あれから音々さんとのセックスを続けたが、ついに行為中に目を覚ますことはなかった。
俺はといえば、すべてを出し尽くし息を切らせて汗だく状態。すやすやと眠る音々さんが恨めしく思えてくる。
起きないから仕方なく、身体中についた色々な液体を拭いて清めてあげた。これ、ご主人様の仕事じゃなくね?
その後は疲れてそのまま眠ってしまう。ちなみに音々さんは朝いつもの時間に起きたようだ。スッキリ目覚めたらしく、俺に襲われたことにまったく気づいていなかった。マジで鈍感過ぎるだろ……。
「ご主人様が夜中にこっそりベッドに入ってくるだなんて……、昔の彩音みたいで懐かしくなりました」
それどころかこんなことを言われる始末……。子供扱いかよ。ちょっとへこんだ。
しかし、彩音も昔は母親といっしょに寝たい年頃だったんだな。今は凛とした雰囲気だし、寂しがり屋のイメージが湧いてこない。ちなみに、琴音はこっそり来ずに、最初から「お母さんといっしょに寝るー」とか言っていたらしい。これオフレコね。
「今日はクーラーを買いに行きます」
朝の食卓で本日の予定を宣言した。
自室の壊れたエアコンを買い替えなければならない。今すぐにだ。
夏にエアコンなしで寝るとか拷問以外の何ものでもない。冷房に慣らされた俺には耐えられないのだ。現代っ子舐めんな。
「というわけで、音々さんには車を出してもらいます」
「わかりましたご主人様。お任せくださいな」
音々さんは微笑みながら、快く了承の頷きを返してくれた。
なんと音々さんは車の運転免許を持っていたのだ。大人なら大体持っているものかもしれないが、まだ取得できる年齢にすらなっていない俺達にとっては朗報だった。
わざわざ電車で買い物に出かけるのも面倒だろう。痴漢プレイができなくはなるが、あれはあれでリスクが高過ぎてあまりできることじゃない。というか、よく見つからなかったなぁ……。
そんなわけで、買い物に行くなら車でゆったりとふんぞり返ろうかと思っている。父親の形見の車があったので音々さんにあげた。父さんも美人に乗ってもらえれると知ったら泣いて喜ぶことだろう。
「せっかくだから水着も買いに行きましょうよ! ほら、夏ですしー」
ニコニコとした琴音の提案。なるほど、水着か。
夏休みだからってアウトドアな遊びをしてこなかったから見逃すところだった。夏といえば海じゃん。それを忘れているとか不覚だ。
別に泳ぐのが好きってわけじゃない。ただ、彩音の水着姿……。学園のアイドルのプライベートな水着姿を見られるのは、もしかしなくても俺の特権ではなかろうか?
ふふふ。今年はアウトドア派になってもよかろう。真夏の太陽の下であんなことやこんなことを……。暑さだって忘れられそうだ。
セックスしまくって身体も引き締まっているみたいだしな。今なら裸体をさらしたって恥ずかしくない肉体かもしれない。
真夏の高いテンションが、俺の予定を次々と埋めてくれた。
※ ※ ※
早々とエアコンを買ってしまえば、次は水着を買いに行くことになった。
目的地までは車である。高級車ではないが、安いわけでもない普通のファミリーカーだ。四人ならゆったりと座れる。
運転席は音々さんなのは決定として、他の座席が問題だった。
俺は後ろでのんびりしたいからと後部座席を選んだ。すると彩音と琴音が席決めをするためにジャンケンを始めたのである。
「ま、負けちゃった……」
琴音が呆然と声を漏らす。ちなみに負けた方が助手席である。
「ま、また勝っちゃったわね……。仕方ないからまた私が後ろの席ね」
最初に電気屋に行く前もジャンケンをして、彩音が勝ったのだ。つまり、さっきも俺の隣だったというわけだ。
言い出しっぺは琴音だったが、まさかの二連敗。これにはがっくりと肩を落としている。そんな姿を見て申し訳ないが、俺の隣を座りたいがために落ち込んでくれたのだと思うとちょっと嬉しかったりする。
「お姉ちゃん待ってよ」
しかし、琴音がゆらりと顔を上げた。
「仕方ないって何? お姉ちゃんは祐二様の隣は嫌なの? だったらあたしに譲ってくれてもいいよね? ううん、嫌ならあたしが代わってあげるよ」
あれ、なんか空気が変わった?
