#1 アオく輝く日々の中で
部活の為に無理を言って居候させて貰っている身として、私は常に結果を出し続けなければならない。
猪股家の面々は揃って好い人だから、そこまで求めはしないかも知れないけれど。
でも私としては、まるで家族のように優しくして貰っている事について「理由」が欲しい。無償の愛なんて都合の良いものに甘えられるほど、私は素直で気立ての良い子ではないから。
我ながらひねくれた育ち方をしたものだと思うけど、どうにも落ち着かない。結果を出す見返りに生活を保証して貰っている、くらいがちょうど良い。
だから、私は恋愛なんかしていられない。そんな暇があったら、少しでも技量を伸ばさなければ。
そう思うのに。ああ、そう思うのに。
なぜ大喜くんは、あんなにも可愛いのだろうか。
猪股家の息子さん、大喜くん。私の一つ下で、バドミントン部。そして、とても可愛い。
まあ、オトコノコではある。鍵がない上に壁が薄い部屋にいるから、あれこれ聞こえてくるし。でもそれさえ可愛い。
私を好きらしいけど、手を出す勇気なんか無いのが可愛い。ガサツで雑把で女子力低い私は、あれこれと隙だらけなんだけど。下着が無くなる事も、何か粘液を付けられる事もない。でも部屋でシてる時に私の名前呼んだりはするから、一応そういう事はしたいんだろうな。
大喜くんの中では、私はどんな先輩なんだろう。スゴい肉食系だったりして。
しかし大喜くんとそういう関係になると、もう私居候からお嫁さんになっちゃうかもしれない。それはそれで良いんだけど。でも、大喜くんは納得するだろうか。いざとなったら力尽くかなー……。
いやいや、そうはいかない。私はバスケの為に日本に残ったんだ、嫁入り先が欲しい訳じゃない。
こうやって日々悶々としつつ、それでも結果は出さなければならない。大喜くんの可愛さだけが癒しだ。
インターハイに備え、部活は21時まで延長中。その後だから帰宅は22時を越えることもある。
それでも嫌な顔一つせず「インターハイの為だから」と毎日優しく出迎えてくれる由紀子さん、正直感謝しかない。晩御飯もちゃんと用意してくださるし。こんな母親になりたいものだけど、私の母はここまで人間できてないからなあ。あのガサツさが遺伝して、こんなワンパクでたくましい子ができているわけだし。
居候三杯目にはそっと出し、なんて言うけど私はその辺を悩むほど繊細でもない。と言うか、食べないと死んでしまう。朝練昼練延長部活、そして勉強までしなければいけないんだから。
そしてお風呂を頂き、部屋へと上がって一応勉強もして。ベッドに横たわると、欲求のせめぎあいが起こる。即ち、眠気と色気の対立だ。
欲望は汗にしろ、なんて言うけど。実際身体を酷使すると、もうムラムラ来て仕方ない。闘争心は性欲を駆り立てるわけで、更に薄い壁一枚向こうには可愛い大喜くんがいる。ああ、シたい。
でも、だ。眠いもんは眠い。朝は早いし夜は遅いし、私はスゴく眠い。男の子みたいに起きて五分で出掛けられるわけじゃない、一応私だってそれなりに身支度はいる。それを差っ引くと、とにかく早く寝たい気持ちもある。
……隣からも何の物音もしないし、今日はもう寝てしまおうかな。
大喜くんがシてる音を聞いちゃうとこっちもシなきゃ治まらないけど、そうでないなら何とかなりそうだし。
スマホのアラームをセットして、壁の向こうに小さく「おやすみなさい」を呟いて。
私は眼を瞑り、入眠姿勢を取る。さあ、明日も部活だ。
それは、違和感と言うには小さすぎた。虫の知らせ、とでも言うのだろうか。
ふと眼を開けたその時、ドアノブに僅かな気配を感じたのだ。
あれが、あと数秒後に動く。何故かそう確信する。
そしてその確信は、思った通り現実となった。
ゆっくりとドアノブが動き、小さな音と共にドアが薄く開いた瞬間、私は眼を閉じ布団に潜り込む。
誰なのか、はすぐに分かった。と言うか一人しかいない。
大喜くん、だ。大喜くんが、入ってきたのだ。
夜這いという行為が存在するのは知っているし、そういうのを好む物好きもいると聞く。
寝たフリをしながらも耳を攲てていると、気配と足音が少しずつ近付いてくるのがわかる。
いやしかしこれは、どうなんだろう。私の初めては、こんな事故みたいな形になってしまうんだろうか。
まあ、相手が大喜くんなら構わないっちゃ構わないけど。この場合私は被害者だし、咎められる謂れはない。
ただ、だ。大喜くんにそういう経験があるとは思えないし、そもそも私だってオトコノコ相手の経験は無い。ソロプレイ専門でやってきたんだし。絶対失敗して、気まずい思いをする気がするのだけれど。
……入れる場所が分からないとかでオロオロする大喜くんも、可愛いかもしれないけどさ。
そんなことをつらつらと考えながら寝たフリを続けていると、不意に足首に外気を感じた。布団が捲られている、ということ。荒い息遣いも聞こえてきて、大喜くんの興奮が伝わってくる。
これは、覚悟を決めるべきだ。勇気をふりしぼった可愛い大喜くんを、先輩として受け入れよう。そうだそうだ、私は悪くない。だって被害者だもん。むしろ責任とらせて、お嫁入りしちゃおうかな。
いやいや、決意がどんどん鈍っているぞ私。しっかりしろ、眠気で錯乱してないか私。
起きてしまうべきだろう。可愛い後輩に過ちを犯させる、見下げ果てた先輩になってはいけない。そう理性は言うのだが、身体は金縛りのように動かない。
動かないなら、仕方がないか。仕方ない、仕方ないさ。
そう、仕方ないから覚悟しましょう。固く眼を閉じ、来るべき瞬間を待とう。
と、考えたにも関わらず。
足に感じたのは手の温もりではなく、掛け布団の質感。
少しずつ離れていく気配。
え。まさか。
――これで、帰る気か。ここまで近づいておきながら、逃げる気なのか。そんなのは。
許せない。
布団を跳ね上げ、すでに背中を向けていた大喜くんの首根っこを捕まえてベッドに組み倒す。
時間を考えるとあまり音を立てたくないが、ここは力尽くでいかないとダメだ。
私が起きているとは思わなかったのか、大喜くんは呆然としている。
「大喜くーん、何してるのかなー?」
手足を押さえ込んだまま、闇の中でも表情がわかるほど顔を近づけ。可能な限り穏やかに、そう穏やかに語りかけた。……つもりだったのだけど。
「先、輩……っ、ごめ、んなさっい、俺……」
大喜くんの瞳は見る間に潤み、その声は嗚咽にまみれていく。本気で泣いている、泣き顔も可愛いとか何この子天使なの?
