※この作品はR-18です。

子供に戻ったと思ったら女体化させられるし女として生きるべきか男のまま生きるべきか分からない俺はスワンプマン   作:千佳のはんぺん

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マイ麺

「ただいま〜」

「お、お邪魔します……」

「あいー」

 

 

 今泉さんを家まで案内し招き入れる。

 人の家にお邪魔したことがないのか、今泉さんは敵地にお化け屋敷に入ったみたいなキョドりかたで警戒している。

 

 

「階段登った先にある部屋が私の部屋。中でゆっくりしててよ」

「わ、わかった」

 

 

 俺の部屋まで今泉さんを誘導し向かわせ、俺は鞄をリビングのソファーに放ってココアとキットカットの袋を拝借。

 

「おまたせ〜。はいこれ」

 

 

 自分の部屋まで上がり、用意したココアとキットカットの袋を机の上に置いて今泉さんにクッションの上に座るようにハンドジェスチャーする。意図を汲み取ってくれた今泉さんが座り控えめに「ありがとう」と言ってくれたので、施しポイントで心を潤しつつ対面に座る。

 リボンを取って、スカートの留め具を外す。

 

 

「あ、そうだ。これ取り返しといたよ」

「! いつの間にっ」

 

 

 教室から出る前、なんやかんやで床から拾い上げて鞄に詰め込んでいた今泉さんの黒歴史漫画ノートを返却する。

 

 ノートが手元に戻った今泉さんは本当に心からホッとした表情で胸をなで下ろし、すぐに自分の鞄に仕舞いこんだ。

 そして、ゆっくりと様子見をするように俺の顔を見ながら、恐る恐る彼女は口を開いた。

 

 

「あの、中身、見た?」

「見てない」

「そ、そっか! よかった……」

 

 

 これまで張り詰めていた緊張が一気に抜けたような仕草をとる今泉さん。まあ、中身をじっくり閲覧出来るような隙無かったしな。

 

 

「漫画家とか目指してんの? 今泉さんは」

「え!? い、いや! いやいやいや、そんな!」

「んー。じゃあイラストレーター屋さんとか?」

「わ、私の話なんかどうでもいいでしょ!」

「あんまり詮索されたくない? そーゆーの」

「……」

「じゃあ話題を変えよっか。今泉さんってアニメとか見る?」

 

 

 見ないわけないよな〜と思いつつ聞くと、今泉さんは「まあ、たしなむ程度には」と答えた。答え方が可愛かったのでキットカット剥いてあーんしたらムッとした顔で睨まれた。でも食べてくれた。

 

 

「じゃああれ知ってる? シンフォギア!」

 

 

 この後カラオケに行くという事で、この時代でも存在してて今泉さんともデュエット出来る曲がありそうな戦姫絶唱シンフォギアの話題をチョイス。パチスロからしか仕入れていないので本編の内容は正直知らないけどネ。

 

 

「……シンフォギア? 知らない、どんなアニメ?」

「知らないか〜。んー、歌って戦うアニメ」

「へぇ。あむっ」

「じゃあ……マクロスは? マクロスF」

「アニメは見た事ないけど、歌なら知ってるよ。ライオンとか星間飛行とか」

「いいねぇ〜、ニコ動とかで流行ってそうなチョイス」

「! ニコニコ動画知ってるの!?」

「えっ!? う、うん」

 

 

 小学生の頃とかドナルドMADとか流行ってたし、意図の分からない謎動画を探すなんて遊びもしたことあったし。あれ好き、ポーション自作する動画とか。

 

 

「じゃあさ、ボカロとかって知ってる!?」

「あー、まあ」

 

 

 近い将来、割と目にする機会が多くなるやつだ。もちろん知ってる、妹もボカロ厨? だったし。

 

 

「めっちゃ良いよねボカロ! 曲は何が好き? 私は夜咄ディセイブとかアウターサイエンスとか好き!」

「あ、ガッツリ系のカゲプロ好きちゃんだ」

「う。……鹿狩さん、カゲプロ厨って馬鹿にしてくる人?」

「え!? いや別に馬鹿にはしてないよ!?」

「そう……? でも、何回も炎上してるし印象は良くないんじゃ」

「実の所その炎上もあんまり知らないし、曲は知ってるのもあるけどそこまで詳しくないんだよね」

「へぇ。ニコニコ知ってるのにあんまり知らないんだ」

 

 

 いやいや、ニコ動見てたと言っても別にボカロメインで見てたわけじゃないしな……。

 

 

「私が知ってるので言うと、ボカロなら……千本桜とかになるけど」

「ふーん」

 

 今泉さんは俺の答えを聞いて顎に手を当てる仕草をした。彼女の趣向にそぐわなかっただろうか、ここは流れに乗ってカゲプロ系の曲を出すべきだったか? 

