向こうはアドバンテージが大きすぎるんだから、ブレーンをつけるくらいは許してほしい。
「とりあえずさぁ、いのたの気持ちとかは置いとこうよ。そんなの気にしてたら動けないよぉ」
……そこを無視しちゃいけない気がするんだけど、それはそれで正しいかもしれない。大喜は千夏先輩が好き、だけど私は大喜が好き。そこを押して通るには、多少強引に進むしかないから。勿論大喜を哀しませるような事はしない、そんなのは嫌だ。千夏先輩を大喜から遠ざけるだけなら簡単だ、同居の事をリークしてやれば良い。スター選手に降って湧いたスキャンダル疑惑は、栄明の教師陣どころか理事会にまで火種をバラ撒くことになるだろう。そうなれば二人は確実に引き離される。もしかしたら千夏先輩、栄明を去ることになるかもしれない。
でも、だ。そんな卑怯なことをしたら、私が私でいられなくなる。
正々堂々の範囲内で、全力を尽くさなければ。
「いのただってさぁ、蝶野さんみたいな一途な子に好かれて悪い気してない筈でしょぉ? 結局いのたの為になるんだもん、それでいいじゃん」
まあ、ね。告白した時も、戸惑ってはいたけれど嫌がってはいなかった。俺は千夏先輩が好きだから、とは言ってたし私もそれで良いと応えたけどさ。
もしも強引に押していったとして、それで一時的には拗れたりするかもしれないけど――最終的には上手くいくかもしれない。
始めなければ、始まらない。一歩踏み出したら、そこから突破口が拓ける可能性もある。
一気に大喜の懐へと詰め寄る、確かにそれが今の最善手。
……なのかなぁ……。
どうもこの子、考え方が極端なんだよね。私は大喜を好きでいること自体を楽しんでいるんだけど、ゴールしか見てないと言うか。
大丈夫かな、こんなのを参謀にして。
大丈夫なわけなかった。ええ、大丈夫じゃないよ。大丈夫なもんか、これが。
「ふっふーん、準備ばんたーん。好きなようにして良いよぉ、蝶野さん!」
青ざめる私の前で菖蒲は楽しそうに笑っていて、そして。その後ろには――大喜が転がされている。目と口を塞がれた姿で。
どうしよう、明らかに絵面が犯罪だ。今警察が踏み込んできたら、拉致監禁でお縄じゃないか。一応高校新体操塊では日本トップクラスの私だけど、これが明るみになったら破滅するんですけど。
いやそもそも、なにやってるんだコイツは。
準備万端もへったくれも、何が――。
と叫びそうになって私は、ようやく思い当たった。このバカがさせようとしている事に。
今の大喜は手足も縛り上げられ、抵抗一つ出来ない無力な状態。この状態なら、
専門的な言葉で言えば――据え膳、か。
つまり菖蒲は「ここでモノにしてしまえ」と言っているわけだ、そうすれば話は片付くからと。
いや、いやいや。いやいやいやいや、そうじゃない。思いっきり間をすっ飛ばし過ぎている。
そらまあ大喜が好きだし付き合いたい、そうしたらキスとかその先のあれこれとかもするんだろうなーとは思うけどさ。でもそんなのはもっと先の話、高校一年生の私たちにはまだまだ早すぎる。
ここは良識ある学生として、この犯罪者をどうにかして大喜を助けないと。
そう思った矢先菖蒲は薄く笑いを浮かべ、大喜へと歩み寄った。
「じゃーぁ、まずは
その手は大喜の身体をまさぐり、そして――。
「おぉ~、思ったより逞しいねぇ。これでまだ未使用なんてもったいなーいぃ」
軽口を叩きながら、大喜のそれ……オトコノコを慣れた手付きで引きずり出してしまった。
私だって高校生だ、そういう知識くらいある。あれがどういうものか、そういう事は多少なりとも知っている――筈なのに。
こんなのは、知らない。こんなものは、私が知って良いものじゃない。
大喜の一部だとさえ、思えない。
ああ、でもそんなものを菖蒲は愛しげに弄っている。信じられないくらいに、楽しそうな顔で。
そのまま更に顔を寄せて「あー……んっ」、菖蒲は大喜のオトコノコを、口に含んでしまう。
そう言う行為があるのは私だって聞いて事あるし、好奇心で画像検索して見たことだってある。でも、まさか。こんなにも至近距離で、フェラチオというのをリアルで見る日が来るなんて。
もがく大喜の塞がれた口から漏れる呻きと、菖蒲が頭を上下させながら奏でるじゅぷじゅぷという粘っこい水音。あまりにも生々しくて、凄まじい。
