※この作品はR-18です。

子供に戻ったと思ったら女体化させられるし女として生きるべきか男のまま生きるべきか分からない俺はスワンプマン   作:千佳のはんぺん

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猫は気まぐれで神出鬼没

 そういえば、都子って今何してんだろ?

 

 首絞めぶっころ未遂以降、都子は一度も学校に顔を出していない。

 

 コンビニに行ったりラーメン食ったりカラオケ行ったりと、割と外出する機会は多いし近所だからオフで会う事あるかなって思ったけどそれもないし、マジでずっと家の中に引き篭ってるのだろうか?

 

 

「まさか首吊ってたりとかー……してないよなぁ?」

 

 

 いやいやそんな。ある筈ないって思いますが。でも、家の中で人が死んでそのまま放置された死体が日の目を浴びず人に忘れられるみたいな話って沢山あるし、それを考えたら怖くなった。

 

 消えた○○を探せ! みたいな導入で、密室なのにどこに隠れられるねーんみたいになって、実はその○○は死んで腐ってグチャグチャのシチューになって床に染み込んでます。みたいなエグすぎるサスペンスホラーだったら泣いちゃうよ。都子シチューは流石にエグすぎ。来世以降記憶かっ消えたとしてもシチュー食えんくなるわ。

 

 LINEをしようにも多分ブロックされてて既読もつかないし。電話も繋がらんし。

 

 

「行ってみるかあ」

「どこに行くん」

「んー。失踪した友達のお家に訪問しようかと」

 

 

 俺の背中をグッ、グッと親指で押してマッサージしてくれている廻君に説明する。いや〜、極楽極楽。年上をこき使うのまじ脳ミソぱちぱちいうくらい気持ちいい〜や。

 

 体を起こしてブラを着け、服を回収するために自室に続く階段までぺたぺた歩く。

 

 

「男ん家?」

「んやー? 女だよ。なんで?」

「またいつもの頭おかしい行動取るんかと思ってな。もしそうなら俺も外出られるよう支度しといた方がえぃし」

「え、なに? 頭おかしいっつった? そういう風に思ってんの私の事」

「遅くなるのか?」

 

 

 スルーかぁ。

 

 

「ん〜、日没までには帰るよ。ご飯なに?」

「お前が作れ」

「ん? え? あれっ、なんか今日機嫌悪い? 疲れてる?」

「疲れとるわ。深夜勤してきてんのに風呂も入らせんとおはようのゲームに付き合わされて、やっと終わったと思えばマッサージなんかさせやがって」

「嫌なら別に断って寝りゃよかったやん」

「……お前の頼み方がせこいんじゃ」

「ふむ? つまりお兄ちゃん呼びするのが廻君の弱点ってコト? シスコン?」

「殺すぞ」

「本物が言ったらかんでしょそれは」

 

 

 軽い調子で言ってみるが反応がない。何考えてるのかわかんなくて怖いね〜この人。殺人の前科持ちだからな〜。パンツのくい込みを指でチョイチョイっと直し、そそくさと階段を昇る。

 

 

 

 

「また来ましたな都子ハウス。紙一重で大島てるデビューしかけた都子ハウス」

 

 

 廻君のオヤツを用意してやり、テキトーな服を繕い、都子ハウスまで来て玄関のチャイムを押す。ピンポーンと、レオパレスなんかで使われてるチャイムと全く同じ音が鳴った。

 

 反応は無し。

 

 

「ふーむ。偶然出掛けてるのかしらね〜?」

 

 

 都子ルームを見上げても影が動く気配はない。カーテンは締め切られていて中の様子は分からないし、こうして玄関先に立っていると人の気配は感じられないように思えた。

 

 

「車が停まってないのはいつも通り。でもチャリも置いてあるんだよなぁ。遠出はしてないって事かな」

 

 

 そもそも今の都子がプライベートでどんな行動を取るのか全く知らないんだよな。駄菓子屋とイオンを往復する昔とは行動パターンが異なるだろうし、思春期を迎えて女が芽生えた都子が行く所といえば、何処が思い当たるのだろう?

