※この作品はR-18です。

子供に戻ったと思ったら女体化させられるし女として生きるべきか男のまま生きるべきか分からない俺はスワンプマン   作:千佳のはんぺん

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残夜のユディト

「都子ちゃん結局早退したんだ? どうしたんだろうね」

 

 

 本日の授業も終了し、帰りのホームルームを待機しているタイミングで朔月さんが話題を切り出してきた。

 

 いつもの雑談陣形を作る。朔月さんとその隣の席をくっ付け、腰掛けて菊池さん、蝶田ちゃんとその机を囲うように座る。

 

 いつもなら朔月さんと菊池さんの間に都子が居るのだが、今日は人数に一人分空きがあるためいつもより作った輪は小さくなっていた。

 

 

「八尋、都子の付き添いしてたんでしょ? 様子はどうだった?」

 

 

 菊池さんに都子の体調の程を聞かれた。素直にゲロ吐いてたって答えると彼女のイメージを損ないそうなのでオブラートに包んだ言い方をしておこう。

 

 

「パスタ戻してた。大分具合悪そうだったよ」

「朝ごはんパスタだったんだ……」

 

 

 オブラートに包めてなかったみたい。ごめん都子、あんま頭動かせてなかったわ。

 

 

「早く良くなるといいね、竜胆さん」

 

 

 蝶田ちゃんがそう言うと、他3人は彼女に合わせて「そうだね〜」と共感の意を述べた。一番最初に都子を案じる言葉を言うのが蝶田ちゃんだなんて驚きだ。前までは都子個人への話題に入りすらしなさそうなのに。

 随分と仲良くなったものだ、もう立派な友じゃん。

 

 

「てかてか、3年になってから無遅刻無欠席記録が途切れちゃうなんてツいてないよね〜」

「無遅刻無欠席!? すーごいな都子!」

 

 

 朔月さんの言葉に食いつく。はえー、一日足りとも学校をサボらないとか有り得るんや。超真面目じゃん、超尊敬である。

 

 と素直に賞賛していたら三人に呆れたような目で見られた。「逆に八尋ちゃんは軽率にサボりすぎ」だって。仕方ないよね、中身大人でもやっぱり時々学校サボりたくなるもん。

 

 

「紗理奈も無欠席だよね?」

「あたしもそうだね〜。あんまり風邪引かないしね」

「いいなぁ。ウチすぐに風邪引くし生理重いから羨ましいよ」

「八尋ちゃんも結構生理重いタイプだよね? しんどいよね〜」

「せっ、そうだね。しんどいね」

「みんな生理痛ってどういうタイプ? ウチは太鼓で叩かれるような波打つタイプなんだけどさ」

「あたしもどちらかというとそっちだなー。まあ大して痛くないから変わらないけど」

「私は基本は少しずつ痛みがキリキリ増してく感じかな? 八尋ちゃんは?」

「えっ、えー……?」

 

 

 うんなんで急に生理の話? 嫌じゃないの、そういう話を友達にするの。俺は普通に嫌だけど、生々しいし。

 

 ……答えないとダメか? ダメか。一人だけ何も言わないのは変だもんな、そういうの気にするもんね君達。嫌だなあ。

 

 

「私は、同じくらいの痛みがずっと続いてくタイプだよ……」

「小鞠の重い版って事か」

「はは、まあ」

 

 

 まあ、生理が重い側に属するのは間違いないだろうね。生理の本腰に入ったら痛すぎて熱出るし、一切態度を取り繕えなくなるし、話も聞けなくなるし。座っても横になっても不快さは緩和しないし、謎にふくらはぎよく攣るし。

 

 全く。見た目バフで大得したと思いきやまさかの落とし穴である。どうせなら生理もなんも感じないくらい軽いか、むしろ子宮そのものがなけりゃ良かったのにって思う。子供産む気とかサラサラないしね。

 

 

「そう考えると、体が弱いわけでもなく生理が重い訳でもない小鞠が一番のサボり魔じゃない? 何してるの普段」

「えへへ。ひっ、みっ、つ〜」

 

