※この作品はR-18です。

子供に戻ったと思ったら女体化させられるし女として生きるべきか男のまま生きるべきか分からない俺はスワンプマン   作:千佳のはんぺん

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途中で、エロ表現でなろう吹っ飛ばされた事思い出して慌てて全部書き直しました。許して。


目の上のたんこぶはハサミでちょっきん

「おいしょっと!」

 

 

 背負った鹿狩を便座の上に降ろす。鹿狩は相変わらず目を瞑って幸せそうに寝息を立てており、いつの間にか育っていた大きな胸が彼女の呼吸に合わせて無防備に動いていた。

 

 

「でっけぇ……これがEカップ? もっとあるやろ」

 

 

 服の上から鹿狩の胸を鷲掴むと、それが偽りの乳では無いことが感覚でわかった。ズッシリとした重量感、指に沈む肉の感覚。パッドで盛ってるならこうはならない、間違えようのないナマモノの感覚と温度。

 

 胸を揉まれてるというのに鹿狩はうんともすんとも言わない。どうやら睡眠薬を少々盛りすぎたようだ。これなら多少乱暴しても事が終わるまでは目を開けないだろう。

 

 

「おい、もうヤッちまそうぜ」

 

 

 坂巻の奴が勝手に鹿狩のパンツを脱がせ始める。

 

 

「うわっ。こいつパンツに染み作ってる、実は期待してたんかな?」

「おりものやろ。急に起きた時用に丸めて口に突っ込んどけ」

「おっけー!」

 

 

 坂巻は言われた通り鹿狩のパンツを丸めると、徐にそれを口を突っ込んだ。

 

 

「おい誰がお前の口に突っ込めと言ったよ。馬鹿なんか」

「ひはふほは?」

「違ぇに決まってんだろ。急に起きた時用っつったやろが。頭使えや」

「へひー」

 

 

 坂巻はパンツを吐き出し、そのままそれを鹿狩の口に突っ込んだ。おぇ、気持ち悪。

 

 

「ぎゃっはは! ざまあないな。コイツ、寝てる間にこんな事されてるなんて予想も付かんやろ!」

「辻井テンションたっかいな〜。ま、予想外ではあるやろな。こーゆー女、自分が強姦とかされない人種やって無意識に思いがちやし。危機感無いんだよな。そう考えたら確かにざまぁとも思わなくもないわ」

「いやいや、予想はしてたやろ。さっきやたらと俺らの事警戒してたやんけ。ま、結局俺らが一枚上手だったわけだがよ」

 

 

 ここに来た時点で詰んでいたんだ。どうせあそこで飲み物を飲まなくても、最終手段で無理やり口の中に薬を流し込んでやれば数時間は拘束出来た。自衛するならそもそも来るべきではなかった、コイツは選択を見誤った。

 

 

「ゴムは?」

「要らんやろ。孕んだら腹でも蹴ってやろうぜ」

「鬼畜やな〜。俺の子だったら産ませてやろっと」

「若い内に子持ちとか後悔するやん絶対」

「娘が産まれたら肉便器二号としてレンタルサービス開始するわァ」

「お前がこの世で一番の悪だな、坂巻……」

「堕胎宣言する奴に言われたかねぇ!」

 

 

 堕胎の方が落とし所としては妥当だろうが。どう比較しても、子供産ませて肉便器にさせるとか天秤で釣り合わねえくらいの悪行だろ。

 

 

「誰から行くよ? 一発目」

「男気ジャンで決めようぜ!」

「男気ジャンで、負けが一番? 勝ちが一番?」

「勝ちは譲り、な。負けが一番手」

「まるで罰ゲーム扱いやな。了解〜」

 

 

 辻井、坂巻、木下と四人でジャンケンをする。結果は俺の一人負け。本当に俺、賭け事系の勝負で負け側を引くの多いな。今回はそれで都合良かったが、自分の勝負運の無さに少しガッカリする。

 

 

「動画撮っちまお〜」

「おう。販売用のアングルで頼むわ」

「へいへい」

 

 