それは彩音も感じたのだろう。妹に気圧されたように一歩後ずさる。
「そ、それは……」
「どうなの? 代わってくれるの? くれないの?」
姉妹の力関係が逆転している……。琴音が姉に対してここまで強気に出るとはな。
そんな娘達を眺める音々さんはほんわかと微笑んでいるだけだ。俺なんか内心であたふたしているってのに。さすがは母親か。
「……ダメよ。席は譲らないわ」
押され気味だった彩音が琴音を強く見返す。凛とした表情で断固とした意思を感じさせる。
「……」
「……」
しばし藤咲姉妹は見つめ合う。なんか睨み合っているように見えるのは気のせいかな?
「……わかった。ジャンケンに負けたのはあたしだもんね」
先に目を逸らしたのは琴音だった。まだ不服そうな態度が隠しきれてはいないが、矛を収める気にはなったらしい。
「決まったのなら出発するわよ。早く車に乗りなさい」
音々さんの声でみんなが動く。ふぅー、なんか緊張しちゃった。俺一言もしゃべってないのに手汗かいちゃったぜ。
「隣……失礼するわね」
「お、おう……」
今のやり取りが恥ずかしかったのか、彩音が頬を染めながら後部座席に座る。
出発してしまえば、さっきまでの空気が嘘みたいに、車内は明るい雰囲気だった。琴音が笑えば明るい雰囲気になる。切り替えが速くて助かるね。
ドライブもいいなぁ、とか思っているうちに次の目的地に到着した。やっぱり車って楽だな。
水着売り場まで行くと、それぞれ自由に自分の水着を選ぶために分かれた。女性用水着に興味はあったけど、周囲の目がある中でついて行くのは断念した。あの空間に入れたら勇者だな。
水着を選ぶ、と言っても男用はすぐに決められる。サイズだけ間違えないように気を付けて無難なやつにした。
さて、これからどうやって時間を潰そうか。つっても、一人で見て回るのもなんだか寂しい。適当なベンチで座って待っておこう。
とりあえずメイド達に買い物が終わったとメッセージを送る。どうせ女の買い物は長いんだろうし、スマホでゲームでもしながら待っていよう。
「祐二様、お待たせしました」
顔を上げると琴音がいた。手には買い物袋。早くも気に入った水着が見つかったらしい。
「早かったな。もういいのか?」
「はい。買う物はネットで調べていたので早く済みました」
調べてたつっても、女子は色々見て回りたいもんじゃなかろうか。まあ本人がいいなら俺から言うことは何もないけどな。
「隣、いいですか?」
「ん?」
俺の座るベンチは他に誰も座っていない。知らない人ならともかく、琴音ならいいだろう。
「別にいいぞ」
「ありがとうございます。えへへー」
ニッコニコの琴音がちょこんと隣に座る。上機嫌だな。
本日の彼女はノースリーブで肩まで肌を見せている。新体操をしているだけあって、しなやかな腕だ。
学園では姉の陰に隠れてはいるが、彼女もかなりの美少女である。もし彩音がいなければ、琴音が学園のアイドルだともてはやされていたかもしれない。
「水着、どんなの買ったんだ?」
「内緒です。本番になったらお披露目しますよ」
本番ってどっちの意味の本番ですかね。
まあいい。楽しみにしておこうじゃないか。
琴音が話を振ってくれるから暇ではなかった。なんだかんだ、いっしょにいて楽しい奴である。
「あれ? 琴音ちゃんじゃない?」
急に女子グループに声をかけられた。どうやら琴音の友達らしい。
