クラスメートに弱みを握られ恥ずかしいことを要求されちゃう件 作:チャンドラ=グプタ
シトシトと雨が降り続く、五月雨の時期。
本来であれば会社で業務に励んでいる時間帯であるが、俺は訳あって総理大臣官邸にいた。
前方には日本のトップである総理大臣がおり、マスコミ関係者がこぞって総理にカメラを向けている。
「H&Y・コーポレーション代表取締役社長、柏木宏様。こちらへどうぞ」
アナウンサーに呼ばれ、俺は総理の元へと移動した。
総理は賞状を手に持ち、俺を一瞥する。
こんな風に総理と間近で会う機会はそうそうないことだろう。
「H&Y・コーポレーション代表取締役社長、柏木宏様。ここに内閣総理大臣賞を表彰いたします。これからもインパクトのある事業に挑戦してください」
「ありがとうございます」
俺は深々とお辞儀をし、総理から賞状を受け取った。
パシャパシャとシャッターを切る音が聞こえてくる。
こんなにもたくさんの人が俺に……いや、俺達の会社に注目してくれている。
思い返せば、起業してからは苦労の連続であった。
家族からは大反対され、反対を押し切って起業するも利益の出ない時期が続いた。
優香にはシステム開発に専念してもらうため、会計処理や雑務は全て俺一人でやり繰りした。
起業してから三年後、AIを活用したマッチングアプリが見事に大ヒットし、ようやく会社は黒字へと傾いた。
極めつけは中学時代に俺が使っていた明里のアバター。
あれを応用した自分の理想の相手をアバターとして具現化してくれるアプリが大当たりし、H&Y・コーポレーションはスタートアップ起業として注目を浴びるようになった。
そして今日――優れたベンチャー企業を選出する日本スタートアップ大賞で、我が社は内閣総理大臣賞を受賞したのである。
「柏木宏様。内閣総理大臣賞の受賞にあたって、感想をお願いいたします」
アナウンサーに促され、俺はマイク台の前に立った。
この会場には優香も来ており、マスコミ陣の少し後ろに立っていた。
優香と目が合うと、彼女が微笑んだ。
「H&Y・コーポレーション代表取締役社長の柏木宏です。この度はこのような栄誉ある賞をいただき、大変光栄に思います。当社は五年前に創業しました。思い返せば創業したての頃は苦労続きの毎日でした」
右も左も分からない状態で起業し、がむしゃらに業務に取り組む毎日だった。
とてつもなく大変だったが、あれほど何かに熱中した時間は他には無かった。
「しかし、共に起業した妻がいつも私を支えてくれました。妻は私にとって、最高のビジネスパートナーであり、人生のパートナーです。これからも妻と共に……社員と共に、革新的な事業に取り組んでいきたいと思います!」
会場に盛大なスタンディングオベーションが鳴り響いた。
優香も拍手してくれている。
「おめでとう、宏君!」
ありがとう、優香。
「受賞おめでとう、宏君!」
ありがとう、明里……って、明里!?
さっきまで会場にいなかったのにどうして……
「おめでとー、宏君! すごいよ、本当!」
おいおい、早希まで現れたぞ!?
一体、何がどうなってるんだ?