 坂巻が俺の斜め後ろに移動し、俺の顔が映らず鹿狩が多く映るような撮り位置を取る。準備は出来た。木下には出入口付近に立ってもらい、辻井はする事も無いのでテキトーに壁にもたれかかりヤニ吸って待ってもらうことに。

 

 邪魔なスカートを上にあげてズラし、顕になった鹿狩のナカに指を入れる。濡れてはいなかった。やっぱ期待なんかしてなかったな。単なる生理現象だった、パンツの染みは。

 

 

「狭ぇ〜コイツん中。指一本でギッチギチやぞ」

 

 

 動画を撮ってるとの事なので、前戯の段階は鹿狩の体の説明を口で言ってやることにした。こうした方がリピーターが多くなる、これから何本かコイツで動画撮っていくつもりやし、掴みの為の説明はしっかりしておかないとな。

 

 

「佐藤もよくこんな小さなまんこに出し入れ出来たな〜」

「アイツ意外と粗チンなんちゃう?」

「いやデカかったぞ、女悲鳴上げてる所見たし」

「ヤる前に余程丹念に解してたって事やろ。愛が深いわ。なんで喧嘩別れするかね」

 

 

 言いながら中指を曲げて前戯を始める。具合が良くなってきて指の滑りが良くなり、薬指も突っ込み推し進めると意識の無いはずの鹿狩の膣はどんどんほぐれていく。

 

 突っ込んだ指がナカの肉に締め付けられる。ギューッ、ギューッと等間隔の筋肉の収縮が起きる。

 

 

「おー。コイツ寝たままイッたわ」

「マジ? 人って寝たままでもイけるんや」

「夢精みたいなもんやろ。……うわ、指びっちょびちょ。白いブリンブリンも出てきたし、コイツ感度高ぇな〜」

「早く入れろよ〜、後がつっかえてんぞ〜」

「焦るなよ。まだ始まったばかりやろが、楽しませろや」

 

 

 指に付いた汁を鹿狩の服に擦り付け、汗でしっとりと濡れて冷えた鹿狩の胴体を抱きながら、ゆっくりと一物を挿入する。

 

 

「……っ、やっぱ狭ぇ。け、ど……!」

 

 

 腰を掴んで一物の芯を捉え、そのまま平行一直線に力を込めて挿入を続けると、中の肉を強引にかき分け、奥のゴリっとした所まで入れる事が出来た。

 

 

「あがっ!? ……ぁ、ぁあ!?」

「うわっ起きた」

「おはよ〜鹿狩さん。よく眠れた〜?」

 

 

 痛みで眠りを妨げられたのか、苦悶の顔を浮かべながら鹿狩の目が開いた。だが、口に詰め込まれた布のせいで叫ぼうと声は響かない。頭を振りながら涙を流す鹿狩の両腕を押さえ、引き抜き、また挿す。

 

 

「ああぁぁあがががっ!? んゔぅう!! んんんうぅゔぅううっ!!!」

「そっか〜そんなに気持ちいいか〜。全然気にしなくていいよ、お礼なんか要らないよ〜」

「んんんぅぅうううぅっ、ううぅあぁああぁああ゛あ゛ぁっ!!! ゔぅっ!?」

 

 

 じたばたと暴れるので腹を殴ってやると、小刻みに鹿狩の肩が震えた。もう一度殴ってやり、何度か殴ってやると大きく体が跳ねた。

 

 

「うわー。コイツMなんだ。引くわァ」

「え、もしかして殴られてイッたん? うっわ逸材やん!!」

「へぇ〜! なあ、俺も試していい?」

 

 

 そう言って傍で座って眺めていた辻井がタバコを持ったまま鹿狩に近付いた。

 そして、その火を鹿狩の胸に押し当てた。

 

 

「んんんぅゔゔゔぅっ!!!?!?」

「おー。これでもイくんや! ぎゃははっ、なんか魚みてぇ!」

「いやお前さー、ふざけんなや。胸吸えなくなったやんけ」

「あ、ホントだ。わりーわりー」

 