「こんなとこで何しているの?」
「買い物だよー。ほらほら、新しい水着買っちゃった」
おっと、会話が始まってしまったぞ。きゃいきゃいする少女達に俺が入っていけるわけもなく、蚊帳の外となってしまった。
いくら美少女メイドを持っていたとしても、地味男がおしゃれ女子に対して気楽に声をかけたりなんてできない。あの中に入っていけるのなら、俺はとっくにチャラ男になっている。
「で、そっちの人は?」
友達の一人が俺の存在を指摘する。俺は「ども」と言いつつ会釈した。相手は年下のはずなのにこんな対応をしてしまうのはなぜだろうね。
他の子達も俺に注目する。うわっ、おしゃれ女子達に一斉に見られたら、変な汗が出るくらい緊張する……。
琴音は緊張して固くなった俺の腕に抱きついてきた。
「この人は、あたしのご主人様っ」
「「「えっ!?」」」
琴音の大胆発言に、みんなが驚いた。俺も驚いた。
いやいやいや! この娘は何言っちゃってるの!? それは言っちゃダメなやつでしょうがっ!!
俺がどうすればいいかわからず固まってるっていうのに、琴音は嬉しそうに俺に身体を擦りつけてくる。マジでどう弁明すればいいのか、誰か教えてーー!
「なんてね。どう、羨ましい?」
琴音がお茶目に舌を出す。それで冗談だと思ったのだろう。口々に「驚かせないでよー」と女の子達が胸を撫で下ろす。俺も胸を撫で下ろした。
「じゃあ誰なの? もしかして、彼氏?」
女子の一人がそんなことを言った瞬間、俺の査定が始まった。シビアな目で見つめられて余計に緊張する。
「あら、あなた達は琴音のクラスメイトだったかしら」
「「「藤咲先輩っ!?」」」
彩音が声をかけただけで友達連中はざっと道を空けた。学園のアイドルの知名度は中等部でも高いらしい。彩音を見つめる瞳がキラキラしてやがる。
俺への査定がうやむやになってくれてほっとする。事態を悟った彩音が俺のことを説明してくれた。
「会田祐二くん。彼は私達の身内よ」
「身内」という言葉に琴音の友達は納得した様子を見せる。たぶん親戚かなんかだとでも思ったのだろう。彩音が言うことならなんでも信じてくれそうだ。本当の意味は「ご主人様とメイドの関係」だけどな。
「お待たせしました。あら、もしかしてわたくしが最後でした?」
音々さんの登場で、家族で買い物をしているのだとわかってくれたようだ。手を振って琴音の友達連中と別れる。あー、緊張した。
「琴音、勘弁しろよ。お前が俺のメイドになってるだなんて秘密に決まってるだろ」
「ごめんなさい……」
あれ、ちょっと注意しただけなのに思いのほか落ち込んだぞ。
しょぼんとしている琴音を見ていられない。いつも明るい笑顔をしているだけに、暗い顔をされるのは気が咎めてくる。
「……口の軽いメイドには罰として、帰ったらお仕置きしてやるからな」
小声でそう言うと、彼女はぱぁっと笑顔の花を咲かせる。
「はいっ!」
お仕置きされるとわかって喜ぶとか……。まあ今更か。
それから車へと戻るまで、琴音は俺の腕を離さなかった。感触が良いので許してやった。
琴音が俺の耳元に顔を寄せてくる。
「ご主人様」
「なんだよ?」
「海、楽しみですねっ」
「……まあな」
誘惑するような甘い声色に、ちょっと勃起してしまった……。
帰りのジャンケンは琴音が彩音に勝利した。面白いくらいのほくほく顔をするもんだから、俺まで笑ってしまったのだった。