 

 サマータイムレコードしかロクに歌えないから深堀されたら詰むんだけどね。

 

 

「……カゲプロはそんなに聞かない? 鹿狩さん」

「ん、ん〜。興味はあるんだけどね〜、よければオススメとか教えてほしいか」「ほんとっ!?」

 

 顔面食いちぎられるかと思った。少しチビった。

 

 

「えっと、鹿狩さんならやっぱりイメージ似合う曲はコノハの世界事情だと思うの! 雰囲気が似てるんだよね、あと目の前で不測の事態が起きた時の反応もきっと私の想像だとーー」

 

 

 ああすごいや、論じ始めちゃった。頭の中で般若心経でも唱えようか、果たしてどちらが先に唱え終えれるかな。

 

 そこから今泉さんの覚醒が起きた。どうやら彼女は本当に厨と称したらイメージが付きやすい様なくらいの愛の深さ、宗教じみたこだわりの強さをカゲロウプロジェクトに向けていたらしく、普段絶対に見られないような饒舌さでカゲロウプロジェクトのあれこれを語り始めた。

 

 流行り始めの歴史、変遷、書籍化からアニメ化の小話など、なんでそんな詳しいの? と思える事も多々ありながら。

 

 怒涛のカゲプロトークが終わるまでおよそ小一時間。

 般若心経、寿限無、ピカソの本名から歴代天皇列挙羅列しても尚今泉の口が止まらないとは思わなかった。そこから分数を数える羽目になるとは。ラジオでもやった方がいいでしょこの人。

 

 ま、いい塩梅で時間が潰せた。俺達は着替えを済まし外に出た。

 

 

 

  ()()()()()()()()()()

 

 

 

「ここが私イチオシのラーメン屋、その名も『しかくきゅう』です。ドンドン」

 

 

 正午になってから俺達が向かったのは、以前幸太郎と遭遇したラーメンショップに当たる『ラーメンしかくきゅう』である。

 

 いやはや、女の子をここに誘うのはどうかと瞬きの間に悩んだものの。ここの殺人極太チャーシュー(サイズ測定したら今の俺の手5つ分くらいあった)と残酷濃厚バタートッピングを堪能してほしいという思いが勝ってしまった。

 

 本音は俺が食いたかっただけだが。まあ、脳みそパチパチ音鳴る程度には味蕾ぶっ壊れるくらい美味いしセーフだろう。きっと今泉さんも喜んでくれるさ。

 

 

「いら。っしゃっっっ…………」

 

 

 ん?

 

 

「…………………………」

 

 

 ふむ? 挨拶省略しすぎだろ。びっくりしたわ。券売機へと向かう。

 

 

「ェエエエエエエエッ!!!」

「「!?」」

 

 

 奇声って表現が適切な人声が現実に存在するとは思わなんだ。

 なんだ今の。カップ麺出来そうなくらいの間の静寂の後に挨拶が完遂された。溜めすぎだろ、落雷みたいなシステムで挨拶するんじゃないよ。

 

 

「びっくりした……何今の」

「分かんない……あんまり触れるのもよしといた方がいいかも……」

 

 

 なんとなく、人間と呼ぶには違和感のある店員さんがこっちを有り得んバキバキな目で見てるような気がしたので努めて無視する事を今泉さんにアドバイスした。

 

 別に悪いこととは言わないけど、気付いてしまうレベルで肉体に薬物ぶち込むのは辞めた方がいいと思う。怖いよ……。

 

 ふむ、テーブル席しか空いてないか。

 

 食券システムを利用した事がないらしい今泉さんに券売機の使い方を教え、奥のテーブルに座って店員さんに食券を渡す。

 

 

「か、鹿狩さん」

「ん?」

「今、すごい店員さんに顔見られたよ? だ、大丈夫なのかな私達……」

「うーん……多分何も考えてないというか、私らの事見てないと思うから大丈夫じゃないかな」

「見てたよ! 絶対見てた!」

 

 

 どうだろうね。果たして本当に俺らを『人の形』で認識出来てるのかな。偶然俺らの姿が好奇心にクリティカルする見た目に空目してるだけじゃないかな。

 俺ら自身には全然興味無いと思うよ。

 

 

「学校サボってるわけだし、やばくないかな……」

「学校サボった程度でやばい事なんか無いよ〜。気にしない気にしない」

 

 