 

 平謝りをしながら新たなタバコに火をつける辻井。コイツの考え無しな所に嫌気がさす。ったく、にしても今ので乳首立つのかよ。分からねえな〜、女の性感。

 

 

「さてっ。じゃあそろそろ本番と行くか〜」

「ゔ……ぅ……。……あか、ぁ〜」

 

 

 ぐったりと体を仰け反らせながら震えていた鹿狩が、自分の口に詰め込まれたパンツを摘んでそれを取り出した。

 

 

「……あー。くそっ。もう履けねえじゃんこれ」

「おっ? どうした鹿狩、意外と余裕ありそうじゃんおまっ」

 

 

 ドスッて音がしたかと思えば、目の前が暗転した。

 一瞬何があったか理解できなかった。気付けば俺は床に仰向けで倒れていて、辻井も坂巻も信じられないものを見たかのような目を俺に向けていた。

 

 鼻っ面を殴られた事を理解して、瞬間的に頭が熱くなった。女に殴り倒された、そんな事があっていいわけが無い。

 

 

「鹿狩ィ……!」

「痛かったぁ。女には優しくしろよお前」

 

 

 そんな事を言いながら鹿狩はスマホを弄っている。なんでそんな余裕がある? この状況が理解出来ていないのか!?

 

 ……何かおかしい。何か変だ。鹿狩の余裕な態度といい、まるで最初からこうなることを想定していたかのような……?

 

 ここに来てからあんなに俺らを警戒してた奴が、そもそも初めから何の考えもなしにグレてる男が複数人いる場に足を運ぶか? その時点でおかしかった。

 

 

「……おい。そういえば木下は?」

「そういえば。おーい木下ァ?」

「ん? おっ、終わったんか?」

「は? 誰おまっぇ」

 

 

 バキャッ! とガラス系の破壊音が聞こえた。振り返ると金髪ロン毛の、長身の男がそこに立っていた。坂巻は洗面台にもたれるように倒れてて、その顔から血を流していた。音の正体は鏡が割れる音だった。

 

 いや、まさか。何故ここでこの人が出てくる!?

 

 

「よっ。航太。ご無沙汰〜。中に出したん? 安心していいよ。八尋、ピル飲んでっから」

「出されてねぇ〜わ。その前に殴っちった」

「あ〜? 起きてんじゃん。眠剤飲んでよくこんな短時間で起きられたな?」

「遊びで使ってるヤツと違うヤツ飲まされたみたいっすね」

「道理で早いわけだ」

 

 

 男は、完全に意識を失ってる木下を引きずりながら公衆便所に入ってくる。坂巻も引きずり、坂巻の手にナイフを握らせ、それを木下目掛けて振りかぶった。

 

 

「待って待って。殺しはやばいでしょ!」

「背中なら大丈夫やろ」

「失血死かなぁ」

「刺したままにしときゃそんな出ねえよ」

「何時間も放置する前提やとしたらリスク高すぎなんだよなぁ。とにかく殺しは飛躍しすぎ! 今のままでも二人がボコり合ったで辻褄合うじゃん! 殺しまで行ったらちょっと取り返し付かないって!」

「そうか」

 

 

 男はナイフを折りたたんで上着のポケットに入れた。腰が抜ける。この人は、冗談でそんな事はしない。

 

 

「なんで……廻君がここに居るんすか」

「おーう。俺その女と清く正しいお友達なんよ。ピンチには駆けつけるべきっしょ?」

「どういう事すか!? なんで鹿狩と繋がってんすか!? ってか、まさか鹿狩、お前最初から知ってて俺達をハメたんか!?」

「どっちかと言うとハメられた側ですが」

「座布団二枚」

「ん〜ちょっと刺さったみたい」

 

 

 鹿狩と廻君が笑い合う異様な光景が広がっていた。何でだ、何で鹿狩が人殺しの院卒フリーターなんかと付き合いがある!?

 

 ……まさか、樹利を通して知り合ったのか? でもどうしてここまで仲良く、セフレとか? いや、セフレ如きで相手の危機に乗り込んだりしないだろ。じゃあなんだ、今カレって事か!?

