子供に戻ったと思ったら女体化させられるし女として生きるべきか男のまま生きるべきか分からない俺はスワンプマン 作:千佳のはんぺん
やばみだ。中学生相手に本気の逆ギレをカマしてしまった。そんな気にする事をされた訳でもなし。なのに幸太郎が帰ったあと枕を涙で湿られてしまったし。
どうしたんだ俺、感受性豊かすぎるぞ。
次に会った時に上手い具合にまた話が出来れば良いが。直接家に殴り込みに行くか? 余計に溝が深まるか。
月曜の朝。学校に行く荷物だけ鞄に突っ込んで着替えもベッドの上にバサバサっと放り、バスタオルのみ持って風呂場へ向かう。
「はぁ……」
ごわごわになった髪をクシで梳かす。ブチブチ音が鳴って少し痛い。クシを置き、浴場に入りシャワーで温水を出して頭からぶっかける。
「めんどくせぇー」
子供はやっぱり面倒臭い。感情が鬱陶しい。すぐ怒るし、すぐ仲間意識を持つし、すぐ敵意を向けてくる。
正直、若さが俺には無いのでそのテンション感について行く事は無理だ。毎日疲れる、完全週休4日ぐらいないとまじで廃人になりそうだ。
「やばいなあ」
金曜の帰りにカラオケで俺は菊池さんに恋愛相談のようなものを受けた。実状は恋愛相談にも満たない、愚痴を聞いて聞き流して当たり障りのない事を言ったってだけなのだが。
それがどういうわけか、俺が口にしたかる〜い言葉を本気のアドバイスに捉えた菊池さんが言われた事を彼氏に実行したらしく、少し仲が改善されたらしい。
そこに関してはよかったね、で良いのだが。『またアドバイス貰ってもいい? 実は……』などと打たれたまあまあの長文の頭部分が見えた時、俺は内容を読まずにLINEを閉じた。
「さっさとセックスでもすりゃいいのに」
こちとら、中三の修学旅行に控えている幼馴染達の死亡イベントを避ける為の行動を水面下に行わなけりゃならんのに。作戦を考えるのに必要な時間を他事に費やしたくないよ〜。
その他諸々、人間関係の構築と維持に脳みそフル回転させてる現状で、あれやあれやと新たな問題を抱え込む羽目になったらたまらん。どうにか他の連中にアドバイザー役を押し付けないと。
「……髪、伸びたな」
鏡に映った自分の髪が伸びた事になんか意識が向いた。
そりゃ生きてたら髪が伸びるのは当たり前なんだが、人が作った体も成長してるんだなあと感心してしまった。
俺、なんか市松人形みたいだな。気持ちわりぃ。漠然とそんな事を考えた。
「ふぃー」
ゆっくり湯船で温まり、気力も体力も全回復! やっぱシャワーだけじゃあかんぜよ。
「ちゅっちゅっちゅーぷりぷりり〜」
「八尋か。おはよう」
「うわっ、ノリノリなとこ見られた」
浴室から出て体を拭いて、うんちの歌を歌いながら食料のストックが入っている棚を物色していたら親父がキッチンにやってきた。
親父は俺の背後に立ち、背中越しに手を伸ばす。ランチパックを二つ、野菜多めのサンドイッチを取った親父はそれを机の上に置き、テレビを点けてからパックのコーヒーにお湯を注いだ。
「寒くないんか、お前」
カレーうどんか味噌ラーメンかで悩んでいたら親父が話しかけてきた。
「まだ10月だけど」
「裸やったら十分肌寒くなる時期やと思うけどな」
「そう? あんま寒さ感じんけどね」
「風邪引くなよ」
「あーい」
ケトルからお湯を出しカップ麺に注ぎ入れる。トポトポトポトポ、可愛い音を立てて上がっていくお湯の水位を眺める。
「……学校では上手くやれているか?」
「んー? やれてるよ、友達おるしね」
「そうか、よかったな。変な事に巻き込まれてたりは?」
「変な事? 例えば?」
「……いや、いい。その友達、大切にしろよ」
「? 死の直前じゃん、セリフ。どしたの」
エイズでも貰ってきたんやろか。まるで娘に接する父親みたいな雰囲気を出してくるのも珍しいし、本当に何かあったのかもな。
まあ、こっちはこっちで色々余裕のない人生を送っている只中なので首を突っ込む気は無いが。