いやだから、そうではなく。
夜の夜中に、男子をベッドに組み倒して泣かせて。なんだこれは。何の因果かはたまた祟りか、本懐を遂げられそうで遂げられない感じ。
大喜くんは泣きながら謝り続けているけれど、その下の方。脚の間には、確かな膨らみが自己主張している。そういう目的で来た、というのは一目瞭然だ。普段はここまで盛り上がってないと思うし。……まじまじと見ることはないから、その辺は曖昧だけど。
「ね、大喜くん。怒らないから、ちゃんと話そう?」
出来る限り優しく、小さな子に語りかけるように。
あんまり泣かれても、正直困るし。
大喜くんはそれでも暫くはグスグスと泣いていたけど、やがて落ち着いてきたのか小さく声を漏らし始めた。
「俺……、先輩が、好き……です。だから、でも……我慢できなくて……その……」
ああ、うん。私を好きなのは知ってるけどね。でも、初めて聞いた顔をしておこう。言葉にしてくれて嬉しいし。
大喜くんを引き起こし、そして。そっと、抱き締めてあげる。
見た目よりもがっしりした身体、熱い肌。伝わってくる、激しい鼓動。ああ、可愛い。
「大丈夫だよ、それは恥ずかしいことじゃないからね」
むしろ夜這いを歓迎しようとした、私の方が恥ずかしいし。言わないけどさ、うん。
「大喜くんは、私を好きになってくれたんだよね。好きになったなら、そういうことをしたくなるのが普通なんだよ」
頭を撫でてあげながら、大喜くんに微笑みかける。私だって、したいからね。やっぱり言わないけど。
大喜くんの瞳からは、また大粒の涙がこぼれ落ちていく。そうだよね、辛かったよね。隣に好きな相手がいても指一本触れられないなんて、生殺しだもんね。
今日こうやって来てしまうまで、どれほど我慢し続けたんだろう。私は自分で思う以上に雑だから、色々と大変だったろうな。義理もあるからって待ちに徹したのは、さすがに悪かったか。こっちからグイグイ行くべきだったのかも知れない。
――居候としての矜持より、大切なものがある。人を泣かせてまで守るべきものなんて、そうは無いんだ。
壁に背を預けてベッドに座る私、その脚の間に収まった大喜くん。後ろから抱き締めて、身体を押し付けていく。
そして、手をゆっくりと身体に沿って下ろしていって。待ちかねて震える、大喜くんのオトコノコへと指を這わせる。
大喜くんはいつも、こういう状況を想像しながらシているらしい。やっぱり受け身なんだな、そして私は肉食系のイメージらしい。良いけどさ、でも私本物は触るのも見るのも初めてなんだけどね。ビッチ扱いされてる気がして、なんかモヤモヤする。
力加減が良く分からないけど、とりあえずはそっと握ってみる。確か、男の子はこういう感じで触るって渚が言ってたような言ってなかったような。
身体の一部とは思えないほどに硬くて、そして熱い。オトコノコって、こんな風になるのか。大喜くんはこれを鎮めたくて、毎日シているんだ。
そのまま上下に軽く手を動かしていくと、大喜くんの口からは可愛い喘ぎが溢れ始めた。
「大喜くん、どう? 気持ちいいかな?」
次第に大喜くんのオトコノコからは透明なねばつく液が出始めて、私の手を汚していく。……男の子も濡れるんだ、知らなかった。精液……ではないよね、あれ白いらしいし。
でもしごく手がグチュグチュとねばっこい音になっていくのは、なんだか面白い。もっと激しくしたら、もっと濡れるかな。そう期待ながら、手を加速させていくと。
「あ、……っ、出ま……すっ」
手の中で、大喜くんのオトコノコがドクンと脈打った。
え、と思う暇すらないまま、ビクビクと震えながら白い粘液――精液が吐き出されていく。それも、私の布団の上に。ひええ、借り物なのに。
出終わったみたいだから手を離し、布団に散った精液をウェットティッシュで拭っていく。落ちるかなー……。まあいいか、大喜くんが悪いんだし。
「もー、出しすぎだよ」
まあ当の大喜くんは、射精して幸せそうな顔をしているけど。まったく可愛いったら。もっと幸せな顔にしてあげたくなるじゃないの。
そう言えば、と前に渚が話していた事を思い出す。男の子が絶対堕ちる、必殺技があるって教えてくれた事を。あの子もとんでもないコミュ力ビッチだから、参考にして良いか怪しいけど。
でもま、モノは試しだ。上を脱いで、大喜くんに手招きする。
「ちょっと、こっちおいで」
ベッドの縁に座らせて、その間に膝立ちで入る私。さっきとは逆、といえば逆か。まあ良いけど。
そのまま――大喜くんのオトコノコを、胸で挟み込む。大した大きさでもない私だけど、とりあえず手で横から押さえればホールドは出来ますので。
手で触れたときよりも、その硬さはダイレクトに伝わってくる。そしてその熱気と、匂いも。頭がクラクラしそうな、牡の存在感。
このまま動いて、オトコノコを擦りあげるのが効くんだとか。もっと大きければ全部収まるのかもしれないけど、私がやるとオトコノコの先がぴょこぴょこ顔を覗かせてくる。なんか、可愛い。
身体を揺さぶりながら、喘ぐ大喜くんを見上げる。普段とは違う視点も、なかなか新鮮だ。
私の胸は、見る間にドロドロに汚れていく。さっきよりずっと、濡れ方が激しい。そんなに気持ちいいんだろうか、ちょっとイメージしにくいんだけど。
まあ、良いか。大喜くんが感じてくれているなら、それでいい。
そのまま暫し、擦り続けて。不意に大喜くんが、ビクンと震えたのが分かった。これは、多分来る。そう予想した、その直後。
「うぁ、あ、あー……」
呻くような声と共に、再び精液が放たれた。今度は私の真正面だから、その様子が良く見える。
小さな口を震わせながら頑張って精液を放つその姿は、やっぱり大喜くんの一部という感じがする。
健気で、可愛い。……私の顔を直撃しなければ、もっと良いんだけど。
口元に飛んだのを舐めてみるけど、美味しくはない。でも、大喜くんのだから平気だ。
「あ……ごめん、な……さ、いぃ……」
私の顔にかけちゃって叱られると思ったのか、また大喜くんが泣きそうな顔になる。……なんでここまで怖がられてるだろう。
いや、そうじゃないか。大喜くんが恐れているのは、叱られる事じゃない。
だから、言ってあげよう。
「大丈夫だよ。私は大喜くんを、嫌いになったりしないからね」
好きな人に、嫌われたくない。きっとそれが、大喜くんの本心。
だから私も、ちゃんと言わないといけないんだ。
「私も、大喜くんが好き。好きだから、全部受け止めたい」
立場も何もかも、忘れよう。これ以上、大喜くんを泣かせないように。自己満足の理屈で、余計な義務感を背負わずに。
ただ、真っ直ぐに。
初めてだし上手くいかないかもしれないけど、と一応言って。そのまま、大喜くんを抱き締めながらベッドに倒れ込む。
ベッドの軋む音と、二人分の吐息。濡れた肉の立てる、湿った音。無言のまま、ただ肌を合わせあう。
大喜くんのオトコノコを、私のそこへと導いていく。普段はあまり中を弄らないし、こんなのが本当に入るとも思えない。でも、きっと大丈夫。だって、私達だから。
「ん、こう……かな?」
何度も手探りで試しながら、少しの間格闘して。ようやくオトコノコの先が、私の中へ入ってきた。
お腹の中が裂けていくような痛みと、内臓が押し拡げられる圧迫感。お世辞にも、気持ちいいとは言えない。
でも、それでも。繋がっている大喜くんの温もりが、心地いい。愛しい。心が叫んでいる、この人が好きだと。
その気持ちが、痛みも苦しみも遠くへと流し去っていく。
大喜くんも、そうなんだろうか。まあ男の子は構造が違うから、そうはならないかな。でも良いや、表情を見る限りじゃ気持ち良さそうだし。
ゆっくり、ゆっくり。身体を動かしていく。さっきの手や胸と同じように、オトコノコを私の中で擦るイメージ。……大分難しいけど。て言うか見えもしないし普段使わない場所だし無理なんじゃないかなー、とも思う。
それでも頑張ってはみる、可愛い大喜くんの為に。
そうやっていると、段々と私も疼きが強まっていく。どこをどう弄ったかじゃなくて、大喜くんを想うだけで身体が燃えていくのが分かる。こうなってくると、私も気持ちいい。愛がなければ大したこと無い、というのは本当なんだな。愛してるから、それだけで一大事だ。
気が付けば、身体が止まらない。全身を隈無く使って、大喜くんを愛する。大喜くんに、愛される。気が狂いそうな程、愛が止まらない。
頭の芯が燃え尽きていく、終わらない絶頂感。血管の中まで愛に満たされているような、規格外の快感。
それは大喜くんもきっと同じだ。それを示すように、お腹の奥が脈打つ。
「ぅあ、……っ」
大喜くんの射精を、身体の奥深くで感じた。暖かい鼓動が私を満たし、隅々まで染み透っていく。
