子供に戻ったと思ったら女体化させられるし女として生きるべきか男のまま生きるべきか分からない俺はスワンプマン 作:千佳のはんぺん
流石に時間を空けすぎると不審に思われるので、俺は1度朔月さんと共に部屋に戻り、数曲歌うループを繰り返した後、再びトイレに彼女を呼び出した。
もう都子は何も言ってこなかった。俺のいない間になにかあったのかもしれない。何にせよ、女子として扱ってもいいと判断されるのは悪くない兆しだ。ぶっちゃけオカマ扱いよりそっちのが気が楽だしね。
「八尋ちゃん、やり手だねぇ〜」
「はいやっぱり誤解してる!」
「誤解〜? 誤魔化さなくてもいいんだよ、にひひ」
「わあ楽しそう。でも違うんだよな。さっきのアレ、ナンパとかじゃないんよ」
やはりというかなんというか。俺が恋愛的な意味で前向きに男子と接していた、という風に捉えてる朔月さんにキチンと断りを入れる。
だが、朔月さんはケラケラと笑ってる素振りでこちらの言葉を信用してはくれなかった。なにゆえー。
「またまたー。そんな事言っちゃって。いいんだよー正直になっても。私ら友達じゃーん!」
「本当に違うんだよ。さっきの、私の幼馴染なんだよ」
「うんうん、分かるよ。幼馴染ね。……ん? 幼馴染?」
幼馴染という単語に、犬耳が生えそうな勢いで前のめりになっていた朔月さんの好奇心一旦収まる。目を丸くするという言葉の通り、不思議そうな表情で後に続く言葉を待っているようだった。
「幼馴染。ただの馴染み。安心院なじみ」
「あじむ……? よく分かんないけど、さっきの人幼馴染なの!?」
「如何にも。ただ単に元々住んでた場所が近かっただけの友達なんよね」
「嘘だぁ、さっきの人八尋ちゃんの事知らなさそうな感じ出てたじゃん!」
「昔と全然姿違うからねぇ。困惑してナンボよね」
「幼馴染なら姿が変わってもわかるでしょ!」
「うーん漫画!」
あるわけないねぇそんなロマンス。根本的に肉体そのものの素材が別物なんでね。面影の欠片も無いんだから。
てか、そう考えればそういえば。今の俺見て昔の俺を思い起こすなんて佐藤は大概な変態だな。ヤマカンか? 道行く女に似たような口八丁カマしてナンパでもしてんのかな。分かるわけねーもんね、俺って。
てなわけなので、まあいきなり声掛けても身に覚えがないのは当然。見た目で言えば紛うことなき初対面だからね。なので、ナンパに見えたのは仕方ないけれど全く実情は違うのである。
「ってこと」
「そっかあ。幼馴染かあ。じゃあさっきの人とのLINEもさ、男子だった頃の感覚で返すの?」
「なあにその不思議な質問。普通に話すよ」
「つまんなーい! 女の子として話そうよ、駆け引きしようよ幼馴染くんと!」
「駆け引き? なんの???」
「えぇー! そんなの……ねぇ? 分かるじゃん?」
ねぇと言われましても。分からんでもないけど、狙ってない相手に駆け引きって意味不明でしょ。
「百歩譲って女の子感意識したメッセージ送ったとて、多分アイツ私に対しては何も感じないと思うけど」
「その心はー?」
「男としてずっと一緒だったんだよ? そんな奴が女になったらむしろ冷めるでしょ。現実はさ」
「そんな事ないよ!」
「即答とは恐れ入った」
「昔と見違えた美人になっててドキドキするなんて、ゲームでも漫画でもよくある話でしょ!? もう前例は出尽くしてるよ!」
「前例のおおよそがフィクションじゃなけりゃその意見にも信ぴょう性があったんだけどね」
「現実でだってきっとあるよそう言うの!」
「そもそも男女の幼馴染って時点で結構恋愛対象から外れがちだってんだから、朔月さんが求めてるような風にはどう転んでもならないよ〜」
「そうかなあ……」
ガックシ、と効果音が横に書かれそうな動作で朔月さんが残念そうに俯き、かと思えば直ぐに何もなさげないつもの様子に戻った。
「八尋ちゃんの春がまた1歩遠くなっちゃった」
