まずなにをするべきか、正男は考えた。
いきなり国を取り戻す、なんてのは当然不可能だ。
まあ、そもそも何十年経とうが、ロリーナが王女に返り咲く未来を正男には想像できないが、それは置いておく。
とりあえず、一度現状を整理して、そこから次の行動を導き出すことにした。
さて、現在正男とロリーナは敵地のど真ん中にいる。
ロリーナは王家の生き残りなので、見つかったら死ぬ。
もちろん一緒にいる正男も道連れになって死ぬ。
一刻も早く逃げ出すことが肝心だ。
だがしかし、正男はこの世界の地理など知らない。
試しに聞いてみたが、ロリーナも知らなかった。
それどころかロリーナは、隣国の名前はおろか、フィリア王国内の都市の名前すら知らなかった。
さすがは教師をことごとく追い払ってきたアホの子である。
しかしこれでは逃げようにも、どこに逃げればいいかすら分からない。
下手をすると、逃げた先の方が現在地よりも危険地帯、ということもあり得るからだ。
正男は現状を整理し、確実に詰んでいることを認識した。
下手に移動は出来ない。
だが、この場に留まっても、いずれはロリーナを追ってきた者たちに捕まってしまうだろう。
どうしよう、と悩む正男の頭を、唐突にロリーナが殴った。
しかも、その辺に落ちていた木の枝で。
何事かと驚く正男に、ロリーナが告げた。
「眠くなったのじゃ、寝床を用意せい」
傍若無人とはまさにこのことである。
だが正男は怒らなかった。
菩薩のごとき寛容な心を持っているから、ではない。
正男は幼少期から現在に至るまで、女性に対して怒りを抱いたことがなかったのだ。
ブタと罵られても、教科書を借りパクされても、財布を掏られたうえに痴漢の冤罪をかけられても、相手が女性であれば正男は穏やかな気持ちで許してきた。
ましてや目の前にいるのは幼女──しかもスケスケのネグリジェを着た、ハリウッド子役も裸足で逃げるほどの金髪美幼女である。
怒りが湧こうはずもなかった。
正男はロリコンではない。
ロリも全然イケる、という幅広い性癖を持っているだけの紳士だ。
故に、正男はにっこりと微笑むと、自らのスーツを脱いで地面に敷き、さあどうぞ、とロリーナを促した。
「ばかもの! こんな場所で眠れるか!」
再度、正男が木の枝で殴られたのは、言うまでもない。
◇
正男はなんとかロリーナをなだめ、子守歌を歌って寝かしつけることに成功していた。
しかしそのせいで余計な時間を食ってしまった。
あまり猶予はないだろう。
今すぐにここから逃げ出すのは不可能だとしても、この森の中で身を隠す場所を見つけなければならない。
だが、正男にはサバイバルの知識や経験など無かった。
40近くになるまで、ひたすらエロにのみ情熱を注いできたのだから当然である。
ロリーナを見捨てて逃げれば、正男だけは助かる道があるかも知れない。
しかし正男の中に、その選択肢は存在しなかった。
確かに正男は、何の取り柄もない肥満体のアラフォーだ。
このままロリーナの傍にいたところで、なんの役にも立てないかも知れない。
だがロリーナは、生まれて初めて、自分を頼ってくれた
実際に正男を選んだのは女神エロースであるし、ロリーナだって本当は正男のような平たい顔のデブではなく、彫りが深くて高身長でムキムキなイケメンが現れてほしかっただろう。(正解)
それでもロリーナは、現れた正男を見て絶望するのではなく、こんな肉壁くらいにしか役に立ちそうもない脂肪の塊に対して「なんとかしろ」と言ってくれたのだ。
だから、正男は逃げなかった。
本当は恐いが、ロリーナのために何とかしようと奮起できたのだ。
しかし正男が得意とするのは地味な事務処理のみ。
多少Excelが使えたところで、森の中では何の意味も無い。
女神エロースから与えられた能力も、『エロ同人の竿役おじさん』という意味不明なものだ。
一体この能力は何に使えるのか……と正男が与えられた能力について考えていたとき、それは起こった。
突如として、正男の脳裏にある映像が浮かんできたのだ。