二人とも中学時代の制服を着ており、見た目もあの頃と同じであった。
「「おめでとう、宏くーん!」」
クラスメートの雅理と灯政まで……
急に知り合いが次々と現れるこの現象に俺は違和感を覚えた。
「おめでとうございます……認めるのは癪ですが、すごいと思いますよ」
女子バレー部のマネージャー、鈴原秋野まで現れた。
そうか……
やはりこれは、夢か。
「おめでとう!」
「おめでとう」
「おめでとう……」
――パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ
俺はたくさんの人に祝福されている。
何とも心地の良い夢なのだろう。
ずっとここにいたいが、そろそろ現実に帰らないとな。
「ありがとう……みんな」
「……くん。宏君!」
ゆっくりと目を開けると、見知った顔が視界に映った。
「早希……おはよう」
「もー! 寝すぎだよ。何度呼んでも起きなかったから、死んだのかと思っちゃったじゃん」
早希が呆れたように微笑みかけた。
そうだ……確か優香達とエッチをして、疲れてそのまま寝たんだった。
部屋の辺りを見渡すも、優香と明里の姿が見当たらない。
「わ、悪い……なぁ、優香と明里は?」
「二人なら泳ぎに行ったよ。そろそろ戻って来るんじゃないかな?」
ちょうどその時、ガチャッと音を立てて部屋の扉が開いた。
部屋に入ってきたのは優香と明里で、二人とも髪が水で濡れていた。
「ただいまー……あ、宏君。起きたんだね」
「お、おう……」
明里が軽く手を振ってきた。
よくよく考えてみたら、俺は未だに全裸である。
全裸であることに何だか居たたまれなくなり、俺はそそくさと起き上がり海水パンツを履いた。
「早希。俺、どれくらい眠ってた?」
「え~と……確か二時間くらいだったかな?」
まさか二時間も寝てしまってたなんて……
もはや、うたた寝なんてレベルじゃない。
早希も海で泳ぎたかっただろうに。
エッチで疲弊していたとはいえ、早希に悪いことをした。
「ご、ごめん……まさか、そんなに長く寝てたなんて」
「ううん。気にしてないよ。それより、起きたし……またする?」
早希が首を傾げて訊いた。
するかだって?
そんなの、考えるまでもない。
「今日はもう遠慮しておきます……」
夢でも現実でもエッチしまくって、精力がもうほとんど空っぽである。
「え~~~……残念」
俺達は休憩室を後にし、砂浜へと向かった。
優香の提案で砂遊びをすることになり、三人は砂のお城を作り始めた。
「見て見て、宏君! お城出来たよー」
「お、おぉ……めっちゃ上手いな」
優香の作ったお城はかなりクオリティが高い。
窓や櫓といったディティールまで、見事に砂で再現している。
これを僅か三十分足らずで作り上げた優香はマジで天才かと思った。
「優香のお城、私のよりずっと立派ですごいや……ねぇ、後で写真撮らせて!」
明里が作ったお城もかなり上手いのだが、あくまで遊びの範疇を出ない。
俺は昔からこういう手作業が苦手なため、お城を作る気にはなれなかった。
「オッケー! それよりさ、明里。それ暑くないの?」
早希は明里の身体を砂浜で埋めていた。
全身砂で埋まっている明里は傍から見て、とても暑そうである。
現に明里の顔から多量の汗が流れていた。
「めっちゃ暑いよ。けど、一度これやってみたかったんだよね」
早希はあからさまに胸の部分を盛り上げていた。
明里を包み込んでいる砂の身体はかなりのダイナマイトボディである。
「おぉ~! 明里、めっちゃセクシー!」
「ちょっと早希~~~!! 自分が巨乳だからって、調子に乗ってさー!」
「別にそういうわけじゃないもーんだ!」
二人の微笑ましいやり取りを見ていると、背後から優香がポンポンと俺の肩を叩いた。
「ねぇ、宏君。砂埋めしてあげよっか?」
「おぉ……それじゃ、お願いしようかな」
優香のお言葉に甘えて、砂埋めを体験させてもらうことにした。
優香は俺の身体に砂を掛け、せっせと作業を行う。
上半身から下半身に掛けて身体が砂で埋まっていき、全く身動きが取れないまでになった。
「どう? 宏君」
「う、うん……やっぱり暑いな」
身体からどんどん水分が奪われていくようだ。