 別に深夜に出歩いてるわけでも無いし、何か聞かれれば適当に「開校記念日」とでも嘘ついて誤魔化せばいい。飲食店の人に年確される事なんて酒頼んだ時くらいやろうし気にする必要なし。

 

 

「でも顔見られたよ?」

「ロリコンかもね」

「違うでしょ!?」

「じゃあなんだろねー」

「真面目に言ってるのに!」

「真面目にねぇ」

 

 

 笑いながら水を飲んで喉を潤す。美味しすぎ。ラーメン屋のキンッキンに冷えた水ってなんでこんなに美味しいんだろうね、店内がクソ暑いからかな。

 

 

「うぅ、せめて顔の特徴が分からないようにしないと……」

「おー、この暑さでようやるね〜あんた。心配性すぎるなあ」

 

 

 やたらめったらに怯えながら、この暑いのにフードで顔を隠そうとする今泉さんを眺めながら、ふと考える。

 

 心配性と言えば、少しくらい神経をすり減らすべきなのは俺の方だ。

 

 今の所漠然と楽観視してしまっているが、幸太郎と都子が命を落とす事になる事故が起きるまで、もうタイムリミットが1年を切ってしまったのだ。

 

 

 この世界には、前の世界とは異なる道順を進んでいたという痕跡がいくつも存在した。

 バタフライエフェクト効果で小さな変化が現在に至り大きな変化を齎した事も少なくはないだろう。

 

 だが、それらの多くは長くに渡って継承されていく結果にしか作用しないのも考えれば自明の理で、『偶発的な事故』という極限定的な条件下で起きる現象に影響を与えるとは思えない。

 

 家族構成に変化があれど、人間関係に変化はあれど、女に変わろうと偶然起きる事故には関係無いのだ。バス会社を潰すとか、土砂崩れが起きる山を開拓しておくとかしない限り。

 そんなの、俺個人じゃどうしようもない話である。

 

 だからといって何もしないというのも頂けない。そもそもちゃんと問題から目を離さず考えるべきなんだよなー。

 

 

「うーむ……」

 

 

 幸太郎に関してはとりあえずこのまま不登校させときゃ事故に遭うこと自体は避けられる。将来とか色々心配なところはあるものの、そこはおいおい影で勉強させるなりしておけばリカバリー可能な所までは持っていけるだろう。

 

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

 問題は都子だ。

 都子は前回の世界よりも格段に女子としての地位が上がっている。

 困った。

 女王と呼んでも差し支えないポジションにいるアイツを学校行事から引き剥がすのは現実味のない話である。

 

 

「んん〜、美味しい!」

 

 

 なんとか手を加えやすくするように都子のいるグループに入ってはみたものの、枢軸キャラになる事は出来なかった。し、なれる未来も想像できん。

 今のポジションから昇格出来ない以上、かえって駒として動かしづらくなったような気さえする。

 

 

「鹿狩さん?」

 

 

 つうか、グループに入って朔月さんと仲良くなったことで彼女の事も当然救うというミッションも発生したんだよな。

 確か、3年時の都子と幸太郎のクラスには朔月さんも居たし、見殺しにするには心がしんどくなる程度には仲良くなってしまった。くぅ〜ん。

 

 都子1人なら最終、冷水ぶっ掛けまくって風邪ひかせるって手とかでやりようはあるけど、数が増えるとそんな手使えんのよな……。

 

 

「鹿狩さーん?」

「むん?」

「あ、気付いた」

 

 

 気付かないわけがない。ぷにゅっ、とされた。頬を。ちょっと痛いんじゃ普通に。

 

 

「なーにをするだい」

「さっきから呼んでるのに反応無いから。考え事?」

「ええまぁ。英雄になれる方法を考え中なのです」

「……えぇと」

「分かりづらくてごめんなさいね。未来人は悩みの種が尽きないもので」

「……中二病?」

 

 

 絶賛中学二年生の我々に中二病を打診するな。真剣に悩んでるのに。

 

 

「中二病患者ですよ私は。やだやだ、世界を救うために今日も表情硬くなってまうわ」

「あはは、本当に中二病な人だったら開き直らないと思うけどな。ラーメン伸びるよ」

「ん? あ、いつの間に」

 

 

 思考に時間を費やしていたらいつの間にか目の前に既に頼んだラーメンが置かれていたらしい。言われて気付いた、まるでイリュージョン。

 

 

「頭コネコネは一旦やめにして。頂きます」

 

 

 割り箸を割り、指に挟んで一礼。

 

 

