※この作品はR-18です。

子供に戻ったと思ったら女体化させられるし女として生きるべきか男のまま生きるべきか分からない俺はスワンプマン   作:千佳のはんぺん

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白幸太郎『幼馴染を名乗る初対面の女①』

 この世界が仮に小説や漫画等の物語だったとしたら、起承転結で言う転が今まさに俺の人生で起こりそうな気がする。

 

 俺の名前は白幸太郎。

 白と書いて『つくも』と読む、ネットで検索かけてもビタ嵌りな検索結果が出て来なさそうな名字を持っているにも関わらず、俺自身は平々凡々とした人間である。ついでに言うと、不登校児である。

 

 中学2年になってクラスが居づらくなり不登校という、お先真っ暗な俺はある日、ゲオに行った帰りにコンビニに赴いた際に事件は起きた。

 

 

 小5の頃に消息を絶った幼馴染の名を騙る、変な女に出会ったのだ。

 

 

 鹿狩八尋、というのがその幼馴染の名前なんだが、男である。間違いない。疑いようはない。俺、あいつの股間見た事あるし。

 

 つまり、八尋はどう天地がひっくり返ろうと「実は女だった」なんて出来事は起こりえないし、何処の馬の骨とも知らない女が急に「俺は八尋なんだ」と言い出した所で、それは絶対に嘘なのだ。

 

 

『もし仮になんだけど。急に知らない女に「俺、お前の幼馴染なんだ!」って言われたら、どう対応する?』

『それなんてエロゲ?』

『エロゲじゃなく現実で起きたとしたらどうする?』

『うち屋上あるし、焼いてかない? って勧める』

『いいっすねぇって返してきたらキツすぎるだろその女』

『クッキー声優向いてるなそいつ』

『淫夢ネタはいいから答えてくれ』

『んなもん2人は幸せなキスして終了だろ』

『当たり前だよなあ?』

『そうだよ(天下無双)』

 

 

 ネットで出来た友達はアテにならなかったので無視し、俺はその女から送られてきたLINEに目を通す。

 

 

『こんばんは! さっきの話、いきなりで信じられないと思うけど俺まじで鹿狩八尋その人なんだ。話をすれば証明は出来るから、この土日にでも会わないか?』

 

 

 昨日の19時に送られてきたメッセージである。

 うーむ、文面上は至って普通。第三者が騙ってるようにも見えなくもないが、本人だとしてもこう送ってくるんだろうなって感じの文章。

 

 

『無理やったらそれでも別に全然いいし』

 

 

 21時くらいに送られてきた追伸。そんで、その後に『風呂上がり』って文章と共に何故か送られてきた件の女のピースしてる写真。顔は映ってないものの小さくて細い指が可愛らしい。保存した。

 

 それはそれとして、行動は一貫して俺の知る鹿狩のソレと乖離してはいない。

 

 もう1人の幼馴染である竜胆都子から『あいつ女になってた』なんていう話を聞いたが、でもこの女は女装した男には見えない。そして、鹿狩の面影は存在しない。

 都子の話と結びつけるには、些か違和感がある。

 

 

「ふーむ……」

 

 

 送られてきた自撮りを開き、部屋の様子を見てみる。

 

 壁の部分は殺風景だ。昔訪れたアイツの部屋にはワンピースの旗や遊戯王のポスターなんかが飾ってあった気がするが、それらは見当たらない。掛物自体が無くて、白い本来の壁が露出していた。

 

 ここからの位置から見えるのはあと机と床、あと一つの本棚ぐらいだ。本棚にはカラフルな漫画とDVDがあった。でも、それと一緒にメイク用品っぽいものがいくつか見える。

 

 机の上にも置き鏡やメイクで使いそうな道具が固めて置いてあって、あとよく分からない手のオブジェがあった。何あれ? グロ。趣味悪いな。

 

 

 ……途中まで女の子の部屋って感じだったけど、途中からよく分からなくなったぞ。

 

 でも、確実に鹿狩の部屋って感じではない。

 あいつの部屋にしては"無駄が少ない"。もっと漫画は雑多に床に転がってて、その上にジュースとかあるべきだし、ゲームのコードとかも床にたこ足配線されているべきだし、昔おもちゃ屋で買ったエアガンとかも大量に箱に積み入れてたはずだ。

