慣れないことはするべきではない。慣れているなら、もっとするべきではない。うんまあ、それは分かっているのです。
ただ、だ。私としてはこの「居候三杯目にはもっと出せ」が合言葉な
すっかり住み慣れた借り物の部屋で天井を見上げ、私は小さく溜め息を一つ。
ウインターカップも終わって年も明け、めでたく交際一周年を迎えた私たち。色々と理屈を捏ね回して同居も継続、順風満帆。
でもそれなのに、まだキスしかしていない。
大喜くんは現在隣の部屋でお休み中、初日から変わらずいつだって私を第一に考えてくれているのはスゴい嬉しいんだけどさ。もうちょっとほら、あるでしょうに男子として。渚の弟くんなんて結構なおサルっぷりだそうだし、男子ってそういうものなんじゃないだろうか。……いやあんまりガツガツ来られると怖いな、大喜くんはもっと可愛くあって欲しい。
まあ取り合えず、二人の関係をもう少し進めたいなぁって私は思っているわけだ。この先に続く、長い人生の為にも。
バスケを引退して大学受験を控えた今、私は意外な位に自身が凡庸な人間だと思い知らされている。そりゃ成績は校内では悪くない、しかしそれは栄明がスポーツ私立だからだ。世間様においては中の下程度、選べる道は多くない。それに女子プロバスケの道に入ろうにも、その為にはまず一流企業への就職が必要だ。それをキメられるような実績があれば、悩む必要はない。インターハイを征して尚運が悪ければスカウトなんかされないんだから、私らなんぞにそんな機会があるものか。
「う。うー……っ」
マトモに現状を直視すると自分が自分で無くなりそうで、私は小さく呻きながら寝返りを打つ。大きい声出すと大喜くんが心配する、それは良くない良くない。
ひたすら突っ走って目を背けてきたけど、もしかして私なにも無いのかも。
まあそれは仕方ないにせよ、だ。せめて卒業までには、名実共にオトナになっておきたい。キスより先のあれこれをしてみたいのだけれど、大喜くんは分かっているんだろうか。
――ここは一つ、自力で何とかしておくか。私は歳上なんだから、いざという時にリードしなければいけないんだ。身体だけでも経験値を上げなければ。
そう思いつつベッドに転がり、身体の芯から込み上げる熱に任せて肌へと指を這わせていく。大喜くんはきっと気付いてさえいないんだ、私がそこそこえっちな事に。触りたい触ってほしい、とずっとずっと思っている事も。思えば去年、大喜くんの誕生日の時も理性が飛びかけたっけ……。あれは由紀子さんが帰ってこなかったら不味かったな、いやむしろその方が良かったのか。
胸の傍をなぞり、隆起しつつある先端を指先でこね潰すと思わず声を上げそうになってしまう。さすがにそれは不味い、聞かれたくはない。でもそうして歯を食い縛って耐えるのも、また興奮するから困ったものだ。
いつかここを、大喜くんが吸ったりするんだろうな。あまり自慢できるようなものでもないけど、そうなる事もあるだろう。
……なんて考えたせいか、すぐにショーツの内側が湿り気を強め始める。全くこれこそ困ったものだ、大喜くんにしてもらうのを想像するだけで濡れてしまうんだから。
でもま、今はそれで良い。
脱ぎ捨てたショーツのクロッチには強い染みが刻まれ、生臭い臭いが鼻を付く。これは明日学校で捨てよう、バレなければいいんだバレなければ。
考えるべきはそこじゃない、のろのろと身を起こして床に脚を下ろし、私は覚悟を決めて――その場にしゃがみこむ。
「うわ。うわ……」
粘液にまみれた指で肉の裂け目を開き、鏡に映して最初に上がったのがこの一言。改めて見ると結構キツいな、これは。拡げてみると生々しいと言うか、正直内臓感が強い。いや当たり前か、内臓ではあるんだから。
普段指を入れはしても開けてまじまじと見たりはしないから、ちょっと舐めてたな。これはさすがに大喜くんには見せたくない、でも見えないくらいに暗くして手探りとなると絶対失敗するだろう。なにせ私と来たら雑把な人間なんだし、煌々と灯りが点いてても心配だ。
スカート穿いたまま跨がったら、重力の助けもあるし入りやすいかもしれないし見せずに済むか。いやでも服はあんまり汚したくないなあ……。
まあその辺はその時になってから考えよう。いつになるのか分からないけど、さ。
とりあえず今は、試してみる事だ。
興味本意で買ってしまったディルドを床に立て、ゆっくりと腰を落としていく。いきなり本物よりかは楽だろうし、歳上の私が狼狽えてたら大喜くんも心配だろうからね。
女は度胸、なんでもやってみるもんだ。
膣口に異物が当たる感覚を経て、そして――そして。私の身体はそのまま、停止する。
「あ……っ痛……ぁ……」
タンポン入れるのと変わらないかと思ったのに、これスゴい痛いんだけど。奥の無感覚部分までなんて絶対無理だ、裂ける。
