やはり俺は孤独だった。 作:悪夢
「ん...」
暗い寝室。
可愛らしいパジャマに身を包んだ結衣は、すぐ隣で静かに寝息を立てながら眠っている。
...少し香るシャンプーの匂い。激しいセックスによって汗だくになってしまったので二度目の入浴を済ませた後、一緒にベッドに入った次第だ。
「...」
穏やかな寝顔に手を伸ばし、もちもちと柔らかい頬に触れる。
「んぅ...」
少し反応が返って来たのだが、結衣が目を覚ますことは無かった。
「...」
ぼんやりと結衣を眺めていたのだが...段々と意識が曖昧になって来た。
「明日は...」
結衣と買い物に行く予定だ。
そろそろゴムを買わないと...予備が無かったような...
そんなことを考えているうちに、俺の意識はゆっくりと沈んでいくのだった。
――――――――――――――――――――
土曜日の朝
ソファに腰掛けて、ぼんやりと朝のニュース番組を眺めていた。
「ふあ...」
隣で大きな欠伸をしている結衣。
今日は特に急ぎの予定も無かったのでゆったりとした時間を過ごしている。
「大きな欠伸だね」
「ぁ...えへへ...なんだか気が抜けちゃって...」
ふんにゃりと笑顔を浮かべている結衣。
...大きく口を開けている彼女を見ると...昨夜の奉仕を思い出してしまいそうになる。
「...」
「裕太くん?」
そんなことを考えていると、結衣が不思議そうな顔で尋ねて来た。
「ん?」
「どうしたの?何か考え事?」
君のフェラチオを思い出していたんだよ、とは言えなかった。
「いや...口が大きく開くようになったな、と思っただけだよ」
そう言って言葉を濁した。
「確かに...前より口が大きく開くようになったかも...♡」
しかし、俺の真意を結衣は察したらしく、甘ったるい声で囁いて来た。
「結衣...」
「裕太くんのって...すっごく大きくて大変なんだから...♡」
耳元で囁かれる結衣の甘い声。
...そんな彼女に興奮しそうになるけれど、お出かけの為にオシャレしてくれた結衣の服を引っぺがすわけにはいかない。
「あっ」
それで思い出した。
「どうしたの?」
普段通りの声色で尋ねられた。
「ちょっと買わないといけないモノを思い出したんだ」
サイドボードの一番上の引き出しに入っている"アレ"だ。
「お買い物?」
小首をかしげている結衣。
「うん。それは...」
「ひゃっ...!?」
そんな彼女を抱き寄せて、耳元で囁いた。
「...昨日のエッチでコンドームを使い切っちゃったんだ」
「...っ...!」
かあっと赤くなる結衣。初々しい反応が堪らなく愛おしい。
「ショッピングセンターの薬局で売ってたから帰りに買おうか」
「...うん」
まだまだ顔が赤い結衣。
そんな彼女の耳元で、更に俺は言葉を続けた。
「...今夜も使うからね」
「っ...」
...耳まで赤くなっていた。
先に誘惑しておきながら自分の方が赤面している結衣の反応を楽しみつつ、俺たちは外出の準備を始めたのだった。
...................................