 

 乙女の秘密は暴くものじゃありませんね、大体予想は着くけども。菊池さんも蝶田ちゃんも苦笑いである。一番の男大好き好きちゃんだからなぁ朔月さん。

 

 

「あ、てかてかっ、まだちゃんと聞いてなかった八尋ちゃんの話ぃ〜!」

「ん? 私の話? なになに」

 

 

 何か興味ある事柄がおありで? まるで身に覚えが無いのではてなマークを頭蓋骨から生やしていると、菊池さんも蝶田ちゃんも輝かした目をこちらに向けてきた。

 

 

「八尋、樹利と特別棟でキスしてるよね!!」

「ブフォアッ!!」「うわっ!? 汚ねえなてめぇ!?」

 

 

 菊池さんが中々の声量で放った言葉が、教室の中を何度もリフレクションしていき後ろの方で笠原達と駄弁っていた佐藤に突き刺さった。

 

 口に含んだコーラを吹く佐藤。ぶっかけられた笠原は顔面をしわくちゃにして「も〜!!」と言いながら教室を出ていった。水道に向かったのだろう、哀れなり。

 

 

「紗理奈ちゃん! 声大きいよ! てかそれバラしたら尾行できないじゃん!」

「尾行」

「あっ、ち、違うんだよかがりん! 尾行とは言っても、ずっと見てたわけじゃないから!」

「君ら三人が最近うんっと仲良くなった理由を理解出来たよ」

 

 

 こやつら、いつからか俺らの事をずっと付けて回っていたな? 集団ストーカーしてそれが単純接触効果になって仲を深めおったな? 井戸端会議するママ友みたいな事になってらぁ……!

 

 いや、てかストーキングされてたって事は、俺もしかして今までやらかした色々な"やばいこと"を目撃されてるってことじゃないか!? 事実確認を取らなければ!!

 

 

「え、まってまって。えっと……私を尾行し始めたのって、いつから? き……は、初チューした時から?」

「うーん? 樹利とのキスを見たのは小鞠だからあたしと蝶田は見てないよ」

「バラさないでよ紗理奈ちゃん!」「てか声大きいって!」

 

 

 朔月さんと蝶田ちゃんに口を塞がれた菊池さんが暴れる。その上から俺も抑えてやった。流石に今回は傍観者の位置に居られませんでした。この人型スピーカー何とかしろ誰か。

 

 菊池さんが落ち着くまで数秒。暴れるのをやめ観念した菊池さんから離れ座り直す。

 

 

「あはは……ごめんね〜、八尋ちゃん」

「幸い教室中うるさくて助かったよ……」

 

 

 近くの席に陣取ってた連中の耳には入っただろうがね。みんな優しいな、チラチラ見てくるだけで何も噂しない。死のうかな。

 

 

「で? じゃあ尾行って、具体的にいつから始めたわけ? 三人とも」

 

 

 そう尋ねると、三人は顔を見合せた後菊池さんが答えた。

 

 

「その話を聞いて、本格的に跡をつけ始めたのは最近。月曜からだったっけ」

「そうだね、月曜から」

 

 

 月曜かぁ。アレだ、今泉さんの虐待裸体を見た日だ。あの時つけられてたのか、なるほどなるほど。

 

 ……ん? するってぇとアレか? 俺が今泉さんを引き連れて幸太郎の家に入っていったのも目撃していたとか? 聞いてみよう。

 

 

「放課後の動向は見てないよ。あたしも小鞠も部活あるし、蝶田も用事で忙しかったみたいだし」

「だから、厳密には火曜日から本格的に監視し始めたことになるかな」

「なるかな、じゃないよ。ぐ、具体的にいつどこで尾行を。てか、単刀直入にさ、なんかヤバいの見た……?」

「見たよ!」

「わぁい元気ハツラツなお返事!」

 

 

 なんで朔月さんは満面の笑顔で応えられるわけ? ちょっとくらい後ろめたさとか、気まずさとか、そういう感情を持ってても損はないんじゃないかな? 人間としてさ。

 

 

「な、何を見たの?」

「かがりん。それを聞いて後悔しないかい?」

 

 

 するに決まってるだろ。でも聞かないで悶々とするのも嫌だから、仕方なしに聞いてるんじゃ。分かりきった質問をするでないわこのドSメガネめ。ニヤニヤしやがって!