「私はそういうのいいって。皆の惚気を聞けりゃそれでいいよ」
「なんかおばあちゃんみたいだなあそれ」
「ほほほ、お盛んねえ最近の子は」
「あはははっ! おばあ声のクオリティたか! ふっ、あはははははっ!」
ツボったみたい。朔月さんは腹を抱えて大声で笑っている。目を薄めて「あらあら」と言うと余計に笑った。外に声が漏れてないか心配ですね。
ナンパの容疑が晴れた後、部屋に戻りしばらく歌ってお開きとなった。
部屋に戻ると「何の話してたん?」という都子らからの質疑を受ける事となり、それとな〜く誤魔化すつもりが朔月さんが「八尋ちゃんが男の人と話しててさ〜」等と言ってしまい、皆にニヤニヤした目線を向けられてしまった。
菊池さんは腕を組みうんうんと誰目線か分からない感じで頷いていたり、蝶田ちゃんは「ぐぬぬ……ウチのなのに」とこれまた不思議すぎる事を呟いてたり。質問攻めに遭わなかっただけマシだが、こそばゆい思いをする羽目になった。
「じゃあまた月曜な〜」
「じゃあね皆〜」
出身小学校が違うらしい朔月さんと菊池さんと別れ、都子と蝶田ちゃんと三人になった。
全員自転車なのでゆっくりと会話することは出来ないが、それでもノロノロとした速度で走りながら会話は続いている。
「蝶田って多趣味だよね。オタクの人ら皆と話が合うの何気すごくない?」
「そんな事ないよ! ウチなんて全然、広く浅くってだけで大体のコンテンツにわかだし……」
経済力に物言わせてカバンに缶バッジを付けまくってる人間がはたしてにわかと呼ばれていいのだろうか。
「いいんじゃん? 会話成立する程度の知識備えてんならさ」
「漫画やアニメって、どハマりしてる子達の中で段々『誰が1番詳しいか』とか『誰が1番グッズを持ってるか』みたいなのをオタク間で競ったりマウント合戦したりするんだよね」
「へぇ」
「アイドル系とかジャニヲタもそんな感じだよね」
「そ、かがりんの言う通り。オタク、マニア、ファンって呼ばれてる人達はこだわりが強いの。で、そういうのを意識してる子ほどにわかとかを嫌うっていうか、攻撃してもいい対象として見るんだけど、結構これがしんどいんだ……」
しみじみと語る蝶田ちゃん。なにやら苦労があったようで。
「どんな風な攻撃されるん?」
都子が尋ねる。てか、都子ってオタクどうこうの話ってサッパリ興味無いと思ってたんだが意外にも会話に前のめりだ。蝶田ちゃんを友達カウントしてるからなんだろうか。
「攻撃っていうか、扱われ方が軽くなるんだよね。どうせあんま知らないから、みたいなレッテルを貼られると他のジャンルにもそれが付きまとうっていうかさ」
「ふんふん」
「わざと自分だけ共有してない話で盛り上がったり、裏垢とかで小馬鹿にされたり愚痴られたり。好きなものを語ったり、感動したものを共有しようとしても、鼻で笑われたりさ」
「性格悪」
「女の社会って感じだね〜」
「オタク界隈は女に限らず男もそうだからね……責められる側は敵の母数が多いから、むしろこっちのがしんどいよ」
「根が深いねぇ」
マウント合戦ねえ。自分の好み云々で他人と優劣を付けるのな。自由度低いなあ、その趣味。
「かがりんも分かるよね? オタクのそういう面倒臭い感じ」
「私?」
「うん。かがりんも漫画とか好きだしさ」
「んー……マウントとかはどうでもいいよ。めんどいってかどうでもいい」
「ドライな意見だね」
「うんー」
やば、口滑らしてそういう人らを見下してるようにも捉えられるような発言をしてしまったかもしれない。蝶田ちゃんの顔見れない、都子の横顔チラチラってしてしまった。
「鹿狩くん、そういうとこあるよね」
「うぇっ!? いやだってさ! 何が好きとかって個々人の感想やんか!? 他人のそういうのに紐付けて優劣つけるのまじ蛇足じゃない?」