そして時間は飛んでお昼前。
俺は結衣と一緒にショッピングセンターにやって来た。
午前中は結衣の服選びだけで時間が過ぎていったのだが、まだまだ選び足りない様子なので昼食後も数店舗回る予定だった。
「ご飯どうしよっか?」
結衣と指を絡め合いながら通路を歩く。
レストラン街から程近い場所に居るのだが、到着するまでの時間は候補選びとして十分だ。
「そうだな...これと言って食べたいモノが有るわけじゃないからなぁ」
何でも良いという気分だったが、それをそのまま伝えて選択責任を結衣に押し付けるつもりは無い。
「うーん...あたしもそうなんだよね~」
えへへ...と笑う結衣の笑顔が可愛らしかった。
「それじゃあ...サイゼでも行くか?」
チラリと見えた看板を見ながらそう答えた。
食事の際に特別な時間が要らないほど、俺と結衣の付き合いは深い。
なので、別にファミレスでもラーメンでも何でもいいのだ。
「うん!」
結衣に笑顔を返しながら歩いていると、いつの間にかお店の前に到着していた。
店員さんに案内されながら店内に入り、窓際のテーブル席に腰掛けた。
「何食べようかな~」
上機嫌な様子の結衣が楽しげにメニューを眺めていた。
そんな結衣を眺めていたら、自然と頬が緩んでしまった。
「ん?」
ふと他の座席に視線を向けると、少し違和感のある人物が居た。
「...」
その人物は特段怪しいというわけでは無かったのだが...休日のショッピングセンターのファミレスに一人で来ていた。
サラリーマンが手短に済ませる為に食事をしたり、勉強や仕事をするために一人で訪れるのは珍しくないのだが...その彼は本当に食事に来ただけのようだ。
服装や顔立ちから察するにかなり若い男の子だ。
何やらキョロキョロと辺りを見渡しているので人を待っているのかもしれない。
「...?裕太くん?」
明後日の方向を向いている俺を不思議そうに見つめる結衣。
どうやらメニューが決まったらしい。
「なんでもないよ。決まった?」
他人をジロジロと見続けるのも失礼だろう。そう思って目の前の恋人に視線を向けた。
「うーん...この二つで迷ってるんだよね~」
どうやら季節限定のパスタで迷っているらしい。
「二つとも頼んで良いよ。それで半分こしよう」
特に食べたいメニューを決めていなかったので問題無かった。
「良いの?」
キラキラと瞳を輝かせている結衣。
「勿論。じゃあ、店員さんを呼ぼうか」
「うん!」
テーブルの上に有るボタンを押すと、軽やかなチャイムが聞こえて来た。
...そういえば、柱の陰になっているので結衣の姿は他のお客さんから見えにくい位置になっているな。
「...まあいいか」
「?」
不思議そうな顔をしている結衣の頭を撫でながら食事の到着を待った。
.................
そして、俺と結衣は食事を終えて会計待ちの列に並んでいた。
「美味しかった~」
ニコニコと満足そうに笑顔を浮かべている結衣。
「それなら良かった」
そんな彼女を見ているだけで俺も笑顔になる。
「でも、本当に良いの?あたしも出すよ?」
そう言いながら財布を手に持っている結衣。
「こんなときくらいカッコつけさせてくれよ。というか、社会人なんだからこれくらい余裕だよ」
結衣の手を取って財布をカバンに収めさせた。
「もう...ありがと♪」
少し頬を染めながらお礼を言ってくれた。
「いえいえ」
...そういえば、先ほどの変わった男の子は既に店を出ていた。
結局待ち人は来なかったみたいだけど、早々に退店して良かったのだろうか?
少し気になるところではあったけれど、まあ結局は他人。そんな事より目の前の恋人に意識を向けよう。
俺は会計をカードで手早く済ませてお店を後にしたのだ。
.................
その後は再び結衣の服選びに付き合い、数店舗のアパレルショップを巡った。
その時間は決して退屈なものでは無く、様々な服を纏う結衣を眺める事が出来たのでこちらとしても十分に楽しめた。
そして、結衣に一番似合っていて、それでいて本人も気に入った様子の服をプレゼントして、本日のメインイベントを終えるのだった。
「本当にありがとう...服までプレゼントしてくれて...♡」
アパレルショップの紙袋を抱きしめながら、頬を染めて上目遣いで見つめている。
そんな表情が見れただけで今日は買い物に来た甲斐が有るというモノだ。
「いえいえ。家事を手伝ってくれたお礼だよ」
パジャマ姿で洗濯物を干す様子は...さながら愛らしい幼妻のようで微笑ましかった。
「そんなの...えへへ...♡」
頬が緩んでいる結衣だった。
「お?あったあった」
平面駐車場へと向かう途中、出口付近のドラックストアに到着した。
「ぁ...」
結衣もドラックストアへとやって来た目的を思い出したらしい。
「じゃあ、行こうか」
「う、うん」
会計は俺だけで済ませるつもりだけど、頬を赤くした結衣をもう少し眺めていたいので連れて入ることにした。
手を繋いで店内に入り、食品や薬のエリアを抜ける。
「ここだね」
「っ...」
店内の奥まった列。外から見えない配置で並んでいる...数多のコンドームたち。
俺の肉棒にゴムを被せる手つきは慣れているのに、ソレがお店で並んでいる様を見るのは恥ずかしいらしい。
「結衣、どれを使って欲しい?」
おじさん臭いセクハラみたいだな...