 

 後片付けをしない、手に入れた金をすぐに目に見えるものに使うミーハーなアイツが、この程度の物量の部屋で生活できるわけが無い。

 

 

 次に、撮影者本人を見る。

 

 

 鏡越し、顔面の位置に丁度スマホとそれを持つ手が重なっており、ピースはもう1つの手を頭の上に逆さ向きに設置している。素っ頓狂な姿だ、そこは鹿狩っぽさがある。

 

 

「貧乳だなぁ」

 

 

 腕を上にあげて、胸を張る感じのポーズにはなってるのに僅かな膨らみしか無いのか。他の皆は結構発育してた気するけど。

 

 

「……てか、男にこんな写真送るとか、ビッチなんかこいつ」

 

 

 肌の露出が多い。と言っても部屋着姿なのだが、上はダボダボのTシャツを着ていて、下は多分パンツだ。本体はTシャツで隠れて見えないが、Tシャツから直に白い太ももが生えている。

 

 エロ自撮りだろもうこれ。

 

 ……。

 

 いや、でも待て。鹿狩じゃなかったとして、普通の女子だとしてもこの人ウチと同じ学校だし。同じ学年って事も有り得るよな。そんな相手でっていうのは……人間として大切な物を失う覚悟がいる気がする。

 

 誰かよく分からないし。そんな相手を使うのは、ちょっと違うよな。

 

 ……絶対ダメだ。やめよう。

 

 

 

 ()()()()()()()()()()

 

 

 

 シャワーを浴びて身を清めた後、俺は行きつけのラーメン屋に向かった。行きつけと言っても去年できたばかりの店だが、チャーシューがブリブリにデカくてお気に入りである。

 

 

「へいらっしゃ〜い。1名様で良かったっすか? 食券購入お願いしまぁす!!」

「うっすうっす」

 

 

 聞き慣れた店主さんのセリフに頷きながら食券を購入する。お決まりのメニュー『漢気こってりラーメン』の大盛、ついでにバター乗せだ。

 

 

「これでお願いします。あとこれ使います」

「無料トッピング券ですね。どれにしやす?」

「卵でお願いします」

「卵ですね! 漢気こってりバター卵トッピングー!!!」

「あいよーー!!!!」

「これ、次回使える無料トッピング券ですー!」

 

 

 毎度貰えるトッピング券で更にカロリーに発破をかけ、腹の容量超過ギリギリまで詰め込む。

 暇な不登校出不精生活における食事面の対策である。1度部屋にこもると出るのめんどいので空腹になると死活問題になるからね。

 

 さて、店主さんの趣味で毎週数冊補充される週刊誌を読もう。そう思い、本棚に向かう。

 

 

「えっ」

 

 

 本棚のすぐ前のカウンターに珍しく同年代くらいの女が座っていた。

 よく見るとそいつは、昨日俺に『自分は鹿狩八尋だ』と主張した女に違いなかった。

 

 キャップを被っていたし、格好も私服だし、何より体が小さいから隣に座る大柄肥満体型な客に隠れて気付かなかった。

 

 なんでこんな所に……?

 

 

「ずるっ、ずぞぞぞぞっ!!!」

 

 

 めっちゃ吸引していてギョッとした。男らしく啜ってる。見た目的にちゅるちゅるって控えめに啜るか、そもそも啜らずに食べるもんだと思ってたから意外だ。

 

 週刊誌を手にし、空いている席が他に無かったので肥満体型の人の隣に座る。この人がラーメンを食べ終えたら2人を隔てる壁がなくなってしまうが、まあ相手から話しかけられることはないだろう。

 

 ……ちょっと気まずいな。

 

 

「嬢ちゃん最近よく来るけどラーメン好きなんかい?」

 

 

 お、隣の大柄おじさんが話し掛けた。

 

 