 

 

「おい、そこの坊主頭」

「はっ、はいっ!」

 

 

 廻君が辻井に声を掛け、その足元に百均で売っているような安っぽいトンカチを投げた。

 

 

「それで一発航太をぶん殴ったらどっか行け。お前だけは逃がしてやるよ」

「えっ!? 何でっ」

「知らねえ。八尋がそれでいいんだと。聞くなら八尋に聞きな」

「どういう事だよ鹿狩!?」

 

 

 辻井が鹿狩に食って掛かろうとしたが、廻君が鹿狩の味方である以上それも出来ず、ただ近付くことはせず距離を取ったまま剣幕だけ凄んでそう聞いた。

 

 鹿狩は、「あはは……」と困ったように笑った後言った。

 

 

「いやぁー……辻井君って、いざ悪い事をしようにも出来ない性質でしょ? ビビりっつぅか。あと、この中で一番雑魚いポジにいる友達未満君なのも分かってるし。流石にそんな可哀想な奴に、酷い事なんか出来ないよ」

「……っ!」

 

 

 強く歯を食いしばる辻井に、もう一度鹿狩は焦ったように困った作り笑いで「ご、ごめんごめん! 煽った訳じゃなくて!」と付け足した。

 辻井の目の温度が冷え込んでいくのがわかった。駄目だ、それは挑発だ辻井。怒るな……!

 

 

「今泉さんをレイプしようとした時も失敗したんでしょ? さっきも直接私に触らず、タバコで焼く程度しか出来なかったわけだし。もしかしたら童貞なんじゃないの?」

「……てめぇ、舐めてんのか」

「舐めてない舐めてない! 違くて、やっぱ見劣りはするじゃんか! あんまりにも可哀想やし、その、普通に恵まれてそうな八木君じゃなくてお前にだったら、別に中に出されても体験版みたいな感じで楽しんで貰えたらとか、ね?」

「だっはははっ!!! 体験版っ!? その坊主頭まだ女経験チュートリアルなのかっ!! いいなそれっ、おもろいわ! ぎゃっはははは! じゃあよ、ここで筆おろししてやれよ八尋」

「ここでぇ? 折角ならヤリ部屋連れてこーよ。ね、辻井? 不良ぶってる癖に、女の部屋にも入ったことなきゃヤリ部屋なんて微塵も知らない世界だもんね?」

 

 

 服をわざわざ直した鹿狩が立ち上がり、腰を抜かしてから胡座をかいたままだった辻井の目の前まで来ると、しゃがんで、目線を合わせた。

 

 

「散々イキッてんのに、本当は自分より大人しい雑魚どもが自分よりも経験してて、自分が一番未熟なのって、クソ恥ずくない?」

「ッ見下してんじゃねぇこのクソ女ァァァァアッ」

 

 

 威勢よく叫び鹿狩のスカートを掴んだ辻井だったが、そのまま顔面に膝を入れられて叫びは中断された。

 

 歯が折れていた。辻井の歯が床に一本落ちた。同時に、鹿狩が「いたたっ!」と言いながら自分の膝を撫でていた。歯が刺さって肉が少し抉れたようだった。

 

 

「なーにやってんのお前」

「くっそー! 女の服まじで暴力すんのに向かん! 不快! 布足りない!!!」

「そりゃそうだ。なあ、航太よ」

 

 

 後ろの方では一方的に辻井が鹿狩にボコされる音が続いている。そして俺の脳天には、先程辻井に投げ寄越されたものと同じ物の釘抜き側が置かれていた。

 

 

「八尋曰く、あの坊主さえ五体満足ならなんでもいいらしいんだが。どうする? 俺、最近金欠なんだよね」

「こ、こんな場所でも人は来ますよ。大体、中学生男三人分を引きずって誰にも見つからずってのは無理あるでしょ」

「殺しはしねぇって、八尋だって止めてたろ? まあ、アイツ殺し以外は特に止める気ないっぽいから、障害が残る程度には頭割っちゃったりするかもしんねぇけど」

「勘弁してください。人の女に、ちょっかいかけた俺らが悪いです。もう二度と逆らわないんで、この場はどうか」

「人の女ァ? おい八尋ー」

 

