未だに、悪夢からは覚めない……。
『あむ……んぼっ、んぼっ、んぼ……んちゅぅぅぅぅ……』
妻が射精したばかりの男性器を口で清めている。男が『お掃除フェラしてー』とのたまったからだ。
どうやら音々はあの男のいいなりのようだ。
だがこんなことが本当にあり得るのか? 音々のことは俺が一番よく知っている。妻はこんな淫らな女ではない!
何か裏があるに違いない。映像なんていくらでも加工できる。俺を騙そうと映像を編集しているのだ。そう考えればつじつまが合う。
きっとこの映像の音々は本人ではないのだ。そうに決まっている!
『ふぅ……。よし、もういいぞ音々』
男の命令で音々は、いや、知らない女だ。女がペニスから口を離した。
趣味の悪い映像も、ようやく終わってくれるらしい。
『チンポを綺麗にしてもらったし……、それじゃあ本番いきますか』
「なんだと!?」
男は女を仰向けに寝かせたかと思えば、再び勃起したペニスでアソコを貫いた。
信じられない……。あれだけの量を射精したはずなのに、またすぐに勃起できるものなのか?
俺には無理だ。一度射精しただけですべての体力を使い果たしてしまう。再び勃起するためには日にちが必要だ。
「はは……。これで映像は偽物だとはっきりしたな……」
精力がこれほどあるなんてあり得ない。何かインチキがあるに決まっている。これも編集なのだろう。
バカめ。音々が他の男に犯される映像を俺に見せたかったのだろうが、ここまでやってしまえば嘘の映像なのだとばればれだ。やりすぎたな。
……せっかくそう判断できたのに、疑念が拭いきれない。
『ああっ! あっ、あっ、あぁんっ! すごいですご主人様ぁ……』
声も顔も身体も、すべてが音々そのものに見えてならない。
これは嘘の映像だ。そう言い聞かせても、心の中でこの女は音々なのだと訴えてくる。
『どうだ音々? 旦那と比べて俺のチンポはどうだよ?』
男が下品な顔で、下劣な言葉を吐いた。
答える必要もないのに、音々によく似た女の口が言葉を発しようと動く。
それを見て、急に鼓動が速くなった。何かを察したかのように冷や汗が噴き出る。
『は、はい……っ。夫のオチンチンよりもご主人様の方が大きくて、硬くて、体力もあって……。何もかも、夫よりもご主人様の方が素敵ですわ!』
一瞬。頭が真っ白になり思考が停止した。
だがすぐに色を取り戻す。いや、目の前が真っ赤になっていた。
黙れ偽物! これは嘘だ……。偽物偽物偽物……、目の前の全部が偽りだ!
『夫は性欲が薄くて、一回でも射精すればその日の性行為は終わりでした。わたくしが肉体を持て余していても気づきもしません。疲れたからと回数もよくて月に一度あるかないかでした』
偽物の口が滑らかに回る。
偽物だと言い聞かせても、完全には無視できなかった。俺と音々しか知らない情報だったからだ。
自らの性事情など漏らすはずがない。俺が誰にも教えていないのならば、あとは音々しかいない。
『マジで? 旦那性欲なさすぎだろ。せっかくこんなエロい奥さんがいるってのになっ』
男はゲラゲラ笑いながら大きく腰を突き出した。
力強い腰使いだった。肌がぶつかる音が鳴る度に、音々が嬉しそうな声を上げる。俺が、聞いたこともない声だ……。
『そう言ってくれるのはご主人様だけです……。ああっ、もっと! もっと突いてください! わたくしを求めてください! わたくしを滅茶苦茶にして!』
……これが、音々の本心だったのか?
いつも微笑んでいて、俺の言うことはなんでも聞いた。見目麗しい妻を自慢できた。彼女は理想の妻だと思っていた。
最高の女を手に入れた。もう俺のものだ。……それで満足して、結婚してから彼女のことを気遣ってこなかった。
子供ができた。仕事が忙しい。気分が乗らない。様々な理由をつけてないがしろにし続けた。
『いいっ! んああっ、やっ、んんっ、はあぁんっ! もっと……もっとぉっ!』
音々の嬌声が、強烈に脳を揺さぶる。
妻のこんな艶めかしい声や表情を、俺は今まで一度たりとも引き出せていなかった。
それを画面の中の男がさらけ出したのだと考えるだけで悔しく、そして羨ましかった。
「ぐっ……!?」
股間に痛みが走った。
見れば股間がズボンを押し上げるほど膨らんでいた。情けないことに、音々が他の男との行為に及んでいる場面を見て勃起してしまったのだと、嫌でも気づかされる。
惨めだ……。映像は止まらず、むしろ目を閉じるどころか食い入るように見入ってしまっている自分がいる。かつてないほどの興奮を味わっていた。頭がどうにかなりそうだ。
「ね、音々……そんな……ああ……」
妻の痴態から目が離せない。自分がどんな表情をしているのか。ああ、きっと絶望に満ちた表情をしているのだろう。
『こんなにおっぱい揺らしやがって! 人妻のくせにエロすぎるんだよ! ああ……柔らけえな畜生!』
大きく揺れていた乳房を揉みしだく男。下品な顔がだらしなく緩む。
ゲスな男風情がっ。悔しい……、羨ましい……、憎い……、後悔させてやる! 俺を怒らせてタダで済むと思うなっ! もっと……。
『そろそろ出すぞっ。音々の中にたっぷり精液出してやるからな!』
『はいぃっ! ご主人様ぁ……。あんっ、わたくしの奥深くで気持ち良くなってください!』
男が信じられないことを口にした。音々の返事はさらに信じられないものだった。
「待て! そんなことをして妊娠でもしたらどうしてくれる! わきまえろ! 低能の猿ごときがふざけるなぁっ!」
椅子の拘束を破壊する勢いで力を込める。だがビクともせず、俺の怒号が部屋に響くだけだった。
『くっ、出すぞ! しっかり受け取れ!』
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーっ!!」
ビュルルッ! ドピュドピュドピュドビュブピュッドピュピュピュブビュルルーーッ!
