「あの馬鹿、なんで来ないんだ」
ウィルは苛ついていた。エマと身体だけの関係を持ってからというもの、最初は気の迷い……だったはずなのだが、2度3度と回数を重ねていく中で、それが当たり前のことになっていた。適当に電話して呼び出したり、深夜にエマの部屋で落ち合ったり。今日の昼、店長の目を盗んでエマに今夜来るように言ったのだが、一方的に呼んだ時間になっても一向に来る気配がない。
ベッドに寝転がり、イラつきを抑えながらLIMEのアプリを開き、見慣れた薔薇のアイコンにメッセージを送る。シュポ、と小気味よい音が鳴る。
“今どこ?”
数秒の間の後、既読が付く。
“家”
眉間に眉を寄せ、指で叩くようにキーボードを打つ。
“急いで来い”
数秒の間がもどかしい。
“今日は遅いから無理”
“いいから 溜まってんだよ”
“自分で何とかしろ”
返事がいちいち遅い。こいつ……自分はこっちの都合も考えず誘ってくるくせに、とウィルは怒りに任せて送信ボタンを押した。
“とにかく待ってるから早く来いよ、すぐぶち込めるように準備しとけ”
数十秒の沈黙。ちょっと言い過ぎたか…と反省していると、
“分かった”
とやっと返ってきた。そこで初めて、ウィルは薔薇のアイコンの下の名前に目がいった。そこにはショーンと小さく書かれている。ウィルは顔から血の気がサッと引いていくのを感じながら無表情で通話ボタンを押した。通話画面を無言で見つめていると、ブツっと着信が切れた。
“間違えた切れた今行く”
ああ、LIMEの通話画面って電話アプリと通話ボタンとキャンセルボタンの位置逆だからか…ってそんなのはどうでもいい、とウィルは慌てて頭を振り絞ってメッセージを送ったが、既読はつかなかった。
部屋を片付けきらないうちにチャイムが鳴り、ショーンを招き入れた。ショーンは挨拶もそこそこに中に上がるとあわあわとたじろいでいるウィルの腕を掴み、奥のベッドまで連れていき、ジーンズとパンツを半分脱がせて煙草の臭いがするベッドに放り込むように座らせた。ウィルの下腹部を骨ばった無骨な手で握り、始めから遠慮なく上下に擦り上げて先端をぺろ、と舐める。ウィルの反応が悪いのを見て、
「すぐぶち込むんじゃなかったのか」
と言いながらじとっとした目で見る。
「いや、ショーンさん、あれはちょっとした間違いで…あっ待ってくださいってっっ」
ショーンは話をあまり聞いてないようで顔をうずめ音を立てて無遠慮に攻める。先走りは白く泡立ち、ぐちゅぐちゅと鳴り始めると、陰嚢はずっしりと重くなり、芯は熱を持ち先程よりも硬度を増していく。ショーンは着衣をを取っ払うと騎乗位の姿勢になり、腰を沈め、秘孔がゆっくりと中心を飲み込んでいく。奥まで突き刺した勢いで透明な蜜が先端から溢れ、軽く達して震える。目がふと合うと、ショーンの目は潤んでいる。そのまま少し耐えるように口をキュッと結び腰をグラインドさせ、上下に動いていると呆気なくウィルは果ててしまった。ウィルは眼前の揺れる竿を擦るとショーンは後を追うように喘ぎとともに欲を吐き出し、前に倒れ込んだ。
ウィルはショーンの後ろで足で挟むように座りながら、やや伸びた黒の髪を弄っている。
「なんで来てくれたんですか?」
「君が来いと言ったんだろう」
「いや、そうですけど……」
まさか間違えて呼んだなんて言えない。ショーンは一瞬考え込み、言いずらそうに口を開いた。
「もしかしてだけど、エマと間違えた?」
一瞬の間。沈黙。ウィルは目を見開いた。
「店長、デフォルトのアイコンでしたよね、で、アイツはバラの花。いつの間にか変わってたから」
白状する。
「レディ エマ ハミルトンか、この間エマのアイコンが変わったからどうやるのか聞いたら教えてくれた」
「そうですか」
「君達、そういう仲だったんだね、知らなかったな」
「別に付き合ってる訳では無いです」
「は?」
「アイツが好きなのは店長ですからね」
長い沈黙。
「アイツの事無理なんですか」
「いや、」