顔が動く間にわずかだけ見えるオトコノコは、太く血走っているように思える。
気持ちいい、んだ、大喜は菖蒲に、気持ちよくさせられているんだ。
その様を見ているだけで、お腹の奥でなにかが沸き立ってくるのが分かる。
見たくない、でも見たい。そんな背中合わせの思いと共に、私は二人の結合部を見つめ続けた。
水音はどんどん激しくなり続け、やがて大喜の身体が跳ね上がるように震える。それが何を意味するか、私には察しが付いてしまう。
射精した、ということ。大喜が菖蒲の口の中で、精液を放った。
「んむ、んー……んっ」
菖蒲が喉を鳴らしてそれを呑み込み、ゆっくりと口を離すのを私はただ呆然と眺めるしかない。
目の前で起きている、異常な事態を。
「あ、うぁー、……ぁ」
菖蒲の指先に翻弄され、私は壊れたオモチャのようにただ切れ切れの喘ぎを上げるだけ。
普段のオナニーでは気持ちよくなりだしたくらいで指を止めて余韻に浸るのに、菖蒲はお構いなしに攻め続けてくる。どんなに上っても上っても、降りることを許さない。それどころかまるで私の内側を知り尽くしているかのように、的確に。
グチャグチャに掻き回されていく私のオンナノコは、まるでお漏らししたかのように絶え間なく汁を垂れ流していく。
痛くないように解してあげる、という菖蒲の言葉にのせられて私は延々と快感に落とされているのだ。
この先の為に。
菖蒲は私と大喜に、……セックスをさせようとしている。そうなってしまえば、私たちは特別な関係になる。誰も入り込めない、絶対に引き離されない間柄に。私たちが幸せになれるように、菖蒲は策謀を巡らせていたのだから。
「これくらいで良いかなぁ、そろそろいのたと
嬉しそうな菖蒲に促されるままに、私は服を剥ぎ取られてノロノロと大喜に跨がらされていく。
頭の中は白い快楽の光に呑まれて、もうなにも見えない。このまま菖蒲に任せておけば、私はそれでゴールに辿り着ける。それは確信出来る、間違いない。
だけど、でも。
最後の最後で、残った理性が私を踏みとどまらせた。
「ダメ、……だよ。大喜は千夏先輩が、好き……だから……」
大喜の気持ちより自分を優先するのはまだ良いかもしれない、そこまでなら。それでも、これ以上は許されない。
正々堂々勝たなければ、意味がないんだ。千夏先輩だって大喜を、――好きなんだから。
そう思っていた私はでも、思いがけない角度からの不意討ちを受けることになってしまう。
「いのたがちーちゃんを?
ドクン、と心臓が強く瞬く。それは、どういう事だ。私はだって、でも確かに千夏先輩から感じていた。大喜への、強い好意を。
まさかそれは、勘違いだったのか。単に同居人として仲が良いだけで、そういう感情は無かったのか。
千夏先輩は私のライバルでさえ、無かった。ただ私がずっと勝手な思い込みで、七転八倒していただけだった。
だとしたら、だとすれば。私は、何に遠慮する必要があったのか。
大喜の恋は、実らない。絶対に実らない。ならここで、終わらせてあげて良いんじゃないか。私がその傷口を埋めて余りあるほど、愛してあげれば良いじゃないか。
一度は止まった腰を、私は再び落としていく。今度は菖蒲に手を引かれてではなく、自分の意思で。
聳え立つオトコノコの真上に私の
「蝶野さん、あと半分くらいだよぉ。頑張ってねぇ~」
今一熱量が低い応援を受けつつ、私はそのまま一気に身体を落とし込んだ。
聞いていたような痛みは無く、込み上げてくるのはただただ強い満足感。大喜と一つになれた、という事実だけがここにある。
お腹の中はパンパンで、一分の隙も無いほど完全に大喜と私は密着しあっているんだ。
それだけでもう、気絶しそうなくらいに気持ちいいのに。菖蒲はさらに、その先を求めてきた。
「蝶野さんさぁ、スクワットするよね? あんな風に、動いてみようよ。抜けきらないようにしてさぁ」
全く簡単に言ってくれる、ここから動けだなんて。そんなの――、試したくなるに決まってるじゃないか。
そろそろと腰を上げていくと、私の中は引っ掻かれるように抉られて。その快感に耐えかねて腰が落ちると、今度は一番奥がドスンと突き上げられて衝撃で腰が浮いてしまう。一旦浮いた腰は快感に再び落ちて、落ちた時の突き上げでまた跳ね上がる。
止まらない、止められない。大喜を
指ではどうやっても得られない、この快感。いつまでも浸っていたい、そう心のそこから思う――けれど。
