子供に戻ったと思ったら女体化させられるし女として生きるべきか男のまま生きるべきか分からない俺はスワンプマン 作:千佳のはんぺん
女に潔癖なわけではなく、ただ本当に興味が無かった。
俺は人並みにエロい物を見れば勃ったが、それとこれとは別。性的興奮を他人に抱いたりする前に野球に全てを捧げるようになったし、その後出会った柳瀬川との繋がりに関してもそういうのは不要だと思っていたから、アイツに劣情は抱かないようにしていた。
結果としてそういう経験をセルフでもあまりしてこなかったままに初体験を通り、積み上げられた性への偏見と現実との乖離に感動出来なくなり不感症になってしまった、筈だ。
「ありゃ。男の癖にこんな状況でも勃起出来ないんや。私じゃ魅力不足?」
俺は全裸のままベッドに拘束されている。俺をこんな姿にした女も服を全て脱ぎ、生まれたままの姿で俺の傍らに座っていた。
身体は、綺麗だ。小柄な割に肉付きはよく、胸も大きくて自慰行為する際のオカズとしてならこれ以上ないくらい使えそうな身体をしていると思う。
顔だって、素直に言うなら俺が想いを寄せてる相手よりも可愛いと思う。だが、それ以上に邪な悪意が彼女の表情から滲み出ていて、興奮よりも生物の本能的な恐怖の方を強く感じていた。
その恐怖があるおかげで、目の前の女の女性性に蓋を出来ているのが幸いだ。悪意を隠そうとしない限り、コイツの思い通りにはならなくて済みそうだ。
「ハッ。当たり前だろ。誰がお前みたいなブスに興奮するかよ」
「ブス?」
鹿狩が横から顔を近付けてくる。吐息がかかる位置まで顔が近くなる。
目を逸らすと、俺の胸板に胸を乗せてきて、蛇のような動きで視界に入ってくる。
テレビ越しに見るようなレベルの美形が、俺の顔を見つめている。俺が少しでも声を出したり、眉を動かしたりしたら「ん?」と小さく微笑んでくる。そんな事をされる度に、胸が僅かに痛くなり体温が暑くなるのを感じた。
「私、ブスかなぁ」
「ブスだろ。ブスだ、離れろ」
「……」
「は、離れろ」
「ふふっ。かわい」
鹿狩の目が笑い、ただでさえ至近距離だと言うのにさらに顔を近づけてきた。
俺の体に体重が何割か乗り、顔の皮膚が密着する寸前まで近付いたせいで接触していないにも関わらず熱を感じた。
「離れろって!」
「ん?」
「!? っ、笑ってねぇで離れろよ、この淫乱女!!」
「淫乱?」
鹿狩が口を開くと、吐息の熱が直に当たる。甘い熱風で脳が狂わされる。
鹿狩の唇はプルプルしていてピンク色。それを見ていたらチロっと少しだけ舌が外に出てきて、唇の隙間で左右に揺れていた。
「キスしてい?」
「ふざ、けんな」
「ダメ?」
「ッ、ダメに決まってんだろ」
「え〜?」
ウィスパーボイスで囁いた後に鹿狩は目を閉じる。スベスベとした鹿狩の頬肉が当たる。だ、ダメだ、コイツは復讐するべき相手で、そんな奴とキスなんて……!
「……?」
唇同士はくっ付くことなく、鹿狩の動きが止まった。
「ちゅー、嫌?」
「っ、喋んな……!」
「ね、気持ちいいよ? しよーよ」
「嫌だ!」
「そうだよね。自分の未来を壊した女とキスなんかして、もし興奮なんてしたら。人間としてのメンツ丸潰れだもんね」
「くっ!」
「でもぉ、それは単純に私とキスしても興奮しなければいいってだけの話なんだよ?」
鹿狩が笑う。意地の悪い声音で、グイグイと胸を押し付けながら、自分の体温を俺に刻み込みながら言う。
「女の子にここまでさせて、それで終わりってのも男としてはメンツ潰れてるんじゃない? 据え膳食わぬは、だよ」
「お前が勝手にしたことだ……!」
「じゃあここで終わらしとく?」
「…………願ってもない事だな。早く離れ」
「はぷっ、んっ、むっ」
「っ!? んっ!! んうぅっ!!」
唇が当たる。チュッチュ、と鹿狩が数度唇を付けたり離したりした後、俺の口の中に舌を入れてきた。
口の中に生暖かなヌルヌルが入ってくる。口腔を撫でられ、舌同士が絡み合う。頭を撫でられ、抵抗出来ないまま俺の上に裸体の鹿狩の全身が被さってきた。
「んぁっ、お前っ、何してっ」
「んー。辻井くん、リップ塗ってよ。唇ガサガサでいた〜い」
口を離し、鹿狩は鞄に手を伸ばして自分のリップを出すと、それを無理やり俺の唇に塗り込んできた。そして、俺の顔を数秒見つめて「んふふっ」と笑いかけてくる。俺が何か言いかけた瞬間にまた唇を合わせ、わざとらしく「んっ、んっ」と甘い声まで上げられる。
俺の足に自分の足を絡めてくる。腹に鹿狩の控えめな腹肉が乗り、接触面が増すとより体温が熱移動でこちらに移る。
女らしいきめ細かい肌が、体温の高い俺の肌と混じり合い溶け合い、汗が滲んで互いの身を湿らせていく。腹が、胸が、下腹部が、ヌタヌタと湿り気を帯び俺の上を擦る度に快感が襲ってくる。
腰、が、勝手に浮く。違う、俺はこんな奴に興奮なんか!