目に見えるくらいの事が起きない限りは不干渉でいよう。親父の性格的に、俺からお節介を受けるのとか嫌そうだし。
「じゃ、お仕事頑張りなね〜」
お湯を入れたカップ麺を持って部屋に戻ろうと声を掛けるも、親父からの反応は無かった。チラッと表情を伺ってみようともしたがここからは見えない。
なんかシリアスっぽい空気が流れてて嫌だったので足早に退散した。
「おはよー」「おはよ!」
廊下で遭遇した蝶田ちゃんと二人で教室に居た面々と挨拶を交わす。自分の席に鞄だけ置き、いつもの女子グループの集まりの元へ向かう。
「おはよー! 八尋ちゃん! 花ちゃん! 見てみて、ネイル変えてんだー!」
「わ! すごい小鞠ちゃん、可愛い〜!」
「ほんとだ、月とかキラキラとか。夜? って感じするね!」
「でしょ〜! 八尋ちゃんをイメージしたんだー!」
「えっ、私?」
「うん!」
俺をイメージしたネイルなんだ。深い紺色にラメラメを乗せて、月やら星々やらを象った装飾も付いている。
綺麗だな〜。これが俺のイメージなんだ、相当好かれてんじゃん。あったけぇな、心。
「で、こっちのが花ちゃんコンセプト!」
「えっ、ウチも!? わ〜、かわいい〜!!」
なんと、左手にも同じように新たなネイルが爪を飾っていた。こちらは明るい緑や橙色を基調とした色に花弁みたいな装飾が乗っていた。
なんとなく春っぽい気がする。なるほど、これは確かに蝶田ちゃんっぽい。可愛らしいね。
「どうしたの? めっちゃおしゃんじゃん」
「テスト終わったしこれから合唱コンでしょ? 気合いの入れ直しに、まだ二人イメージのネイル塗った事ないなって思ったからやってみたの! 紗理奈ちゃんと都子ちゃんをイメージした奴は前にやったから、順番にね。友情の証っ!」
「ゆ、友情!」
蝶田ちゃんが隣で震えながら喜んでいる。挙動の一つ一つが本当に嬉しそう。小動物みたいだ。
頭を撫でたくなる。俺の方が小さいから絶対撫でないけど、バカにしてるって思われそうだし。
「よっ、かーがりっ」
「わっ」
脇から菊池さんに肘を小突かれた。すごい笑顔だ、上機嫌さが暴力的に伝わってくる。半年ぶりに有給取ってスイパラ来たOLみたい。
「どしたの〜菊池さん。機嫌よさげじゃん?」
「ふふんっ! ふふっ」
キャラ変わってますやん。頬を手でギュッとして喜ぶタイプじゃないやろ君。
とっても話を聞いてほしそうな顔をしていたので、「なにかあったの〜?」とこの期に及んでとぼけて聞いてみると、菊池さんは俺の耳元に顔を近づけてウィスパーボイスで囁いてきた。
「海彦の事、ありがとね」
「あぁ、それね。あはは、よかったね菊池さん」
「うんっ」
分かりきってたけども、今朝だってその事について数分間だけ脳のリソース割いてたし。
しかし、人前でそんな大胆な行動を取るのなら普通の声量で話してもいいのでは。都子や朔月さん辺りなら共有してる話だろうに。
てか、こんな事で随分と菊池さんの中で俺の株上がったっぽい。
単純に、「好きな相手に嫌われないか不安で、だから距離感を測れないでいる」だけのモジモジしたシャイなカップル。プラス方面で変わった行動を起こせば距離が縮まるのは当たり前なのにな。
偶然俺がアドバイスをして、偶然菊池さんがそれを聞いただけ。
運命やなあ、人の繋がりとかそういうのって。エモいわ。
「なに、今度は紗理奈と仲良くなったの? 鹿狩くん」
都子がスマホをいじりながらそう言った。今度はって。逆に今まで仲良くなかったみたいな言い方してくるやん。普通に以前から友達やってますけど。
「へへ〜都子! 鹿狩は恩人なんだ、仲良しどころか大仲良しよ!」
「へー? 何があったか知らんけど随分良い事があったんだね〜?」
「え、なになに? 紗理奈ちゃんと八尋ちゃん、二人で何かするの?」
「秘密〜。アタシ、鹿狩の事見直したしこれからは大先生って呼ぶよ! 鹿狩大先生!!」
「絶妙にダサいから嫌だなーそれ」
