ヒーロー、それは時代を象徴する人間。ヒーローは強くて、カッコよくて誰もが憧れを抱く。しかし、それは絵空事の世界。現実は非情である。
「何でだよ......うわああああああ!!」
これは育ちの村を滅ぼされた少年と、ヒーローを目指す少女、優しさを持つ少女、空を飛びたい少年、ふとしたこときっかけで事件に巻き込まれたプリンセス、アウトローな正義を持つ9人の戦う男女がゼロになってしまった物語を1から作り直す物語である。
その物語の始まりは米晴村と呼ばれる小さな村から始まる。この村は農業と畜産を産業の主流にしており、気候条件も良く、何と店に並ぶような野菜や肉は大体は揃っている。ここでは、大人も子ども関係なく助け合って生きてきた。
「零於兄、まーたサボってる。」
「仕方ありません。毎日毎日、同じこと、同じ日の繰り返しで嫌になっちまうよ。」
「美知佳おばさんに言いつけるよ。」
「そ、それだけはご勘弁を!!」
少年の名前は空國零於(そらぐに れお)...14歳の少年である。彼はこの変わらない日常に飽き飽きしていた。まさかこの男に悲劇がこれから待ち受けているとはこの時、まだ誰も知らなかったのである。
その頃、一人の男が車を走らせていた。
(
車を走らせ、米晴村へと向かっていった。この男もこれから狂いだす運命の歯車になるのはまだ先の話...
昼になり休憩になったが零於は農作業をサボっていたせいで母親の「空國美知佳」に説教されていた。こうなるのは当然だろう。
「いつもいつもサボって!」
「ごめんなさい...」
彼はいつも説教されている。いつも農作業をサボって、母親にバレていまい2時間弱の説教を受ける。これが1ヵ月に2,3回ならまだ分かるが1週間に最低5回、酷い時だと毎日なんてこともある。これも零於を退屈させる原因である。
「貴方は14歳です。少しは村を手伝いなさい。」
確かに、零於の周りは年下ばかりで彼と同い年なんていない。いたとしても年下ばかりで話し相手もいない。年頃の彼からしてみれば不満の塊みたいな村だった。
「正直言って村を出ていきたいです。」
そのせいで1種間に1回はこんな言葉を言う。しかし、これを美知佳が許すはずもなかった。
「ダメ!!村の外は貴方を狙っている人間がいるの!!」
村を出ていきたいと言うと彼女は血相を変えてそれを拒む。零於は何故、母親がここまでして村から出るのを拒む理由が分からなかった。
(この村は大人が多くて子どもが少ない。子どもを作ろうにも年々村を出ていく人が後を絶たない...じゃあ僕が出て行ってもいいじゃないか!!)
零於は自らが寝床としている天井裏の物置でこんな事を考えていた。ここで何か考え事をしている時が一番楽しいのでいつも作業が無い日、無い時間はここにいる。考える内容はいつも一緒。村を脱出す方法以外彼は考えないがいつも考えるだけ。今日もそんな夜を過ごす...はずだった。
夜も更けてきて、村の人間が寝静まった頃。悲劇は突如として訪れる。
(うるさいなぁ...お祭りはもう過ぎ...一体、何が起きているんだ!?)
零於が見た光景は凄惨そのものだった。村や作物が焼け、悲鳴が絶えずに聞こえてくる。彼は考えもなしに外に出た。すると、
「おいおい、わざわざガキが一人で俺たちの前に現れやがったぜ。」
「愚か者め...我々、エニアークに勝てると思っているのか?ならば教えてやろう。」
冷静にしている男が零於に向けて歩こうとしたが、彼よりも背が高い強面の男がそれを止める。
「お前は加減を知らなすぎる。この村に来て何人消した?」
その言葉を聞いて零於の頭には嫌な予感がよぎった。ありえる最悪な展開を彼は考えた。
「お前ら、村の...この村のみんなを消したのか?」
「ああ、お前らの村の人間は燃やすなり撃つなりしてかなりの数を減らした。これも全てはより良い社会にするためだ。」
彼には言っていることが分からなかった。分かっていることは村のみんなが死んだということだけ。この事実だけが彼の頭の中を周っている。
この時、零於は自分の行いを大いに後悔した。
(俺...なんてこと言ってたんだよ。こんな事、望んじゃ...)