 

 

「後悔しない自信が無い……けど、気になるので教えてください。何を目撃されたの私は」

「昼休憩の時、渡り廊下でしゃがんでキスしてたよね」

「あ、死のう」

 

 

 どこ飛び降りよっかな〜。頭蓋骨の硬さが未知数だからな〜。屋上から飛ぼっかな!

 

 

「あと移動教室の時さ、わざとみんなとタイミングズラして二人で移動してたり」

「めっちゃ距離近いせいでかがりんの肩、何度も佐藤君の腕に当たってたよね」

「今日は曇ってるからな〜。折角なら晴れてる日に自殺したいな」

 

 

 わざわざ突っ込み所満載な不謹慎ギャグをかましてお茶を濁そうとしてるのに全くの無効果。全くの無関心である。

 そんな薄情な事あってたまるか。友達が自殺仄めかしたら命を賭して救うべきだろ。命をかけて今すぐ俺を馬鹿にするのを辞めてくれよ。あまりにも可哀想だよ、俺。

 

 

「あと国語の授業サボりで早く抜け出した時、教室で樹利に抱きついてなんかしてたよね? 何してたのアレ」

「!? なんでそんなことまでっ、授業はちゃんと受けなさい!!」

「八尋が言うな。で、何してたの?」

「ああぁぅうっ」

 

 

 えー……思い当たる節が一つしかないけど、直近の事すぎてこれ見られてたら100話題を出してくるわなって感じの話はストックしてある。

 だがそのカードを切ってもし外れだった場合、俺は自ら黒歴史を一つ提供する事になる。それだけは避けたい!

 

 

「ぁぁあの、アレは……」

「「「アレは?」」」

「……やっぱ無理ぃ!!」

 

 

 やっばい、本当に恥ずかしい。これだけはちょっと言えない、我ながらキモすぎるので。

 

 

「そんなに恥ずかしい事なんだ?」

 

 

 三人がにやにやした顔で俺を見る。その挑発には乗らない絶対乗らない、頭脳は大人を舐めないでほしい。

 

 

「休み時間にテンション高かったりすると樹利に挨拶みたいな軽さで軽いキスする事よりも恥ずかしい?」

「ねえ待って辻斬りやめて? 本当にどこまで知ってるの、ねえ」

「体育の時わざわざ体育館抜け出して、樹利に膝枕して頭撫でてたよね〜」

「忘れてくれない!? お願い、命くらいなら存分に差し出すからさぁ!?」

 

 

 俺の反応を見た菊池さんが腹を抱えて笑い出す。人が困ってるの見て笑いやがって〜!

 

 

「面白かったのはそれくらいかな! 後は……」

「尊厳破壊ストーップ!! もういいよ! くぅあ〜!! 人の事ストーキングするんじゃありません! 何やってんの君達は!?」

「あんなに彼氏作らないって断言してた八尋がアッサリ付き合ったらそりゃ面白くて監視するでしょ」

「趣味悪い!!」

「まーまー、怒らないでよ八尋ちゃん。私らとしてもさ? 付き合ってるのを隠されててちょっと寂しかったというか……友達なのに隠されると、モヤモヤするじゃん?」

 

 

 しねぇよ別にっ! ……というのは俺側の意見であり、朔月さん菊池さん蝶田さんとしての意見としてはそれがちょっとした裏切りにも思えて寂しかった的な話だった。

 

 バレたらバレたで面倒臭いくらい騒ぎ立てるし、隠し事にも敏感とは。女子って大変やな〜。

 

 

