間借りしている宿の一室、横並びに置かれた2つのベッド……その片方に横たわり声を押し殺して自身の身体を弄る少女。
頭上には丸い耳、お尻の上にふかふかの尻尾を生やす亜人の娘……名をラフタリアと言う―――それが私。
締め切られたカーテンによって室内は薄暗く、漂う空気は甘酸っぱいメスの匂いを纏っている。
他方のベッドを使っている主人の尚文様は既に出かけた後……つまり今この時だけは己の意のままに使うことができるのだ。
あられもない声が隣室や廊下へ漏れないように注意しながらも、恥部を刺激する手に意識を向ける。
快感がお腹の奥から背中を駆け上がり、耳の先へ抜け……きつく閉じたはずの唇から微かに声が漏れる。
「うぁ……っ、はっ、ぁ……んんん……」
ビクビクと震える太もも、乱れる吐息に合わせて上下する胸の膨らみは日々存在感をいや増している。
こんな所を誰かに見つかってしまったら……そう考えるだけで太腿の付け根からじわりと淫蜜が溢れる。
心行くまで甘い快楽に浸っていたい……だからお願い、まだ帰って来ないでください……。
全身をよじっても余りある刺激によって艶やかな尻尾がぶわりと毛を逆立てながら、1度目の絶頂を迎えて為す術なく仰け反る。
「ふぁっ、ぁああああっ! いっ……くぅんんんんんんんんんっ!!」
「……っはぁ…………は、ぁ……っふぅ…………」
半開きの口から涎を垂らしながら重く湿った空気を吸い込んで、目の前の痴態をぼんやりと眺める。
あの人が帰ってくる前に全てを元通りにしなくちゃ。
裸のまま部屋着を羽織って窓を開け、予め宿の主人に手配しておいた新しいシーツに掛け替えると、直前まで耽溺していた秘め事の痕跡は跡形もなく消え去った。
初めて《そういうこと》を知ってしまってからこれで何度目だろう……時々こうして鬼の居ぬ間に~と盾の勇者様の目を盗んでは自慰に耽っている。
亜人は興奮状態になると防衛本能から新陳代謝が高まり疲れが取れやすいらしい……というタテマエで己の理性を黙らせている。
事実、亜人に流れる獣の血のせいで普段は貞淑なラフタリアも例外なく満月が近づくとどうしようもなく身体が昂ぶってしまう。
尚文と出会った事でまともな食事を与えられ、更に奴隷契約を交わした影響でステータスは急上昇……それまでの幼く可愛らしい容姿から美麗な女性へと変貌した。
第二次性徴を迎え『女』として成熟してきた事もあり、より月齢の影響を色濃く受けるようになっていた。
私が性というものを意識し始めたきっかけは尚文様と出会って暫く経ったある日のこと……森での戦闘訓練中に催してしまい、手近な茂みに隠れて花を摘んでいた時……それは起きた。
しゃがみ込んだ拍子に伸び始めた新芽が己の小さく敏感なところへ触れてしまったのだ。
「ひゃっ!」
不意打ちの刺激にびっくりして悲鳴を上げてしまったが、幸い誰にも気付かれなかった。
私は何が起きたのか確かめようと、恐る恐るお尻を左右に揺すってみた。
「ん……」
さらり……と柔らかな葉先が無防備に晒された小突起を撫でると、ピリッとする感覚が走り全身に鳥肌が立った。
(いまの……何……?)
