「ほぅ、まさか、ここまで準備していたのか」
そう言いながら、僕に確かめるように、グリムが呟く。
この試験を始める前、僕は既に準備を行っていた。
試験で、何が起きるか分からない。
だからこそ、あらゆる準備を行っていた。
その状況が、今、物語っている。
「あぁ、どんな試験になるのか分からない。
ならば、どんな事になっても良いようにとことん準備した」
この船の内部が、どんな風になっているのか。
その結果、僕は、この選択肢を選んだ。
アイアンワークスの中にある洞窟。
訓練を行う為に、用意されているこの場所はかなり広い。
それこそ、迷路のようになっている。
だからこそ、閉じ込める事ができる。
「私をここに誘い込んだという訳か。
しかし、私がここに来る可能性もなかったと考えないのか?」
「身を隠す場所として、このアイアンワークスで、最も隠れやすいのはここだからね」
「そこまで、把握したという訳か」
それだけ言うと、グリムは呆れるように言う。
それと共に、僕は既に疲れ切った。
「まぁ、この狭い場所でも、グリムから尻尾が取れるかどうかは賭けだったけど」
「上出来だと言っておこう。君は、本当にここまで来れたのだと」
そう、グリムは言う。
「それと、ここで君に問いたい。私とデボネア、どちらと一緒にいたい」
「デボネアさんがいない場で」
「あぁ」
そう、グリムはこちらを見つめる。
「・・・僕は、恋愛の事は、本当に分からない。
だけど、正直に言うと、デボネアさんはとっても明るくて、楽しいと思う」
「・・・そうだな」
「だけど、それ以上に、グリムと一緒にいた冒険は本当に楽しかった。
だから、もしも、これからも」
それだけ言うと、グリムは笑みを浮かべていた。
それは、普段は無表情に近い彼女からしたら、本当に珍しい笑顔だった。
「・・・さて、私はここに閉じ込められた以上、脱出するには時間がかかる。
そして、おそらくは他の参加者はここには来れないだろう」
「えっ、いや、僕は一応脱出手段は「まぁ、それは後々で良いだろ」あれ、グリム」
グリムはそう言う。
僕はすぐに脱出手段である道具を取り出そうとしたが、グリムは瞬時に取り上げた。
「こんな狭い所、逃げる手段がない以上は、仕方ない」
「あぁ」
これは、まずい。
閉じ込めたつもりが、むしろ閉じ込められた状況だ。
既に、脱出手段はグリムに盗られた。
そして、脱出する為の道具もない。
それは、つまりは。
「まぁ、残り時間が終わるまでの間、しばらくは休憩するか」
反対に、獲物として、囚われる。
そういう意味であった。
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