「それで、身体の調子はどうだ?」
「あぁ、なんとか」
そう言いながら、僕はゆっくりと準備運動を行いながら、グリムからの問いかけに対して答える。
既に身体にあった送り狼の呪いは消え失せており、今では普通に動くことが出来る。
日ノ本からずっと続いていた痛みもすっかり治まっており、今は体調も万全である。
「……無理は禁物だからな」
そんな僕の様子を見たグリムは、ほっとしたように息をつくと僕の前へとやってきた。
その様子には普段のような覇気はなく、本当に心配していたのだろうという事が分かる。
「もう大丈夫だよ」
彼女のそんな姿を見ていたら、自然と笑みがこぼれた。いつも通り、クールな彼女に戻ってしまったけれど。それでも、幸せだった。
「それにしても」
「どうしたの?」
それと共にグリムは、既に冷静さを取り戻すと共に疑問に思ったように腕を組む。
「日ノ本で戦った送り狼、この地で戦った二つの頭を持つ人狼。
長年、人狼を狩り続けたが、ここまで特殊な個体と遭遇するのは、初めてだ」
そう、これまで戦った人狼達の事を、思い出す。
「それって、やっぱり人狼も進化しているという事かな?」
「かもしれないな。これから先の戦いでも、おそらくは出現する可能性はある」
ここまでの戦いでも、十分死にかけたが、何とか生き残ったのだ。あの時よりももっと死にかけながら。あの時以上に死にかけていながら。
だけど、本当によかったと思ったんだ。彼女が無事でいて。それだけが嬉しかった。
「それで、これからどうする?」
「人狼に関して、少し整理したいからな。とにかく本部にっ」
そうグリムが呟いた瞬間、何か掴まれる感触が、僕を覆った。
何が起きたのか、分からず、困惑する僕らを他所にすごい勢いで引き込まれる。
「待っ」
グリムが、こちらに手を伸ばすが、すぐにその姿が見えなくなってしまう。
「まさかとは思ったが、本当にお前がこの世界に介入していたとはな」
聞こえた声、同時に見上げれば、そこには、人狼がいた。
それも、その大きさはかなり高く、まるで山を思わせる大きさの人狼がそこにいた。
「お前は一体」
「リュカオン、人狼の首領だ」
そして、それが現在僕を掴んでいるモノの正体だった。
「僕を食べるのか」
「本当ならば、そうしたい所だが、お前を食らえば、この世界は終わるからな」
「世界が、何を言っているんだ」
まるで言っている事が分からず、僕は首を傾げる。
「疑問に思うのも無理はない。この世界に来る際に、お前はその記憶を消された。それ故にお前には持っているのだよ、世界を再構築する力を」
「そんなの、持っている訳ないだろ」
「持っているのだよ、神である君には」
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