「……そいや先週も隣でしたね。ここのラーメンばり美味いんで大好きっす」

「太麺だしチャーシュー厚いのによく完食できるよなあ。毎度感心して見てるよ」

「ずるるっ。……ん、まあ確かに胃は突っ張るっすけど、幸せって感じなんで全然おーけーっすね」

「ははっ! そんなんでよく太らないなあ!」

「わ、ハラスメントですよ! 女の子にそういう事言うのよくないっすよ!!」

「そうだよな、ごめんごめん。また次タイミングが被ったらその時一杯奢ったるで許してくれ」

「え!? いいんすか!?」

「いいとも。こんな男臭い店に来る女客は大切にしていかんと。味岡さん、ご馳走さんです!」

「はーいありがとうございまぁす!!」

 

 

 若干のトークをした後に俺の隣の肥満男性は店を出ていった。

 

 

「はい、漢気こってりバター卵トッピングね」

「あ、ざっす」

 

 

 2人を隔てる壁が無くなった。やばい! と思った所でラーメンが来てしまった。極力存在がバレないよう小声で感謝を述べつつ、体を少し傾けてあちらから顔を見えないようにする。

 

 

「ふぅ」

 

 

 背後で件の女が一息つく音がした。多分まだ完食していない、小休憩を取るのだろう。気にせず俺はラーメンに手をつける。チャーシューにかぶりつく、濃厚美味し。

 

 

「ずるるっ」

 

 

 また麺を啜る音がし始めた。食事に意識が向いたのならこちらが視界に入る危険性も下がる。普通の姿勢を取り、俺も麺を啜り始めた。

 

 

「んぐ、んぐ。……っ。ずるるるる」

 

 

 ラーメンを食しながら横目で女を観察する。

 小さい口で麺を啜っては、すぐパンパンに頬を膨らませて咀嚼し食べ物を胃に詰め込んでいく。その所作は丁寧で、食事に対するリスペクトみたいなものを感じる。

 

 鹿狩は元々食べ方があまり綺麗な方では無い、親が放任主義なせいか物はよくこぼすし拭けばセーフだと思ってるタイプだったはずだ。

 

 ……俺の知る鹿狩ならしない食べ方だ。鹿狩のフリをするのだとしたらクオリティが酷い。

 

 

「……?」

「っ!?」

 

 

 こちらの視線に気付いたのか、女はこちらを見てきた。

 耳にかけていた髪が落ちそうになるのを指で抑える、その一瞬の視界の遮りが効果を発したのか、慌てて顔を逸らした俺の正体が何者なのかは割れなかったようだ。

 

 

「ずるるっ」

 

 

 また麺を啜り始めたのを感知し胸を撫で下ろす。間一髪だった……。

 

 同じような事が起きないよう、顔は若干女とは逆の店の出入口の方を向くように意識しつつ。出来るだけ早く店を退店出来るように早食いを意識する。

 

 ボリュームのある太麺は勢いよく啜れない。だが条件は相手も同じだし、相手の方が口が小さくて一気に詰め込める容量が少ないのだから、ペース配分を考えずに詰め込んでいけばこちら側が有利だ。

 

 ただ淡々と啜る。ずるずる啜る。お冷を挟むこと無く、タイムアタックが如き速度で箸を働かせる。

 

 

「……幸太郎。もう少し落ち着いて食べたら?」

「っ!? げほっ、げほっ!!!」

 

 

 頭の後ろから掛けられた声に驚きむせてしまった。飲み込んだ後で良かった。お冷を飲んで何とか呼吸を整える。

 

 いつの間にか、件の女に存在を気付かれていた。気付いていないと思っていたのは俺だけだったらしい。

 

 

「大丈夫?」

「大丈夫、す。てか、いつから気付いてたんすか」

「店入った時から」

「最初からやんけ」

「ん。話し掛けるタイミング伺ってたらなんか爆食いし始めたから引いた」

「あはは……」

 

 

 感情の起伏が乏しそうな声で、ボーッとした表情でポンポンと話し掛けてくる。

 昨日会った時は何故か興奮してたせいで制服着た小学生にしか見えなかったが、普段はこうなのか? 眠たげなのか、具合が悪いのだろうか。

 

 

「ずるるっ」

「……ずるっ」

 

 

 厳かに麺を啜り始めたので、それに倣って俺も啜る。なんか、気まずいよやっぱり。いや、勝手に気まずさを感じるようなことをしたのは俺であって、そこに関しては俺が悪いんだけど。

 

 でも、いきなりこっちに変な事言ってきたのは相手だし。それにあんな写真送ってきたら、そりゃ健全な日本男児としては無視出来ないと言いますか……。

 