「だ、か、ら! 八尋ちゃんにお灸を据えようと思って樹利と二人っきりになりそうなタイミングを監視してたの!」

「そんな理由でお灸据えられる事ある? 悪行ポイント低くない?」

「樹利と付き合ってからあたしらとの付き合いが悪くなったのは事実だろー? 小鞠も言ってたけどさ、男出来てからそっちばっかに行き過ぎ、そういう女なんだって一瞬見下しそうになったよ。自重しな」

 

 

 うん菊池紗理奈にだけは言われたくないセリフである。彼氏脳死全肯定botである菊池紗理奈さん、どの口が動いてるんでしょうね今。

 

 とまあ思いはするものの、確かに俺、佐藤と付き合いだしてからアイツアイツばっかりで、その他が疎かになってるよう振舞ってたのは否めない所だった。

 

 以前は男と付き合うって発想自体無かったんだ、いざなってみたら初めての事が多くて夢中になってしまっていた節は確かにあります。佐藤にじゃなく、心境とか環境とかの変化に、って話だけどね。

 

 

「でもそんなにいいのかねぇ。樹利、確かに顔はカッコイイけど髪長いし鬱陶しくない? 性格もなんか雑だし」

「わ、紗理奈も樹利を批判する側か。都子と同じだ。アイツ交流が深い女からの受け悪すぎるだろ……」

「もうエッチしたの?」

「「ブーッ!!!」」

 

 グイッと寄ってきた朔月さんの頭が当たる。びっくりした。わっ、いい匂いする〜。ジュレームの何かしらの匂いだ〜。

 

 と思ったのがコンマ数秒の出来事で。朔月さんからの質問に俺と、ついでに離れた位置の佐藤も噴いてしまっていた。

 

 

「エッチはしてるでしょ。かがりん、もう処女じゃないって下りあったじゃん」

「ねえこの話やめない? 私可哀想じゃない?」

「んーん、可哀想じゃない。で、ウチが思うに」

 

 

 そんな事ある? 俺可哀想じゃないの、絶賛彼氏ネタで笑われ擦られてるこの状況で? さては蝶田ちゃん、前に彼氏とのデートを弄られたこと根に持ってるな。主犯俺じゃないのに!

 

 

「かがりんは誘い受けタイプだね」

「誘い受けって?」

「口では言わないけど、仕草や態度で相手を誘うみたいな高等なテクニックだよ」

「……どういう事?」

「例えば、わざと近くに座って体の節々を当ててみたり、わざとらしく胸を体に押し当てたり、暑いからと服を脱いだりかな」

「さ、策士!」

「してないよそんなこと!」

 

 

 堂々とその主張を否定する。流石にそこまで身も心も雌落ちしてねぇよ舐めんな。

 

 

「つまり小悪魔ってやつかあ。小悪魔八尋ちゃん……アリ!」

「無いよ! それじゃまるでビッチだろ!」

「ビッチじゃないの? キスする時全部八尋ちゃんから行ってるよね?」

「さ、最初の時は、ちがうですうぅ」

 

 

 今度はビッチという蔑称属性も獲得したのか俺は。佐藤もそうだが、それを同年代にサラッと言えるの過酷な環境すぎない? それ結構な悪口だと思いますけど、普通に身内に言っていい言葉かね。

 

 

「実際はどうなの? 誘い受けなの? それともガンガン系?」

「答えられるかーい!」

「教えてよー!」

「てか樹利って体でかいのによくセックス出来るよね。痛くないの?」

「ああ話題が二転三転! いずれもあんまり広げたくないお話だあ!」

「カマトトぶっちゃって〜」

 

 

 こんな大衆に囲まれた閉鎖空間で自分の性交渉のトークを繰り広げる方が絶対おかしいのに、なんで俺が異端者側で弄られてるのだろうか。

 世界を遡ってる最中に貞操観念がバグ起こす分岐の先の世界に来ちゃったのかな? 嫌なパラレルワールドだよほんと。

 

 

「で、真面目な話どうよ? 気持ちよく出来てんの、不満はない?」

「なんでそんな。真面目に話したい事柄じゃないなあそういうのは……」

「ダメだよ〜八尋ちゃん。八尋ちゃんは男を知って間も無いんだ、現状に満足出来ないときっと浮気とか平然としちゃうようになるからね!」

「実体験かな」「私の話じゃなくてっ!!」

 

 

 お、珍しく朔月さんに怒られた。の割には男を取っかえ引っ変えにし過ぎている気もしますけどね。本命は誰なのカナ?