こうなると自分でやるのは無理そうだ、どうしても躊躇ってしまう。これはもう大喜くんに丸投げしてしまおう。最悪失敗しても大喜くんのせいにしちゃえ、どうにかなるさ。
今日はもう良いかな、と私はベッドに倒れ込む。
しかし花恋にせよ夢佳にせよ、よくもまあこんなこと出来るものだ。普段使わない筋肉を酷使する感じな上痛い目にあって、それでもだもんな。愛のなせる技なんだろうけど、さ。……蝶野さんはどうなんだろう、新体操やってて身体柔らかいから平気そう。今度それとなく聞いて……いやそれやったらグーで殴られるか……。
不完全燃焼のまま込み上げてくる眠気、それに身を任せて私は目を閉じた。
そして迎えた、大喜くんの誕生日。大人たちは示しあわせたように数日留守にし、今私たちは二人きり。
もうするべき事は、一つしかない。
「ん……っ」
邪魔者もいないけど一応場所は選んで、大喜くんの部屋でキスを交わしあう。これから私たちは、セックスをする。愛しているから、愛されたいから。
口腔をねぶりあいながら身体をくねらせ、僅かに肌にのせていただけの服を落としながらも頭は沸騰して止まらない。
それはきっと、大喜くんもそうなのだ。だって興奮具合は、……とてもよく見えている。布地を押し上げる程膨れたそれは、まごうことなきその証。
……まだ直に見てもいないけど、入るかどうか早速不安になってきた。無理してでもこないだ一回突っ込んで慣らすべきだったかな、本当に。
お互いをまさぐりあう中で意を決し触れてみると、そこは驚くほど熱く硬い。
「え、あ……」
戸惑う大喜くん、でも私も私で大変なのだ。それでも一度付いた火は止められない、小さく息を呑みながらも中から引き出したオトコノコは――思った以上に猛々しいルックスをしている。そうかー……こんな感じなのかー……。
乏しい知識を総動員して平生を装い、指を輪にしてそっと掴んでいく。確か男子はこんな感じでオナニーするとか聞いたようなそうでないような、でも夢佳の言うことだからなぁ。
手筒を上下に揺さぶると、大喜くんの口からは甘い吐息が漏れだした。普段からこんな声出すんだろうか、可愛いなもう。私なんか堪えないとすぐ潰れたようなうめき声出しちゃうのに。
なんだか悔しくなってきて手を加速させると、不意に大喜くんの腰がガクンと揺れて――
「わ。あ……っ」
私の手の中で、白く熱い粘液が迸る。おお、これが射精か。勢いよく出るんだな、ちょっとした紙くらいなら突き破りそうだ。
――と。手を拭こうとして身をよじった、まさにその瞬間。ショーツの中に起きていた違和感に、私はようやく気が付いた。
いや、いやいや。いやいやいやいや、待て待て。ほんの僅か触れていただけなのに、引くほど濡れてしまっている。いつのまにか太股まで生温い粘液が垂れ、ちょっと動かしただけでもう音が立つ。
これは不味い、いや本当に。漏らしたと思われたらどうしよう、どうしようもないか。
でもまあ大喜くんの顔を見る限り、まだ気付いてはいなさそうだ。快感に蕩けきり、可愛いのにえっちい。うーん、こうなるとちょっと悔しいな。
まあ――良いか。私は考えない方がいいんだ、どうせ悪い頭なんだから。
頭の奥で羞恥心のスイッチを切り、理性のスイッチも同時にオフ。この先はそれで良い、それが良い。
ショーツを脱ぎ捨ててベッドに背中を預け、そして。
「大喜くん、さ。……来てくれる、かな」
……大きく脚を拡げ、私は微笑んだ。
あー……疲れた。こんなに疲れはてるとは思わなかったし、もっとフワフワしたロマンティックな行為だと認識していた。まさかあそこまで生々しいとは。いやまあ、生々しくて当然ではあるんだけどさ。大喜くんが喜んでくれたのは何よりだけど、これはあまり頻繁には出来ないな。腰が死んでしまう。
お腹の奥にはまだ痺れるような疼痛が残ってはいるけれど、気にする程のものではない。明日には治っているだろう、元々頑丈な体だ。
息も荒くのし掛かって来る大喜くんの身体が私に重なり、ミシリと骨盤が音を立てたあの瞬間。肉が裂けるような痛みはでも、愛しさで薄められていった。
身体の一番深い部分で自分以外の体温を感じるのは不思議な感じだったけど、悪くはないな。あんな風に顔を突き合わせているのも、また良しだ。ゴリゴリと胎内を抉られる感触さえいとおしかった、問題があるとしたら冷静になった後だ。つまりは、今この時。
熱くなりすぎたせいで、今色々と恥ずかしくて仕方ない。
結局我慢できないまま跨がったし、思いっきり搾り取ってしまった。……あぁそう言えば避妊もしてない、なにやってんだろうな私は。これで妊娠はちょっと辛いな、大学行きながら子育て出来るほど器用ではないし。それに大喜くんにしたって、私に気を遣って道を誤らせてしまうかも。
まあそれに関しては後でゆっくり考えよう、時間はあるさたっぷりと。
二人でいれば、どうにかなる。二人でならば、なんでも出来る。
愛はいつだって、無敵なのだ。