未知の感覚に戸惑っていると茂みの向こうから声が掛かった。
「ラフタリア、どうかしたのか?」
「な、何でもないです……申し訳ありません、すぐに戻ります!」
ここが魔物の棲む森である事を思い出し、慌てて身なりを整えると主の元へ駆け寄った。
自分の身に起きた事はひとまず頭の片隅へ追いやって、夕暮れまで訓練を続けた。
宿での夕食の後、尚文はちょっと用事があると言って出かけて行った。
私は水浴びと日課を終えてひと息つくと、ふと昼間の出来事が脳裏にフラッシュバックした。
「あれは……何だったのかな」
まだ幼かった私には知る由もなかったけれど、咄嗟に判断が鈍って大切なひとに傷を負わせる事になってしまったら……そんなのは絶対に嫌だ、そう思った。
だから自分で確かめてみる事にした……先ほど尚文は少し遅くなると告げて出て行った、つまり彼が戻るまでは誰にも邪魔されないという事―――。
腰掛けていた窓際の椅子からベッドへと移動して、部屋着を脱いで荷物棚へ置くと肌着だけになる。
膝を抱えるように足先を外へ向けてぺたりと座り、膝頭をを左右に開いて太ももの付け根へと手を伸ばす。
下着を着けたまま、草葉が触れたであろう場所へそっと触れてみる。
「ん……」
ごわついた布地の感触がくすぐったいけれど、むず痒い以外には特に何も感じなかった。
やっぱりちゃんと脱いで確かめないとダメなのかも知れない……意を決して下着に手を掛けてつま先から引き抜く。
これで昼間と同じ……覆うものが無くなりどこか落ち着かない場所へ、植物の代わりに手のひらを押し当てる。
柔肉に這わせた指で何かを探すようにまさぐっていると、何か硬いものに触れた。
「あっ、んん……」
同時にビリビリと痺れるような刺激が下腹部へ広がった。
初めての感覚に戸惑ったけれど、不思議と嫌悪感はない。
太ももの間を覗き込むと、米粒くらいの突起が見えた……これが何なのか、私は知らない。
ツンツンと突いてみるとまた電撃が走る。
「ひゃ!…………な……に……?」
「ぁんっ、ひぁっ……!」
弄っている内に段々と充血してぷくりと膨らんだクリトリスを触り続ける。
眠気や疲労、苦痛以外の感覚……人でなしの領主や奴隷商に酷い扱いを受けていた時には知る由もなかったこと。
私は自分の身体を対価として未知なる経験を積む事にしたのだけれど、程なくして陰核の表面が擦れて痛痒くなってきてしまった。
何とか負担を和らげられないかとあれこれ考えて、おもむろに指を咥えて唾液塗れにしたのだった。
ねっとりと絡み付く透明の粘液を潤滑油にして円を描くように塗り付ける。
「ひぅ……はぁ……ふぁ…………」
好奇心から始めた事だったはずなのに、気が付くと心地よさを覚え始めていた。
お腹の奥がふわっとするような、それでいて熱を帯びたような高揚感……。
「え……?」
とろっと何かが垂れる感じがして、零れないように慌てて手で押さえるとヌルヌルしたものが付着した。
手をどけると真っすぐに閉じた割れ目から、とろみのある液体がじわりと沁み出して内股を伝う。
唾液によく似て指先にべっとりと付いた分泌液は無色透明で、仄かに匂いがする。
湧き出るソレの源―――、縦一本に筋の通った秘密の場所、今まで生きてきた中で特別に意識する事のなかった陰部を指でなぞる。
すると膣奥から外へ溢れ出た愛液によって綻んだのか、指先つぷっと沈み込んだ。
中は狭く柔らかくて、弾力があって温かい……爪で引っ搔かないようにゆっくり奥へ進めると、第2関節の辺りで閊えてしまう。
まるでその先へ行く手を阻む壁か扉があるような感触……膣壁のひと際狭い所───穢れなき乙女である証───処女膜。
幼かった私には生き抜くために不要な知識などあるはずも無く、これで行き止まりなのだと結論付けた。
指を抜いて観察してみると絡みついたものはやはり唾液にしか見えず、匂いもほぼないけれど舐めてみると僅かな塩気と酸味があった。
「この匂いどこかで……」
すんすんと鼻を鳴らすと、いつの間にか部屋全体に同じ匂い───発情した雌の香りで満たされていた。
(不思議な匂い……なんだか頭がぼーっとする……)
呼吸をする程に頭の中に霞がかかり、反対に全身の感覚が鋭敏になっていく。