 

 鹿狩からの暴力はもう止まっていた。振り向くと辻井は目を大きく開き、涙を流しながら自分の両腕を睨むように見ていた。

 

 辻井の両手の指が、何本もあらぬ方向に折れていた。辻井はあんなんだし部活もよくサボるが、野球部のスタメンだし本人だって野球が好きで幼い頃からずっとやっていたと言っていた。

 

 その腕を、球児に取ったら命の次くらいには大事であろうその腕を、一番大切な時期に潰されていた。

 

 アレは、辻井にとったらあそこまでされたら五体満足なんかじゃない。実質殺されたようなものだ。

 十年間描いてきた夢を、努力を、他人の手によって強制的に諦めさせられたのだから。

 

 鹿狩は大便器の方へトンカチをテキトーに投げ捨てた。流れないだろ、流石に。

 

 

「なに?」

「お前今彼氏おるん?」

「いねぇ〜わ。なに、嫌味?」

「やんな? 誰と勘違いしてんの、お前?」

「いや、だって廻君が鹿狩に協力するとか、意味分からんですし……」

「そういう事か。まあ、アレだわ。一宿一飯の恩義?」

「一宿じゃねえな?」

「細かい事指摘すんなや」

 

 

 一宿一飯の恩義? この人、鹿狩の家に出入りしてるのか?

 

 そういえば、そもそも廻君って住所不定というか、自分の家を持っていなくて仲間の家を転々としてるか、ホームレス同然の生活をしてるって聞いた事がある。

 

 もし鹿狩が自分の家にこの人を住まわせているとしたら。家人である鹿狩の危機は自分の安息の危機にも直結する。そういう事なのか!

 

 

「ま、そういう訳やから。恨むなよ」

 

 

 そう言って廻君がトンカチを振りかぶる。嫌だ、俺は廻君に思い切り体当たりをした。が、全然相手には通用していなかった。体幹と体重が違いすぎるのだ。

 

 

「殺しはナシだからね!」

「少年法チケットまだあるから使っとかないとじゃね〜? 有効期限あと一年ぞ」

「鬼の子なのかな? 気絶程度で済ませて! もし取り調べとかで呼ばれたりしたらソイツらの家族情報渡すからさ!」

「先渡しにしてくれてもいいんだが。了解っと」

 

 

 そんな呑気な調子で会話しながら、廻君は思い切り俺の頭を打ち払った。

 強引に世界から色が消され、目の前は真っ暗になる。鹿狩八尋、とんでもない女に手を出してしまったと、この時になってようやく後悔が襲った。

 

 

 

 *

 

 

 

「ほれ。わらび餅」

「わーい! もちゃもちゃちゃっ」

 

 

 八尋に依頼された流れでは、公衆便所の見張り役をボコして茂みに置いた後、中から人が出てきたら乗り込んで『辻井』とかいう坊主頭以外を半殺ししてくれという事だったが。結局その坊主頭も、八尋自らがボコしてしまったから本末転倒じゃねえか、と思いつつ。

 

 公園の近くを走っていたわらび餅の移動販売車で買ったわらび餅を美味しそうに咀嚼する八尋を見てると、そこまで気に留めるほどのイレギュラーな事態という訳でもなさそうなので指摘はしないでおく。

 

 

「兄ちゃんにもサービスで付けてやろうか?」

「お、いいんすか?」

「いいよいいよ! 兄妹仲良く食べなね!」

「ははっ、ありがとうございます!」

 

 

 親切なおじさんからわらび餅を貰い、日陰に移動し並んで食べる。夏は夜が来るのが遅い。もういい時間というのにまだ日差しは少し暑くて敵わん。

 

 