 

 

「心が逝って廃人と化してる? それは流石に物語性高すぎ。じゃあやっぱ首吊ってる? それもまたストーリ性ありすぎ。現実味がねぇ」

 

 

 腕を組んで考える。むーむむむ。うわ、カナブン死んでる。ないものねだりじゃん。

 

 

「彼氏ハウス……あれ? てかそうじゃん、都子彼氏いんじゃん」

 

 

 暑いので都子ハウスの門の裏の日陰にしゃがみ考えていたら、そう言えばと一つ気になる点が浮かんできた。

 

 

「アイツ、俺に謎のレズ告白カマしてきたよな……? 佐藤と付き合うくらいなら私と付き合って、みたいな。彼氏さんが居るのにそんな事言っていいんけ? 浮気やんそれ」

 

 

 あの時都子に彼氏と別れたのかみたいな感じの事を茶化したが、それも否定されたし。つまりまだお付き合いは続行していて、その状態のまま俺に告ってきたって事になるんだよな?

 

 恋多き女ってコト? 命短いタイプの恋すべき乙女ってコト? 男も女も行けて恋多いってすごいな、女版のゼウスじゃん。

 

 

「とりま彼氏さん宅にいる節が一番濃厚かぁ。一応不安だし、家に不法侵入カマして中の様子でも」「あんた何してんの」

「ひゃわぁぎゃぎゃっ!?!?」

 

 

 帰ろうと立ち上がり門の方へ行こうとした瞬間、死角からひょこっと都子が現れておっぱいにちょっと顔面突っ込んだ。柔らかいヤッター!

 

 

「あ、や、えーっ都子!? あっ、生きてたんだねえ!」

「当たり前じゃん何言ってんの」

「いやいやっ! だって全然連絡つかないし! 学校来ないし外でも見ないし、心配してたんだよっ!」

「数年ガチの失踪カマしてたあんたに言われたくないわ」

「ぐぅ」

「撮影の仕事が入っててしばらくここ離れてたんだよ。仕事中だから余計な情報は絶とうとLINEとか見ないようにしてたの。仕方ないでしょ?」

「撮影? あー。グラビア的な?」

「……近いけど、変な想像したでしょ。殺す」

「わっ、ちょっみやっ、あははっ!! くすぐりぃ!? あはっ、わひゃひゃひゃひゃっ!!?」

 

 

 ほっぺ握り攻撃を食らうのかと思いきや、ガシッと抱き着かれて脇の下や脇腹を指でくすぐられた。拘束を振りほどくことは出来ず、体に指をそわされるたびに変な笑いが込み上げてきた。

 

 

「あははひゃひゃっ、都子っ、許してっ!! それよわっ、ひゃははははははっ!!?」

「女の子になってもくすぐり弱いんだ? 体質って変わらないんだね〜」

「ひゃんっ!? ちょっと、耳ガブはくすぐりとかじゃないじゃんっ!? あひゃっ、ふひゃひやひゃっ!!? んっ! ちょっ、汚いだろっ!? 舐めんっ、んひゃひゃっ!?」

「しょっぱいね〜鹿狩くんって」

「汗かいてるからぁっ!! てか人の皮膚ならしょっぱいの普通ですからぁ!!! うっ、あひゃっんひひひははっ!! あひゃひゃひゃはははひひひゃひゃっ!!! ゆるひてっ、ごめんてぇ!!」

 

 

 責め苦に耐えかねて必死に許しを懇願する。もう夏も始まっているというのに都子にもたれかかる、こんな姿を誰かに見られたらあらぬ勘違いをされそうだ。

 

 

「あ、どうも〜。初めまして」

「えっ。……あ、どうも」

 

 

 誰かに見られた。俺の知らない、年上に見える男子だった。

 

 それと、その横に朔月小鞠が立っていた。あまり会いたくなかったかもなぁ……。

 

 朔月さんは俺と一瞬目が合うと、急いで逸らして地面の方に目を向けた。アスファルトが日光を反射しているのによくそちらに目を向けられるものだ。ちょっとだけ称賛。

 

 

「あ、紹介が遅れてた。そっちの男子は私の彼氏の佐久間(さくま)君」

「佐久間拓真(たくま)です。よろしく〜」

 

 

 彼氏! そうなのか、この人が噂の……。

 佐久間、とやらは前世でも知り合いにならなかった初見の人間だ。髪はパーマによって緩くウェーブがかっていて、艶のある黒髪で、どことなく濡れ感があって儚げな雰囲気を醸し出しているイケメン。