トクントクンと私のなかに精液を注いでいく、大喜くんのオトコノコ。その拍動を感じながら、ギュッと大喜くんを抱き締め続ける。
「大好きだよ、大喜くん。大好きだよ……」
大喜くんは、また泣いて。泣いて、でも嬉しそうに。私を抱き締め返してくれた。ああ、可愛い。幸せだ。こんなにも幸せで、良いんだろうか。
良いに決まっている。愛しているんだから。
長い長い抱擁の中、意識が蕩けていく。大喜くんも大喜くんで、失神したように動かない。
いやこのまま寝てしまうと、明日がとんでもないことになる。夜中だしシャワーは無理だけど、せめて後始末してから寝ないと大変だ。そうは思えど、手足はもう力が入らずベッドに屈している。
ああ、まあ仕方ない。動けないなら、仕方ない。学校は多少遅刻する覚悟をしよう。後一連のあれこれについては、明日改めて考えよう。それでいい。
大好きな可愛い大喜くんを抱き締めて、私は目を閉じる。幸せの余韻に浸りながら。
翌朝は勿論、大惨事だった。
二人揃ってドロッドロ、しかも朝練どころか完全に寝坊。心配して起こしに来てくれた由紀子さんに、まずは土下座。こんなふしだらな事態になったのを謝罪し、どうにか赦していただけた後に急いで身支度を整えて。どうにかこうにか学校に着く頃には、もう三時限目のチャイムが鳴っていた。
「大遅刻だねー……」
「大遅刻ですねー……」
昇降口で、顔を見合せてしばし笑いあう私たち。笑っている場合じゃないけどね。
笑っている場合じゃないけど、でも楽しくて。一緒にいるから、楽しくて。
一頻り笑ってから、お互い自分の教室へ向かおうとしたその時。
そう言えば、と私は大喜くんをつかんで立ち止まる。
「ねえ、大喜くん。キスしていいかな」
大喜くんは、ちょっと驚いた顔をしたけれど。
「はい、千夏先輩」
可愛く笑って、目を閉じた。ああ、可愛いなあ。大喜くん、愛してるよ。
誰もいない昇降口で、顔を寄せあってキスをする。
これが幸せでなくて、なんだろうか。
それから暫くが経って。
私は今日も、部活に励んでいる。一心に打ち込む「理由」があるから。
大喜くんに、私を見ていてほしい。好きになって良かった、と思って貰える最高の私でいたい。
他の誰のためでもなく、私はたった一人のために頑張っている。
……もしかしたら、そこにもう一人加わるかもしれないけど。
引退してからが良いんだけど、こればっかりは授かり物だからね。
こうしてこうすりゃこうなるものと、知りつつこうしてこうなったんだけどさ。
さて、どうしようかな。
色々と悩みながら、私は進んでいく。
止まること無く、全力で。
#2 アオい霹靂~或いはすれ違うアオい思惑~
カリギュラ効果、というものがあるとか。簡単に言えば、禁止されると何故か興味がわく……みたいなことらしい。してはいけないという明確な理由があると、却って逆らいたくなるのだとか。
そう、確かにあると思う。私が大喜くんに向ける気持ちが、まさにそれだ。
居候先の子で、将来のあるバド部員で、クラスメイトに思いを寄せられていて。手を出してはいけない理由倍率ドン、数え役満だ。
私からグイグイ行ったらここの家族とも気まずいし部活への集中も落ちるだろうし、あと蝶野さんが泣く。これはまあダメだろうな、と分かってはいるんだけど。いるんだけど、我慢できるかどうかは分からない。
カリギュラ効果を差っ引いても、大喜くん可愛いし。バカで可愛くて、もう可愛い。そんな可愛いのが隣の部屋にいて、鍵も無いと来た。そりゃ、まあ。興奮するどころの騒ぎじゃないし、理性がゴリゴリ削られていく。
ああ、どうしようか。
お風呂空いたよ、と不意打ちで部屋を開けるのは楽しい。毎日やってるけど、毎回大喜くんはビクッとなって可愛いったら。まあタイミング自体は分かっているだろうし、決定的瞬間を目撃してしまった事はない。男の子だし頻繁にオナニーもしてる筈だけど、その辺はなかなか尻尾を掴めないのが不思議。それとも渚が話を盛ってただけで、そんな頻繁でも無いんだろうか。ま、良いけどさ。
大喜くんがお風呂入りに一階へと降りるのを物音から察して、そっとそっちの部屋へと忍び込む。まあバレたって、ジャンプ借りに来たとか言えばすむ話だ。だって大喜くん、バカだから。その辺はどうにでもなる。
間取りは同じだし特別なものがあるわけじゃないけど、これがまた止められない。こっそりと隠してあるえっちな本を確認したり、枕の匂いを嗅いでみたり。大喜くんの男の子な一面を、覗いてみる感じ。……まあ実際侵入して覗いてるわけですが。にしても大喜くん、ガッツキがないというか穏やかというか。下手したら私のコレクションの方が過激かもしれない。基本的にそういう欲求が薄いんだろうか、やっぱり。しかし大喜くんがガツガツ来たら、それはそれで可愛く無いか。
あまり長居しても気が引けるし、そろそろ引き上げようかと思ったその時だった。
テーブルに置かれたままのスマホが元気に音を立て、思わず身体が強張ってしまう。なんてタイミング、と画面を見るとLINEの通知。相手は――蝶野さん、か。うんまあ、二人仲が良いのは結構な事だ。そりゃね、うん。
でも、それでも。なんか、モヤッとしてしまう。大喜くんは私のモノでもないんだけど、さ。
整体院で話す蝶野さんは、最近いつも幸せそうだ。大喜くんと上手く行っているらしい、デレデレ顔。良かったね、と思うけれども。けれども、ね。うん。鞘当てのつもりなのか単にアホなのか、この子もまた難しいな。ここまで嬉しそうだと、逆に曇らせたくなってきたりするんだよね。良くないことだけど。
大喜くんも大喜くんで、ナマイキにも色気付いて来ているようだ。このままいくと、そろそろ蝶野さんと一線を越えるかもしれない。でもそれはちょっと早いかもよ、大喜くん。不器用でバカなんだから、突っ走らない方が良いと思うんだけど。
さて、どうしてあげようかな。邪魔するのも気が引けるけど、だからこそちょっかい出したい。ダメだと分かっているから、やってみたい。ワルイコトは、魅力的だからね。とは言え二人を強引に引き裂くのはつまらない、もっと楽しもう。多少ギクシャクさせて自然消滅させるくらいがいいかな、私が悪者になっちゃうと嫌だし。
そうだ、大喜くん相手なら――
「あの、千夏先輩、なに……をっ」
真っ赤になって顔を背ける大喜くん。無理もない、だって私は殆ど裸、鹿野千夏ネイキッドフォーム。この姿で肌を寄せているんだから、そりゃねぇ。もし無反応だったら、それはそれで蹴るけどさ。ま、大喜くんは健康な男の子ですからね。
「んー、ちょっとね。蝶野さんと最近良い感じらしいじゃない?」
「あ、いや……それ、は」
口を濁しながらも、表情は微妙に緩んでいるのが可愛い。大喜くんは、幸せなんだ。だからこそ、付け入る隙がある。
そういう時にはガードが甘くなるし、誘導にも引っ掛かりやすいんだ。そういうのは得意なんです、伊達や酔狂で女子やってるわけじゃない。……まあ女子力とか全然ですけど。下手したら私より大喜くんの方が萌え系ですけど。
「でもさ、言っちゃなんだけど大喜くん不器用でしょ。あと結構なおバカさんだし。突っ走って蝶野さんに迷惑かけたりしてないかなーって」
笑顔でザックリ、さすがに項垂れる大喜くん。でも反論しない辺り、自覚はあるみたいだ。自覚してれば良いって話じゃないけど。
「だから、さ。おねーさんが色々教えてあげやう、て話なのよ。大喜くんそういうの好きでしょ、隠してある本そういうのばっかだし」
そう、大喜くんってば年上に翻弄される系が好きらしい。その手のえっちな本、堪能させていただきました。過激さは今一つだったけど、参考にはなりました。ええ、なりましたとも。それに大喜くんがなかなか蝶野さんと一線を越えられないのは、やっぱり経験不足が気になるんだろう。男の子だから、リードしてあげなきゃって思ってそうだし。
そこを刺激してあげれば、直ぐに落とせる。それに人間、気持ちいいことには逆らえないものだ。
要は罪悪感を背負わせてあげれば良い、勝手にギクシャクしていくだろう。問題としては、私も全く経験がないってことくらいだ。……一応お勉強はしたから、多分どうにかなるだろう。きっと。
「ほら、大喜くん。触ってみて」
さらけ出した胸に、大喜くんの手を導いてあげる。おっかなびっくりな仕草が可愛らしい。バドで酷使しているせいかその手は意外とゴツゴツしていて、でもそれが逆に心地良い。
顔を真っ赤にしながらも、大喜くんは夢中でなで回してくれている。お互い一糸纏わぬ姿だから、興奮しているのが良く分かる。だって男の子の、……オトコノコが。大喜くんの一番大事な場所が、まるで別の生き物のように猛っている。