しかし、顔を赤くしながらもチラチラと商品棚に視線を向ける結衣が愛らしくてしょうがない。
「...いじわる」
頬を膨らませている結衣だった。
そんな彼女の耳元に口を寄せて囁いた。
「今夜は薄いヤツを試してみようか」
極薄LLサイズ!と書かれた箱を手に取った。
「っ...!」
かあっと耳まで赤くなる結衣。
しかし...赤面しながらも結衣は小さく頷いた。
「よし。それと、いつものコレも買っておこうか」
「...お徳用...こんなに入ってたんだ...」
結衣とセックスする際に使っているコンドームだ。LLサイズでお徳用パックだけど、使い心地は...昨日の結衣の反応を見る限り大満足なのだろう。
「ああ。...結衣がエッチだからすぐに使い切るけどね」
耳元で囁くと、耳まで赤くしながら視線を逸らしていた。
...からかい半分ではあるけれど、これが半分は本当だからな。まあ、結衣に溺れている俺のせいではあるけれど。
「...裕太くんのえっち」
「ごめんごめん。じゃあ、会計してくるから外で待っていて」
結衣の頭を撫でながらそう答えた。
「うん...待ってる」
結衣と別れ、俺は箱を二つ持ってレジへと向かった。
「いらっしゃいま...せ...!?」
レジ打ちをしていた若い女性の店員さんがコンドームを二度見した。
...そんな反応をされるとさすがに恥ずかしい。
「あの...レジお願いできますか...?」
明らかに大きなコンドームの箱と、極薄!と書かれた直方体の小さな箱。
視線が固定されていた店員さんは俺の言葉で我に買ったらしい。
「こんなに使うんだ...って、し、失礼しました!お、お会計しますっ!」
大声で反応する店員さん。その様子は大変愛らしいけれど、さすがに注目されるので恥ずかしい。
「カードでお願いします」
「は、はい!かしこまりました!」
なんとか会計を済ませ、黒いビニール袋に入ったコンドームを受け取ってお店を後にした。
「さて...結衣はどこに...ん?」
結衣を探して辺りを見渡すと、店舗から程近い通路にて若い男性と会話している結衣を見つけた。
「...ナンパか?」
結衣は目立つ容姿なのでよくナンパされる。
いつも柔らかい表情なので声をかけやすいのかもしれない。
しかし、いつものナンパとは雰囲気が違う気がする。
必要以上に距離が近いわけではないし、結衣も緊張している様子が無い。
「ん?」
よく見ると、その相手は先程のファミレスに一人で来ていた男の子ではないか。
俺も会話に参加すべく、結衣のもとへと近づいて行った。
結衣に近づくと、段々と会話が聞こえて来た。
「と、ところで...お前、一人か?」
少し恥ずかしそうに彼は結衣に尋ねた。
「あ...えっと...」
言葉に詰まって辺りを見渡している結衣。...俺を探しているのだろうか?