 

 美意識高め男子だ。都子の好みが如実に分かるなあ。

 

 

「こっちは幼馴染の鹿狩八尋。先に言っとくけど、佐久間君にちょっかい掛けたら本当に殺すからね?」

「掛けないよ! いい加減そういう扱い辞めてくださーい!!」

「……よく言うよ」

 

 

 ボソッと朔月さんがそう呟いたのを聞き逃さなかった。あぁ……不潔ビッチのイメージ、完全に定着しちゃってるなあ。

 

 朔月さんとの仲を修復するのは不可能なのだろうか。かつての仲良くやれていた頃を思い出すと切ない気持ちになる。メランコリックでございますわ……。

 

 

「じゃ、じゃあ私はこれで」

「ん? なんで、上がっていきなよ」

「え゛。なんで」

「逆になんで? 遊びに来たんしょ?」

「えぇー……ま、まぁ?」

 

 

 遊びに来たというか様子を見に来たというか。だがそれを素直に言えば『私のことなんだと思ってんの?』みたいな事言ってまたくすぐってきそうだから言えなかった。

 

 この人加減知らないんだよなぁ。首絞めの時でもう十分理解しましたわ。興が乗ったら俺が泡吹くまでくすぐってきそうだよね。

 

 でも朔月さんと同じ空間に居るのはなー……。

 

 朔月さんと、それと彼氏君は都子ん家に来て遊ぶつもりだったろうし、わざわざ俺が三人の輪に混ざっても邪魔であろう。

 よし、この理由で何とか今日は切り抜けよう。

 

 

「でも三人で遊ぼうとしてた所に私入ると、邪魔だし」

「邪魔じゃないけど? ねえ? 二人とも」

「あぁ、俺は全然構わないよ」

「……うん。別に居てもいいと思う」

 

 

 いいわけねぇだろおぉ!? なーんでここにきても八方美人発動してんの朔月さん、明らかに俺を見下す目で見てたじゃん!

 耐えられるラインをもっとタイトに設定しようよ〜……。帰る方がむしろ失礼みたいな雰囲気に整えてんじゃねぇ〜よ!

 

 

「でも……」

「何? 声小さいんだけど。聞こえない」

「なんでもないです……」

 

 

 ひん。圧を掛けられて気を削がれたので黙って従う事にした。

 玄関の隅にちょこんと靴を揃えて脱ぎ、失礼のないような動作を意識する。怖いよ〜!

 

 

「さて、なにしよっか」

 

 

 都子ルームにて。四角いテーブルを四人で囲む。俺の右手には都子、正面には佐久間君、そして左手には朔月さんが座っている。

 

 嫌な汗が出てくる。左側の気配が怖い、ゴミを見るような目でこっちを見てくるよ〜うわあぁん! 鼻痒い、ほじりたい。

 

 

「シンプルにババ抜きでいいんじゃない?」

 

 

 都子の提案に朔月さんも佐久間君も乗る。平和だなぁ。都子がサラのトランプを出してシャッフルし始めた。

 

 

「じゃあドベはさっき話した通り。一問だけ、嘘も隠し事も一切無しに正直に質問に答えるって罰ゲームね」

「うんちょっと待って。ちょっと待って、手を止めて。何? さっき話した通り?」

「ん。元々小鞠と遊ぶつもりだったんだけど、佐久間君も今日は暇って言うから。私が仕事してる間に浮気してないか確かめる為にそういうゲームをしようって話になってね」

「佐久間君、信用されて無さすぎでは???」

「あはは……都子が心配性なのは今に始まった事じゃないし」

「なにそれ! 私の事面倒臭いって思ったでしょ?」

「思ってない思ってない! 彼女の事面倒臭いなんて思うわけないだろ」

 

 

 うわぁ。なんかこういう奴が1番浮気とかしそうだよな。綺麗事とか前向きな事しか言わなさそうやもん、かえって性欲が透けて見えるわ。

 

 

「ちなみに疑わしきは罰せよだから。質問に対して怪しい答えを出したら随時記録して、周りに真偽の確認を聞いて回るっていう特殊ルールもあるからそれを肝に銘じてね」

「ガチすぎるやろ。事情聴取やん」

「都子ちゃんって少し人間不信の気があるよね〜」

「人間不信とか言うな。こういうゲームで嘘吐かれるのって冷めるじゃんか」

「確かにっ! そうじゃなくちゃ意味無いしね、どんな恥ずかしい事聞いても」

「小鞠は一体何を聞くつもりなのよ……」

 

 

 お、朔月さんと都子が楽しく会話を交わしている。いいね、懐かしい光景だ。今なら俺も話に入っていったら朔月さんも優しく相手してくれたりとか……!