触ったりはちょっと怖いから、そっちにはいかないように話を誘導していく。
「優しくなら、揉んでも良いからね。強くすると痛いから、気を付けること」
「あ、は……いっ」
ふにふにと遠慮がちながらも、言われた通りにしてくれる。揉むほどあるかって言われると微妙だけど、それは蝶野さんだって同じだし良いだろう。
誰かに触られて気持ちいいなんて、感じたことはなかった。まあ触られる事がなかったけど。渚とかがふざけた時くらいかな。でも、大喜くんの手は中々良い感じだ。
息を荒げてきた大喜くんの顔を、そっと撫でてみる。ああ、キスしたい。でもさすがにそれは、ちょっとなあ。気持ちが蝶野さんのモノなんだから、それは良くない。キスは恋人同士でするものだから、今はダメ。この先蝶野さんと拗れて失敗したあとで、私のモノになってからにしよう。
全くいけないな、魔性の女じゃないか私って。
さてと、ここからどうしようか。これから何日も時間をかけて色々教える気だけど、今日は一先ず最後まで通してみようかな。私としても、勢いでなんとか初めてをクリアしてしまいたい。あれこれ聞いた感じじゃ、躊躇わないで一気にする方が良さそうだし。
大喜くんの手を取って、そっと押し下げていく。胸をすぎ臍を抜け、腰を通り越し。
――そして、その先へ。
「大喜くん、分かるかな? これが、……オンナノコ、だよ」
指先を押し当てさせて、その感触を味わっていく。自分以外の指なんて、触れたことがない場所。そして大喜くんにとっても、多分一度も触れたことがない場所。そこを触れられる/触れる感触を。
洗い息遣い、モゾモゾと動く腰。大喜くんが、興奮している。もちろん私も。
大喜くんの指に私を擦り付けていくと、頭の芯が痺れていく。いやでも、それは良くない。私は大喜くんに楔を打ち込む為、こんなことをしてるんだから。
蝶野さんを裏切らせて、少しだけヒビを入れてあげる。小さなヒビは放っておくだけでどんどん広がり、やがては二人を引き裂くから。私は何も悪いことはしない。大喜くんを、愛してあげるだけ。
夢中になるのは、モノにしてからで良い。
スッと大喜くんから身を離し、ベッドに腰を下ろす。
足を開いて、更に手で私自身を割り拡げ。大喜くんに全てを、さらけ出す。
「ほら、ここね。……ここに、入るんだよ?」
顔から火が出るほど恥ずかしいけど、それは置いておく。それよりもっと、大事なことだ。大喜くんを落とすためには、ここからだ。
「じゃぁ、ちょっとじっとしててねー……」
大喜くんのオトコノコに、コンドームを押し当てる。一応は保体で習ってはいるので、とりあえず使い方は分かる。触るの怖いから、出来れば自分でつけて欲しいけど、雰囲気がねぇ……。
「蝶野さんに悪いから、ね。生でしたら浮気だもん」
いや我ながらメチャクチャな話だけど、大喜くんは惚けた顔のままツッコミを入れてくる気配はない。今の大喜くんじゃ頭が回らないか。でも後になってから気付いて、罪悪感で潰れそうになるんだろうな。それが目当てだけど。そのまま蝶野さんと付き合っていけば、多分数ヵ月持たずに破綻する筈だ。
その間、私はニヤニヤしながら生暖かく見守らせて貰おう。
さて、だ。
「おいで、大喜くん」
手招きしながら、笑顔の裏で覚悟を決めて。
そのまま、そのまま。私は大喜くんを、受け入れた。
「……、ぁっ」
お腹の奥へと異物が突き抜けていくんだから、当然痛くて苦しいと思ってはいた。でも正直、予想とは全く違う。痛いとかじゃなく、熱い。灼けていく、という不可思議な感覚。普段のオナニーとは、明らかにベクトルが違う快感。
これはなかなか、スゴいかもしれない。
一方の大喜くんも、明らかに表情が蕩けている。私の中が、気持ちいいという事なんだろう。……どうしよう、喜ぶべきなんだろうか。良いことなんだろうけど、なんだか戸惑う。
「あ、先輩、ぅあ……っ」
大喜くんが上げた声に、ドキッとした一瞬の後。ガクガクとその腰が震え、私の中にいるもう一人の大喜くんもまた痙攣したのが感じられた。
これ、は。もしかして。
「大喜くん、今射精した?」
「は、……い、ごめ、なさ……ぃ」
荒く息を吐きながらもたれ掛かってきた大喜くんを支えながら、ちょっとだけ小突いてあげる。
ほんの数分、それだけだった。せっかくの初めてなのに、まったくこの子は。
「まあ、仕方ないよね。蝶野さんとうまく出来るように、これから鍛えてあげるからね」
頭を撫でてあげつつ、心の底でほくそ笑む私。
これでこっちの仕込みは良いだろう。後は、あっちだ。
大喜くんの事なんだけどさ、と声をかけたら物の見事に蝶野さんは引っ掛かってくれた。……この子も相当なバカだからなぁ……。ちょっとした口実で私を家にあげてしまう辺り、果てしなくポンコツだ。
「大喜くんねー、知ってるだろうけどドMなんだよね。あと、女の子にリードされたいタイプみたいだよ」
嘘は言わない、ただオブラートで包まないだけで。
大喜くんが退くくらい蝶野さんを淫らに開花させてあげたら、二人の破綻も加速する筈だ。大喜くんは女の子に夢を見ちゃうタイプなんだし、ガツガツ行かせればきっと失敗する。……多分。
「だから、ね。私が大喜くんをリード出来るようにしてあげるね」
蝶野さんはすぐにその意味がわかったらしく、真っ赤になってしまった。
どう考えても、そういう経験がありそうなタイプじゃない。と言うか絶対無い。そうでもなければ、あんな可愛い大喜くん相手に我慢なんか出来るわけ無いし。
だからこそ、そこに付け入る隙があるんだけどね。
「でも、あの……。私は大喜が好きなんで……」
言いたいことは分かる。そりゃ初めては大事ですから。
だからこそ、私はそこを悪用しようと言うのだけれど。
「ああ、平気平気。女の子同士なら浮気にならないから」
「えあ、なるほど! さすが千夏先輩」
何がさすがなんだか、と言うかこれを信じる辺りやっぱり大喜くんレベルのバカなんだなこの子。
額に小さく、キスをする。
左の瞼、鼻、右の頬と唇を下ろしていくと、蝶野さんの身体が一瞬震えた。
「大丈夫、ここは大喜くんに残しておくからね」
唇を避けて顎へとキスしてあげると、ホッとしたような息が漏れるのが感じられた。
そのまま服を脱がせながら、更に下へ。鎖骨を舐め下ろし、脇にも舌を這わせていく。
僅かな汗の匂いと、どこか甘い体臭。女の子、って感じ。まあ私も女子ですけどね、一応。なんだか蝶野さんは私よりずっと女子女子してて、どこか悔しい。大喜くんにあげるのも惜しい気がする。
私より、……少しだけ小振りな胸にキスを当て、その感触を味わう。もっと味わいたい、その欲望のまま先端に吸い付いて、そして指先だけ更に下を目指して進軍開始。
下乳をなぞって脇腹をかすめ、お臍をなで回し、そして。
「っぁ、そ……ダメぇ……っ」
内腿を指で擦りあげ出した辺りで、蝶野さんが切なげに呻きをあげた。でもそれは本気の拒絶じゃない、そんなのはすぐにわかる。だって蝶野さんは、悦んでいる。身体の全てで、悦んでいる。
ショーツを脱がせ隠されていたその悦びの源泉に、ゆっくりと優しく触れてあげる。形をなぞり、指を食い込ませ、そしてかきむしるように。一つ一つの動きにあわせて蝶野さんが喘ぎをあげてくれて、とても愛しい。ああ、この子も可愛いな。大喜くんより、蝶野さんがいいかも。でもなあ、それは良くないか。
とりあえず、そういうのは後にしよう。今は、蝶野さんを目覚めさせる事だ。大喜くんが退くくらい、えっちな子にするんだ。
薬指と人指し指で押し開いて、中指で蝶野さんの内側を浚渫する。湿りきった肉が指に絡み付き、私のよりも粘度が強い愛液がグチュグチュと音を立てるのがとても淫靡だ。
顔をあげて赤く染まった首にキスをすると、その快感に溺れきった顔に見とれてしまう。可愛いんだよなぁ、本当に。どうしよう。
「ん……っ」
一度引き上げた手は既にドロドロで、舐めてみると蝶野さんの味が口一杯に広がる。あまり私が熱くなってもいけないのに、これは美味しすぎる。そろそろこの辺で終わらせないと、本気になってしまいそうだ。
改めて下ろした指を肉の谷間に食い込ませ、小刻みに震わせながら。その上にある今まで放置していた肉の芽を、爪で引っ掻きあげた。
「ー、え"あ、あ"ぁ……」
低く太めの、所謂オホ声を上げて。蝶野さんの身体が痙攣し、一拍置いて全身が弛緩し私にしなだれかかる。蝶野さんが、イッたんだ。私の、指で。これからもっと、色々教えよう。大喜くんが着いてこられなくなるくらいに、加速させてあげよう。それで二人が不協和音を起こしても、それは二人の事だ。私は悪くない。
どうせなら別れた後、この二人と二股かけようかな。外道だけど。それはそれで面白そうだし。
さて、どうしようかな。