微かな衣擦れ程度でも体を動かしている時とは違い、胸の先へ意識が集中してしまっている。
好奇心からうすピンク色の蕾に触れてみると、胸全体へじんわりとした気持ちよさを覚える。
指先でツンツンとつついてみたり周りをなぞっていると、クリトリスの時そうだった様に自己主張を始めた。
自分の胸なんて飽きるほど目にしてきたのだが、今はまるで別のものの様に思えてしまう。
(もっと……触ってみたい…………)
体の求めるまま膨らみかけの半球を両手のひらで包み込み、ゆっくりと感触を楽しむ。
揉んでみるとそれを受け止めるように形を変える未熟な果実に手のひらの熱が伝わり、心地良さに浸っていると突然、胸の先にビリッと強い刺激が走った。
「きゃう!」
薄ピンクに色づいた蕾を無意識のうちにギュッと指の間で挟み込んでしまったらしい。
「ん……ふぁ」
今度は優しく指先で転がしてみると、蕾の先から胸へと伝う甘い疼きに吐息が漏れる……もっと、もっととカラダが求めている。
だけどこのまま欲望の囁きに応えてしまったら、きっと後戻りできない……ほんのひと欠片だけ残った理性が警告している。
しかし、束の間の逡巡も葛藤も……これ以上無く火照り切ったカラダの熱を押さえ込む事はできなかった……。
以前森で出くわした触手で獲物を絡め取り魔力を奪う魔物の様に、臍の辺りから上へと己の手を這わせていく。
鳩尾を過ぎて発育途上の膨らみに至ると手のひら全体で優しく包み、控えめな双丘の頂にある敏感な突起をまるで貴重な魔石を扱うようにそっと摘まむ。
「くぁ……んぅ…………」
「やぁ……っ、こんな……わた、し……んんっ」
触れている部分が熱い……目を閉じていても鮮明に肌の上を這いまわる様子がはっきりと分かる。
胸の先から広がる悦びが体を包み込み、溢れ出る快感をやり過ごすようにギュッと足を閉じて膝頭を擦り合わせる。
「なぉ、ふ……みぃ、さま……っ」
己の命を救ったかけがえのない人の名を呼ぶ……例えこの身がどうなろうともあの人の力になりたい、募る想いは日増しに強くなっていくばかりで……それなのに私は……。
左手は胸に、右手を足の付け根へと伸ばして浅い湿地から覗く小さな肉芽を可愛がり、秘唇がとぷりと蜜を吐き出すとそれを塗り付けてクニクニと捏ね回す。
「ふぁっ……えぅ、あ……ぁ……ぅんんんっ!」
「何か、来る……? なに……これぇ…………っ」
全身が小刻みに震えている……ずっと熱っぽさを感じていた臍の下―――子宮がジクジクと疼いている。
このまま刺激し続けたらどうなってしまうのか……一抹の不安を覚えてたけれど、気持ちよさの波が全てを押し流していく。
(尚文様ごめんなさい……私のカラダ、おかしくなっちゃいました…………)
指の腹でクリトリスを捏ねながら爪の先でカリカリカリと爪弾くと膣奥がキュっと締まり全身が強張った。
「きゃああああああああああああああああぁ……っ!」
「ふ……っ、はぁ……ぁ…………」
一際大きな嬌声を響かせながら身体はビクン、ビクンと痙攣する。
思うように息ができず半開きになった口の端から涎が垂れ落ちる。
(あたまが……ぼーっとしてなにもかんがえられない……)
今までにない強い快感に襲われ薄れゆく意識の中、私は初めての絶頂を迎えたのだった……。
―――
――
―
「ん…………?」
気が付くとベッドの上にいた……刺激を受け止めきれずに気を失ってしまったらしい。
重力から解放されたような浮遊感に浸りながら、じわじわと現実に引き戻される。
何もかもが初めてのことで何一つ思考が追い付かない……分かるのは全身を包み込む満ち足りた気分だけ。
気怠げに体を起こし思考が回り始めた私の目に、ベッドから滑り落ちた毛布や汗と愛液で飾られたシミだらけのシーツが映った。
なかなかに扇情的な光景を前にして、灼けた大地に降り注ぐ雨が熱を奪うようにぼんやりした意識が急速に醒めていく。
「うわぁ~!わ、わたしったらなんて事をっ!!」
今は何時なのか、着替えはどうしようか……酷い有様のベッドは……。
シーツはうっかり飲み物をこぼしたとでも伝えて新しいものを用意してもらおう、それから―――。
『コンコン―――』
慌てる私を嘲笑うように、前触れなく扉を叩く音がした……まさか尚文様っ!?