 

 

「こ、小鞠のする質問って恋愛系でしょ〜? 答え辛い質問辞めてよね〜、男子もいるんだしさっ!」

「……そうだね」

 

 

 はい素っ気ない〜。はいRADWIMPS〜。はい泣く〜。

 もう流れとか雰囲気とか関係なしに俺との会話全部切り替え無表情で返してくるやん! 愛想笑いくらい出来ないかなぁ!?

 

 

「っと、その前に。飲み物飲もうか。下から持ってくる」

「あ、それなら私が持ってこようか? うん、それがいいよ。三人とも何がいい?」

「なんで客のあんたが持ってくんのよ。待っててよ」

「ひん……」

 

 

 この場から逃げたかったのに適いませんでした。はぁ、今のやり取りで更に朔月さんの俺に向けている覇気が濃くなった気がするよ。胃がキリキリと痛む〜。

 

 都子が部屋から消えると、無言の時間が始まった。気まずい、朔月さんの方を見れない。それを見兼ねてか佐久間君は思った事をストレートにぶつけてきた。

 

 

「もしかして二人って仲悪い?」

「……」

「……あはは」

 

 

 うんなにがあははなんだろうね。我ながら、こういう時苦し紛れに笑って誤魔化そうとするの無様すぎて泣けてくる。小心者しかやらない癖だよね〜。

 

 

「二人ともめっちゃ可愛くてオシャレだよね。都子の友達って皆そうなん?」

「え。いや、どうだろう……」

「そのシャツ、ワコマリアのやつでしょ? 良い服着てるね」

 

 

 佐久間君が俺の着ているシャツを指してそう言った。すごいな、当たりである。柄だけで当ててくるとか服好きなんかな?

 

 

「君のはトラバストーキョーの奴でしょ? その熊さん可愛いね」

「え!? ですよねっ、ここの服めっちゃ可愛くて大好きなんです!」

 

 

 いや俺と会話する時との差〜。胸痛すぎて草〜。ここまで分かりやすく扱いの差を付けなくてもいいじゃないですか!! 学校でやってくれよそういうノリは、オフでやられると本当に涙出そうになっちゃうよ〜!!

 

 

「厚底の靴も凄い可愛かったし。服の好み合いそうだね、俺達」

「え〜! えへへっ、いきなりべた褒めしないでくださいよ。都子ちゃんに怒られるんで!」

「確かに、こんなに君と気が合うって知られたら拗ねて三日は口聞いてくれなくなるね。じゃ、この事は二人だけの秘密な? しーっ」

「あははっ! しーっ!」

 

 

 いや俺いるけど。二人だけじゃないけどね? 何ナチュラルに存在消してくれてるわけ。

 

 てか二人だけの秘密を共有するのやめろ、マジで浮気する前段階やんけその流れ。そういうの見るのが一番ハラハラするわ。

 

 

「……?」

「君も。しーっ、ね?」

 

 

 おー。こっちチラっと見て口に指当ててシーすんな。パチンと軽快にウィンクするな、イケメンが。

 

 

「ん? どうしたん? 俺の顔になんか付いてる?」

「……いやっ?」

 

 

 イケメンがっ! 死ねっ! こういう女情緒きめぇ〜、俺死ね!