それから数ヵ月が過ぎて。大喜くんはどんどんセックスがうまくなり、蝶野さんはどんどん快感に貪欲な子になっていった。私の思い通りに。
ただ目論見が外れたのが、この二人の相性というかバカさを甘く見ていたって事だ。
直進バカの大喜くんは、私にセックスを教わったことを全部蝶野さんに話してしまった。そして蝶野さんも、私に開発されてえっちな子になったと打ち明けてしまった。私は悪役どころかキューピッド扱いで感謝され、いつの間にか二人から尊敬される身になっていて。
今日も二人は、私に見守られながらセックスに励んでいる。時々は私も混ざるけど、なんだか引き立て役みたいな気がして釈然としない。
どこで間違えたんだろうか、こうなる筈じゃ無かったんだけど。
まあ、――良いか。
これはこれで、悪くない。
#3 六月のアオい雨の日
窓の外は荒天続き、雨音が絶え間無く続いている。部屋の中は空調のお陰で快適だけど、やっぱり雨の日は気が滅入るもの。まして梅雨時というのは、どことなく身体が湿気っていくような気さえしていた。
外に行く気も起きない休日の遅い朝、私はぼんやりとベッドに転がっている。インターハイ前ではあるけれど、オーバーワークを防ぐため日曜は全休。特にすることもないままお休みを借り物の部屋で過ごすことに、以前は抵抗があったものだ。
今は、そうでもないけど。
ごろりと寝返りを一つ打って、横を向いて。健やかな寝息をたてている大喜くんを、そっと抱き締めてみる。
こうやって過ごすのは、悪くない。私たちは、これでいい。
「――そ、……っか。うん、そうなのかー……」
私はきっと、この先ずっと忘れない。大喜くんの真剣な眼差しを、無器用に言葉を選んだ声を。
ただ涙が溢れて止まらず、視界はみるみるうちに歪んでいく。
大喜くんは、私に言った。好きだと、言ってくれた。それは何処かで望んでいて、でも決して有り得ない筈の言葉だった。大喜くんには蝶野さんがいて、だから私を好きになったりはしない。ただ優しいだけなんだ、優しいから私を気遣ってくれているんだ。
そう――確信していたのに。
私は何処まで愚かだったんだろう、どれだけ大喜くんを傷付けてきたんだろう。もっと早く、気付かなければならなかった。蝶野さんとの仲を応援しようとさえ思っていた、それがどれだけ大喜くんにとって辛いかも分からず。
好きな相手に別の人を薦められるなんて、途方もない苦痛ではないか。
そして何より愚かなのは、自分自身の気持ちに蓋をし続けてきた事。大喜くんが私なんかを相手にするわけがない、と勝手に思い込んで一方的に身を引こうとしていた。どこまでも私は愚かすぎる、見下げ果てた先輩だ。
でもまだ、――間に合う。大喜くんの思いに応え、自分の気持ちも伝える。それは今すぐにでも出来る、シンプルな事だ。
「あり、がとう。私も、大喜くんが、好き」
涙で声がつまってしまう、それでも無理矢理喉を拡げて。どうにか言い終える、その刹那。私は大喜くんに抱き締められていた。その顔は、やっぱり涙で濡れている。
格好悪いな、と何処かで小さく思いながら。私たちは泣きながら、縋るように抱き合ってしばらく固まっていたのだ。
思いを伝えあって、数時間ほど。私はベッドの上で、悶々としていた。
今までも、気にしたことはある。猪股家へ来たばかりの頃は、特にそうだった。すぐ隣に男子がいる、というのが少しだけ怖かった。だから僅かに警戒して、隣の気配を伺っていたっけ。
でも今夜は、そうじゃない。私たちは、お互いを好きだから。そうなのだと、知ってしまったから。
もしかしたら、もしかするかもしれない。もし大喜くんが、もしくは私が
あんまり生々しい事は考えたくないけど、でも想像してしまう。大喜くんに――抱かれる、愛される。そんな私を。
一応知識はあるし、興味だって無くはない。無くはないけど、……無いけどちょっと怖いな。
そんな事を考えながら、ふと耳を澄ませたその時。
「――、……」
壁の向こうから、何かが漏れ聞こえてきた。
それは何処か熱を孕んだ、まるで――吐息のような。
ベッドから下りてそっと壁に身を寄せると、それは僅かに透明感を増して耳へと入ってくる。初めて聞くけれど、それがなんなのかは分かる。私は知っている、こういう
大喜くんが、オナニーをしている。きっと、私を思い浮かべて。男の子がどうするのかは、ぼんやりとしか知らないけど。でも、なんとかその姿を思い浮かべてみる。大喜くんの、恥ずかしい姿を。
「……あっ」
そんな良からぬ想像が私の身体にも火を付け始め、熱が沸き上がり出す。胸がチクチクとし、お腹の奥が疼き出していく。
借り物の部屋を汚すのも忍びないし、もし聞かれたりしたら大変だから普段はここでオナニーをしない、出来ない。するとしても他所でする、可能な限り。でも、今は。
「ん、……っ」
左手は胸をまさぐり、乳首を摘まんで扱き立てる。前はこれをやると痛みと痒みの中間のような、ザワザワとした感じがしたけれど、今はただ気持ちいい。もしこれが、大喜くんの手だったら。
――なんて事を考えたせいか、足の間に向かった右手が想像以上に大きく湿った音を立てた。
こんなに派手に濡れたことなんて、今までにないのに。想像だけでこれなんて、本当に大喜くんが愛してくれたらどうなってしまうんだろう。
……ここに、入るんだよね。男の子の、――
入り口を擦りあげていた指先を、そっと中へ入れてみる。口の中に似ている気はするけれど、ずっと密着感が強い。あまり深く入れるのは怖いから、精々人差し指の第一関節までだけど。
掻き回すように指を抽挿しながら、それでも耳が隣室の音を拾い様子を伺うのを忘れない。
大喜くんの息遣いは加速し、濡れた摩擦音が混じっていく。
きっと、もうすぐ。もうすぐ大喜くん
「――、ぁあ……っ!!」
ずにゅりと根本まで入ってしまった人差し指を、千切れそうな程に締め上げながら。私の身体はビクビクと痙攣していく。
声だけでも抑えようと口を固く閉じるのが精一杯で、他はもう手に負えない。溢れた愛液が床を汚していくのも、止めようがない。
長い長い絶頂の余韻が去ってようやく身体が自由になるまで、私はぼんにゃりと隣の部屋から聞こえる音に浸っていた。
「――おはよう、大喜くん」
「あ、おはよう、ございま……す」
いつもと同じ時間、こうして洗面所で顔を合わせる。雨の日も風の日も、それが私たちの日常だから。
とはいえ、だ。
気まずい。物凄い、気まずい。
今こうして目の前にいる相手をその、……オカズにしてしまったというのが気まずい。あと昨日告白されたから、今はもう先輩後輩の間柄だけじゃなくなったのも気まずい。どうしよう、この気まずさ。
でもそれは、大喜くんもそうだろう。私は聞いていたから。
「大喜くん、さ。勘違いだったら悪いけど。……私の名前呼んだよね、その……しながら」
ブハッと咳き込み、愕然とした顔でこっちを二度見する大喜くん。その顔は一旦真っ赤になり、そして青ざめていく。しかしこれはこれで可愛いなあ、ちょっと困る。
きっと大喜くんは、生きた心地がしないだろうな。立場が逆だったら、私もたぶんこうなるし。
「別に怒ったりしないよ、だって大喜くんは私を――好きなんだよね。好きな人とそういうことしたいのは、自然だと思うし」
安心させてあげたくて、そっと抱き締めたその肌は少し冷たい。暖めてあげたい、と思うくらいに。
ああ、このままずっとこうしていたい。でもそうもいかないのが、私たちの辛いところだ。
「そろそろ朝練、行かなきゃね。話はまた後にしようか」
好きになってもなられても、それを理由に他を投げ出してはいけない。全部が全部、大事だから。
だから、頑張ろう。
……頑張った、んだけどな。
今日は自分でも分かるくらいに空回りしてしまった、見下げ果てた先輩で申し訳ないったら。
大喜くんも大喜くんで、普段より上滑りが多くて針生くんに心配されていた。あの針生くんがからかうでも怒るでもなく普通に心配する、って結構な事件な気もする。原因が私だって知ったら、さすがに怒るだろうけど。
そして夜も更けて私たちは、大喜くんの部屋で向かい合っている。朝の続きをするために。
こほんと息を一つ。照れるし恥ずかしい、でも言わないと。
「えっとね、大喜くん。私も、大喜くんを思って――しました。大喜くんの声を聞きながら、ね」
正直口にするのは複雑だけど、大喜くんに突きつけておいて私だけ涼しい顔をしているわけにもいかない。そんな風に追い詰めたくない、同じ思いをする方が良い。
大喜くんはちょっと驚いて、そして――。
「ぇあ、……女の人もその、するんです……か!?」
……とんでもなくアホな事を結構なボリュームの声で言ってくれました、あんたなんばしょっとね。膝撃ち抜くよ?
