表面上は怒怒り狂っていたがアスナの冷静な部分は男の様子を的確に探っていた。
男には勝つ自信がある様子で、その自信のもとは装備しているレア装備にあるようだった。
(確かにすごい装備だけど、私が女だと侮ったわね!!)
そう、普通のプレイヤーだったらともかく彼女は最前線で戦っていた。
そして男の姿を今まで見たことがなかったことからそこまで対したレベルではないのだろうと推測する。
「いいわよ」
怒りを押し殺した口調でPVPを受けるアスナ。
「それじゃあ始めようか」
部屋を移動し広い空間の部屋に移る。
PVPの設定を一撃での決着モードを選び始める。
アスナには油断はなく、始まりの合図と同時に最高の一撃を加えるべく突きの一撃を放っていた。
そのスピードはすさまじく普通のプレイヤーだったらなすすべなく一撃を受けていただろう。
だが男はそうではなかった。
(ふーん素早いが大したことないな)
男の一見装備頼みは単なるひっかけだった。
男はボス攻略には参加していなかったが、実はトップグループの真後ろを走っており、リアルプレイヤースキルも現実で研鑽していた(そんな風に見えないが)のだった。
男の最適なタイミング、角度、力での剣の跳ね上げはアスナの攻撃を失敗させ、アスナの剣を上空に弾き飛ばしていた。
そしてそのままカウンターでアスナに鉄山靠をくらわしていた。
アスナの強力なスキルがそのまま威力として跳ね返り、たった一撃でアスナのステータスバーが消失する。
「俺の勝ちだな」
アスナは呆然とした様子でまったく反応しないまま、男がかけるポーションを浴びる。
「さて、負けたときの条件はなんだったかな」
アスナは力なく答える。
「あなたの命令に従う」
「そうだ、俺の命令には絶対服従だ」
態度が急変して傲慢な様子を見せアスナに命令をし始める。
「このポーションを飲め」
「これは何?」
「ああ、回復用のポーションだ」
そのまま男の言われるがままポーションを飲むアスナ。
「この媚薬ポーションも飲め」
そう言ってもう一本ポーションを差し出す。
「ええっ」
しかしアスナの手は意志に反して勝手に動きだし飲んでしまう。
「なんで」
「PVP設定条件の通りに俺の命令に従うのは不思議ではないだろう、そう思わんか」
実際は最初に飲ませたポーションには特殊なポーションが含まれていた。
その特殊なポ-ションの原料は22階層に出てくる植物系モンスターで、単体では簡単に倒せるが戦闘補助のブレス(花粉?)を吐き行動を阻害してくる能力を持っていた。
その能力とはプレイヤーの行動を固定してしまいキャンセルできないというものだった。
つまり目の前のモンスターを攻撃しようとしたら、相手の攻撃を回避するという行動が出来なくなったり、倒したモンスターのいる場所を攻撃してしまい空振ってしまったりする地味に面倒な能力だった。
そんなモンスターから精製したポーションだが、その効果は”自分自身が約束した”事実を肉体に強制する力を持っていた。
もちろんその効果は永続するわけではなく1日ほどで解除されてしまうのだがアスナはそんなことをしるよしもなかった。