 

 

「樹利ってヤリチンではあるでしょ? どうなの、無理なプレイとかさせられてない?」

 

 

 本人も離れた所に居るってのによくそんな話題を出せるものだ、まあ聞こえないよう声を潜めてくれてはいるが。

 

 なんか、これは普通に流れに乗って話した方がいい感じなのかな。言うてこういう下ネタから一歩先みたいなトークをカマされるのは初めてじゃない。

 今回の主役は偶然俺だったってだけで、基本朔月さん蝶田ちゃん辺りがこういう質問攻めにあってたりする訳で、今更何を言っても嫌われる感じはないか。気は進まないが……。

 

 

「た、確かにちょっと痛いかもって思ったけど、そんなもんなんじゃないの。女の子ってさ」

「それは初めての時の話?」

「初めての時は、痛すぎて泣いた……」

「あー。大きいんだ? アソコも」

「まあ。優しくしてくれたから馴染んだけど、今でも入れ始めは異物感でちょっと……」

「サイズが合ってないね、二人の。確かに痛いは痛いけど、強いて言うならって程度だったし」

 

 

 朔月さんの意見に菊池さんも頷く。蝶田ちゃんも、「痛いは痛いけど耐えれなくもない痛み。泣くほどでは無い」との意見を出してくれた。

 なるほどなるほど。

 あの、名前も忘れた医者のジジイ、なんでそういう事をしにくそうな肉体にしやがった? どうせならガバ寄りに作ってくれよ、大は小を兼ねろよ。

 

 

「でも今は慣れたら気持ちいい?」

「う、うん。まあ……」

「八尋ちゃんってすぐ発情しそうなタイプだもんね。いるよね、目が蕩けたら止まらなくなる子」

「あーいるいる! そういう子って普段は大人しいのが多いよな! あたし、そういう子らから相談受けるからめっちゃ分かるわ!」

「別に止まれないわけじゃないけど。まあ、樹利はノリが良い子が好きっぽいし、私もそういうの意識したりはするね」

「えーうそ〜。絶対感度高いでしょ八尋ちゃん。えいっ!」

「ひゃんっ!?」

「あははっ、ほらね〜! 軽く脇腹を突いただけで可愛い声出ちゃうんだもん。感度高い証拠だよ!」

 

 

 と、朔月さんが俺で遊び始めたが最後、蝶田ちゃんも菊池さんも俺の体をくすぐり始めた。

 美少女中学生三人に全身を揉みくちゃにされる。そんな夢のような展開、文面だけ見れば心踊りそうになるが、実際は全身の弱点という弱点をくすぐられて呼吸困難にさせられかけたので嬉しさなんて皆無であった。

 

 

「所でさ、なんで付き合おうって思ったの? 樹利とさ」

「あはは、ふへへ……んぇ?」

「八尋が樹利の事好きなのは本当だろうし、ゾッコンだろうなとは思うけど「ゾッコン!?」ゾッコンでしょ。で、そうなった経緯を聞きたいわ。恋バナってそういうのっしょ?」

 

 

 くすぐりの余韻を殺すよう呼吸を整えていたら菊池さんからひょんな事を聞かれた。都子からも聞かれたことだ。

 都子に聞かれた時は、なんか佐藤への誹謗中傷が飛び交いそうなので適当に流していたが、この場であればそんなことも無いだろう。ここは正直に答えておくとしよう。

 

 

「好きになった理由ってのは、私を求めたからだよ。樹利が」

「求めたから?」

「んー。付き合った理由もそれと同じ。私を私として愛するって言ったから付き合おうってなった」

「……うん? 女として求めてるって話なら、八尋に告白してきた他の男どもも同じじゃない? 何が違うの?」

 