 

「ふぅ。ごちそうさまでした」

「っ!? くっ、ご馳走様っした」

 

 

 自分のペースで食べていたのに女と全くの同タイミングで食べ終えてしまった。いや違う、タイミングを見図られていた。途中箸動いてなかったもん相手。絶対僅かな時間調整アレで行われてたわ。

 

 

「ねね、このあと暇?」

「……暇、すけど」

「家行ってもいい?」

「ぶふっ!?」

 

 

 飲みかけていた水を吹きかけてしまった。顔に水を吹きかけられた女は手拭きで顔を吹いた後、不快そうな顔で睨んできた。

 

 

「……はあ?」

「あーごごごごめん! まじでごめん!! で、でも家!?」

「なんだよ。なんでそんな驚くん? 今更だろ、私……あいや、お前が相手の時は俺の方がいいのか」

「ど、どういう意味っすか」

「意味って? ……あ、もしかしてまだ俺が鹿狩八尋って話疑ってる?」

「そ、そりゃな」

 

 

 逆になんで受け入れてると思ってるんだ。それらしい所全然見れてないのに。

 

 

「そっかぁ、なるほど。じゃあ余計に幸太郎んちに突撃しなかんくなったね」

「余計に突撃したらかんくなったの間違いではないんすか?」

「いんや? ここはゆっくりしっぽり寛げる所が最適解だと俺は導き出したよ」

「ゆっくりしっぽり、すか?」

「うんむ。どうせ中学生の財力じゃ今から行けてもファミレスが関の山。誰かに会う可能性たかしくん過ぎるしね」

「は、はあ」

 

 

 逆に、よく知りもしない男女が片方の家に行く方が色々と問題あるというか、意識してしまうんだけど。この人にはそういう感覚無いんかな。

 

 

「なにさ。どこ見てんの」

「っ!? どこも見てねえっす!」

「吐くねえ、嘘。今私の、……また私って言っちった。俺の足見てたろ」

「見てない見てない!」

「無理あるだろ。流石に足だったら男でも見られる感じわかるだろ。丸わかりですからね」

「し、仕方ないだろ!? 今から家来るって、そんな服やし……」

 

 

 今の件女は昨日の自撮りと似たような格好をしていた。具体的には、デカめの黒いプリントTシャツにすごく短いズボンを履いてるから、下が何も履いてないように見えるのだ。

 ……短いズボン、履いてるよね? 本当にTシャツとパンツだけってことは無いよね。

 

 羽織物を着てるしスニーカーとキャップがあるからまだラフな服装とも言えるけど、それらがなかったら完全に部屋着だ。視線も誘導されるだろう。

 

 

「なんつーか、男って思ったより素直だよな」

「何の話すか……?」

「いんやぁ?」

 

 

 件女は自分の太ももに手を置いて握り始めた。

 細い指に締め付けられた太ももの肉が沈み込み、余った部分が柔らかそうに膨らんでいる。

 見た目全体の幼さに比べ、少し下半身が肉付き気味でムチッとしてるから、そんな事をされたら、エロくて目が引っ張られる。不可抗力だ。

 

 

「単純だなー」

 

 

 彼女はキャッキャと高い声で笑っていた。馬鹿にされている、煽られている。

 

 

「いい加減食い終わった事だし店出ようぜ」

「あ、あぁ」

 

 

 件女に手を掴まれ、強引に店の外まで引っ張られていく。そして、駐輪場まで引きずられて自転車に跨った彼女に俺は追求を辞さなかった。

 

 

「で、今日お前ん家行ってもいいの? よくなさげ?」

「え! えー……あんまり知らない相手を自宅に入れるのは、ちょっと」

「んだと? まだ信じてないな貴様! 待っておれ」

 

 

 自転車に跨っていたら前輪の上にガシャンと足を乗っけてきた。

 

 

「ここで俺が鹿狩八尋である証明をすれば家に入れてくれるよな?」

「証明?」

「おー。当人間でしか分からないことを言う。簡潔に本人だと証明出来る」

「なるほどね」

 

 

 そりゃあ、確かに簡単に本人か偽物か判別出来る方法ではあるけど。

 

 