「無駄とまでは思えないよ。詳しい事やグッズを沢山持ってるのって、それにお金や時間を使った証明だもん」
「証明ぃ? 優勝トロフィーとか表彰状的な物って認識?」
「うーん?」
わ、「どういう例え?」って反応された。目に見える努力の結果って話だろ、これ以上にいい例えないと思いますが! 優しくあってくれよ。
「てか鹿狩くんもそういうのに興味あるの意外だったわ」
「そういうの?」
「オタク趣味って言うの?」
「あー。まあ入院生活暇だったしね〜」
「なるほど、それでか」
都子がオタクとかに偏見あるタイプとは思わないが、時代的にまだそういうのに偏見持ってる人らの方がギリ多そうなので当たり障りない事を言ってお茶を濁した。
「都子も漫画とか読もうや。オタクなろーよ」
「漫画くらい読むわ」
「ぬるいぬるい。もっと時間使わないと」
「早速マウント取ってんじゃねーよ」
「ぷっ。ふははっ!」
なんか横で蝶田ちゃんが覇王みたいな笑い方した。何に笑ったんだろう。
「二人ってさ、仲悪いように見えるけど息ぴったりだよね」
「どこが」「まあね」
ハモった。異口異音同文字数で都子と心がハモった。嬉しいね、ぼくたちプリキュアだ。
「都子、やっぱ私ら仲良しらしいぜ?」
「転校初日に言ったこと根に持ちすぎでしょ」
「そりゃ根に持つよ。幼馴染に『お前とは仲良くない』なんて言われたら3日は泣けるだろ」
「そんなメンタル脆かったっけ? 昔は散々偉そうに私に指図してきたのに。てかそんなめちゃくちゃ仲良かった訳でもないでしょ」
「プリキュアくらいこなせそうな仲くらいには思ってたけど?」
「大親友すぎでしょ。てか、あんたにゃマスコット枠しか向いてないよ」
「逆にマスコット枠はいけるんや」
「ちんちくりんだしね」
「やぁば。でもまあ、都子と並んだら見た目アンバランスなのは否めないな」
「ロリコンの需要しかクリアしてないもんね。あんた」
「じゃあプリキュアなれるやん。と、いった感じなんですわ。蝶田ちゃん」
急に話題を振られた蝶田ちゃんが「おおう? え、何が?」とギョッとした反応を示した。
「息が合うってより、都子が話を拾うのが上手いってのがでかいわけやね」
「あ、そういう事? いきなり何の話かと思ったよ〜!」
「てか急に褒めだしたの何? びっくりするが」
「普段冷たくしてくる奴、褒められたら優しくなるやろ作戦」
「打算野郎め」
「そもそも私にだけ冷たすぎんだよ。優しくしろな〜」
「最大限優しいつもりだけど」
「お前子供にも私に対する接し方してみろよ」
「あんたの事はいつだってガキ扱いしてるけど」
「真剣に喧嘩売ってるのかなあ!?」
「あはは」
などと都子と下らん話をしていたら今度は真っ当に控えめな笑い声を蝶田ちゃんが上げた。
夢の中で見た、というか夢が始まった地点である大きな交差点に着いた。
私ら三人はここからは別方向になるのだが、渡った先でも一応別れられるといった感じではあるので三人で信号待ちをする。
近くにスタバもマックもあるし金銭的に余裕があれば寄れたのだが、生憎今はすっからかんに近いのでこれを渡ったらお開きか。
名残惜しいなあと思った。
高校卒業して、この県から離れて。退屈な日々を過ごしていくうちに他人の事とか考えなくなって。
そんな毎日を送っていたから、友達と遊んだ帰りに話ながら信号待ちだなんて、久しぶりすぎて感傷的になってしまう。
老人だった訳でもないのにこんな事思うだなんて、俺はよほど中身のない人間だったらしい。
「ウチも、二人みたいに言い合える友達がほしいな」
「? 私らみたいに?」
「うん。二人とも、相手に遠慮してないし、どっちかが言ったことをすぐに理解出来てるのも伝わるし」
「だってよ都子」
「さっきからなんで私にばっか投げんのあんた」
「こういうのは都子が何か言った方が、こう、なんかエモくない?」
「エモいってなに。ていうかまた馬鹿みたいな事言ってるし」