「兄妹に見えるんだな。私達」

「んだよ。カップルに見えて欲しかったのか?」

「うん。まるで私がガキ扱いだ」

「無理だろ。お前どう見ても小学生やん」

「せめて中学生だろ! おめぇがおっさんすぎなんだよ、19の癖に!」

「まあカップルに見えなくてもギリ成立する年の差だよな。妥当妥当」

「うぐぐ。中三っつったら少しくらい大人に見えてくるシーズンだろ〜!」

「並の中三女子でもまだまだガキ臭さは抜けんのに、お前なんか尚更ガキにしか見えないっての」

「はぁ……胸ばかりブクブクと。タッパが欲しいよタッパが」

「もう諦めろ〜」

「期待持たせろよそこは〜!!!」

 

 

 顔を真っ赤にして怒るのだ、もうそれ以上の成長は望めないだろ。諦めてロリ路線で固めればいいのに。

 

 

 

 

 

 八尋との出会いは、樹利から送られた妙ちくりんなLINEがきっかけだった。

 

 

『廻さんに相談したい事があります』

 

「何だこれ? 廻さん? きっしょいな」

 

 

 樹利は俺の事を廻さんなどと呼ばない。普通に君付けで呼ぶし、こんな堅苦しい敬語で話しかけもしないし、相談なんかする素振りもない。アイツは悩み事は他者への嫌がらせで発散するタイプで、そもそも解決の必要が無い人種だ。そんな奴からこんなLINEが送られてきたら、そりゃ気味悪がりもする。

 

 だから逆に返信を返してしまった。普段なら数時間後に返すような相手なのに、好奇心が勝った。

 そうしたら八尋のLINEのリンクを貼られ、八尋はそれを送った瞬間に樹利のトーク履歴を消してしまったとの事だった。

 

 

「はじめまして。鹿狩です……」

「お、おう。はじめまして」

 

 

 それから二人で会うまであっという間だった。八尋は樹利と上手く行っていなくて、樹利が唯一"見下していない"先輩である俺にアイツの色んな話を聞き出そうと、連絡してきたとの事だった。

 

 だが実際の所、八尋と話した内容で樹利関係の物はほとんどなかった。八尋は俺と繋がると、数珠繋ぎのように別の人間にも繋げるよう俺に頼み込んだ。

 

 何かしたい事があって、その人材を集めてるのだと薄々勘づいた。何をしたいのかは全く想像つかなかったが、それなりに必死だったから強く興味を惹いた。

 

 

「私の家に住みませんか? 廻君」

「は? 何言ってんのお前」

 

 

 ある日呼び出された時、八尋はそんな提案をしてきた。

 この頃になると、俺は八尋の歪さというか、空虚さが少し視える様になった。

 

 

「調べちゃいました。廻君、一家殺害の大殺人鬼だったんですね」

「あー……調べちゃったか」

「うん! だから少年院出た後も、家族には勘当されて、悪くない友達からも縁を切られて、アウトローに憧れる後輩や友達の家を転々としてるんでしょ?」

「そう面と向かって言える事じゃないぞ、それ」

「んー。これは一種の契約をする為に出してる話なので、特に深い意味は無いし何にも思わないです! いいじゃないですか、全然あるよ。人を殺す事なんて珍しくない!」

「珍しいだろ」

 

 

 珍しくなきゃ無法地帯過ぎるだろ。法治国家じゃ、人殺しはマイノリティであれよ。

 

 

「ま、早い話、家無しの廻君にしばらく家をあげるので、私の手足となって馬車馬をして欲しいっていう話なんですけど」

「……はぁ? お前、俺みたいな犯罪者を捕まえて何がしたいわけ?」

「色々です。私、未来が分かるので!」

「未来が?」

 

 

 何を言ってんだこの子供、と素直にそう思った。だから無視するつもりだった。別に家なんて二日三日無くても構わないし、困ればアテは幾らでもある。こんな得体の知れない女子中学生の家に上がり込むリスクなど、わざわざ踏む方が馬鹿という話だ。

 

 

「あのな。ふざけるのも大概にしとけ。お前みたいな奴が家に男連れ込んだらどうなるかくらい分かるだろ」

「んー。それも込みで条件を差し出してるんですけど?」

「あん?」

 