「鹿狩八尋の誕生日は7月7日でラッキーの日! 竜胆都子は8月31日で夏休み最後の日! で、幸太郎が6月14日で何でもない日!」

「正解、だけど微妙に悪口なんだよな」

「へへっ!」

「……うん。それ、本人じゃなくても知ってる情報だね」

 

 

 言いたいことは分かってた。でもそこで誕生日を出すのはパンチが弱い。

 

 

「じゃあ……俺が幸太郎と出会ったのは小一。確か、何人かのグループで遊んだ日にマリオのゲームかなんかで意気投合して一緒に遊び始めたんだよな」

「DSのな。でもそれも知り合いなら知ってる人多いだろ」

「多いかなあ? ……あ、そのグループに佐藤も居たな。佐藤も同じゲームやってて一緒に遊んでたけど、お前とウマが合わなくてよく喧嘩してて」

「……」

「ゲームとか遊びの中で終わればよかったんだけど、小2に上がった時にあいつ、都子の事いじめ始めたんだよな。それをお前が殴って止めたんだっけ? そこから都子とも付き合いが始まったよね」

「あったな。でもさ、そんな内容だと、赤の他人にしては解像度高いって程度に落ち着くんじゃないか?」

「む、意外とむずいな……」

「あのさ……」

 

 

 俺が言葉を繋げる前に彼女は深いため息を吐いて、口元に指を立ててきた。シーってするポーズだ。

 

 

「鹿狩八尋"だけ"が知ってる話を出せるとしたらそいつは紛れもなく本人だろうけど、本人しか知らない話を他人に聞かせたところで他人にそいつ本人と思わせる事は出来ない。って言いたいんやろ」

「あぁ、まあそうだね」

「鹿狩八尋が他人と共有している話も、2人きりの体験でなければ他人から又聞き出来る。じゃあ2人きりの体験を話すべきなんやろうけど……」

「それだって、目撃者が居ないとは断定出来ないし本人らが誰かに話したなんて事もある。自分で発信する限り、偽物を否定する材料にはなり得ないだろ」

 

 

 誰かに成り代わるならその相手の情報を集めるのは当たり前の事だし、幼馴染周りの話なんて抑えてて当然な要点だろう。

 まだ件女は鹿狩八尋の情報を持っているだけ。本人と断定できる土台は出来てない。それで信じろと言われても無理な話。当然だ。

 

 ……大体、どこからどう見ても赤の他人だし。成り代わるにしても限度がある、少しは本人に似せる努力をしてほしいものだ。じゃなきゃこいつのしてる事は冒涜だろ。今ここに居ない人間を馬鹿にしてる。

 

 

「じゃあお前の方から質問を投げてくれよ」

「え?」

「お前の出すお題に俺が鹿狩八尋として答える。そうした方が本人だって思えるだろ」

「それは……」

「言い淀むなよ〜。実際そうだろ。ほら、質問カモンウォーグレイモン」

「デジモン好きなん?」

「いや? ぼくらのウォーゲームは好き」

「なんだそれ」

 

 

 よく分からなかったけど、鹿狩もよく分からない事言う奴だった。再現性が高いのか、そこだけは気質的に同じなのかもしれない。

 

 

「あ、でも今日は少し肌寒いし、魔女裁判は屋内でやろうぜ」

「え、いやいや。家に入れるかどうかを考えるために素性を詮索してんのに、今入れたら順番が前後する」

「お前ん家に行こうとか言ってるわけじゃないやろ」

「ん? じゃあどこで?」

「俺ん家に来りゃいい」

「……い?」

 

 

 何を、言っているんだ? 俺、今からこの女の子の家に行くのか?

 

 ……いやいや。何を動揺してるんだ。女の子の家に行くのは初めてじゃない、都子の家には何度もお邪魔してるだろ。

 幼馴染と見知らぬ女の子じゃ話違うよ〜……。

 

 

「来る? 俺ん家」

「……」

「来ない?」

 

 

 行くわけないだろ。確かに少し、というか大分興味はそそられたけど、それはそれ。危険は犯さない主義なんだ、よく知りもしない相手の穴蔵に飛び込むのはキャラじゃない。

 

 俺は丁重に断りを入れて、彼女を置いてペダルを踏む足に力を入れるのであった。

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