 

 姿勢を正しながら、頭にはてなマークを浮かべる菊池さんに対する言葉を探す。

 

 

「なんて言うかな。他の子らはきっと、普通に接しようが付き合おうがセックスしようが、変わらないと思うんだよ」

「変わらない?」

「んー。どんな選択を取ってどんな関係性になろうと、私の人生の歯車になんの影響も無いというか。勿論そんな事は有り得なくて、関係性一つ取っただけで未来は多少変わるだろうけど、それは私にとってきっとどうでもいい事なんだよね」

「未来……?」

「うむ。でも樹利はそうじゃない。関係性一つ変われば沢山の物が動くんだよ。だから目を付けたんだ。最初はね」

「そんな大層な人かなあ、樹利って」

「微妙に失礼だな」

「ウチはよく知らないけど、佐藤君ってすごい人なの?」

「凄くないけど、便利な人ではあるよ」

 

 

 嘘偽りなくそう言うと、そこで何故か朔月さんの表情が僅かに曇った。なんだろう、何か地雷でも踏んだのかな。

 

 

「八尋ちゃんの言い方、まるで利用してるみたい。好きな人の説明になってないよ、それ」

 

 

 好きな人の説明ってのがまず千差万別すぎて文句を言われる筋合いないと思うのですが。それはさておき。

 

 

「そうかなぁ? 私、初めての彼氏だから色んな事を勉強したぜ?」

「勉強〜?」

「何を勉強したの?」

 

 

 ふふふ、興味津々な様子の菊池さんに蝶田ちゃん。いいだろう、聞かせてあげましょう俺の完璧な対男メロメロ学をね。

 

 

「まず男は、自分の事を特別扱いする女ってのに滅法弱いんだよ。だから私は今まで培ってきたキャラと真逆の、馬鹿で、愚鈍で、自意識が薄くて放ってかれても何も言わないような女をアイツの前で演じてみた。性に貪欲で、けど他の男の事は見下してるっていう、脳みそ焼き切れたような態度を取ったらそれがビタハマり。樹利ね、前よりも一層私に執着するようになったんだ。手放したくなくなったみたい。やっぱり心地良いんだよね、性欲も自信も、どちらも満たしてくれて邪魔な時は消えてくれる便利な女ってさ」

「え?」

「ん?」

 

 

 女衆三人の動きが止まる。何事かな、何かまずいこと言ったかしら。親切丁寧に説明したつもりなのだが。

 

 

「なに、それ。八尋ちゃん、本気で言ってるの?」

「ん? うん」

「……それ、さ。八尋ちゃんの本音じゃないじゃん。本心じゃないじゃん。本当の心で、樹利と付き合ってるわけじゃないって事?」

「ふむ?」

 

 

 どういう意味だろう。別に嘘とか気を使って佐藤と付き合ってるわけじゃ無いのだが。朔月さんにはそう聞こえたのかな。

 

 

「そう求められたからそうやってるってだけの話なんだけど、なんか変かな?」

「変、だよ。とっても」

「んー渋めの回答。相手から求められた事を十全にこなそうとするのは愛じゃない?」

「それは、違うでしょ。八尋ちゃんが言ってるのって、愛ってより、依存だよ」

「依存? 別に私、樹利の事は好きだけど、樹利と別れても多分普通にしてるよ?」

「なんで!? えっと、何でもかんでも恋人に合わせるのに、恋人に別れ話を出されたらその努力が無駄になるとか思わないの!?」

「思わないよ〜。別れることを求められたら別れる、好き好きちゅっちゅっちゅ〜を求められたから目をハートにしてきたって事に対してそれは矛盾しないよ? 愛は求めるものじゃなくて、求められて応える物なのですよ〜」

「……何それ」

 

 

 む、なんかやっぱり地雷踏んだっぽいか? 朔月さんの様子が尋常じゃない気がする。ここは一つクッションが必要か。

 

 

「ま、まあ、恋なんて人それぞれやし。ねえ、紗理奈! 蝶田ちゃん!」

「そ、そうだな! ははは」「……」

 

 

 アレー? 菊池さんは乗ってくれたのに蝶田ちゃんもなんか暗雲立ち込めさせてなーい? なになに、俺ってば無意識下でどんな地雷発言をしたっていうのかなー??