 

 そう言うと、八尋は俺の目の前でワンピースをたくしあげ、発育途上の若さに溢れた裸体を俺に見せつけてきた。

 

 

「家もある。飯もある。女もある。付け加えて、親は月一帰るか帰らないかだし、それは前日には分かるし対策なんて簡単。邪魔者も、もう弱みを握ってあるから口出ししてこない。どうです? ノーリスクで至れり尽くせりじゃないですか?」

「……何企んでんだ。お前」

「何にでも使えそうな身寄り無し犯罪者とか握ってて得しかないでしょ〜。ねっ、廻君! 私の手足になってくださいよ!」

 

 

 ワンピースを下ろすとニッコリと、八尋はニコちゃんマークのような強引な笑顔を俺に向けてきた。

 

 素直に言って気味が悪かった。目は口ほどに物を言う、それなら彼女は酷く寡黙な人間で、虚ろな人間という事になる。

 何の感情も無くて、ただゴールに向けて決められたルートをなぞるだけの、猪突猛進な危うさしか無い目。目じゃ誤魔化しきれない腹の中を覆い隠すように、口がよく動き、目以外の器官が感情を出力している。

 

 俺は、こういう人間に貶められた。狂わされて、破滅した。

 そして、目の前の女の在り方は、俺を終わらせた人間と同類で同種だった。

 

 だが、今の俺に都合がいいのも事実なわけで。嵌められて困る事ももう俺にはない。

 俺はその日から、色んな面で八尋に世話になる事になった。

 

 

 

 

 

「しかし、よくアイツらがお前を犯す場所からその流れまで言い当てられたよな。お前本当に予言の能力とか持ってんの?」

 

 

 隣でわらび餅を刺せなくて苦戦している八尋に訊ねると、彼女はわらび餅を睨みながら言葉を返した。

 

 

「SFすぎでしょ。そんな能力持ってないよ」

「じゃあなんで言い当てられたんだよ?」

「状況を把握出来りゃ擬似的な未来予知は出来るって、昔の数学者は言ってましたね」

「なんだそりゃ。それをやったと?」

「や? 私そこまで賢くないし」

「じゃあなんでその話を出したんお前」

 

 

 わらび餅と戦いながら八尋は笑う。可愛い奴。普通にしてれば面白いのに、なんでこうコイツは表と裏とでここまで差があるかね。片思いしてる奴いたら泣くぞ。

 

 

「予想は着くでしょ。この地元で、アイツらが入り浸ってるダーツ屋さんなら私もよく知ってるし、その裏の公園がセックスし放題の爆サイ御用達公園である事も分かってりゃ、連れ込む流れになるのは確実やし」

「酒を断り続けりゃ無理やり眠剤をぶち込まれる。敢えてそうなるように誘導する事で酩酊でラブホまで着いてく流れを潰して、俺に場所の特定を確実視させた」

「そーそー。よく分かりましたね、理解ある彼氏くんだ」

「だれーが彼氏くんだふざけんな。二度と言うなよ」

「え、普通に酷くないそれは!?」

 

 

 八尋が抗議してくる。ポカポカと背中を叩いてくる。マジで妹としか思えないな、コイツ。

 

 

「で? なんでアイツらが出てくるまで待たせたんだ? ピルを飲んでるとは言え、性病やらなんやらのリスクがあるだろ」

「んー。性病とかは考えてなかったな。ま、簡単に言えば全員分の弱みを握るためだよ」

「弱み?」

「そー。ほら」

 

 

 そう言って見せてきたのは、八尋が持つ普段使いのスマホとか違う方の、古い機種のスマホだった。

 

 八尋以外の人間が見えるよう隠し撮りされた映像。なるほど。個室は一つしか開かなかった。それは偶然なんかじゃなく、事前にそうなるよう細工していたという事なのか。

 

 