後悔しているその時だった。二人の男が銃を突きつけた。
「遺言は聞いてやる。」
「...俺は何も出来なかった。こんな無力な俺を許してくれ。」
涙を流しながら零於は遺言を述べる。その言葉まるでは彼の後悔を表していた。己の無力さを、自分を育てた村に心無い言葉を言い続けたことをただひたすら悔い続けた。この遺言を述べても聞こえるのは炎の音のみ。
聞き終えたと判断した男二人は引き金を引いた。零於がとうとう死を覚悟したその時だった。
「止めなさい!!」
なんと美知佳が銃を構えて、二人に敵意を見せた。
「息子ではなく、私を消しなさい!!」
子どもを守る母親は勇ましかったがあの二人には勝てなかった。次々と放たれる銃弾を息子を守るために受けた。決して抵抗せず、ただ守り続けた。目的は一つ。白服の男たちの弾切れである。
「母さんもう止めて!!死んじゃうよ!!」
「零於を守って死ねるなら、私の命なんて安い......もの...よ。」
数十発撃ち終えた時には美知佳の身体は既に文字通り蜂の巣になってしまい、その命は誰が見ても風前の灯火になっているのは明らかだった。
「母さん!!今すぐにびょ...」
しかし、それを美知佳は止めた。
「もういいの。私の命は助からないから。」
「でも...」
彼女は最期に、零於へ全てを語り始めた。それは彼の想像を超越することになる。
「私が...貴方を村の外に出したくなかったのは、アイツら、『エニアーク』の魔の手から貴方を守るため。だから...遠い田舎に居を...」
「どういうことだよ!!エニアークってなんだよ!!母さん!母さん!!」
「ごめんなさい.........言えなかったの。私もここまで来るとは思わなかったから......」
彼女は消えゆく命の中で言葉を絞り出す。そんな時、彼女はあまりにも信じられないことを言い出した。
「最期に...一つだけ言わせて......貴方は、私の子じゃ無いの..」
「え?」
自分は空國美知佳の子どもじゃない。そんな事を最期に言われた零於は困惑して、頭が追い付かなくなった。
「ちょっと待って!!どういうことだよ!!」
「貴方は...空の国『スカイランド』の生まれ......空から落下してそのまま記憶を失ったの..」
自分は母親の本当の子どもではない。更にこの村で生まれたわけでもなく、全く知らない国で生まれたことを告げられた零於は何が何だか分からなくなってしまった。
「ちょっと待ってよ!!どういう事!?スカイランドって何?母さん!!母さん!!」
「それは...これから......分かること............貴方は、一番星...愛してる............」
空國美知佳は息を引き取った。
「母さん.........うわあああああああああああ!!」
その時、零於は母を失った悲しみと同時にある感覚を感じた。魂が燃えている。自分の中の内なる力が今、目覚めようとしている。
「遺言は済んだ...グハッ!!」
いかつい男は木の棒で殴ろうとしたが零於の早すぎるパンチで吹き飛んでしまった。
「貴様!!」
冷静そうな男はナイフを投げようとしたが、それも見ただけで軌道を読んで避ける。
「村のみんなを殺した外道どもが!!俺が相手をしてやる!!」
今までとは違う。血が騒ぐ、心が溢れる。肉体も、精神も今を超越しているような気がする。
「チッ!!俺の棒術が当たらねぇぞ。」
今の零於にそんな攻撃は当たらない。彼はいかつい男が自分に向けて振ってきた棒を掴んで、そのまま投げ飛ばした。
「何をしている!!」
「コイツは強い。油断をするな。」
「そのために戦況分析をしていた。後は任せろ。」
冷静な男はサーベルを取り出し、零於に攻撃した。先ほどのいかつい男とは攻撃のスピード、威力が段違いだった。それでも零於は己の勘のみで回避する。
(相手は300人を殺した狂人だ。さっきの野郎とは格が違いすぎる。ならば一つ...)