 

 

「お待たせー。さ、はじめよっか〜」

 

 

 都子が戻ってきて各々にカードが配られる。

 お? 幸先が良い。結構セットになるカードがあるな。こりゃドベ尋問は避けられそうだ。いや〜、安全圏から高みの見物と行きましょうかね〜。

 

 

 

 

「はい。ドベは鹿狩くんね〜!」

「なんでだろう。本当に」

 

 

 なんで初っ端ババ引いてその後ずっと保有する羽目になったんだろう。顔に出てた? んなわけねぇだろ、漫画かて。

 

 一応背後を確認する。俺の手札が反射して見えるような物は無し。傷の確認をする。新品のトランプにあるわけがない。イカサマは無し。じゃあなんでやねん。

 

 

「じゃあ早速だけど〜」

「その前に。あの、一応コチラから話題のNG指定などを予めさせていただければと思うのですが……」

「何言ってんの? 無いよ? NGなんて」

「昭和のバラエティかな? 人の秘密を強引に掘り起こすなんて酷い話だと思いませんか!」

「それをゲームが始まる前に言えてたらね〜」

「絶対に私は出すからね。どんな時でも出すよ。ぐう!!」

「はいはい。で、早速質問なんだけど」

 

 

 はあ。諦めましょう。どうせ大した事ないお楽しみ目的の質問が来るだけだろ。交換日記みたいなものだ、気張る必要も無いか。

 

 

「鹿狩くんから見て、佐久間君はかっこいい? タイプに当てはまる?」

「うーーーん!!」

 

 

 あ、すごーい。こりゃ、答え一つ間違えたらてるてる坊主にされちゃうや〜。きっと今度はしっかり昇天させられるぞー? 即死トラップだぁ。

 

 都子の顔を見る。うん、すっごい笑顔。笑顔の圧。分厚さを感じるわ。おっぱい揉んで有耶無耶に出来ないかな。

 

 続いて佐久間君を見る。俺の目線に気付き、小首を傾げて「ん?」っと爽やかスマイル。

 こういう仕草、よくないよな。ずるくないか? 顔が良い奴がすると余裕感がかっこよさに変換される。

 

 俺、シンプル面食いかもしれん。まあ女の子に対してもおっぱいで判断してる所あるし妥当な互換か。でも、そう正直に言うのも都子の顰蹙買いそうだなぁ……。

 

 

「……どうだろう。タイプでは〜……ないかなぁ?」

「は? あんた面食いでしょ。佐久間君がかっこよくないって言いたい?」

「かっこいいと思います。都子が怖いので嘘吐きました。おめめハートです」

「は? あんた私の彼氏取ろうとしてる? また私から奪っていくわけ? いい加減にしてよ」

「じゃあどうする? どうすればいい? いっそ舌噛んだ方が早いかなぁ???」

 

 

 為す術ないので両手を上げてお手上げ〜ってしたら、都子は軽く笑って「冗談だよ」と言ってくれた。九分九厘ガチだっただろ、握り拳に怒りが籠ってたぞ。

 

 

「佐久間君まで奪うって言うなら、今度は本当に絞め殺すだけだし。だから冗談」

「え? 絞め殺……?」

「気にしなくていいよ小鞠。ほら、都子って変態首絞めサディストやし」

「おい」

 

 

 フォローしたのに何故か鼻を摘まれた。いてててて、爪を立てるな。加減してくれ。

 

 

「で? 気を使わずに評価するならどうなのよ。佐久間君は、鹿狩くん的にアリなの?」

「え、えぇ〜? えぇ……。うーん……私のタイプは……タイプってか、男に対してあんまりそういうのは無いかな……」

「何言ってんのあんた。頭大丈夫?」

「ん!?」

「八尋ちゃん、それは厳しいでしょ……」

「ん!!?!? いやいや、マジで男のタイプとかそういうのあんま考えた事ないし」

「だってよ。どう思う? 小鞠」

「この期に及んで……って感想かな」

「そんなに男にケツ振ってるように見えますかぁ!?」

 

 

 佐藤は特別例外として、他は余すこと無く告白を断って来ただろうが。みんな尻軽扱いしてくるけど、俺は意外と硬派なんだっつの。

 

 

「はぁ……かっこいいよ。中学生とは思えないくらい落ち着いてるし」

「あー。佐久間君高校生だしね」

 

 

 あ、やっぱりそうなのか。身長高いし俺らと接する感じも、なんか年下相手にしてるみたいだからそんな気はしてたんだ。高校生だったんだな。

 

 高校生にして年下の女子三人に囲まれるとは。

 とんだハーレムじゃん。羨ましい〜、立場変わらん? そのポジション俺も着いてみたいかも。

 

 

「もしかして仕事仲間的なやつ? 佐久間君めっちゃスタイル良いし、都子ともお似合いって感じするし」

「いや俺なんか全然、唯の一般人だよ。都子とはバイト先で知り合ったんだ」

「なるほどねぇ」

 

 

 バイト先。つまり客として来た都子をナンパした感じなのかな? チャラいねぇ〜。馴れ初めとしてままある事だが、あんまりエモさは感じないなぁ。

 

 

「私と、お似合い? 佐久間君が?」

 

 

 急に都子にガッと肩を掴まれた。何事?