ああでも、男子にして見たらそうなのか。そうだよなぁ、特に大喜くんだもん。女子のそういうの、分かってるはずないし。だって大喜くんなんだから。
「あー……まあ、します。人間ですから」
頻度はともかく、大体の子はする筈。私だけがお盛んなわけじゃない、……と思う。
まったく、ここでもう脱線していてどうする。
「朝も言ったけど、好き同士ならそうしたいと思っても悪いことじゃないからね。……ただね、でもさ」
私という人間には、情緒というモノが決定的に欠けている。そんな出来映えだから、上手くは言えないだろう。
そこをなんとか取り繕って、言わなければ。
こんな私を好きだと言ってくれる、大喜くんの為にも。
「あのね、もし。もしも、そういう事をしたいからって他を疎かにするようなら、私は大喜くんを嫌いになる。もし私がそうなったら、大喜くんは私を嫌いになって欲しい」
想いながら自分を慰めるだけなんて、嫌だ。私は大喜くんを愛したい、大喜くんに愛されたい。でもそれが、全てになってはいけない。依存してはいけない。
私は大喜くんに憧れられる、ちゃんとした先輩でいたい。この人を好きになってよかった、と心から思って欲しい。
私も、そう思いたいから。
大喜くんは、少しだけたじろいで。でも真っ直ぐに、私を見詰める。
「はい。俺はそう、します。先輩にも俺を、……好きでいて欲しいですから」
その言葉には、嘘も虚飾も一切感じ取れない。熱く強い、決意の視線。
好きでいる為に、好きでいてもらう為に。お互い、頑張らないといけない。
だから約束を、交わそう。決して消えることのない、私たちの約束を。
明日はまた、朝練をする。部活もちゃんとする。もちろん勉強だって大事だ。
でも今私たちは、こうして向かい合っている。さっきとは違ってベッドの上、一糸纏わぬ姿で。
これからお互いの「初めて」を、捧げあう。それよりも強い約束は、思い付かなかったから。……大喜くんとその……したいっていう欲求に流された感は否めないけどさ。向こうだってそう思ってくれているんだろう、大喜くんのオトコノコはさっきから天井を向いて震えているから。男の子は大変だな、と思ったり思わなかったり。あんな状態だとあちこちつっかえて不便だろう、多分。
触ってみたら怒るかな、て言うかあんまりガツガツ行くと私がえっちな子みたいで格好つかないか。自分で「そればかりになるのはダメ」って言っておきながらこれなんだから、私もつくづくダメな子だな。
まあ、良いか。明日もちゃんと頑張るから、今夜はこれで良い。
無言のまま触れてみると、ビクンと大喜くんの身体が跳ねる。おお、これは力加減が難しそうだ。そしてそれ以上に、その存在感に驚かされる。
長さや太さは見れば分かるけど、思った以上に硬くて熱い。それにイメージより手触りが良くて、ゴムの塊を撫でているような気分。そう言えば小さい頃、水にいれると40倍くらいになるゴムのオモチャがあったけど、あれが膨らみきった後に近いかな。
なんにせよ、人間の一部という感じはしない。……それを言ったら私らもそうか、形は磯の生き物みたいなもんだし。
鏡に映して初めて見たときは、ちょっと引いたっけ。
大喜くんは、どう思うのかな。そんな疑問を抱きながら手を動かしていると、不意に呻くような声が漏れてきた。
「ごめ……なさ、出…っ!!」
え、と思う暇も無かった。大喜くんのオトコノコは激しく震え、小さな口から火山のように白いものを打ち出したのだ。
精液というのが存在するのは知ってるけど、これは「液」って感じじゃない。指で摘まめるくらいに高濃度な塊が、私の肌へと降りかかってくる。
昨日もきっと、こんなだったんだろう。こんなのを出しながら、私の名前を呼んでいたんだ。
スゴいなあ、男の子って。
とはいえ、だ。一方的なのは、フェアじゃない。
「ね、大喜くん。私のも、触ってくれるかな」
返事を待たないまま私は大喜くんの手を取って、そして。足の付けねへと、導いていく。
物心ついて以来、親にさえ触れさせた事がない場所。自分以外の誰も弄ることは許さない、許せない。そんな私のオンナノコへ、その指がおずおずと押し当てられた。
粘りけのある水音と共に、僅かな異物感が身体を貫いていく。ぞわりと総毛立ちながらも、それを遥かに上回る興奮が脳を焼いていくのが分かった。
「あ、あー……」
自分でするのとは、快感の振り幅が違いすぎる。気が付けば大喜くんの手を押さえたまま、腰を振って自分を擦り付けてしまっている。ああ、そうか。最近はしてなかったけど、昔はこうやってテーブルの角とかにここを押し付けるのが好きだったっけ。指でするようになったのは、その方が気付かれにくいからだ。家具の角だとどうしても大袈裟に音が立つし、汚れ方も大きくなってしまう。
一瞬一瞬に焼けるような快感が襲ってきて、それに身を任せたくなる。
これじゃ昨日と同じ、オナニーだ。大喜くんをオカズにしているだけだ。私は大喜くんと、したいんだ。
未練がましい身体をどうにか食い止め、大喜くんの手を解放してあげる。
そして、そして。乏しい知識をフル稼働させ、どうにか脳内のイメージを現実に反映しようと試みていく。
ベッドに仰向けになって、膝を抱くようにしてから脚を拡げる。大喜くんからは、潰されたカエルみたいに見えているかもしれない。でもたしかこれが、「正常」な姿勢の筈だ。自信はないけど。
「良いよ、大喜くん。……来て」
少しでも入れやすいよう、力を抜いてはみる。でもさすがにオトコノコが翳されると、内心ちょっとだけ怖くなり緊張で強張ってきた。まあ大喜くんだって、怖くないわけではないだろう。他人の身体の中に入るんだから。
「え、……っと、ここ、穴……なんですよ、ね……?」
「んー……多分……。私もよくわかんないし……」
一応先端が押し当てられた感触はあるけど、なにしろ大喜くんの可動域が分からない。そのまま真っ直ぐで良いんだろうか、微調整がいるんだろうか。
まあ、なんとかなるさ。ダメでも少し痛い思いをするだけだ。
グッと押し出された腰が接近し、その勢いで私の中へと大喜くんが埋まっていく。聞いていたほどの痛みはないけれど、お腹の奥を押し込まれていくのはなんだか不思議な感覚だ。なにしろ私の内径より太いから、指を入れるのと違って全体が押されてしまう。決して不快ではないけど、ちょっとだけ心配だ。ただでさえ不自然な姿勢だし、フィジカルに変な影響がでないと良いけど。
大喜くんも大喜くんで困惑しているんだろう、あうあう言いながらもどうにか動いてくれている。……可愛いな、この子。ちょっと悔しいかも。
そんなどうでも良い事を思い浮かべた、その少しあと。大喜くんと私の腰が、隙間なく密着を果たした。
自分では触れることが出来ない深い場所が突き上げられている、大喜くんの全てが私の中にある。見えなくとも、それが感じ取れる。
――私たちは、セックスをしている。愛し合っている。その事実が、身体に刻まれた。それだけで、頭がおかしくなりそうな程に気持ちいい。粘膜が熱を伝えあい、全身が赤々と燃えているように熱くて堪らない。
それはきっと、大喜くんも同じ筈。だって大喜くんはもう、さっき射精したときと同じ顔になりつつある。快感に呑まれまいと必死で理性を振り絞る、可愛い顔をそっと撫でて私は囁く。
「良いんだよ、大喜くん。さっきみたいに、ね」
ハッと目を輝かせた大喜くんの身体は、次の瞬間跳ね上がるかと思うほどに強く震えた。私の中で大喜くんのオトコノコが放つ激しい拍動、最奥へと何かが叩き付けられる感触。それがどういう意味か、私はつい先程見たから知っている。