それは、『飛行機事故で無人島に漂着し、同じく漂着した修学旅行中の学生たちに最初は警戒されつつも、得意なサバイバルの知識で次第に信頼されていき、最終的には女子学生を全員寝取って快楽落ちさせ、無人島ハーレムを形成したおじさん』の姿であった。
……おそらく、そういうエロ同人があったのであろう。
女神エロースから与えられた『エロ同人の竿役おじさん』という能力は、エロ同人に出てくる竿役おじさんと同じ事は大体できる、という能力だ。
つまり、そういうエロ同人があった以上、その竿役である『サバイバル知識豊富な寝取りおじさん』の能力を、正男は使えるのである。
正男は地面の上で気持ちよさそうに爆睡するロリーナを優しく持ち上げて背中に背負うと、突如としてインストールされたサバイバル知識に導かれるまま、森の中を移動し始めた。
獣の痕跡を見つけてはその縄張りを避け、途中食べられる木の実や茸などを見つけては回収しつつ、正男は森の奥へと進んでいく。
いくらサバイバルの知識があっても、そこに異世界の動植物のものなどは存在しないはずだ。
しかし、そこはさすが女神様謹製の特殊能力。
そういった知識は異世界むけに調整済みであった。
蔓草の茎を千切ってそこから流れ出る水で水分を摂取し、爆睡し続けるロリーナの口にも茎をツッコんでしゃぶらせつつ、正男は迷うことなくずんずんと進んでいく。
夜であるため視界は悪く、もちろん道などないので足下の状況も最悪なのだが、正男は躓くことすらなかった。
さらに、本来の正男であれば、幼女とはいえ人間を一人担いで歩く筋力も体力もありはしない。
だというのに、正男は疲れを感じるどころか、オールナイトで腰を振れそうなほど漲っていた。
つまりこれもまた、『サバイバル知識豊富な寝取りおじさん』の能力なのであろう。
動植物の知識に、文明のない自然界で生き延びる知恵、さらには足場の悪さを物ともしないバランス感覚に、人並み外れた体力……
『寝取り』という不穏な言葉さえ入っていなければ、普通にチートとして通用しそうな能力である。
そしてその能力の副作用────というか、これも能力の一部になるのかも知れないが、正男は自らの肉体の一部が、地球にいた頃と比べて著しく変化していることを感じていた。
そう、チ☆ポである。
背負っているロリーナの感触や匂いによって勃起してしまった正男なのだが、チ☆ポの膨らみ方が尋常ではないのだ。
以前の正男のチ☆ポは、言ってしまえばポークビッツだった。
しかし今の正男のチ☆ポは、まさにフランクフルト。
しかも、本場ドイツが誇る本格的な骨付きフランクフルトである。
つまり、まるで中に骨が入っているのではないかと思えるくらいに硬い、ということだ。
ズボンを突き破らんばかりに押し上げても、一向に曲がる気配がないので確実である。
直接見た訳ではないので想像でしかないが、おそらく太さも、反りも、カリの高さもえげつない感じのマジカルチ☆ポなのであろう。
『竿役おじさん』の名に恥じぬ剛直であった。
この変化は、かつてポークビッツだった正男にとって正直嬉しいものだったのであるが……困ったことが一つ。
性欲もまた、『竿役おじさん』の名に恥じぬ昂ぶりを見せていたのだ。
ぶっちゃけてしまえば、今すぐにでもロリーナにツッコみたいくらいなのである。
……だが、正男は紳士だ。
眠っている幼女を無理矢理レ☆プするなど、彼の倫理観的に不可能である。
正男は『寝取り』や『レ☆プ』で興奮する性癖ではあるが、それはあくまで二次元の話。
現実にそういった行為が行われるのには忌避感を覚えるし、ましてや自分がそれを行うなんて考えたこともなかった。
しかしこの昂ぶりは、放置しておくとマズい。
そう、正男の本能が警告していた。
もしこのまま性欲を放置し続ければ、正男は理性を失ってロリーナに襲いかかってしまうだろう。
そういう未来が、ありありと想像できてしまうのだ。
正男は悩み、苦しみ、迷い────そして、ある決断をした。