月に2〜3回、満月の前後になると、恍惚の時間を愉しむようになっていた。しかし、尚文が気紛れで買ったモンスターのタマゴガチャ、これが彼女から《秘めゴト》を遠ざける事になってしまうのだった。
《そういうこと》をするのは、絶対に誰にも見つからない1人きりの時だけ、そう決めたはずだったのに。それなのに私は――――
薄暗く、鼻につく獣臭の漂う店の奥――――。私は下卑た笑みを浮かべる奴隷商に向かい胸元をはだける。蛇の舌が這うように、筆先が滑らかな肌をなぞる。書き上げられた紋様が輝き、傷ひとつない柔肌に焼き付いた――――
「んくっ……!」
刹那の痛みに息を漏らしたけれど、己の身に再び刻まれた奴隷印を見て、どうしようもなく嬉しさが込み上げる。
「入れ直す必要なんか無かったんじゃないか?」
「私が尚文様を信じているという証が欲しかったんです。それよりも尚文様……どうですか?」
振り向きざま、豊かに育った谷間を見せ付けながら、そんな言葉が口を突いて出てしまった。上目遣いで顔色を窺ってみると、鈍感なご主人様は既に上の空で、何やら考え事を始めている。
「このスキルが……ん、何か言ったか?」
「いえ、何でもありません!!」
思わずムッとして答えてしまった。全くこの人ときたら……一体いつまでコドモ扱いなんでしょう。いい加減ひとりの女性として見てほしいのに……。久しぶりに少女を目にした奴隷商人が、息を呑む程に美しくなったというのにまるで関心を示さない。
ステータス確認を終えた朴念仁が、部屋の隅に並ぶタマゴに目をやった。
「なぁ、それは何なんだ?」
「これは魔物のタマゴくじで御座います。最低でもフィロリアル、育てると魔物のヒナが当たりますよォ〜」
「ほう面白いな、ひとつ貰おう」
「お買い上げありがとう御座います……ヒヒッ」
気紛れで手に入れたタマゴ。そのうちのひとつを手にした尚文は、宿に着くなり受付で追加の膝掛けを借りて、優しく包んでから棚の上に置いた。隣で見ていた私は、自分が買い取られた時の事を思い出していた。私だって、尚文様にうんっと大切にしてもらってるもん……今はちょっとあのタマゴが珍しいだけなんだから。
それから数日後の早朝、眠りこけている少女を主人が揺り起こす。
「見ろラフタリア、生まれるぞ!」
パキ、パリ、と音を立てて殻が割れると、中から白くて丸っこいトリの魔獣が飛び出した。
「クァアアアアッ!」
元気よく飛び出して尚文の頭に乗ると、満足げに鳴いた。果たしてこの生き物はアタリなのかそれとも――――。
「はぁ…………」
夜更けに長いため息を吐いて、わたしはスヤスヤと眠るトリを見る。これが何者なのか奴隷商へ確認すると、フィロリアルの中でもレアリティの高い個体だったようだ。何と会話が可能で、トリの姿からヒトへと変身できてしまう。それ故に私は誰にも言えない悩みを抱える事になってしまった。まさか主人の遊び心がこんな所で足枷になってしまうとは。ただのモンスターなら人語を介さないし、せいぜい愛玩動物として接していればよかった。しかしこのフィロリアル(フィーロと名付けられた)は違う。まだ幼いけれど、人並みに知性を持っている。つまり、一緒に居る時には【秘密の戯れ】を致せないという事に他ならない。
気持ちよさそうに昼寝をしている幼女を横目に、無意識に手が伸びた先―――― 下着の中で熱く疼いたままの乙女の園。最後にシたのはいつだっただろう。程なくして目を覚まし、ピィピィと忙しなく部屋の中を飛び回る様を目で追いながら、私は再び長い落胆を吐き出した。
――――
それから幾日の後。宿も街も眠った様に静かな夜更けにシュル、と微かに衣擦れがした。大方寝返りを打ったのだろうと、聞き流される程度の音。用心深く息を潜めて気配を探ってみるが、何の変化もない。
私は同室の2人(正確には1人と1羽)に背を向け、布団を被ると体を丸めて小さくなった。この体勢なら少し手を伸ばすだけで、太ももの付け根に触れられる。布切れたった1枚、仮初めの安心を纏って。気持ちよさを求めて蠢めく指先が、柔らかい茂みの先へ触れる。