彼が取った手段は、サーベルを振った瞬間、ダッシュから始まる。
「愚かな...自ら死ぬとは。」
彼の狙い通りサーベルを振ったので、スライディングして斬撃を回避した。
「何!?」
さすがの男でもこれには予想外の反応を見せる。零於はすぐに背後を取る。
「もらった!!」
「させるか!!」
しかし、気づかれてしまい反撃された。零於は男の繰り出したに斬撃を紙一枚で躱すも体制を崩してしまう。
「口ほどもない。今度こそ死ね!!」
今度こそ、絶体絶命かに見えた次の瞬間だった。何か音が鳴った。それを手がかりにして零於が見ると...
「よくやった少年。後は俺に任せろ。」
彼が見たのは白髪で白シャツに一枚羽織った男だった。
「お前は!!『九闘士』の緑川僧儒か。」
「老いぼれがわざわざ死にに来るとはな。」
男二人は緑川僧儒と名乗る男に殺意を向けた。
「得物を持っているなら...分かっとるな?」
彼は短刀を二人に向けた。目は殺気立っており、獲物をこれから喰うような異様な雰囲気を纏っている。
「うおおおおお!!」
いかつい男が木の棒を振るうが、それは僧儒が手で掴んだ。
「背中がガラ空きだ。」
だが相手は2人。別の男がサーベルを振って空いた背中を切ろうとしていたが、僧儒は掴んでいた木の棒を振り回し、二人は激突。その隙を見て僧儒は車のドアを開けた。
「行くぞ。」
「断る!!俺はみんなを殺し...」
「いいからさっさと俺の車に乗れ!!」
僧儒は自らの車に零於を無理やりという形で突っ込み、走らせた。
「アンタ、目的は何だよ。いうか誰なんだよ!!」
「ここで語るよりちゃんとした場所で語ろう。」
こうして連れていかれたのはホテル。それもかなり豪華な。
「すまない、緊急で泊まらせてくれ。」
「か、構いませんが。大人一人に子ども一人でよろしいでしょうか?」
「そうしてくれ。」
こうして二人はホテルに泊まることになった。
「さて、自己紹介からするか。俺の名前は緑川僧儒。スカイランドを守る自警団『空裂団』のメンバーにして最高戦力と称される『九闘士』の一人だ。」
「母さんが死ぬ前に言っていた組織に所属しているんですね。」
「この組織はさっきも話した通り自警団。治安維持のために組織がある。だが、俺がここに来た理由はお前を守るためだ。」
「俺を守る?」
「そうだ。お前は今、エニアークという組織から狙われている。」
「村に来てみんなを殺した。その時点で分かりましたよ。」
「ここでお前には二つの選択肢が存在する。一つは、『このまま逃避行を続ける』こと。もう一つは『命を賭して戦う』こと。まあ、どっちを選んでもお前が楽することは無いと思え。」
だが、零於の決断は決まっている。
「俺は戦う!!例えどんなに壁が立ちはだかろうと戦う。」
「畳の上で果てることは無いと思えよ。」
「……分かっていますよ。」
「ならば今日からお前は俺の弟子だ。よろしくな、零於。」
「はい!!……こういう時、何で言えばいいでしょうか?」
「普通に緑川、もしくは僧儒で構わんぞ。」
「分かりました、僧儒さん。」
こうして、彼…空國零於は過酷な戦いに身を投じることを選んだ。そして物語の歯車は次々と加速することになるとはこの時の彼にはまだ知る由も無かったのであった。
第一話、いかがでしたか?次回は遂に「ヒーローガール」が登場します!!