馬鹿みたいな事言ってるとかあんまり人に言うのやめようね、泣いちゃうぞ。尊重しようね、気持ち。
「私と鹿狩くんぐらいならすぐなれると思うけど」
「また私ら仲良くないしみたいな事言うんじゃなかろうな。そろそろ本気で泣きそうになってくるからな」
「そうじゃなくて。それもあるんだけどさ」
「おぉい。折角の良い事言いそうな流れだったのに亀裂入れんなや」
「冗談だよ」
都子は自転車のハンドルに身を預け、前傾姿勢でケラケラと笑う。なんか、いつもより柔和で昔に戻ったみたいだった。
今なら何も言われないかなと思ってスカートに手を突っ込んだら都子に「こら」って怒られた。ひん。シャツ突っ込んでる部分が変によれて気持ち悪いんだもん。
「すごいな。ウチだったら、そんな罵倒みたいな軽口人に言えないよ……」
「ま、こんな事他の人に言ってたら不快な気持ちになるし嫌われるしね」
「あれ、なんでそう分析してるのに私にはぶちかましてくるの君」
「鹿狩くんはこれくらいじゃ傷つかないし嫌ってこないって分かってるから」
「わお」
あなたの事信頼してますよ的なセリフを都子に吐かれて唖然としてしまった。そんな俺を見て、都子は小声で「今のなし」と言った。可愛い。
「まあ、でもあれじゃない? 私とか小鞠とか鹿狩くんとかは、仲良い相手だったら多少口悪くても全然許せるし」
「いやいや、都子はキレるっしょ」
「なんでよ。紗理奈とか言い方あんま考えないタイプじゃん? あの子と友達やってる時点で私相当優しいでしょ」
「一理ある」
「だから私らには軽口言えばいいよ。紗理奈だけ唯一気を付ければいい」
「う、うん」
蝶田ちゃんは、都子の親切な言葉に面を食らっているようだった。普段全く接点がない2人だし、第三者視点で見れば都子は怖い系のギャルにしか見えないだろうし、気さくに話してくれるとは思っていなかったのだろう。
幼少期から知っている身としてなんか嬉しくなる。誤解されがちな友達の良い所を知られるのは気持ちがいいものだ。
「あはは。今よりも仲良くなれたら、そうだね。皆にそういう事言えるようになりたいな」
「? 今からでも軽口叩いていいけど」
「えっ」
「言ってんじゃん、仲良い相手なら口悪くても許すって。蝶田、私らと友達じゃんね?」
「え、えっ?」
「違うん?」
「え、いや! 違くない、と思う」
お、小学生の頃によくあった、都子のド天然距離感縮地ムーブだ。一緒に喋る中にいて、それが何度か続くなら問答無用で友達! を相手にも押し付けるやつだ。
と、都子が蝶田ちゃんを詰めている最中に信号が切り替わり青になった。
「あ、あっ! えとウチ、今日おばあちゃんの誕生日だから早めに帰るね! また月曜日!」
「あ、逃げた」
脱兎のごとくシャカリキ速度で蝶田ちゃんは去っていく。都子からの反応は特になし。ボーッとその後ろ姿を眺めた後、「私らも行こっか」とだけ言った。
横断歩道を渡り切るまでの間、俺と都子の間で会話は無かった。ちょっと気まずい。
「……鹿狩くんち、そっちだっけ」
「ん? うん」
「お父さん元気?」
「? 元気だけど、私の父親と知り合いだったっけ。都子」
「うん、まあ」
意外な接点だ。元々の我が家に父親は不在だったしな。まあ家に呼ぶ機会がありゃ知り合ってても不思議はないか。AVみたいに肉体関係とか持ってたらおもろいな。
「2人の時も一人称私なんだ」
「はん? どゆ意味よ」
「てっきり素の時は俺って言ってるのかと思ってた」
「うーん」
それはマチマチだ。頭の中はずっと俺のままだけど、口に出すのは俺と私どっちもって感じ。どうせそのうちどっちかで慣れるだろうし、わざわざちゃんと棲み分けまでするのもな。
「じゃあ一旦俺で話そっか?」
「なんじゃそりゃ。今から帰るってのに」
「ちょっとくらい雑談してもいいだろ。門限でもあんの?」
「6時までに帰らないとママに怒られる」