 

 

「それ、本気で言ってる?」

「う、うん。美男美女って感じやし、性格も相性良さそうちゃう?」

「……」

 

 

 都子は俺を観察している。怖い。何考えてるんだろうね、また何か言葉ミスったかな。

 

 メンヘラ女とメンヘラ製造機男やろ。相性ぴったしやん。自撮りをインターネッツに流してそうな二人だもん、ふたりはプリキュアでしょ。

 

 

「えー。そうかなぁ〜〜、私達、そんなにお似合いかなぁ〜〜!!」

 

 

 おろっ? なんだなんだ、都子の奴、急にニッコニコになったかと思えば甘ったるい声を出し始めたぞ。

 

 

「まぁ、佐藤や鹿狩くんや幸太郎と違って佐久間君は大人っぽいし! 人に乱暴しないし! 私の気持ちも理解してくれるし!」

「あはは、べた褒めだ」

 

 

 佐久間君が照れたように笑い、二人の目が合うと体をくっつけイチャつき始める。ぐぬぬ、なんかムシャクシャする。見せつけてんのかぁ?

 

 

「はぁ。あー、もう。最初からイチャつくのが目的だったろ! 私をダシに使うのやめてくださーい!」

 

 

 と、イチャイチャイチャイチャしている都子と佐久間君ペアに文句を言って、椅子代わりに座っている都子ベッドに仰向けに寝転がった。

 

 佐藤と別れたばっかだから、普段思う事がなかったリア充爆発しろ! 的な感情が胸の底から湧いてくる。カップルうぜー、早く別れちまえ!

 

 

「はぁ……鹿狩くん」

「なんですかー! イチャイチャはもう終わりですかー?」

 

 

 仰向けのまま答える。都子のベッド、都子の香りがして気持ちいいな。こういう時、女体になってよかったと思える。男の身だったらこんな大胆に匂いとか嗅げないもんね。役得役得。

 

 などとくつろぎながら都子の残り香を堪能していたらスカートが下の方に引っ張れる感じがした。見ると、俺の両足の隙間、股下の布を都子が掴んでいるのが見えた。

 

 

「人の彼氏の前でそういう格好やめて? パンツ見せびらかすつもり?」

「あー、そっか。失敬失敬」

 

 

 体をゴロンって回してちゃんと座り姿勢をとる。全然気にしてなかった。自分で言うが、俺って表で女ロールプレイしてる割に女体の自覚ないよな。気を付けないと。

 

 まあ多分、素で最初っから女で産まれててもあんまり気にしなかったと思うけど。女三人男一人の状況じゃ男の存在なんて霞のように薄くなるもんだ、注意されるまで存在忘れてたしな。

 

 

「ったく。だらしない足しちゃって。そんな足で人の彼氏誘惑しないでー」

「うん揉まないで? それ逆に良くないよ、人前で辞めな?」

 

 

 彼氏の前で友達の太ももを揉みしだくのはどうかと思います。彼女の友達のそういう姿は男からすると相当刺激強いぞ〜。生殺しみたいなもんやぞ。

 

 

「ダイエットしなよ〜。あんたウエストまで太くなったらボンボンボンだよ? ちょっと顔良いからってあぐらかいてたら痛い目見るよ」

「デブになんかならないもん。もしなったら、デブ専の人探して媚び売るもーん」

「努力する気はないんだ」

 

 

 俺が体を起こすと都子は元の自分の位置に戻って行った。一応佐久間君の様子を見てみる。うん、予想通り視線が俺の下半身に集中していた。顔は相変わらず凛々しい、大したポーカーフェイスですね。

 

 