「いや、誰かと一緒なら別に良いんだ。もう帰るところだったしな」
直ぐにそう付け足した彼。気を遣わせないようにしている様子だ。
「う、うん。ごめんね?」
「謝られることなんてないぞ。むしろ俺の方こそ話しかけたりして悪かったな...身の程を弁えます」
「もー、またそういうこと言う。めっ、だよ?」
結衣は気まずそうな様子だったけれど、彼の冗談で笑顔になっている。
「冗談だよ。まあ、本当に帰るところだったから気にすんな」
そう言ってひらひらと手を振っている。...俺も話したいからそろそろ声をかけるか。
「結衣、お待たせ」
さて...どんな関係だと言うべきか。両親公認とはいえ同級生に言いふらす程事が出来ない程度にはアブノーマルな関係だ。
「あっ...」
そんな俺に気が付いた結衣。何やら少し気まずそうな様子だ。
...大丈夫。俺に任せろ。
「うん?結衣の知り合い?」
自然と会話に参加した。
「う、うん。学校の友達。ほら、前に話したでしょ?事故のときの...」
そう言って説明を始めた結衣。
事故...そうか、サブレを庇って事故に遭った子だ。
「ああ、サブレを助けてくれた恩人の子か」
そう言えば同級生で同じクラスだったと話していたな。
「由比ヶ浜、この人は...?」
その同級生くんが結衣に問いかけた。
「え、えっと...」
回答に困っている様子だ。
...大丈夫、俺に任せろ。
「あ、ごめんね、自己紹介もせずに。俺は千崎裕太。結衣の親戚なんだ」
あくまでも親戚。仲の良い兄弟のような関係だと思わせておこう。
「あ...えっと、比企谷八幡です。由比ヶ浜...結衣さんの、友達?知り合い?...えっと、同じクラスの顔見知りです」
真顔で冗談のような自己紹介をする様子が面白かった。
「どんどん距離が遠くなってる!?ちゃんと友達だから!」
ツッコミを入れる結衣。
漫才のようなやり取りに思わず声を上げて笑ってしまった。
「はははっ。話を聞くだけで良い人だって分かるのに、その上面白いなんて。結衣にもちゃんとした男友達が居てお兄ちゃん安心したよ」
関係を誤魔化しつつ、本心から頭を撫でた。
「えへへ...♡」
俺は誤魔化したつもりだけど...結衣は完全に蕩けた笑顔で撫でられていた。
...これ以上会話を続けると結衣がボロを出しそうだな。
行こうか、と小さく声をかけた。
「じゃあ、そろそろ行くね。ばいばい、ヒッキー!」
「またゆっくり話そうよ、比企谷くん」
ふりふりと手を振っている結衣。
その愛らしい笑顔で幾人もの同級生を魅了してきたのだろう。...俺もそのうちの一人なので何も言えないけれど。
角を曲がり、比企谷君の姿が見えなくなった頃、再び結衣に問いかけた。
「彼が例のヒッキー君か」
「...うん」
少し気まずそうな様子だった。
それもそうだろう。何故なら、俺に対してその彼に恋している事を以前に相談していたのだから。
「なるほど...確かに良い人そうだ」
少し卑屈さはあったけれど、性根が善良なのはよく分かった。
「うん...でも、その...」
「大丈夫...それに、この関係は...俺にも責任があるから」
結衣との恋人関係。
今は心からお互いに愛し合っているけれど...きっかけは少し特殊だった。
元々、俺も結衣もお互いの事を信頼しており、それなりに好意はあったけれど、そもそも年齢が離れているのでその対象では無かった。
しかし...俺も健全な若い男で、同じく結衣も健全な若い女。
憎からず思っている相手の家で2人きりで過ごしていると...関係が進んでしまうのも致し方ないだろう。
それに...真摯に比企谷君を想っていた結衣の心を快楽に沈めたのは...他でもない俺自身だ。
あの日は...どうやら比企谷君の気持ちが自分に向いていないと薄々気が付いて、泣きそうな様子で俺のアパートに訪れていた。
そんな結衣を慰めているうちに...いつの間にか俺たちは唇を重ね合わせていた。
そして...次に覚えているのは焦点の合わない笑顔で肉棒を咥えている結衣の頭を撫でている光景だった。
「ふふふっ...確かに、裕太くんが私の身体をめちゃくちゃにしたのがきっかけだったよね。でも、
きゅっ...と、少し強く手を握って来た結衣。
俺も...その柔らかい手を握り返した。
「帰ろうか、結衣」
「うん...♡」
こうして、俺と結衣はショッピングセンターを後にしたのだった。
...ちなみに、極薄のゴムは凄まじい効果だった。
あまりにも良かったのでもう一箱購入して、日曜日はひたすら肉欲に溺れ続けたのだった。