 

 

「……じゃあ、八尋ちゃんはさ。樹利に何を求めるの?」

「ん? んー……今のままでいいな、別に。不変を望む〜」

「っ、それってやっぱり、なんて言うか、八尋ちゃんの話って、大切な何かがさ……」

 

 

 跛行的な物言いを繰り返しながら俺に真っ向から意見しようとし続ける朔月さんだったが、彼女の言いたいことが全部吐き出される前に、ガラガラと教室の戸が空く音が鳴り響いた。

 

 

「ほらほら皆席ついてー。帰りの会を始めるわよ〜」

 

 

 担任の教師のお出ましだ。比較的平和なこのクラスでは担任に一々は向かおうとする生徒はいない。

 担任の登場により完全に仕切り直しの空気が生まれると、流れ込む外部の空気に充てられた菊池さん達もそれに抗わず席を立ち、自らの席に着いた。

 

 話し合いは中途半端な所で幕を閉じた。

 

 

 

 

 翌日。

 昨日早退した都子はその早退を引きずるように今日も欠席した。

 

 

「都子ちゃんが休みかあ。雪でも振りそうだね」

「そりゃ大袈裟だけど、どうしたんだろうね? 都子のやつ」

 

 

 朔月さんと菊池さんが心配そうに語る。ちなみに蝶田ちゃんも今日は休みだが、風邪を引いたとかではなく彼氏と一緒にライブに行くだかで県内に居ないらしい。

 ライブの為に学校サボって始発の電車に乗るとか、彼氏と揃ってオタクの鑑だなぁと思う。

 

 

「なんか、普段話してる奴が二人も居なくなると寂しいね」

「そうだね〜。あ、二人ともこれ食べる?」

「わ、新発売のグミだ」「もらうもらう」

 

 

 朔月さんが差し出してきたグミの袋の下に菊池さんと揃って手を出す。ゴロゴロっと落ちた甘味を口に運ぶ。ん〜、かったい。新発売ってこれHARIBOかい。

 

 

「なんか、普段は都子も蝶田も大人しい方だけど、居ないとなるとそれはそれで物足りないよね」

「大人しい方では無いんじゃないかな。私と紗理奈ちゃんがうるさい側だからさ」

「うるさいかなーあたし? 八尋はどう思う?」

「明らかにうるさくはあるでしょ」

「言い方、棘!」

 

 

 菊池さんにヘッドロックを決められる。ぐわー! あ、でもこれいいぞ。菊池さんの胸が頬に当たる。めちゃいいなこれ。

 

 ヘッドロックが解かれると、人数は少ないもののいつもの他愛もない雑談タイムが始まる。

 今やってるドラマの展開予想と、後は人間関係のアレコレ。何組の誰々と何組の誰々があーだこーだ、そこに俺の話題もプラスされ、憶測と希望的観測に塗れたガールズトークが展開された。

 

 

「鹿狩さん、ちょっといい?」

「ひょっ? 先生?」

 

 

 なんか、学年を上がってからは珍しく担任の先生に話しかけられた。菊池さん達がガールズトークをしている傍らで先生の方を向く。

 

 

「鹿狩さん、竜胆さんと同じ学区出身で家も近所なんだってね」

「はい、そうですけど」

「じゃあこれ届けてくれない? 今日の提出物のプリント」

 

 

 そう言い渡された今日実施された科目の復習プリントであった。なるほど、出られなかった授業は提出物の量を調整し補填すると。あたかも賢いな、休んでる当人が手をつけなければ意味は為さないが。

 

 今日は幸太郎の家に行く用事がある。俺が鹿狩だと伝えれば夜の訪問でも都子ファミリーは一応は良い顔を取り繕ってくれるだろう。向かうのは幸太郎ハウスで遊んでからにするとしよう。

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