「んあ、ぁっ、――!!」
身体の一番深い場所で、なにかが弾けとんだ。何が起きたのか、私は大喜の身体が
大喜は私と繋がったまま、私の膣内に射精したのだと。
健康的な女子高生である私が膣内射精を受けるという事は、少なからず
「おぉ~、蝶野さん顔蕩けてるぅ~。上手く行って良かった良かったぁ」
ぱちぱちと手を叩いて祝福してくれる菖蒲の声を聞きながらも、私は再び腰を動かしていく。もっともっと、したい。もっともっと、欲しい。
私はこの幸せを、もっともっと貪欲に味わい尽くす。
だから、このままずっと大喜を愛したい。少なくとも、身体が動かなくなるまでは。
あれからどれくらい過ぎたか、それももう曖昧だ。一年にはならない筈なんだけど、さ。
散々愛し続けたお陰で、大喜は私を好きになってくれた。もう千夏先輩を見ない、私だけの大喜になってくれたのだ。
当の千夏先輩は、菖蒲が言っていた男バドの帰国子女と少しの間付き合っていたけれど――二ヶ月もしないで別れてしまったそうだ。どうしてかは知らないし、追求するような事でもない。そういうものだ、としか思えない。最近はあまり顔も会わさなくなったし、正直そこまで興味も持てない。千夏先輩には千夏先輩の人生があって、私がどうこう言うべきではないんだ。多分、きっと。
逆に菖蒲とは、まるで幼馴染みみたいに仲良くなっている。大喜の件で繋がった縁は、途切れること無く続いている。とは言え最短二時間で彼氏を乗り換えるような恋愛体質だけは、いまだに理解できないけれど。いや付き合うまでに分かれよ、とか実際思うわ。恋多き女と言うか、気が多すぎる。もうちょっと落ち着いて、一人をじっくり好きになっても良いと私は思います。
でもま、それも含めて人生だ。これもまた、私がどうこう言うべきではない話。
「大分大きくなったよねぇ~」
すっかり丸々と膨らんだ私のお腹を撫でながら、菖蒲が愛しげに呟く。自分で産む気はないけど赤ちゃんは大好き、と都合の良い事を言う女だけど、何だかんだで優しいから助かる。今日もそれで、わざわざ来てくれたんだし。
テキパキと用意をする菖蒲の前で、重いお腹を揺らしながら大喜のオトコノコにしゃぶりつく私。最初は信じられなかったけど、今はもう慣れたものだ。私だけ……まぁたまに菖蒲も使うけど……の、大事なモノ。私の人生を変えた、大喜のオトコノコは何よりも愛しいから。萎えていたのが口の中で膨れ、喉を貫きそうになるほど隆起するのも堪らない。
口内はたちまち大喜の味に染まり、唾を飲み下すだけで喉が快感に震えてしまう。
このまま精液を呑みたい、とは思うけど今日は我慢。おたのしみは、まだ先だ。
ちゅぽん、と音をたてて口を離した私は、菖蒲が敷いていたベッドシーツの上で脚を広げる。
「じゃぁいのた、
もう臨月を迎えて少し経ち、明日にも赤ちゃんを産み落とそうとしているオンナノコ。子宮もだいぶ降りてきているだろう、もしかしたら両手で拡げてたら子宮口まで見えてしまうのかも。……あんまり見られたい場所ではないかな、やっぱり。
そんな事を考えながら、私は大喜へと呼び掛ける。
「ね、来て。大喜のミルク、直接飲ませてあげてよ」
本当はあんまり良くないんだろうけど、でもちょっとハードな胎教だとでも思えば良いか。それに大喜との愛の結晶なんだから、この赤ちゃんが産まれる瞬間を見て欲しい。羊膜を貫いて赤ちゃんに触れて欲しい、生まれて最初に触れるのを大喜のオトコノコにしてあげたい。
やっぱり浅くなっているのかそれとも大喜が及び腰なせいか、短い抽挿はでもリズミカルに繰り広げられていく。菖蒲は「産まれてくる所録りたい」と言っていたし、きっとこれも録っているんだろうな。気にかける余裕はないけど、
前の私なら、こんな風に思うことなんかあり得なかっただろう。ただでさえ恥ずかしいのに、そんな事されたら死にたくなっていたかも。
馴れてしまったせいか、いや違う。
今の私はきっと、歪んでいる。何処かでおかしくなって、二度と戻れなくなってしまった。
でも、それで良い。
赤ちゃん諸とも突き上げられて気持ちいい、込み上げてくる痛みさえ快感に変換されていく。どうにもならないほど狂ってしまっている、
このまま壊れていこう、このままずっと。
大喜がいて、菖蒲もいる。きっと大丈夫。