「全員一度は顔映ってるからその時点で弱みにはなるけど、更に脅すならやっぱ一人ずつの挿入中出しシーンまで入れないと。言い逃れできない証拠を見せれば、皆言う事聞いてくれるでしょ? ま、コイツらもコイツらで動画撮ってた訳だし、こんな仕込みしなくても良かった説あるけどね」

「なるほどなぁ。……ん? おい、でもお前、中出しされる前に航太の奴を殴ってんじゃん。何でだよ、その説明だと抵抗しちゃだめだろ」

「うんそこは本当に私も想定外だったんだけど、コイツら私への扱い酷すぎ。腹殴ってタバコで胸焼かれて尻の穴にもナニを突っ込もうとしたんだよ? 余裕無かったよね」

「レイプならそれくらいの事はされるんじゃねえかな……」

「くそーっ! 見積もりが甘かった! ただ精液ぶち込まれてぶっかけられる程度にしか考えてなかったー!!!」

「それも相当な事なんだけどな。普通の女ならトラウマもんだろ」

 

 

 コイツは普通じゃないから当てはまらないが。平気で自分の体を賭け金としてベットする女だもんな。多分先天的に頭のどっかが壊れてるんだろうな。

 

 

「まだ気になる点があるんだが」

「今日質問多くなーい?」

「手足として本格的に使わされたのは今回が初なんでね。なんであの坊主頭だけは例外的に許すってなったんだ?」

 

 

 俺の質問に、八尋のわらび餅をいじる手が止まる。入れ替わった、そう雰囲気で察した。

 

 

「……辻井は、今泉さんにレイプをしかけてゲロを吐いたんだって。あの子に欲情出来て、あの子に同情出来る、めちゃくちゃ良い奴なんだよ。アイツ」

 

 

 薄っぺらいにやけ顔がこちらを向く。

 

 

「めっちゃ利用出来んじゃんって思ってさ。アレこそ大切にしなきゃなんだぁ。辻井翔平。死にたくなるまで使い潰す為にも、沢山俺を憎んでくれないと」

 

 

 つまりあの辻井とかいうやつも利用する為に、わざとあんな風に挑発し嫌われるよう仕向けながら中途半端にしかボコさなかったわけか。

 

 いきなりヤリ部屋とか言い出すからビビった、コイツ自分の家の事そんな風に呼んでるのかと思ったわ。相手の劣等感を滲み出させる為の表現だったのな。

 

 えぐい事する。あんな事を言われて、野球部なのに腕を壊されて、その張本人にボコされるとか。辻井とやらのプライドは相当傷ついてるだろうな。それこそ、他事に意識が向かないくらい、苛烈に八尋の事を憎むぐらい。

 

 

「……中二病ってやつか? そういうの寒いからやめとけよ、そろそろ卒業しろ」

「むっ。そういう言い方やめてくださーい! もう、人が親切に今後の方針を教えてやろうとしたのに!」

 

 

 元に戻った。よかった、八尋のするあの目は昔を思い出すから嫌いなんだ。出来るだけ俺には向けてほしくない。

 

 

「そろそろ帰ろうぜ」

 

 

 わらび餅を食い終えたのでゴミ箱にゴミを入れ、八尋に上着を被せてやる。

 

 

「んー? なに、暑いんだけど」

「俺もあちぃからそれお前が着てけよ」

「は? なんで? 嫌がらせ? 最近涙脆い事にしてるけど、私。大丈夫?」

「いいから着てけ。ノーパンノーブラなんやろ。透けたらどーすんの」

「あら。確かに」

「言わせんなよ、台無しやろが」

「ストレートに言えや。私にラブコメかましたらそれこそ本物のロリコンやろお前」

「殺すぞ」

「本物が言うと脅威度が違うなぁ」

 

 

 憎まれ口を叩きながらも八尋は俺の傍を離れず、結局夕飯の買い物まで一緒にする事になった。

 先程までと違い、年相応に楽しそうに着いて回り夕飯を考え食材を突っ込む八尋を見てると、やはり過去の映像がフラッシュバックして、少ししんどい。

 

 ……お兄ちゃんは、まだ死ねないみたいだ。

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