「なんかあるんなら聞きますよ」
「……相談してもしょうがないことは相談しない主義なんだ」
「そうですか、俺は言われないことは聞かない主義です」
「君といると気が楽でいいよ」
「それはどうも」
ウィルはふと思い出し、ショーンに尋ねた。
「店長、俺に抱かれるために用意してる時何を思ってたんですか」
「……」
「そう考えると、ちょっと自信ついちゃうな」
「そうか」
ショーンの後ろから前に手を回し、ゆるゆると触り首に口付ける。
グイッと横を向かせ、首を伸ばし口付ける。胸の飾りをさわさわと触ると、ぷっくりと突起が主張する。くりくりと押し潰し、捏ねる。指を咥えて濡らしてまた強めに擦るとショーンは吐息をを漏らした。ついウィルの加虐嗜好が刺激され、首筋に噛み付くと、ショーンは驚いて身体を震わせた。
ウィルはほんのり赤く浮かび上がる歯型を愛しげに舐める。その刺激にも敏感になっている身体は反応してしまう。鈴口からとめどなく汁が流れて竿を濡らす。
ウィルはショーンの耳に囁いた。
「なんでアイツを抱いてあげないんですか?」
「それっ、…は………」
「それは?」
竿の先端を虐めると喘ぎ声が漏れる。痛いくらいに雄の象徴が膨張し痙攣している。
「あの子もいなくなってしまうだろ、きっと、目の前から……怖かった」
その時、ガチャリと鍵の開く音が聞こえた。
玄関を見ると、エマが呆然と立っていた。
ベッドの上の下半身裸の男二人と思い切り対面している。
「え、エマ来たんだ」
「………お前が来いと言ったんだろ」
「いや、そうだけど」
ショーンに目をやると、わなわなと顔を真っ赤にさせ震えている。
「み、見ないでくれ」
ショーンはタオルケットを手繰り必死に体を隠すが既に手遅れである。
ウィルはそれを見ると思わず悪戯心がくすぐられ、その布をひっぺがした。そして
「今ショーンさんとイイ事してるからエマちゃんもおいで」
と微笑んだ。
エマは顔を引き攣らせて
「ふざけるな、帰る」
と言ったが、目はショーンに釘付けになっている。ショーンは目を背ける。
「あーあ、エマが来るからショーンさんのちんちん萎えちゃったよ、硬くしてあげろよ」
とウィルが手招きすると、エマは絶望したような表情をしながらも、操られるように引き寄せられ、ウィルがベッドから退き、代わりに乗る。ショーンは力ない仕草で嫌々と拒絶する。
「エマが抱いて欲しいんだそうですよ?」
ウィルはさっさと下着とジーンズを吐き、ライターと煙草を取り出して一服する。
「ほら早く、今更カマトトぶるなよ」
ウィルがエマの手を掴みショーンの逸物を握らせる。エマは迷いながらも、ちろちろと先端を舐め、ぱくりと咥えて熱に浮かされたように美味しそうに頬張る。
直ぐに硬さを取り戻した竿をエマが対面座位の姿勢で、先端を秘所に当てて縋り付くように挿入すると、既に濡れそぼった茂みは子宮の入口まできゅうきゅうと締め付けながら全て受け入れ包み込んだ。
ショーンは耐えられないと観念し、エマの肩を掴み押し倒すと、のしかかり、本能のままに腰を振りだした。
「やっ、あっ…ダメ、だって、、駄目駄目…壊れ、るっ」
ウィルは足を組み、悠々と黒手袋を嵌めながら
「ショーンさん、しっかり孕ませてあげてね」
と茶化す。
より深く中に突き入れると、中で脈打ち、雄を引き抜くと、穴からこぽりと白い精液が流れ出た。
ピピピピ、ピピピピ……
「うわあ!!」
ガバッと跳ね起きる。外で小鳥の囀る声がきこえる。腕時計の針を見ると、早朝4時過ぎを指している。煙草の臭いがすごい。部屋が汚い。ベッドの横には僅かな足の踏み場にタオルケットを敷いてウィルが寝ている。ショーンの声で目覚めたらしく、瞼をこすっている。
「店長。なんでここにいるんですか?」
「君が来いと言ったんだろう、確か」
「いや、そうでしたっけ…」
「確か夜…覚えてないな」
頭を傾げながら、ショーンは冷蔵庫に何も無いのを確認すると、とりあえず朝食を買いに行こうとするのだった。