人間の健一と親切な僕っ娘上級淫魔アランの淫魔界珍道中 作:雑食性生物物部
改札口はかなり混雑していて、マスク越しでも長蛇の列という事がわかる。しかも皆淫魔だというからアランさんが居なきゃ迷う所だ。
そこには自分よりも背丈の小さい、子供の淫魔がいた。自分の事かと指で顔を指したら頷いた。
「お兄ちゃん…もしかして迷子なの?」
「迷子…うーんまぁ迷子と言えば迷子だね」
「そっかあ…」
と言って少女は少し考えると、
「あのねもし迷子なら、迷子センターに行かなきゃいけないと思うの」
「はい?」
「一緒に行こ?ね?付いて行ってあげるから…♡」
「おっと彼は迷子じゃないよ」
少女が俺の手を取ろうとした時、アランさんが割って入った。
「そうなの?じゃあ何で人間さんがここにいるの?」
人間という単語を言った瞬間、何人かが目の色を変えて俺の方を向いた。
「時の巡り合わせというやつさ。お嬢さんも大きくなったらいずれ分かるよ」
そう言ってアランさんは優しく微笑むと、僕の腕を強く引っ張り改札の方へとその場を去った。
「ダメじゃないか健一。ここじゃ気安く返事するのも命取りなんだよ」
「すいません…!よく分からないもので…って何ですそれ」
「ハーネスだよ最近じゃ人間達も使うんだろ?」
「ハーネス!?何だってそんな」
「君が淫魔界で無事でいるためさ。ここじゃ君は狩場に迷い込んだ、か弱い鹿だからね。さっきみたいに子供だろうと遠慮なく君を狙ってると思いたまえ」
「でも人間界じゃハーネス付けるのは子供くらいですよ…」
「ほう…?今からでも迷子センターを覗いてみるかい?君よりも倍は大きい保母の淫魔達が有り余る庇護欲で人間を赤ちゃん帰りさせて、甘える事しか考えられない様に徹底的に調教するし、きっと他の迷子の淫魔も手伝ってくれるから、まず帰れなくなることは確実だが…」
「結構です!行きましょう!」
ハーネスを付けられて急ぐ様に改札を出た俺は駅を出て街に躍り出た。街には数え切れない程の淫魔達がひしめき合って暮らしている。
「さて早速安全なホテルにでも…とその前に少し書類を取りに行く」
「書類?」
「人間保護権利書だよ。健一が人間界に戻る為には、こいつが無いと色々厄介だからね」
「へぇ。そいつが無いとどうなるんです?」
「“どうぞお好きに使ってください”と発信してる様なものだからね。公共のミルクサーバーになるか、警官に保護されて署のミルクサーバーになるか、どちらかの運命かが保護者と権利書が無い人間に待ち受けてるね」
「取りに行きましょう今すぐ!」
「なあに、権利書といっても車のドライブレコーダーぐらいのモノだよ。基本的には僕という保護者から離れなければ安全さ」
「じゃあそうさせてもらいます…」
「ほら、もっと側に来たまえ」
こうして、いい歳した男がハーネスを付けられてスーツ姿のイケメンの腕にしがみつく構図が出来た。
俺がアランさんとくっつきながら歩いていると、何やらモニター前に人が集まってるのを見かけると、俺が聞く前に彼女が言った。
「あれは人間のオークションだよ」
「え!?それって人身売買!?」
「まぁ似てるかな。彼女なんていた事ない、女性関係なんて持った事ない寂しい独身男性を攫い、オークションで競り勝った淫魔がその所有物になれる訳さ」
唖然としている俺を見て彼女は少し笑った。
「こらこらそう可愛い反応するんじゃない。これでも少しは人道的になったんだよ?」
「あの人身売買のどこが人道的なんです…?」
「前は首輪で繋いでたけど、可哀想すぎるって淫魔からも不評だったからモニターの中で快適に待機してもらってるのさ」
「…ホントだ。モニターの中は快適そう」
「だろう?何が起こったか分からずに、あの部屋で呑気に過ごす人間程価値が高くなるんだよ。電車で眠りこけてた健一みたいにね♪」
「冗談キツイですって」
俺がそう言うとアランさんは、君は本当に可愛いなぁと優しく俺の頭を撫でた。
だが少し歩くと別の人だかりが同じようにモニターの前に集まっていた。
「あれはさっきと同じ奴ですか?」
「うん?あれは少し違うな被購入オークションだ」
「被購入って…何じゃそりゃ」
俺は首を傾げた。
「文字通り淫魔が“人間に買われる”ためのオークションだよ。わかりやすく言えば好みの相手を見初めた淫魔がその相手にいくらで買ってもらうかを決め、競り勝った淫魔はお金と一緒に男の元に行くと言うわけさ。こちらから向かうからモニターの映像も男の人間界での映像になる」
「……要は押しかけ女房って事ですね。でもこれなら男も拒否権が」
「ないよ?」
速攻で遮られた。