激しく動いていた男の腰が、ピタリと止まる。その瞬間、奴が盛大に射精する音が頭の中に響いてきた。
これほどまでの不快な音は初めてだった。のたうち回りたいほどの衝動に襲われる。しかし、椅子に手足を拘束されているせいで、それすら許されない。
『あー……。出る出る……すげえ出た……。気持ちいい~』
男は緩やかに腰を振って快楽を味わう。最後にぶるりと身体を震わせ、ようやく妻から離れた。
『あ……んっ……わたくしの中で、たくさん出してくださりありがとうございました……』
『どういたしまして。スッキリ気持ち良くさせてもらったぜ』
音々の膣口からドロリと白濁液が垂れていた。逆流するほどの量の精液を出されてしまったのだと嫌でも理解させられる。
「ああ……あああ、あああ……あ、ああ……」
俺は絶望した。
音々が他の男に抱かれ、中出しまでされてしまった。それを映像で見せつけられてしまった。
いや、絶望したのはそこではない。
「う……ううぅ……」
本当に絶望したのは、妻が寝取られたことではない。
寝取られた映像で興奮して、あまつさえ触れてもいないのに射精してしまった自分自身であった。
股間に広がる不快な濡れた感触。同時に確かな快感が脳髄に広がっていた。
……認めたくない。断じて、こんなこと……、認めるわけにはいかないっ。
感情と身体の反応が滅茶苦茶だ。わけもわからず涙を流してしまう。
「やめてくれ……もうやめてくれぇ……」
懇願が口から零れる。
情けないほど声はかすれていて、自分の声だと信じられないほどだった。
「そんなことを言っては音々さんが可哀そうですよ」
「…………は?」
部屋から出て行ったはずの男。堂本が、いつの間にか俺のすぐ隣にいた。
「そうだ堂本! お前は堂本だ! 貴様が……貴様のせいでっ!」
「まあまあそう興奮しないでください。ほら、音々さんを見てください。とても幸せそうでしょう?」
堂本が指し示した先、もう見たくもないと思っていたはずの映像へと顔を向ける。
膣から他の男の精液を垂れ流しているあられもない姿の妻。汚れてしまった姿のはずなのに、なぜかとても魅惑的に映る。
「あなたにとっては美しいだけの女性だったかもしれません。ですが、音々さんの本当の顔は、あなたが考えていた以上に淫らなものだったのかもしれませんよ」
「嘘だ! そんなことあるはずがないっ!」
「そうやって否定ばかりで、音々さんの感情を殺してきたのではないですかな?」
「俺がそんなことをするはずがっ」
「ない。そう言い切ると?」
愉快そうに笑う堂本の顔が、たまらなく不快だった。
こいつが妻のことを知っているはずがないっ。音々のことは俺が一番よく知っているんだ!
いつも優しく、気品があり、俺の言う通りに動く女。そのはずなんだ。
……だがしかし、本当は淫らな素顔を隠し持っていたのか?
優しい態度は淫らな本性を隠すため。いや、俺との行為に満足していなかったにもかかわらず不満一つ口にしなかったのは、音々なりの優しさだったのかもしれない。
音々は嘘をついていない。ただ、俺への優しさは、夫婦という対等な立場からのものではなかったのかもしれない。
「…………」
「おや? だんまりではつまらないではないですか。私はもっとあなたのために尽力したいのですよ」
どの口がっ。その面をすぐにでもグシャグシャにしてやりたいっ。憎悪が俺に力を漲らせた。
「まあいいでしょう。せっかくですので最後まで楽しんでいただきたいですしね」
最後まで? もうこれで終わりではないのか?
「その前に、その格好では不快でしょう? すぐに楽にして差し上げましょう」
堂本の言葉がスイッチだった。
「うわっ!? な、なんだ!?」
椅子から不安を煽るような機械音が響き始めた。それと同時に椅子の中から触手のようなものがいくつも伸びてきた。
驚きと恐怖で絶叫する。触手は俺の下半身に纏わりつき、力尽くでズボンをビリビリに引き裂いてしまった。
「あ……う……やめっ……」
肌をさらされてしまった下半身に何本もの触手が這いずり回る。気色悪すぎて意識が遠のきかけた。
『ゆ、祐二くん。そろそろいいかしら?』
『あたし達も可愛がってくださるんですよね? ちゃんと我慢していたんですから、うんと可愛がってくださいね』
聞き覚えのある声で意識を取り戻す。
もう終わったと思っていた映像はまだ続いていた。画面の中に、新たに二人の少女が映り込む。
「彩音……、琴音も……。な、なぜ……?」
二人の愛する娘。再会したいと願い続けていた彩音と琴音が、メイド服姿で映像の中から俺へと笑顔を向けていた。
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