大喜くんは、射精した。あの白い塊が、私の一番奥――子宮目掛けて撃ち込まれた。何度も何度も、私を陥落させようと。
長い長い射精は、どれくらい続いただろう。やがて大喜くんは、そのまま崩れ落ちるように私に覆い被さってきた。
「ごめん、なさ……い……。俺だけ、勝手に……気持ち、よくなって……!」
荒い息と共に悔恨を口にする大喜くんは、涙を浮かべている。全くこの子は――、どれだけ私を好きなんだろう。私がどれだけ大事なんだろう、自分が気持ちよくなった事に罪悪感を抱くなんて。
だから私から、言ってあげなければ。
「勝手じゃな、いよ……。わたし、もぉ……!!」
一緒に気持ち良くなれたと言いたいのに、口が上手く動かない。頭がゆっくりと白く染まっていく。一人でしていると一気に来てすぐ醒めていく絶頂感が時間差でやって来て、じわじわと意識を塗り潰しているのだ。それも壊れそうなくらい、圧倒的な濃度で。これがセックスで絶頂する、と言うことなのか。オナニーとは深度が全く違う、理解すら出来ない絶対的な快感の奔流が迫ってくる。
これは不味い、とは思うけどもう遅い。身体がもう、自由にならない。視界が歪んでいるのは、きっと涙の元栓までおかしくなってしまっているんだろう。あちこちが緩んで、何かが溢れていくのが感じられる。
豹変した私にパニくっているらしい大喜くんの声を聞きながら、私はどうにもならなくなった身体から意識を切り離そうとした。
……したけれど、最後の最後で力を振り絞って意識を浮上させる。忘れていたことが、あったから。
「ん、……むっ」
思うようにならない身体を無理矢理動かして私は、大喜くんの唇に吸い付いた。生まれて初めての、キスをする為に。
それは暖かく柔らかい、幸福そのものとしか言えないその感触。
これで良い、これでもう良い。私はもう、満足だ。
心残りを果たした私の意識は、改めて暗がりへと落ちていった。
「あのあと、大変だったなぁ……」
雨音を聞きながら、小さく呟いてみる。事前に催して御手洗いに行っておいたのは、虫の知らせだったのだろう。穴と言う穴から色々と垂れ流して幸せそうに気を失っていた、と大喜くんに聞かされた時は生きた心地がしなかった。
全くメチャクチャな初体験だったけど、でもまあ確かに幸せではあったから問題ないか。それに根性で身体を立て直して、翌朝はどうにか朝練にも出たし。あんな風に言った手前、まさかサボるわけにはいかないもの。もちろん大喜くんも同じく、約束を守ってくれた。
あれから私たちは、どうにかこうにか続いている。部活もそれ以外も結果を出しつつ、頑張っている。
大喜くんを好きでいたいし、大喜くんに私をもっともっと好きになって欲しいから。無様な姿なんか見せられない、私から目を離せなくなるくらいに輝かなきゃ。
そうやって毎日毎日頑張っているんだから、休日くらいは二人で蕩けて過ごしたい。おあつらえ向きに、大人たちは昨日から泊まりでお出掛け中。夜までは二人きり、こうやって退廃的に過ごしたって許される。……筈だ。
昨日のうちに食料その他は買い込んで、今日は靴下を穿かない。服だって夕方までは着ないかもしれない。
唇が腫れるくらいキスして、腰を痛めるくらいセックスして。自堕落な休日は、幸せに過ぎていく。
こんな生活を続けるために、力の限り頑張ろう。
私は大喜くんが好きで、大喜くんは私が好き。だからこの関係がいつまでも続くことを願って、強く強く大喜くんを抱き締めた。
「大好きだよ、大喜くん。ずっとずっと、一緒にいようね」
#4 燃えるアオい夏の午後
今日も暑い、全く地球はどうなっているんだろう。さすがに暑すぎではなかろうかね、令和ちゃん空気読んで。平成先輩は30年も現役だったけど、ここまではメチャクチャな天気にしなかったよ?
こんな暑いと文明の利器をどう効かせても辛いと言うのに、私たちは締め切った部屋の中でエアコンも点けず転がっている。噎せかえる汗とそしてその他諸々の匂いは、このままだと全身に染み着いてしまいそう。
あと、暑い。
そろそろエアコン点けないと命に関わるかもしれないけど、でもちょっとだけ
大喜くんと私、溢れる愛が混ざりあっている。これを空調で排出してしまうのは寂しいんだけど、でも身体は大事なんだよなぁお互い。さて、どうしたものか。
私からエアコン点けようか、とか言ったら負けな気もするし。
ああ、暑いなあ。
猪股家に来て、二度目の夏。最後のインターハイも終わり、私は大喜くんと二人で残り少ない夏休みをダラダラと過ごしている真っ最中。もうじき学校も始まるのに、二人揃って毎日ベッドの上でドッタンバッタン大騒ぎ。
暑くて怠惰で幸福な時間が、今日も過ぎていく。
色々とあって八月半ばから九月の頭までは二人きりになると判明したのは、夏休みに入ってからだった。と言うかインターハイの間は私たちもいないから、この家カラになるんですが良いんだろうか。そうは思ったけれど、由紀子さんが良いと言うんだから仕方無い。
「半月くらいだし、二人だけでも大丈夫でしょ。大喜だけならともかく、千夏ちゃんもいるんだから」
そんな風に言われるほど信頼されているのは喜ばしいんだけど、由紀子さんって私たちを小学生くらいだと思っているんだろうか。一応思春期真っ盛り担いだ金太郎なんですけどね。そして――お互いに
大喜くんが
でも、だ。それは私にとって、最高の展開であった。私だって、大喜くんの事がずっと好きだったのだから。
私たちは勘違いと思い過ごしを繰り返していただけ、長々と機会を伺い続けて一歩も進めなかった。そんな阿保らしい駆け引きで、どれだけ時間を無駄にしたのやら。
そんなこんなで、想いを通じ会わせたわけで。そうなると、それはまあ、はい。一つ屋根の下どころか隣の部屋で寝起きしている私たちは、そのままなし崩しで大人の階段を昇ってしまったのでした。
……まあ実際には、あれこれ大変でしたけどね。お互い未経験同士だし、人に教わるわけにもいかないセンシティブな事柄となれば自力でどうにかするしかない。スマホとにらめっこして「やり方」を調べつつ、なんとかお初を済ませたのは結局七月に入ってからだった。途中何回「ちょっと無理」「今日はこの辺でやめよう」「そんなの入んないってば」とか言っただろう。大喜くんには長々と生殺しにしてしまったけれど、こればっかりは仕方無い。だって私不器用だもの。
で、とにかく二人ともオトナになりまして。そんな状態で半月ばかり二人きり、ってそれはもう……ハイ。とりあえずインターハイが終わるまでは部活最優先にしよう、とは約束したけれど。けれど練習を終えて帰ってくれば大喜くんがいるんですよ、そして大人たちはいないんですよ。
「大喜くん、疲れたからマッサージしてください」
着替えもしないでごろにゃん、と大喜くんに甘えてしまう私。ああ、幸せすぎる。
大喜くんの手は肩から背中へマッサージをしてくれるけれど、でも
「あーあ、練習で胸張りすぎて凝っちゃったなぁ。ねぇねぇ大喜くーん」
「凝るほど無いでしょうに先輩……」
なんだとこんにゃろう、そりゃ胸が凝ったのは嘘だけどさ。むしろ私が凝ると言えば、肩とか首回りだけどさ。そうやって無粋な事を言う辺り、大喜くんも大概に不器用だ。
触りたいくせに、まったくもう。
でもまあ、良いか。こういう弛緩した空気は、なかなか好きだから。ゆっくりのんびり、大喜くんを感じているのも良いものだ。時間はいくらでもある、楽しまないと。
「ねえ、今度はさ。私がしてあげようか」
にへらと笑って攻守交代、向き直って大喜くんの背中へと手を伸ばす。さすがにバドで酷使しているからだろう、首も肩も大分凝っているようだ。まあ、あんな速度で腕を振り回すんだから当然か。
