「ふんっ」
こちらに迫ってくるブラックドック。
それに対して、僕が助けた女性は、それらを切り裂きながら、喰らっていた。
その、あまりにも高すぎる戦闘能力に対して、俺は戦慄していた。
やがて、ブラックドックのほとんどが見えなくなった。
「これで、しばらくは保ちますね」
そう、血を拭き取りながら、彼女は言う。
「あなたは一体」
「私は」
そうしながら、彼女はこちらに目を向ける。
だが、それと同時だった。
彼女は、何かを感じると共に、振り返り、そのまま拳を振り上げる。
その影は、そのまま通り過ぎ、僕の手に持っていた剣を取り、構える。
それは同時に僕を背に隠し、構える。
「えっ、グリム」
「無事だったか」
それと共に、両手に持った剣を構えながら、彼女を睨み付ける。
「・・・あなたは」
「グリムだ、それよりもまさかお前がいるとはな、バーゲスト」
「バーゲスト?」
グリムの方は彼女、バーゲストを知っているのか、呟く。
「グリムと言いましたか、あなたが一体どのような目的で彼を背にするか分かりませんが、彼は私が守ります。ここで彼に助けられた礼をする為に」
「封印を解いた礼のつもりか?」
「それもあります」
「封印?」
それには、僕は思わず首を傾げる。
「ブラックドックの変異種。食べた存在の異能を引き継いで自身を強化できる強大な能力を持つために、怪物と恐れられ、「黒犬公」の忌み名で呼ばれた。
だが、魔女達によって、封印され、ブラックドックを生み出すだけの存在とされていると聞いていたが、まさか偶然こことはね」
「魔女に対しては恨みは確かにあります。だが、それよりも、今は彼の安全が優先です」
「喰らう為にか?狼の言葉を信じるとでも?」
そう、互いに譲るつもりはないのか、睨み合っていた。
「えっと、グリムにバーゲスト、ここは落ち着い「私の背から出るな」グリム」
そう、グリムは僕に対して言う。
それは、これまでの彼女からは考えられない程の声であった。
未だに知り合って、数日程度だろう。
それまでの間、強い彼女しか見ていなかった。
「・・・バーゲスト」
「なんでしょうか」
「グリムに背を任せてくれないか」
「どういう事でしょうか?」
その言葉に対して、二人は驚きを隠せない様子だった。
「この状況を脱しないと、どうにもならない。
グリムが、もしも今はバーゲストが信じられないんだったら、バーゲストが前に出て欲しい。だけど、グリムにも決して君を攻撃させないように、僕が一緒にいる」
「それは」
その言葉に、バーゲストは一瞬迷う。
だが
「・・・了解しました。
他ならない、あなたの頼みですから」
「グリムも、それで良いかな」
「・・・」
多少、納得していない表情をしながらも、その両手に持つ剣を鞄に仕舞う。
「こちらに牙を向けた瞬間、お前の終わりだと思え」
「あなたが、彼を傷つけないならば」
そう、互いに睨み合っていた。
「・・・さて、私が奴を襲わない保証の為にも、私の首に手を回せ」
「えっ」
そうグリムは、僕の手を自分の首に回す。
この状況はグリムにおんぶされている状態だった。
「これで良いのか?」
「あぁ」
そう、グリムは納得した声を出す。
どうやら、この場を納める事はできた。
だが、どうしてだろうか、なぜかバーゲストからの気迫が増したのは。
「とりあえず、脱出まで無事だと良いけど」
それを祈るしかなかった。
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