「じゃあー……ていうか、あだ名を考えるのもいいけどいつまでも名字呼びは他人行儀だし名前で呼ぶわ。いいよね? 八尋」
「え、う、うん」
「アタシの事も紗理奈って名前で呼んでよ! アタシら親友な!」
「え、ずるい! じゃあ私の事も小鞠って呼んで! はい、八尋ちゃん。呼んでー!」
「こ、小鞠」
「なあに? 八尋ちゃんっ」
名前を呼べと言われたから呼んだのだが、なあにと言われても困る……なんて考えていたら、横から頬に人差し指を押し付けられる。ぷに〜って。痛くないけどびっくりした。
「アタシの事も呼べよー? ほら!」
「紗理奈……?」
「声が小さいぞー!」
「うりゅりゅりゅりゅぶぶむにゅにゅにゅっ!?」
菊池さんに両頬を手で押しつぶされ、そのまま高速で上下に頬ごとシェイクされる。寄せられた頬肉が口の形を変えるからまともな言葉を言えない。
「あははっ! やめなよ紗理奈、鹿狩くん顔がすごいことなってるって!」
「みゅむむむりゅりゅりゅっ!!」
「だって気持ちいいんだもんこの子のほっぺ! 癖になりそうだわ〜このこのっ!」
「八尋ちゃんほっぺもったりしてるよねぇ〜。えいっ!」
「むぅー!?」
鼻の下と口の下の柔らかい所同士を摘まれて口が開けなくなる。
「むぅぅ、ぅ離せーい!!」
2人の手を何とか力ずくで離させる。その様子を見て爆笑している3人。そしてすぐに頭を撫でられたり顎の下を撫でられたりと動物みたいな扱いを受け、またガーッと怒ってやった。
「私の顔で遊びやがってぇ!」
「あはははっ。いいじゃんいいじゃん、可愛かったよ? パニクってる時の鹿狩くん」
「サディストめ……」
「でも本当、動きがわちゃわちゃするから弄りがいがあるよな〜八尋は!」
「それ、度を超えたらいじめだからね!?」
「度を越してなんかないでしょー? 嫌って言ったらやめるしー」
「うぅー! うひゃっ!?」
威嚇のつもりで睨んだら朔月さんに脇腹を人差し指で突かれた。くすぐったくて変な声を上げてしまうと、また笑われた。
「なろー! 仕返しじゃ!」
「わっ! あははっ、やめって! 八尋ちゃんっ!」
「お、ちびっ子同士のバトルだ」
「あんたにもじゃー!」
「わっ!? ちょっ、アタシそーゆーの弱いからっ! ちょっとホントにっ、あはっ! わひゃひゃっ」
自分はされないだろうとタカくくっていた朔月さん、菊池さんの脇もくすぐってやる。特に菊池さんのリアクションは凄まじく、猫の鳴き声みたいになってるのが面白くてそっちに集中していたら都子も菊池さんをくすぐり始めた。
「やめっ、て! 都子! 八尋ぉ! 2人ともっ、タンマっ! 見てないで助けろよ小鞠〜〜!!」
朔月さんはくすぐられて笑いながら頭を振っている菊池さんを見て笑い続けている。他のクラスメートの目が気になったが、しかし今は報復が重要です。俺は一切手を緩めず菊池さんをくすぐり続けた。
「みんな、テストどうだった!?」
放課後。テスト返しを終え、各々が結果を確認し合い口々と戦果やら後悔やらを語り合う中、俺にも例を違わずテスト結果を語り合う流れが来た。
部活の用意をしている都子。その都子の元に俺と朔月さん、菊池さん、蝶田ちゃんが集まり雑談していた。
その話を切り出したのは朔月さんだった。
「別にいつも通り」
「アタシも。いや、凡ミスしたから理科が若干点低かったな、92点」
都子と菊池さんは特に気にするような成績下降は無かったようだ。2人ともアッサリとしている。てか凡ミスして92点? なにそれ、普段は基本満点取ってんの? 化け物じゃん。
「ウチは、理科と社会が予想通り……グロかった」
「えぇー! 何点だったの花ちゃん!」
「理科が26点。社会は……」
「社会は?」
「……」
蝶田ちゃんは黙りこくってしまった。でも視界の端に見えた。7点、だ。違う意味で化け物じゃん。
「へへ……小鞠ちゃんとかがりんは?」
「私は社会が18点! うわーんお父さんに怒られるよー!」
「そっか、ドンマイ……」