「てか、都子と小鞠はどうやってそのスタイル維持してるわけ?」

「そりゃあ。私は置いといて、小鞠は胸無いし付くはずの肉もないんだからそれが答えでしょ」

「都子ちゃん?? 無いって何? あるよ??? Cカップぞ?」

「嘘でしょ。直近の測定の時はギリギリB判定だったじゃん」

「ギリギリじゃないですー! Cに近いBですー!」

「じゃあBやん。貧でしょ」

「貧乳では無いから!? 都子ちゃんや八尋ちゃんがおかしいんだよ!? 二人とももう日本人の平均超えてるから!」

「でも最近の日本人って発育良くない? 案外私も都子も平均超えてないかもよ」

「二人ともEある癖に超えてないわけないでしょ!?」

 

 

 そうなんだ。自分が持つようになってからわかったんだけど、服着るとあんまりその人の胸のサイズ分からなくなるから実はみんなそれなりにあると思ってたわ。周りに巨乳が多いだけなのかな。

 

 

「じゃ、次のゲーム行こっか」

「……待って、都子ちゃん。私も一つだけ八尋ちゃんに質問したい事ある」

 

 

 それまで大人しかった朔月さんが都子に待ったをかけた。

 

 

「私は構わないけど、鹿狩くんは?」

「構うねぇ。私だけ二個も質疑応答食らうのは不公平です!」

「お願い。もし私が負けた時、同じように二回質問していいから、だから聞かせて。八尋ちゃん」

 

 

 初めて朔月さんが俺と意識的に目を合わせてきた。

 あんなに人懐っこそうな悪戯な顔ばかり向けていた朔月さんは、今はもうそんな明るい表情を向けてこず。懐疑の念を隠そうともしない目で、俺の表情を伺うようにこちらを見ていた。

 

 

「う〜ん……分かった。聞きたい事って何? 小鞠」

「八尋ちゃんって、本当に樹利の事好きだったの?」

 

 

 そっちか。どうせこの人の事だ、人を愛する事をどう思ってるのかー、みたいな下らんポエマーみたいな事言い出すのかと思った。まあ、似たようなもんか。テキトーに話を合わせてやりゃあいーや。

 

 

 

 *

 

 

 

 後ろめたかった。紗理奈ちゃんを選んで、八尋ちゃんを見捨てた私が八尋ちゃんと仲良くしていい資格なんて無いし、もう二度と話すことも無いようにと決めていた。

 

 都子ちゃんの家に居るとは思わなかった。極力彼女から目を離した。都子ちゃんはそれに気付いていたけど、触れては来なかった。

 

 

「じゃあドベはさっき話した通り。一問だけ、嘘も隠し事も一切無しに正直に質問に答えるって罰ゲームね」

 

 

 触れては来なかったけど、都子ちゃんは有りもしない話をして私が八尋ちゃんと話しやすい状況を作ってくれた。

 

 だから、意を決してずっと聞きたかった事を聞いてみた。他の皆が見てきた八尋ちゃんと、私が見てきた本物の八尋ちゃん。どちらがより正しく見えていたのか確かめたかった。

 

 

「八尋ちゃんって、本当に樹利の事好きだったの?」

 

 

 目を逸らすのを辞めて、八尋ちゃんと目を合わせる。八尋ちゃんはどんな人と話す時も相手の目から目線を外さない。そこで私は、久しぶりに彼女の貌を見た。

 

 

「好きだったよ〜。それがなに?」

 

 

 簡単に、アッサリとそう答えた。私の事嫌っててもおかしくないのに、今まで見せてきたのと同じ笑顔で。

 

 

「嘘でしょ」

「嘘じゃないよ」

 

 

 八尋ちゃんは、普通の人が嘘を吐く時のような仕草をしない。

 いや、むしろわざと、誤魔化してる事をアピールする時や気まずさを見せたい時に、分かりやすく目線を動かしたり、無意識っぽく髪をいじったりしてみせる事はあった。

 

 今思えばそれって、全部分かっててやってたんじゃって思う。

 

 八尋ちゃんがそういうお茶目な部分を見せる時って、そうする事が"かわいい"とか"天然"とか、そうキャラ付けされる事で他人から無害認定されるような状況ばかりだったから。

 

 だって、本当におかしいよ。私散々八尋ちゃんに酷い事したのに、本当に以前の仲良くしてた頃と少しも変わらない笑顔で、声音で私と会話してるんだもん。

 

 

「八尋ちゃんは、嘘吐きだよ」

 

 

 どんなに酷い事をされても、してきた相手にいつもと変わらない顔をできるなら。それって、最初からその相手に心を開いてなかったって事なんじゃないの?