「ズルルッ、ズルッ」

「はむ。……んっ」

「ズルルルルルルッ」

「あむ。はむ。んぐ、んぐ」

「ズルッズルッズルッズルッ」

「鹿狩さんって、結構豪快にラーメン啜るんだね」

「む。うるさかった?」

「あ、ごめん! 違うです、うるさいとかじゃなくて、私麺啜れないから……」

 

 

 麺啜れないから羨ましい的な事だろうか? 結構いるって言うもんね、麺啜れない人。

 

 

「服汚すリスク減るしいいんじゃない。啜れなくても」

「えー! やだ! 啜りたい!」

「啜りたい」

「うん、啜りたい!」

「変なの。まあコツを言うならそうだな、ストローでジュース飲む感覚で麺を吸ってみ」

「ズッ、スー………………」

「いや睨まれても……」

 

 

 必死に麺を啜ろうと四苦八苦する今泉を眺め微笑ましく思いながら食事を再開する。

 

 ラーメンを食べ進めて少し経つと、閑散としていた店内に人が賑わい始めた。

 

 近場の会社や店の人らの昼休憩タイムになったのだろう。空いていたカウンター席があっという間に埋まり、出入口近くのテーブル席にもツナギを着た男の人達が座りあっという間に人でパン詰まりとなった。

 

 

「すごい繁盛してるね〜ここ」

「んね。原価バグ起こしてるレベルのチャーシューには魅力がそれだけ詰まってるのさ」

「ちょっと大きすぎるよね……」

 

 

 言いながらチャーシューに頑張ってかぶりつく今泉さん。初見時は面食らうよね。早く慣れて、同じように原価バキバキの食道惨殺トッピングも添えられるようにしようね。

 

 

「伊勢〜。1名様でよろしかったすか? 食券どぞ〜」

 

 

 今泉さんの向こう、出入口の方にある券売機の方に目を配ると、見覚えのある少年がそこに食券を持って突っ立っていた。

 

 運悪く定員オーバーになったタイミングで先頭になり待機させられる羽目になった少年は、此処で会ったが百年目の幸太郎くんであった。

 

 

「……げっ」

 

 

 あちらも俺の姿を視認したようだ。

 げっ、て現実で言われる事あるんだ。よかった、女の体で。男だったら鼻くらいは折ってた。

 

 

「すいませーん」

「はい! あ、ご注文はあちらの食券からお願いします!」

「注文じゃないんすけど……え追加注文も食券なんや。じゃなくて、あそこにいる男の子私の友達なんです。よければ同席したいなって」

「わっかりましたー!」

 

 

 近くにいた店員さんを呼んで幸太郎に来させる。

 幸太郎は驚愕顔を浮かべたものの店員さんに逆らう事はなく、食券を渡すととぼとぼとこちらに歩いてきた。

 

 そして、俺の顔と、今泉さんの横顔を見比べ。育てた野菜にギッシリ虫が集ってたのを見たような面白い顔で「えぇー……」と言いながらも今泉さんの横の椅子を引く。

 

 

「すいません、失礼します……」

「あ、どうぞどうぞ……?」

 

 

 初対面なんだろうな。ぎこちない空気が二人の間に流れる。

 

 

「やあ、幸太郎」

「なんのつもりだよお前……」

「あん? 待ちたくなかろ、優しさよ」

「余計なお世話だ……」

 

 

 バカめ。ラーメンなんて「今食いたい!」って言うベストタイミングを逃したら惰性の食事だろうが。この救いは釈迦の手にも等しいと心得よ。

 

 おろ? つぅかさ、先日の別れ方的に少々気まずい感じで話してくるのかと想定していたが、予想に反して幸太郎は極々自然体だ。

 

 あんまり気にしてなかったのかな? 相変わらず気持ちのいい性格してる奴だな。

 

 

「あの、鹿狩さん? この人……」

「ちょっとした知り合い」

「友達とかじゃないの?」

「ないね〜」

 

 

 と、答えてやると、幸太郎がギョッとした目でこちらを見てきた。友達呼ばわりして良かったんか、またガン切れされると思ったよ。

 

 

「……お前、さっき店員さんにあの人友達ですって俺の事指指してたよな」

「してたね」

「な、なら友達でいいだろ!」

「仮に私が鹿狩八尋じゃないんだとすれば、お前、私と喧嘩しかしてねえ事になるけど」

「え」

「友達って言えるか? そんな奴」

「それは……」

「え、どういう事? 鹿狩さんは鹿狩さんでしょ?」

「いや〜ちょっと小難しい問題でね。このまっしろ幸太郎という男は、私を鹿狩八尋だと認めていないのですよ」

「え、どういう……??」「待ってくれ! 俺は!」

 