「んンンンッ!」
ーーーーまるで前世の記憶では?と疑う程に待ち焦がれた熱が、じわじわと全身に広がっていく。あぁ、理性ごと蕩けてしまう。早く、はやく、もっと奥へ、深く……。
「うっ……ぁああ♡……ふっ……くぅぅぅぅぅ♡」
あぁダメッ!みんな起きちゃう、声を抑えて!と冷静な私が警告する。だけど、ずっと見ないフリを続けてきた淫靡なスイッチが、決して戻らない所まで押し込まれてしまった。薄皮一枚の理性が、今なお膨れ上がる愛欲に押し流される。
「ゔぅぅ……ぉ゛あ゛ぁ゛ぁ゛♡♡♡」
獣じみた低い唸り声が喉奥から絞り出される。ヘソの下に力を入れて、必死に暴れ回る享楽を必死に押さえ付けようとした。しかしーーーー
「ふぁっ♡……ぁん!♡♡♡」
健康的な肉付きをした下腹部の奥、並々と満ちた官能の泉が水面を揺らしている。じわじわと滲み出る蜜液は、ヒクついた割れ目からトロリと内股を伝う。栓をするように人差し指と中指を重ねてヌプリと挿入すると、滑りの良くなった膣内へ飲み込まれた。
「ンッッッ♡ 待ってた、のッ♡……これぇ……♡♡♡」
ココロもカラダも淫靡の海に沈んでいくのを感じながら、私は卑しく乱れるケモノへとーーーー堕ちた。
「にゃっ♡……にゃおふみしゃみゃッッッ!……ふぁああああああああッ♡♡♡」
昂るカラダに呼応して、呻き声が喘ぎ声に変わった事も気が付かないまま『キモチイイ』を追い求める。
「……ぁっ!はぁ……ンんんんんッ♡」
甘イキの余韻に浸りながら、閉じていた瞼を開けると、暗闇の中に視線を感じた。少し離れたベッドから、ぼんやりこちらを見つめるフィーロと目が合った。
――――ぞわり。悪寒と同時に冷汗が噴き出る。
「お姉ちゃん……なにしてるのぉ?」
「あ、あのね、ちょっと嫌な夢を見ちゃって、それでストレッチをしていたの……」
「そっかぁ、ふぅ〜ん……すぅ…………」
苦し紛れの言い訳をすると、妹分は生返事を残して再び尚文の布団に潜り込んだ。いつもは羨ましさを覚えるものだけれど、今日に限ってはただ安堵しただけだった。
(寝ぼけていてくれてよかった、本当に……)
落ち着きを取り戻して、すっかり冷めてしまった火照りを恨めしく思いながら、私も眠りに落ちた。
翌朝、食事の後にフィーロが駆け寄ってきて、何やらヒソヒソと耳打ちしてきた。
「ねぇ、お姉ちゃん……昨日はご主人様に気付かれなくてよかったね?」
「なっ、フィーロ!?貴女まさか……!」
「フィーロよく分からないけど、あれはご主人様にナイショのことなんだよね?」
「あの、あのねフィーロ!あれは――――」
「ふふっ、ヒミツにしておいてあげるね。その代わりにフィーロ、お風呂の後に牛乳が飲みたいな〜」
「(この子、この前の事を根に持ってる……)分かったわ。今日から3日間、お風呂上がりに牛乳買ってあげる」
「えぇ〜、もっと飲みたいーっ!」
「はぁ……じゃあ5日分でどう?」
「うん、わかった!約束だよっ!」
――――幼いのに強かなフィロリアルを見やり、育ての親を思わずにはいられないラフタリアだった。
――――つづく――――
ラフタリアのいけないことシリーズ2作目、お読みいただきありがとうございます。如何でしたでしょうか……?
1作目の投稿からかなり時間が空いてしまい、申し訳ありません。自分が読者だったら、ある程度書き溜めてから定期的に投稿してもらう方がテンポよく楽しめるのにな、と思ってはいるのです……。いざ書いてみると、そもそも自分の執筆ペースが未知なのです……スケジュールを立てても全っ然その通りにいかず、結果こうなっちゃったってワケでございます()
濡れ場シーンも1作目に近い感じになっていますが、ここから変化させていこうと考えています。引き続きお付き合いいただけましたら幸いです。
それではまた次のお話でお会いできることを願って……!
(ファoキンホットな毎日ですので、くれぐれもご自愛ください!)