人間の健一と親切な僕っ娘上級淫魔アランの淫魔界珍道中 作:雑食性生物物部
目的地のホテルはネオンが輝く淫魔街の中では比較的まともで、人間界にもよくあるような建物だった。
ホテルのロビーに着くとアランさんはフロントでチェックインの手続きをし始めた。フロントは何やら昭和のタバコ屋見たいに小さく、暖簾が掛かっていて奥は詳しくは見えなかった。
アランさんが呼び鈴を鳴らし、スタッフの人を呼ぶ。……反応は無かった。
「すみません、予約していたアランですけど」
アランさんが俺を抱きかかえながらフロントに手を掛けて呼び出すが中々反応が無い。
アランさんは少し考えた後、俺を呼び鈴の前に寄せると、
「連打してくれ健一」
と言った。
「……店の迷惑になりませんかね?」
「構わないよ。今君は緊急事態なのだから」
そう言われて俺は身体が火照っているのを思い返し、仕方ないかと思いつつボタンを力を込めて連打した。
ジリリリリと呼び鈴がロビーにしばらくこだましていると、フロントの奥からドタバタと動く声が聞こえそして──、
「うっせーんだよぉぉぉぉぉぉ!今ダーリンと十連発決め込ん出たんだよ!このタコ助があ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙」
暖簾の奥から鬼のような形相をした下半身が裸の淫魔がやって来た。
「やぁどうも管理人さん、予約していたアランと今日保護した健一です」
「あぁハイハイ!!アランさんね!ほらよ!予約していた部屋の鍵だよ!早速しけ込んで来い馬鹿野郎!」
フロントの短気な淫魔が乱暴に投げた鍵をアランさんは片手でキャッチし、「じゃあ行こうか健一」と俺を抱えてエレベーターへと歩き出した。
背後のフロントから「ダァァァリィィィンンン!!!寸止めで終わっちゃったじゃねぇかこんちくしょうがよぉぉぉぉ!!また一からやり直しだ!」と言う声がロビー中に響いてきて、自分も同じ運命を辿るのではないかと俺はガクブル震えていた。
そんな心配をよそにアランさんは俺を片腕で抱きかかえたままホテルのエレベーターに乗った。ブイーンと古風な音と共に俺たちの乗るエレベーターは階上へと向かっていった。
「辛くないかい?健一」
アランさんの腕の中で彼女にそう聞かれたが、湧き上がるムラムラの熱の為にガスマスクを付けた顔を上げる事が出来なくなっていた。
「お、お気になさらないでください……」
辛うじて声をひねり出して答えると、アランさんは「おやおや本当に切なそうだ」と心配そうに頭を優しく撫でてくれた。俺は思わず「頭じゃなく、もっと下を撫でてください。あるいはしごいて下さい」と口を開きそうになった自分に驚き、ますます淫魔界の淫らな毒の空気にあてられた事を実感させられた。そんな事を考えていた丁度その時、チーンとエレベーターが目的の階に到着した事を告げるとブーンとエレベーターの扉が開かれた。