 

 ラーメンを啜る。

 

 普通、男女であのレベルの喧嘩別れしたら仲が修復するのに最低1週間はかけるものだが、幸太郎的には気にしてなさそうだ。心広いな。

 

 

「聞いてくれ鹿狩!」

 

 

 ペクペクしてたら幸太郎がデカめの声を出してきた。びっくりしたあ、ジャージ履いてきてよかった。

 

 

「今私の事鹿狩って言った? ズルルッ」

「言った。その……色々考えたんだ。その結果、まあ。おかしな話だとは今も思ってんだけど。冷静に、条件を並べてみると」

「なが〜い」

「っ! だから! ……悪かった。お前は、鹿狩だ。と、思う」

「あ、そう。お前、私の事を認めたと」

「……そうなる。お前は、鹿狩、だ」

 

 

 ほーん。まあ喧嘩した時のことなんか、互いに引っ込みが付かなくなって突き抜けちゃったってだけだから、案外あっさりと俺の事を認めてくれたらしい。

 

 めんどくせぇーの。まあいいや。

 

 

「じゃあ紹介の仕方変えるか。今泉さん、こいつは私の幼馴染の幸太郎」

「え? 幼馴染?」

「そー。私が男だった頃からの友達。マイメン。最近ちょっと喧嘩して絶交してたんだ」

「そ、そうなんだ。絶交したのに話せるんだ……」

「? そりゃあ。別に普通に話くらいは出来るだろ。なあ?」

「いや、それはお前がちょっとおかしいよ」

「だよね」

「えぇ〜」

 

 

 絶交ってそんな重い言葉だったんだ。深く考えたこと無かったなー、今後はもうちっと使い方考えようかな。

 

 と、そのタイミングで幸太郎のラーメンが届いたので話題を中断ししばしの啜りタイム。

 ちなみに俺はとっくにラーメンを食い終えており、意外と食べるスピードは遅めだった今泉さんを待つ形となっていた。

 

 

「んぐ、んっ。……てかさ、お前らここで何やってんの。学校は?」

「大サボり中」

「それは分かるわ。なんでサボってんのって聞いてるんよな」

 

 

 今泉さんを見る。表情は暗い。

 

 

「別に大した事じゃないよ。不良デビューしたの、2人で」

「不良デビュー……? 鹿狩と、今泉さんだっけ。似合わないな」

「今日限りの不良デビューだから似合うも何も無いんだよ。ねー?」

「え!? う、うん」

「そらこの通り」

「ふーん……?」

 

 

 それで溜飲を下げてくれたのかは定かでは無いが、そこからは幸太郎からの言及も無かったので飲み込んでくれた事にする。

 

 

「あ、の、幸太郎さんは、今日学校どうしたんですか?」

「あー……」

 

 

 今泉さんが至極当然の疑問を幸太郎に投げた。「こいつ不登校なんだよ」だなんて言える訳もなく、会話には入らずに流す。

 

 

「……学校には行ってない。1回停学食らって、それからは」

「あ、あぁ。ごめんなさい……」

「気にしないでいいっすよ。大した事ないんで」

 

 

 少しだけ空気が死んだ。今泉さんもラーメンを食べ終え、幸太郎もじきに食べ終える。

 

 仕方ない。ダメ元で、幸太郎も今日共に遊ばないか提案を出してみるか。なんかここで別れたら、幸太郎のメンタル低空飛行のまんま保持されそうだし。

 

 

「なあ幸太郎さ、もしよければ」「あ、もし2人が良ければ、この後一緒に遊ばない? 毎日暇してっからさ、退屈しのげる人募集してたんよね」

「あら」

 

 

 相手から誘われるとは思わなかった。俺はもちろんいいし最初から誘うつもりだったが、今泉さんはどうだろう。

 

 

「今泉さん、いい? 幸太郎もパーティに入れても」

「わ、私は、大丈夫」

「おっしゃ。決まりやね! じゃあ最初はカラオケ行こか〜」

 

 

 そんなこんなで、幸太郎も加えた変な3人組を結成した我々は揃わない足並みでラーメン屋を出た。

 

 ……。

 

 幸太郎がポケットに手を伸ばし何やらモゾモゾしているのを目にした。が、相手も俺の視線に気付くと慌てて手を出しなんでもないフリをした。

 

 分かるぞ、ラーメン終わりはやっぱタバコ吸いたいよな。我慢出来てえらいぞ、頭を撫でてやると顔赤くして手を払ってきた。

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