アトラスから呼び出しを受けて格納庫に走った。
「指揮官、取り急ぎ格納庫まで御願いします。」
こう言われてしまっては歩いていけるものではない。
「アトラス、呼んだ?」
「AK-12さんを引き取ってくれます?整備中に泣き出されまして。」
あー……なるほど。了解。
「指揮官……傷の方はどうですか?」
「ん?あー……左目しか使えないのは困るけど特に痛覚とかに影響はないよ。ご心配どうも。」
右目は視覚情報を送信する装置ごと破壊されてしまったので直さない限りは見えない……修理を試してはみたのだけれど、コンピュータウイルスが仕込まれていたのか下手に直そうとするとブービートラップが発動する可能性があるようなので今は安置している。
「それと……指揮官がもしよろしければなのですが……。」
聞こえた声の話。なるほどなぁ……。
「……ふむ……わかった。覗き見してもいいけれど……。」
「一つ条件があるよ。」
コンピュータウイルスの排除を依頼しておく。任せたよ、僕の妹。
「んぅ……。」
「起きた?」
「しきかぁん……?」
「12、お疲れ様。」
「指揮官!?」
こら、暴れない。
「落ち着け、12。ここは廊下だ。」
「わ、私、おんぶ……!」
「悪いな。アトラスに持って帰れと言われてな。抱っこのほうが良いか?」
「お、降りるわ!」
「体力は温存しておきなさい。次の戦闘がいつになるかわからない以上は。」
「……了解。」
「指揮官の背中って……思ってたよりも暖かくて広いのね。」
「それが唯一の取り柄ですよ〜って。12、部屋についたぞ?」
「ひとりにしないでくれる……?」
「12、君らしくないな。」
そうは言ってもお願いは聞くしかあるまい。
「あれ?ここって……。」
「そう。私の私室だ。」
「意外と……無機質なのね。」
「まあな。普段は執務室に居るし。」
折りたたみベンチと、ハンガーラック、簡易キッチン……それくらいしか無い普通のサイズの部屋。
「あっ、M14……。」
「そう、君が持ち出したM14はここに移した。」
「よいしょっと。」
12を折りたたみベンチの上に下ろす。
「悪いね。いつもはベンチの上で寝ているもんで。」
どこかに来客用の布団なかったっけな……。
「指揮官、指揮官……。」
「うんー?」
急に腰に抱きつかれると少し緊張してしまう。
「その……離れないで。」
「寝心地悪いぞ?」
「寝心地が悪いのは慣れてる……。」
床で寝ようと毛布を……いや、この毛布は12に使ってもらって、自分はこのまま寝ることにしよう。荒波は立てたくない。
「指揮官……?」
「どうした?ベンチの方がマシだぞ?」
「指揮官が良い……。」
「ほう?」
「ねえ、同衾しましょう?」
12のあの興味のあるなしで態度が変わるいつもの調子はどこへ……?
「12、寝ろ。」
毛布越しに手刀。ブロックされた。
「指揮官……指揮官……指揮官……。」
「落ち着け、12。」
「どうして……どうして守らせてくれないの!」
「12?」
「どうして!どうして!」
痛い!痛いデス!本気で叩かないでください!
「どうして……どうして……。」
「12、ここは私の部屋だ。敵はもう居ない。」
「指揮官……。」
「おいで……12。」
ここは折れる他無い。そう、折れるしか無い。間違いは侵さない。コレ絶対。
「暖かいわ……指揮官……。」
「すまんな。毛布一枚しかなくて。」
「ふぁぁぁ……。」
抱きつかれたままスリープ状態に入ったことを確認。はて……動けないぞ……。
「寝るか……。」
約2時間後。起きてしまった。眠っているように見える12のデータを覗く。ハッキング開始。セキュリティを通過。開かない通路は抉じ開けて後で直しておけば良し。
「えーと……今日の日付は……これか。」
12の記憶の宮殿はとても整理されていると思う。ライブラリ化されていると言うか、すぐに引っ張り出せるように小部屋が無数にあるというか……。
「どれどれ……おっと、巡回が来たか。」
セキュリティに引っかかってしまっては困るのでしっかり隠れる。
音が遠ざかっていったので警戒しながら戻り、探索を続ける。
「ふむふむ……狙撃兵の位置はわかったけれど、それどころではなかった、と。」
12らしくはない……と思うが、これがAK-12という人形なのだろう。
「こっちの部屋は……あら。」
殺意、嫉妬、信頼、恐怖……様々な言葉が壁一面に貼り付けられている。嫉妬はMG42へ、殺意は……私、か。信頼と恐怖は両方に。そっかぁ……。
戻ってきてまだスリープモードに入っているのを確認しまた寝る。殺すなら今のうちだよと思いながら。
強い首の圧迫感で起きた。目を開けるまでもなくAK-12、いや12が私の首を絞めている。
「指揮官……手を出さないような、それこそ人畜無害が似合いそうな同僚に先を越された私の心情がわかる?」
「……。」
首を絞められていると話せないのだが。