「30分あんじゃん。都子の家、そこ曲がったら目と鼻の先だろ。付き合えよ」
「鹿狩くんこそ門限あるんじゃないの?」
「無いよ。最近の親父は放任主義者なんでね」
「へえ。なにそれ、愛想でも尽かされた?」
「なんでやねん。俺の成長に伴い家のルールもアップデートしたってだけだろ」
「鹿狩くんみたいな子が放任されたら道を踏み外しそうなのにね」
「俺にそんなイメージ持ってんの? 君」
心外が過ぎる。どこを取っても模範的で善良な一般市民だと言うのに、そんな危うい子判定されるような所ないでしょ俺。
「てかさ、都子はなんで俺の事鹿狩くんって呼ぶん?」
「はい? 鹿狩じゃん、名前」
「名前てか名字だし、昔は八尋って呼んでたじゃんか」
「……そうだっけ」
「なんで覚えてないんだよ。薄情とかの域じゃないだろもう」
不満をぶつけてみると、ぶつけられた都子の方も不貞腐れたように「ふん」とそっぽを向いた。なんで。
「……あんたが悪いわけじゃないって事は分かってるけど、色々あって、今はあんまりあんたの事好きじゃない」
「え、なにそれ。泣く泣く、そんな事言われたら泣いちゃうよ俺」
えーんと泣き真似するとデコピンされた。
「バカ。……でも、中身は昔とあんまり変わってなかったから良かったよ」
「成長の無いやつだって言いたいのか貴様」
「間違いでは無いなそれ。むしろ昔より少し馬鹿になったよね」
「なってねぇわ舐めんな。あ、てか今思い出したけど、プール行く前のバケツやり返すってやつ、やり返してなかったよな」
「え〜覚えてな〜い」
「嘘つけ! 来年、絶対やり返すからプールな」
「いきなりなに? プール?」
「ん。プール、来年行こうぜ。やり返したいし」
「……まあ、いいけど」
「やたっ」
よし。常々不安に思っていた『都子との間に生まれた溝を埋めれるか問題』は解決出来そうだ。なーんだ、やっぱりツンデレじゃんこいつめ。
「あ、でも私らの他にも何人か連れてくの条件ね」
「? 別にいいけどなんで?」
「言ったと思うけど、私今彼氏いるから。夏休みの予定なんて彼氏と大半埋めるし、その合間にあんたと居て彼氏に見られたら、さ」
「いやなにその心配。あたかも俺が都子の彼氏さんとなんかするかもみたいに言ってるけど」
「まさにそう言ってんだけど」
「有り得ねぇ〜わ。男との間に変な事なんて起きません。ましてやお前の彼氏とか、ちょっかいかけるわけないだろ俺が」
「あんた視点でそうでも私の彼氏視点じゃ分からないでしょ!」
「……ロリコンなん? そいつ」
「同い年相手にロリコンとか言わないから」
それはそうだが、見た目小学生と言われる俺と真っ当に美人やってる都子を天秤に掛けて俺に欲が傾いたらそりゃ将来有望だ。この歳でその手の相手に興奮してたら一生モンですよ。
「あんた自分の事少しは客観視しなよ。無防備すぎなんだよ、色々」
「客観視出来てるよ? めちゃくちゃ可愛いと思ってますとも」
「ならもうちょい異性の目とか気にして???」
「そういう対象になる可愛いとは思ってないもんで」
「……まあ、とにかく。私の彼氏に会うの厳禁だから。あんたの場合」
「えぇー!? な、なんでだよ!! 俺にも紹介しろよ都子の彼氏ー!」
「取られるからヤダ」
「取らねぇっつってんのー!!!」
「あはははっ!」
「なにわろとんねん」
「いや必死すぎだしっ! ……あっ、そろそろ6時なる! もう帰るよ、じゃあねー八尋!」
「彼氏教えろー!」
都子は俺に彼氏を隠匿したまま帰っていった。俺に彼氏を取られるかもだから会わせたくないはおかしいだろ頭。ラブラブやんけ、中学生やなあ。
幸太郎なら、都子の彼氏がどんな奴なのか知ってるだろうか。今まだ付き合いが続いてるかも分からないが、一応後で聞いてみよう。
そんな気持ちを胸に、俺も自転車に乗って懐かしき自分の家への帰路を走った。