「戻ったぞ、ラフタリア……そこに居るのか?」
扉を叩く音に続いて声がした……例え主人でも今この部屋に入れる訳には行かない、絶対に。
「なっ尚文さま!?も、申し訳ありません!少しだけお時間をいただけないでしょうか?」
「ん?どうかしたのか?」
「あの、実は着替えているところなんです……」
「そうか、それはすまなかった。下で待ってるから着替えが済んだら呼びに来てくれ」
「はい!お疲れの所すみません……!」
「気にしなくていい、じゃぁよろしくな」
「分かりました!」
足音が遠ざかるのを確認すると同時に全身から力が抜けてその場にへたり込む。
さっきまでの痴態は全て夢であって欲しいと願いながらも、捲くれ上がった肌着から露わになった2つの膨らみ……艶めかしく愛液が伝う太ももがその淡い願望を正面から否定する。
「ひゃあっ!」
彼方へ置き去りになっていた羞恥心が一瞬で戻り、慌てて肌着をずり下ろしてもそのまま着回せるはずもなかった。
タオル代わりに乱雑に畳むと体のあちこちに残る秘め事の痕跡を拭い去り、手近にあった大き目の皮袋へ押し込んで口を縛る。
尚文様はわたし程鼻が利く訳ではないけれど、一刻も早く洗ってしまわないと……後始末の事を考えながら急いで着替えを済ませ、直に夜の帳が下りる時間にも関わらず大きく窓を開け放つ。
あまり待たせると怪しまれてしまうと思いつつ、何度も部屋の中を確認した後に階下へ向かった。
───どうか、何も気付かれませんように───
「遅いな、そんなに手間取る服を着ているのか……?」
待合スペースに腰を掛け宿の主人が淹れた茶を啜りながら、ひと息つく。
そういやラフタリアのやつ、今日はどこか雰囲気が違うような気がしたが……いやいや何考えてるんだ。
あいつを買い取って暫く経つが、まだ子どもだぞ?
しっかりしろよな、オレ───。
───終───
ご清読ありがとうございました……!!
みなさま初めまして、ぁゃ∪ぃと申します。
ハーメルン投稿作品はこちらが処女作になります。
いささか堅苦しい文体だったかと思います。
これには理由がありまして、ご存じの方もいらっしゃると思いますが、「官能小説を書くと執筆レベルが上がる」というお話がありまして、よーし試しに書いてみるぞ!と書き始めたのがきっかけです。
そもそもプロットを作ったのが半年以上前の事で、都度書き足し書き足ししていたら冒頭と中盤以降の整合性が取れなくなり、泣きながら推敲ループするハメになりました……。
こうして広大なネットの海に公開してみたものの、読み返す度に直し足りない部分が見つかるんだろうなぁと思いつつ、気にしている暇があるなら次作を書けってハナシなんですよね。
という訳で、今後も引き続きラフタリアのあられもない姿を書いていこうと思います。
もし拙作がお気に召して、応援してやるかなと思って頂けたらとっても嬉しいです。
それではまた、次のお話でお会いしましょう。