「指揮官は私の……初恋なのに……初恋なのに……!」
締める力がふっと軽くなった。
「初恋、かぁ……。」
抱きしめておこう。半分くらいは何とかなると信じている。
「指揮官、覚えてる?出会った場所。」
「ああ、覚えているよ。」
私達は戦場で会った。撤退する反逆小隊と、それを追いかける鉄血の追撃小隊として。
「潜水艦のドックで君は潜水艦を盾にして、バディに敵の頭を射抜かせていた。」
「指揮官が
「ああ、自決しようとした。肝心の手榴弾を撃ち抜かれてしまうまでは。」
「本当は帰すつもりだった。あの時点で私が戦う理由なんてなかったから。」
「え?」
「あのとき既に撤退命令が出ていたんだ。」
「とはいえ、あそこまで追い込んでしまった以上、おいそれと帰るに帰れないし、君を捕縛して治療して、そして帰す、それが私からの提案。鉄血上層部……つまりエリザお嬢様とそして君の元上司……いや、今も上司に当たるのかな?アンジェリア氏へのね。」
「双方ともに納得して連れ帰った。記憶の一部を抹消したから覚えてないだろうけれど。」
あのときには既に42は居たんだよ。12、君を捕縛したのは42だからね。
「ただなぁ……。少し前に帰そうと思って連絡を取ったんだけどね。なんというか……うーん……。」
「なに?」
「もしかしたら、反逆小隊まるまるこっちに来るかも。」
「は?」
「アンジェリア氏以下まるごと来そうなんだよ。参ったなぁ……。」
「え?あのメスゴリラとかアバカンとか……。」
「そう、人間になれなかったRPK-16とかもね。」
パラデウスに接触する前に崩壊しちゃったものね……ウン……悪いことをしたなとは思うよ。お父さん、落胆してたかもしれないし。
「結局、パラデウスが崩壊した原因って……。」
「Need To Knowの原則とでも言っておこうか?」
「……了解。」
「世の中には知らないほうが良いこともある。」
指揮官計画と、それに付随する人間サイズの機甲戦力構想の
「指揮官……。」
「寝ろ。」
「痛いじゃない!」
「いいから寝ろ。」
「もう!この!朴念仁!」
「前も聞いたな。42か。」
「女の前で他の女の話をするなんて最低!」
「じゃあ殺す?」
「……殺せない、殺せないわ。だって……。」
「抱き締められていると、より一層しおらしく感じるな。」
「……!」
頬にビンタでもされるかと思ったが答えは唇の柔らかい感触。
驚いた顔で横を見れば彼女の顔が真っ赤になってしまった。例えていいなら茹でダコといったところ……。
「……指揮官。」
「ん?」
「指揮官、あの日から貴方のことが片時も電脳から離れないの。」
「責任取って……くれる?」
「え……。私はどうすれば良い?」
「独占……なんてできないのは指揮官のことだからわかってる。今はそばに居て。」
「ああ、わかった。」
体温が高く、互いの心音が聞こえるようになって、抱き締めあって1時間が経った。
「指揮官……私に赤ちゃんの作り方……教えてくれる?」
「コウノトリさんが……。」
「うん。」
ちょっと?AK-12さん……?そうじゃなくて、とかツッコんでくれないの?
「コウノトリさんが運んでくるだけど……そのための儀式があって……。」
「儀式……。」
「でもこの話は……作戦のあとで。おやすみ、12。」
「ケチー。おやすみなさい、指揮官。」
何事もなく寝れたはず……だった。
ぴちゃぴちゃと音がする。そして男性器を包む柔らかい感触。これは粘膜……ん?
「おはよう、指揮官。」
何してるんです?AK-12さん?
「昔、
「これはお互いに想い合っていないといけない。」
止めさせるべきだろう。そう思ってはいる。思ってはいるが、愚息は正直。うん辛い。
「味が変わった……面白い♪」
「やめ、やめ……。」
起きたときにはかなり長時間刺激されていたようで……。
「あっあっあっ……!」
「あっつ!指揮官!……出す時は言ってよ!……苦ぁ……。」
「ぺっ、てしなさい。ぺっ、て。」
「うんー……やー。」
あ、この、飲みおった!
「えへへ……苦いけど、指揮官って感じがする……。」
……後で記憶処理しよう。
その翌日、心理戦研究の一環として装着していたホッケーマスクを外した12の、右目が無くなっていたことに気がついた。
「12、右目……。」
「無くても別に困らないわ。それよりも、厄介だわ。指揮官をもっとよく見たくて目を開くと勝手に感情が抑制されてしまうもの。」
「目を開かなくても見えるんじゃなかったのか?」
「見えるけれど……好きな人はしっかりと見たいじゃない。」
「それもそうだな。」
「MG42が指揮官の右腕なら、私は……。」
12が私の右頬に手を触れる。
「目になるわ。フフ。」
「任せるぞ。」
「ええ。任せて頂戴。アトラスは指揮官の脚……RSCは何かしら。」
「左腕、といったところか?」
「かもしれないわね。」
早く投稿すると言ってから何日経ちましたかね……申し訳ないです……。