 

 最初から八尋ちゃんは、私の事も、紗理奈ちゃんの事も、誰の事も友達として接していなかったって事なんじゃないの……?

 

 

「八尋ちゃんの、本当の気持ちはどこにあるの……?」

「……ん〜?」

 

 

 少し違和感を感じると、どんどん私の見えている八尋ちゃんの姿が変わっていく気がした。

 

 穢れを知らない無垢な少女のように見えた瞳は、中身なんてないただの穴のように暗くて。

 

 その目で反射している瞳の中の私は歪んでいて、無機物的で、果たして人間にすら見えなかった。人の形した、ナニか。そんな風にしか見えなかった。

 

 それが、八尋ちゃんが見ている私の姿なの? だとしたら、八尋ちゃんは、そもそも他人の事を人間とすら見ていない、得体の知れない生き物のように思っているって事?

 

 

「もみもみもみもみ」

「……八尋ちゃん?」

 

 

 八尋ちゃんは私の手を取ると、自分の胸に手を押し付けさせた。

 柔らかくて大きな膨らみが手の下にある。人の体温と人の拍動が手に伝わってくる。

 

 

「よく分からないけど、私の気持ちならここにあるよ。心の臓とも言うからね〜」

 

 

 なんだ、いつもの天然の八尋ちゃん節か。そう思って顔を上げると、ドアップですぐ近くに八尋ちゃんの顔があった。

 

 まるでコピーペーストだ。笑顔にしか見えない顔、を作って八尋ちゃんは私の警戒心が解けたと思い込んで、私の目の動きや汗や唇の動きや震えを見て、感情を読んで、頭の中を暴き返そうとしていた。

 

 

「八尋ちゃん、離して……!」

「あはは。ダメだよ、小鞠ちゃん。都子はまだ何も知らないんだから」

 

 

 ……っ!

 息が詰まる。結ばれた八尋ちゃんの口の両端が、ゆっくり外側に裂けていく。愉快そうに。

 

 八尋ちゃんの拍動は酷く緩慢だ。喜怒哀楽が全部同じ数値帯を行ったり来たりしているみたいで。

 他人の心臓の鼓動なんかが伝わるくらいの力で無理やり私の手を掴んでおきながら、八尋ちゃんの薄っぺらな笑顔の向こう側は心此処に在らずだ。

 

 

「ちょっと! 小鞠も鹿狩くんも! ラブラブなのはいいけど佐久間君の前でそういうのやめてよ!」

「あー。ごめんごめん。思春期男子には刺激が強かったカナ?」

「あ、あはは。少しだけ、ね。これが百合ってやつか」

 

 

 都子ちゃんの一声で八尋ちゃんは私から離れた。私が退かそうとしても微動だに出来なかった。凄い力だ。

 

 

「さっ! 次のゲームやりましょっか〜!!」

「その前に。え、鹿狩くんもしかして佐藤と別れたん? 小鞠が言ってたのってそういう文脈だよね!?」

「三つ目の質問はだめでーす! 次のゲームで私を負かせりゃいいでしょ! ねー? 佐久間君」

「そうだね。鹿狩さんの言う通りだよ」

「鹿狩くん。佐久間君にちょっかいかけないで?」

「掛けてないけどぉ!?」

 

 

 八尋ちゃんが佐久間君に話しかける事で都子ちゃんを興奮させて話をうやむやにして区切りにした。

 ……この子、こんな簡単に人の事操れるんだ。いじめるのはやり過ぎだって思ってたけど、もしかしたらソレも、この子の掌の上だったりするのかな。

 

 折角会話する機会を与えられたのに、特に何も出来ないまま場は仕切り直しとなった。一瞬ですら、八尋ちゃんの本当の顔を見る事は出来なかった所為か、余計に八尋ちゃんの事を、好きになれなくなってしまった。

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