励ましてる側なのに蝶田ちゃん、目が死んじゃってる。そうだよな、怒られるどころの騒ぎじゃないもんな。蝶田ちゃんの場合。
「うぅ……八尋ちゃんは?」
「えーと。平均、70点くらい?」
「平均じゃわかんないよー!」
「そーだそーだ、ズルするな〜八尋〜」
「全部大体同じくらいの点数だったから伝え方として適切です〜」
そう言い返すと、都子がいの一番に「たしかに」と同意してくれたのでその場は丸く収まった。
実は漢字間違えすぎて俺も社会38点なのだが、他は軒並み同じランク帯だったので嘘では無いよな。うん。
「って、かがりん頭良いって自分で言ってなかった?」
「言ってないよ???」
「うそー! 言ってたよ!」
「頭良いだろー??? 70点やぞ平均。7割はマジョリティです!」
「頭良いと言うには無理があるよ八尋ちゃん……」
「んなっ!」
「良くも悪くも普通だね」
「可も不可もないって感じだな」
最後まで発表を温められたせいで口々に攻撃を受ける。痛い。特に最後の2名、都子と菊池さんの言葉が痛かった。
テスト結果を語り合い、出題された問題を出し合って答え合わせしたりしながら帰り支度を整え教室を出ようと歩き出す。
「ちょっと、あなた達!」
正しく真っ直ぐに教室を出ようとゾロゾロ歩いていたら、クラス委員長である長谷川瞳美に呼び止められた。
なんだろう? 服装指導するにしても、5人一気にってのは流石に無謀だし違うよな。じゃあ、授業中の私語や居眠りについて何か言われるのかしら。
菊池さんが1歩前に出て委員長さんの正面に立つ。
「なんか用? 長谷川さん」
「なんか用、じゃないでしょう。さっき言いましたよね。合唱コンまで残り1週間しかないんだから、放課後はみんなで通し練習するって!」
「みんなで? 何人か帰ってんじゃん」
「……あなた達が参加してくれたら、みんな参加してくれるでしょ。目立つ人らに堂々とサボられちゃ困るの」
「は? なにそれ関係な。他の奴らが帰ってもいいならアタシらも参加する義理ないだろ」
「勝手にみんなの代表みたいに言われても困るし」
「てかまだ強制みたいな方式取ろうとしてんだ。人に物頼む態度から学べば?」
菊池さん、朔月さん、都子の合わせ技が委員長さんの肉体を貫く。鮮やかなまでの包囲爆撃。すごいな、メガガルーラと同じギミックで委員長さんのダメージが累積してるわ。
「てか、授業の時間使って練習してるのにそれ以上時間使う必要あるの? ウチらにもやる事あるのに、合唱コンってそういうのをほったらかしてでも取り組まなきゃいけないこと?」
あ、すごい。蝶田ちゃんも委員長さんに火を放ってる。味方が圧倒的強者側だもん、そりゃ気も大きくなっちゃうよね。
「少しだけでもいいから」「こっちは少しの時間も惜しいんですけど?」
「だ、だから」
「大体、たかが合唱にどんだけマジになってんのって。あんただけでしょ、なりふり構わず必死な奴なんて」
菊池さん、都子の両名に挟まれ、萎縮する委員長さん。いつの間にか、退路を絶たれてこの場から離れることも出来なくなった委員長さんが下を向く。
「用無いならもう行っていい? 練習遅れそうなんですけど」
「ほら、退けよ」
菊池さんに肩を押され、よろけた委員長さんは尻もちをついた。その様子に、菊池さんと朔月さんと蝶田ちゃんは笑い、少し遅れて都子も笑った。
女子、怖ぁ。
今まで俺は光の部分しか見てこなかったのかな、かつて男だった俺が恐怖していた冷酷無情な女子の姿が目の前に広がっていたよ。怖すぎて泣きそう。
ちなみに俺も、一応弾けるように笑ってはいた。1人だけ笑わず見ていたら周りからノリ悪いとか言われそうだから。そんな凡ミスで居場所を失いたく無いのでね。
「じゃ、そういう事だから退いてくんない? そこにいると通れないんだけど」
迂回して出ればいいのだけど、迂回する気など全員サラサラ無かったみたい。みーんな腕組んじゃって、これじゃまるで嫌味ないじめっ子だ。
「……どうして協力してくれないの。私が何かした?」