ツーピースに主人公のロフィアがサンドの果実の能力者、アリゲーターとの戦いで水分を奪われる場面があったが、今の俺はそんなロフィアと同じ気分である。
「そっか、そっか……」
「お、おい……優香」
優香は物凄く真剣な表情で股間部分を砂で盛り上げていた。
「よし、出来た!」
俺の股間には何とも立派な男性器が聳え立っている。
巨根と言って差し支えないどころか、こんな大きいイチモツを持っている人は海外にだっていないだろう。
「おー! それ、ネオアームストロングサイクロンエクストリームアームストロング砲だよね。完成度たかーい!」
早希は何故かこれを男性器とは呼ばずに謎の兵器だと認識している。
「おい早希、これ知ってるの? これどう見ても、ち……」
「はぁ~。宏君、相当脆弱だね。別名ベネスとも呼ばれるこれは、某神話にも登場する白いビームで数多もの国を滅ぼしたという最終兵器……」
「いや。これどう見てもおちんぽだよね?」
黙って話を聞いていた明里が口を挟んできた。
「……」
「……」
優香と早希はしばしの間、無言になる。
「ふん!」
優香は何故か突然、ネオアームストロングサイクロンエクストリームアームストロング砲を強烈な蹴りで破壊した。
仮のとはいえイチモツを攻撃され、思わず股間がひゅっとなる。
「おいいぃぃ! 何で急に壊したんだ?」
「明里が意味わかんないこと言うから萎えちゃったんだもん! ネオアームストロングサイクロンエクストリームアームストロング砲だって言ってるのに……」
「本当だよー。明里はエッチだねぇ」
「えええぇ!? 私がおかしいの!? 宏君もさっきのあれ、おちんぽだと思うよね?」
優香が真顔で俺を見つめてきた。
有無を言わせない、凄まじい眼力である。
まるでギ〇スの力に操られてしまったかのようだ。
「あー、いや……ネオアームストロングサイクロンエクストリームアームストロング砲だろ。きっと」
「ひ、ひ、宏君のバカ―ーー!!」
明里が怒ってしまい、機嫌を直してもらうのに時間が掛かった。
時が経つのも忘れて四人で遊んでいるうちに、気づけば時刻は夕暮れ時になっていた。
俺は水着から私服に着替え、バス停で三人が来るのを待っていた。
「おまたせ、宏君」
優香が一人でバス停にやってきた。
茜色の日差しを浴びる優香はとても綺麗に見える。
「優香……明里と早希は?」
「まだ着替えてるよ。先に着替え終わったから来た」
「そっか。なぁ、優香……海に誘ってくれてありがとうな。今日はすごく楽しかったよ」
「私も……すっごく楽しかった。また『四人』で来たいね!」
「そう……だな……」
俺が見たのが単なる夢だったのか、未来を暗示する夢なのかは分からない。
だが、今はまだこのままの関係性でいたい。
誰かを選ばないといけない。
いつか、そんな時が来たとしたら……
「お待たせ―、二人とも―!」
背後から早希の声が聞こえてきた。
振り返ると、明里と早希がこちらにやってくるのが見えた。
「ふぅー。まだバス来てないね。間に合って良かったー」
早希が安堵するのも無理はない。
何せバスの到着時間、ギリギリである。
「あ、でもほら。丁度来たみたいだよ」
明里の指差す方にはバスがあり、一つ前の信号で停まっていた。
やがて信号は青に変わり、バスが到着する。
バスの扉が『プシュー』と音を立てて開いた。
「明里―! 帰りは私の隣に座ってー!」
「分かった、分かった」
早希と明里がバスに乗り込んだ。
「さ、宏君。乗ろう」
優香が右手を差し出した。
「うん」
俺は優香の手を掴んで、共にバスに乗る。
いつか、そんな時が来たとしたら。
ちゃんと答えを出したいと思う。
Q.人生において、一番楽しい時期は果たしていつか?
A.それは間違いなく『今』であろう。
この俺、柏木宏はこれからも彼女達と刺激的な毎日を過ごすのであった。
以上で、『クラスメートに弱みを握られ恥ずかしいことを要求されちゃう件』完結となります。
最終話のサブタイトルは自分なりのキャラへの想いを綴りました。
これまでお付き合いいただいた読者の皆様、ありがとうございました。
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次回作も読んでいただければ嬉しいです。