毎日毎日、頑張っているんだな。指先に伝わる筋肉の張りが、上気する肌の熱が、そして漂う汗の匂いがそれを物語っている。ああ、やっぱり良いな。
でも、だ。和やかに過ごすばかりじゃ、物足りないんだけどね。
そっと脇から手を滑り込ませ、大喜くんの胸をなぞっていく。そして、その先へ。
「っ、先……輩っ?」
ピクンと震える身体を制するように、そこで息づく大喜くんの乳首を指先で弾いてみる。こういう関係になってから知ったけど、大喜くんは
こちょこちょと指の腹で擦ってあげると乳首はたちまち硬さを増していき、口からは甘い喘ぎが漏れ始め耐えきれないかのように腰をモゾモゾとさせ始めた。率直に言って、可愛い。私よりずっと、女の子っぽい。なんか悔しいから強めにしごいてあげると、大喜くんの反応はどんどん加速していって――。
「ダ……メっ、ぁあ……っ」
一瞬大喜くんの全身が大きく震え、そして一気に弛緩していく。何が起こったか、そんなのは決まってる。
一度引き抜いた手を大喜くんの腰へと回し、布地を掻き分けて中へ侵入させると、指先に粘っこく熱いモノが絡み付いてきた。大喜くんが感じた証、熱い熱い精液が。
「あらあら、お漏らししちゃったねぇ……。大喜くんってホント、おっぱい弄られるの大好きだねぇ……」
耳元に顔を寄せて囁くと、その顔は真っ赤に染まってしまう。でも分かってる、大喜くんは
「大喜くん、女の子みたいに可愛いよね……」
粘液で濡れた指を更に先、大喜くんの後ろにまで這わせていく。大喜くんは、こっちも好きなようだから。
お尻をそっと撫で回すと、羞恥に染まった切れ切れの喘ぎがやって来る。なにこの可愛い生き物、でもなんだか痴漢の気持ちが分かってきそうで怖いかも。
指を少しずつ奥へと浸食させ、爪の先でトントンと
興味はあるけど、でも。私は大喜くんを壊したいわけじゃない。ただもっともっと愛したい、愛されたい。だって大喜くんが、好きだから。
だからそれは、止めておこう。したいことは山ほど有るんだから。
精液にまみれ生臭さに包まれたオトコノコを、私は舌で舐めあげる。行為としては汚いかもしれないけど、私はこれが結構好きなんだ。大喜くんの顔に自分のその――オンナノコを押し付けながら、大喜くんのオトコノコを口で愛するこの
手を幹に添えて頭の部分を口に含むと、大喜くんがまた可愛い声を上げてきた。そのまま舌で先をつついたり舐め下ろしたり、あれこれ弄ってあげるとあんあん喘いで可愛いったらもう。
……とは言え、されるがままって言うのはよくないと思うな。
名残惜しいけど一度口を離し、オトコノコの根本をちょっと力をいれて握ってみる。
「大喜くーん、ちゃんと私も気持ちよくしてね? でないとー……、
「うぇ、は、はぃっ!?」
元気なお返事で大変結構、私が満足して顔を戻したのとほぼ同時。私の中へ、大喜くんの舌が分け行ってきた。
正直穢い場所だし、美味しくなんかないだろう。でもま、お互い様だ。愛があるから、大丈夫。激しい舌遣いは、その証拠だ。それに大喜くんのオトコノコも、さっきより硬度を増してる気がするし。きっと大喜くんの顔は、私の汁でドロドロなんだろうな。私元栓緩いと言うか、割と汁っ気多い体質だし。まあ、喜んでるんだろうし良いか。
「お"、あ……ぅあ"……ぁっ」
口にモノが入っているから、とは言い訳出来ない太い喘ぎ声。女子が出す声じゃないよな、とは思うけど止まらないんだから仕方がない。気持ちよすぎるんだもの、仕方無いったら仕方無い。
そう、仕方無いんだ。私は
だから、そう。私の全てで大喜くんを愛したい、大喜くんの全てで愛されたい。
限界まで張り詰めた肉の槍、私の唾液まみれのオトコノコへ改めてキスをする。愛してるの想いを込めたそれに応えるように、私のオンナノコへと唇を落としてくれる大喜くん。ああ、良いな。こういうのが、良いんだよ。
仰向けになった大喜くんと、今度は顔と顔でキス。お互いに自分の股間と間接キスだけど、それは別に気にしなくて良いや。大喜くんの唇に乗った私の味が、口の中に残る大喜くんの味と混ざり会う。鼻から抜けていく生臭くも心地いい匂いは、堪らなく私を発情させていく。
大喜くんの口内では、その逆が起きてるんだな。そしてそれもやっぱり、興奮を煽っているらしい。だって大喜くんのオトコノコは、既に先端の開口部から止めどなく透明な液体を溢れさせている。私のと同じ、発情の証を。
切なげな顔を舐め回しながら、私はゆっくりと身体を沈めていく。大喜くんのオトコノコへ私を覆い被せるイメージ、いやむしろ――
ゴリン、とお腹の内側が抉られるこの感覚。自分の指では絶対に届かない深くまで、大喜くんが入ってくる。何度経験しても、毎回頭が焼けそうになってしまう。ミチミチと膣奥が押し拡げられて、大喜くんの形になっていくのが分かる。
大喜くんに着地したその頃にはもう、理性なんか吹き飛んでいた。
「お"ぁ、あ"ー!! ぃぎ、がっ、は……ぁあ!!」
抑えなど効く筈がない、獣のような凄まじい喘ぎを吐きながら私はひたすら腰を加速していく。考えてなどいられない、ただただ気持ちいい。大喜くんの身体は何度も何度も痙攣し、私の中で精液を放ち続ける。それでも尚、止まらない。一度火が付いてしまえば、止まれるわけが無い。
瞼の裏は白い火花が飛び交い、身体の熱は収まることなく上がり続けていく。今ここで死んでもいい、とさえ思いながら。
私たちは囈のように呟きながら絡み合う。愛してる、とそれだけを。
幸せすぎて、どうにかなりそうだ。
もうじき私の誕生日が来て、夏休みが終わる。そして文化祭、その後は――なんだろうな。
暑さで働かない頭をどうにか回そうにも、そんな気にはならない。まあ、良いや。どうでも。
汗だくの大喜くんにキスをしながら、私はふとオンナノコを弄ってみる。今日もたっぷりと精液を注がれ、乾く暇も無いくらいにドロドロだ。指先に絡み付く二人の愛は、生臭く粘つくけど愛おしい。
「ねえ、大喜くん。暑いねえ」
「あー……暑いです、ね。……エアコン点けますよ、先輩」
さすがに根負けしたのかリモコンを取った大喜くん、その無防備なオトコノコへと本日何回目かのキスを交わす。汗と精液と私の愛液、混ざりあった味と匂い。ああ、これも――美味しいな。
もう一回したいな、と跨がろうとする私を大喜くんが真顔で制して来た。
「ちょっとは休まないと、ホントに倒れますって……。俺も千夏先輩も、脱水症状起こしますよ?」
無粋な事を言うのはこの口かーと小突きつつ、まあそうだね飲み物取ってくるよと私は一旦部屋を出た。
出来れば24時間繋がっていたいしあの香りに包まれてもいたいんだけど、そこまですると死ぬかもしれないしね。
冷蔵庫からポカリを引っ張りだしつつ、何となく去年のことを思い返してみる。前の誕生日、大喜くんと海に行ったんだ。そして土砂崩れで帰れなくなって、初めてのお泊まりをしたんだっけ。夜遅くまでボードゲームして、私は電池が切れたみたいに眠ってしまった。でも大喜くんは私に気を遣ったのか、広縁で椅子に座って寝てたんだ。今思えば、手も触れなかったんだよね。今の私たちからしたら、考えられないくらいにピュアだったわけだ。でも。
「あれはあれで、楽しかったなぁ……」
そうだ、明日あの民宿まで泊まりに行ってみようかな。去年は当日飛び込みでも泊まれたし、予約はしなくてもいいだろう。なんなら別に他所でもいい、あの海岸でまた大喜くんに誕生日を祝ってほしい。
明日は明日で暑いだろうけど、悪くない。それに負けないくらい、私たちも熱くなればいいんだから。
ああ、幸せだ。暑いけどさ、うん。