委員長さんは立ち上がり、退く気なんかサラサラないぞとでも言うように菊池さんを正面に捉え睨んだ。
「なんのつもり? そこ退けって」
「退かないわよ。あなた達、いつも好き勝手してるんだからたまには言う事聞いてよ」
「知らねぇ〜し。てか、アタシらお前の事嫌いだから尚更言う事聞かないっつの」
「なんで」「お前、自分の思うとおりにならないとすぐ人に大袈裟に陰口言うだろ」
「そのせいで先生達に誤解されて、馬鹿な男どもにビッチ呼ばわりされた小鞠にまだ謝ってもないしね」
都子の言葉に委員長さんは目を伏せた。え、そんな過去編があったんですか。知らんかった、どうりで人懐っこい朔月さんが委員長さんにだけは冷たい顔をするわけだ。
「それは、だって私本当に見たんだもん。朔月さん、男子と一緒にトイレから!」「黙ってろよブス!」
菊池さんが大声で委員長さんの言葉を遮り、都子は朔月さんの身を抱く。
「お前、ほんっと少しくらい空気読めよ。ウザイんだよ」
「本当の事を言って何が悪いの」
「言いふらして、の間違いでしょ」
「長谷川さん、小鞠ちゃんに謝った方がいいよ。今のは酷すぎ」
「私、悪いことしてないでしょ!? 変な事をしてたのは朔月さんで私は」「黙ってろっつってんの。点数稼ぎの偽善で他人巻き込むなよブス!」
「長谷川さんは悪いことしてるよ。全然正しくないから。そうだよね? かがりん」
うわっ、うわあ。うわあー! こっち飛んできちゃったよ〜。
とは言っても、委員長さんへの攻撃に加担するのは全然いい。ノンデリなのは事実だし、喋り方なのか思想なのか分かんないけど琴線に当たってイライラするし。
多分、彼女は脳みそが他の人よりツルッツルだから頭悪いってだけ。だから彼女なりに委員長らしさを頑張ってるのは分かる。そこは可哀想だ。
それに、この状況も胸糞悪いというか。だって完全いじめの構図やもんな。委員長さんに意見するなら個人的な場面で言いたかった所だ。
「かがりん? ねえ、かがりんもウチらと同じ意見だよね」
「……ああ、同じ意見だよ。委員長さん、少しウザすぎるわ。皆に嫌われるのも納得」
「わた、し、嫌われてなんかな……ぅ、わああああああっ!! なあああぁぁぁぁっ!!!」
泣き出してしまった。委員長さん、もうギャン泣きだ。悲恋映画ばりに大泣きしてる。
そして、それに反して周りの連中はみーんな大笑いだ。朔月さんや菊池さん、蝶田ちゃんに都子。
それだけじゃなく、近くで談笑してた男子も大笑いしながら「泣き顔ブッサ!」「動物みてぇだな!」だの言い放ってるし、女子もヒソヒソ笑ったり陰口言ったりして完全に委員長さんにとってアウェイな場が出来上がっていた。
はてさて、当の俺はというと。つい先日中学生相手に逆ギレしたかと思えば、今度は中学生を泣かせてしまったとの事で罪悪感と情けなさで俺まで泣きそうになっています。
いやー、ここで泣いたら色々意味分からないから耐えるけど、なんかもう、悲しいわ。色々。
俺、今何者なの? 等身大の性格悪い女の子になってない? 持ち直せる? ここから。
「ご、ごめんね委員長さん」
「謝らなくていいよ。こいつの自業自得」
「そうだよ八尋ちゃん。もう行こ」
罪悪感しんどいので委員長さんに謝ろうとしたら、都子と朔月さんに止められた。
教室から出て、少しすると。さっきまであんなに他人に酷い事を言っていた皆はすぐに今まで通りに戻った。
朔月さんと蝶田ちゃんが好きな事や物を語って、時々俺がそれに合わせて補足みたいなものをして。菊池さんがツッコミをして。都子もツッコミし、かと思えば天然発言し、それにも菊池さんや蝶田ちゃんがツッコミを入れて。笑って、互いを肯定して、笑い合って。
平和としか言いようがない。この平和を乱す方が一方的な悪だと思わせるような、身内だけに対して何とも心地よい平和。
委員長さんの悪口で盛り上がりを見せる女子の花園は、中身が男の俺からすると酷く息苦しくて、合わせて笑うのがやっとだった。