正男は微笑ましい気持ちで、幼女と犬が戯れる姿を眺めていた。
最初は、もしかしたら野犬がロリーナに襲いかかろうとしているのでは、と心配したが、それが杞憂である事はほんの数秒で証明された。
白い犬は、ものすごくフレンドリーだったのだ。
尻尾はちぎれんばかりに振られているし、つぶらな瞳には敵意ではなく喜びが溢れ、その顔には種族が違っても分かるほど満面の笑みが浮かべられていた。
それに、犬は地球で言うところの子馬ほどの大きな体を持っているので、もしロリーナを害するつもりがあったのなら、正男が戻ってくる前にすでに終わっていただろう。
ロリーナの振り回している枝など、犬にとっては何の障害にもなりはしないのだから。
「ぬぉぉおおおお! マ、マサオ! さっさとこやつをなんとかせぬか!」
正男の存在に気づいたロリーナが、焦ったような声で命令を下した。
正男は驚いた。
なぜなら、初めてロリーナに名前を呼ばれたからだ。
いや、というよりも、母親と女神エロースを除けば、生まれて初めて女性から下の名前で呼ばれたのではないだろうか。
正男の周りに、正男のことを「正男くん」とか「正男さん」と呼んでくれるような女性はいなかった。
だいたいは「おい」とか「ちょっとそこの」であり、それよりキツい言い方だと「おいデブ」とか「そこのキモいの」であった。
今にして思えば、名字の方ですらあまり呼ばれていなかったような気がする。
……ともかく、ロリーナに名前で呼ばれた感動はじんわりと体全体に広がっていき、目の奥に集まって液体に姿を変えると、一筋の温かい涙となって正男の頬を流れ落ちていった。
「さっさとせんかコルァアアアアアッ!!」
その感動は、激怒したロリーナに投げつけられた枝が顔面を直撃しても、消えることはなかったのだった。
◇
結局、正男はなんとかした。
どうやってなんとかしたのかというと、それはもちろん『エロ同人の竿役おじさん』の能力である。
今回正男の脳裏に浮かんだのは、『表向きは普通のドッグブリーダーであるが、裏では犬に対して特殊な調教を施しており、散歩中に犬に興味を示した少女を「仔犬を触らせてあげるよ」と言葉巧みに家へ連れ込んでは、犬と一緒に仲良く3Pレ☆プするおじさん』の姿だった。
この『ロリコン獣姦3Pレ☆プおじさん』の能力により犬と心を通わせ、大人しくするよう説得した、という訳である。
犬と心を通わせられるとか、クソみたいな名前の割りにファミリー向け映画のような能力だ。
「きさまは! 助けにくるのが! おそいのじゃ! おそいのじゃ!」
犬が大人しくなった反面、その反動でロリーナが正男に当たり散らしていた。
正男が犬とコミュニケーションをとっている後ろから、尻にむかってビシバシと枝を振るっている。
その枝遣いも、慣れてきたのかなかなか堂に入っており、細い枝の一撃だというのに、なぜか芯に響くような威力を見せ始めていた。
さすがは元女王様……もとい王女様である。
ひとしきり正男の尻をしばき倒して気が済んだのか、ロリーナは乱れた呼吸を整えると、
「さっさとそのケダモノを捨ててくるのじゃ」
と言い放った。
正男は生まれて初めて、女性からの命令に異を唱えた。
なぜなら、正男の持つ『ロリコン獣姦3Pレ☆プおじさん』の能力を駆使すれば、この白い犬を立派なARD(アナルレ☆プドッグ)に調教することも可能なのだ。
…………いや、ARDはどうでもいい。
普通に調教して狩りのお供に連れて行ったり、正男が留守の間に番犬としてロリーナを守らせることも可能なのだ。
なので、正男はロリーナを説得した。
犬がどれだけ勇敢な生き物なのか、犬がどれだけ忠実な生き物なのか。
アホの子であるロリーナにも分かりやすいよう、『忠犬ハ○公』や『○咲かじいさん』などの話をいい感じに交えつつ説得した。
「ふむ、そんなに使えるなら、使ってやらんでもないのじゃ」
すると、ロリーナはあっさり手のひらを返した。
チョロす……素直すぎである。
正男はロリーナのその素直さが少し……いやかなり心配になった。
このままではいつか日焼けした金髪のチャラ男に言いくるめられ、都合のいい肉便器にされてしまうのではないだろうかと不安になった。
そんな、どこの誰とも知れないチャラ男にヤられてしまうくらいなら、いっそ……
と、思考が危ない方向にシフトしようとしたところで、正男はハッと我に返った。
そして自分が考えていた内容に愕然とする。
正男は確かにエロが好きだ。
主に好きなのは和姦系や女性上位のエロだが、エロに貴賤はなく、レ☆プ物や寝取り物も大好物だった。
そんな正男ではあるが、自分が女性をレ☆プしたり寝取ったり……などということは、妄想の中でも考えたことはなかったのである。
だと言うのに、正男は今、『他の誰かにロリーナを肉便器にされるくらいなら、いっそのこと先に自分が肉便器にしてしまおうか……』とごく自然に考えていた。
……危険な兆候だ。
実は少し前から、正男自身感じていたのだ。
肉体の変化や性欲の上昇だけでなく、心までもが『エロ同人の竿役おじさん』に近づいていることを。
その変化は、微々たる物だった。
だが確実に、正男が新しい『エロ同人の竿役おじさん』の能力を解放するたびに、少しずつ少しずつ、自分の心がエロの暗黒面────
……正男は目を閉じると、大きく深呼吸をし、動揺していた心を落ち着かせた。
そして決意する。
決して暗黒面の誘惑に負けたりはしないと。
最後の最後まで
(ちなみに紳士的には睡姦はNGであるが、睡眠中の幼女へのぶっかけはギリセーフとする)
そして正男がそんな決意をしている背後では、ロリーナが枝を片手に犬の背に乗り、ビシバシと尻を叩いて乗馬ならぬ乗犬に勤しんでいたのだった。