「ぷはっ。あははっ。勃った!」
「くっ、これは、違っ!」
そんなっ、そんな事、有り得ない。だって俺、柳瀬川とそういう雰囲気になった時でさえ、妄想してしまった時でさえ、勃たなくなってしまったのに。よりにもよって鹿狩相手に興奮するなんて、そんな事!
「チンピクしてる〜。あれ? 萎んでく。持続力無さげ? バイアグラ飲みな〜」
「黙れ! 誰がお前なんかで、興奮するかよ!」
「してたやん今」
「一瞬だけだから! お前みたいなブス、錯覚で勃ってもすぐ萎えるっつの」
「へぇ〜? そうなんだ」
俺の顔の近くから離れた鹿狩が、俺の臍に舌を置いた。
「うぁっ、やめろ……!」
臍から正中線上を鹿狩の舌がなぞる。僅かな温かさを持つ柔らかな肉がナメクジのような速度で移動し、胸板まで上がってくると横に逸れて突起の方へと進んでいく。
「くはっ、ふっ……おい!」
唇で小さな突起を挟み、引っ張り、離れるとまた挟み。キスするように口をブチュッと当て、口の中で突起を舌でこねくり回される。
「あぇー? 乳首固くなった、気持ちよかった?」
「よくない!」
「おっけー。我慢強いね〜」
鹿狩は俺の胸板にキスをし始め、同時に脇腹に指の先を当ててきた。五本の指がそれぞれ、トントンと順に体を弱い力で叩いてくる。
「あはは、また勃ちそ〜、頑張れぇ、んぅ〜っ」
「やめ、ろ、やめろ、やめろっ!!」
チュパッ、チュパッと水音を孕んだ音が響く。鹿狩の頭が胸上で忙しなく動く。耐え難い快楽が電流のように迸る。コイツ、男の性感を理解しすぎ、男に慣れすぎだろ! 佐藤に仕込まれたのか、変態カップルがよ……!!
どうにか鹿狩を引き離したかったが、両腕が縛られているので体をさらけ出す事しか出来ない。鹿狩は俺の体を舐めながら、しかしその目でしっかりと俺の顔を伺い見ており、それだけでも敵意が無理やり削がれて悶々とした感情が湧き上がってきそうになる。
「あっ!?」
先程と同じくらい下が固くなると、鹿狩はそこに足を当ててきた。丁度ふくらはぎ辺りが当たる。鹿狩は俺の顔を眺めながら、手と舌で胴を、足にも厳かな動きを加え俺のブツにまで煽るように弄ってきた。
「しちゃう? 射精しちゃう?」
「黙れっ、変態女、死ねっ!」
「あははっ。ゆるゆるんなってるよ顔。きもちいねぇ」
「くっ、あっ! んぐっ……!」
鹿狩の頭が少し後ろに下がる。俺の胴体の上を柔らかな鹿狩の体が滑り、そして、固くなったブツが手に掴まれる感覚がした。
臀の筋肉が強ばる。ヤバい、一度擦られただけで理解出来た。コイツ、男を泣かせるのに慣れてやがる。あまりにも手馴れすぎている。
腰が浮く。快感から逃げようと腰を動かすと鹿狩は馬鹿にするような顔でニヤけた後両足で俺の腰を挟み、あろうことかフニフニした股間部分をブツの側面に当ててきやがった。
「一方的だね。こんな小さくて、処女を捨ててまだ一年も経ってない女に、一方的に蹂躙されてるね? 自分の全てをぶっ壊した女に、一方的に犯されちゃってるね?」
「や、やめ」
「野球以外何も無いのに、そこにドマゾの称号を飾られたら。無様だねぇ。スポーツも、喧嘩も、女関係も、全部底辺のクソ雑魚じゃん。私と関わる度に顔に泥を塗り重ねてるねぇ〜」
「く……っそ!」
「今のお前を見たら、柳瀬川さんどんな顔するんだろうね〜」
「うぁっ!!? くっ、ふぅっ!?」
殴りたくなるような顔で俺を煽る鹿狩が、自分の股間に側面を当てながら強く擦り上げると、抵抗も虚しく俺は果ててしまった。
鹿狩が、俺の出した液で汚れた手を俺に見せつけてくる。その手についた液を自らの体に塗りたくられる。
体を支配していたゾワゾワが失せていくと、後悔と自己嫌悪が同じ割合で全身を蝕んでいく。
呼吸を荒くする俺を見た鹿狩は鞄をゴソゴソと漁り、中から彫刻刀を取り出した。さっき俺を刺すのに使った物と同じ物だった。
「賢者タイム中にさあ、怪我した事とかある?」
「はぁ……はぁ……あ?」
俺の上にのしかかりながら、鹿狩は扇情的な顔をし聞いてくる。
「私はあるよ。昔付き合ってた女が、漫画に出てくるような変態女でね。1回やる度にピアスを空けるのが性癖、みたいなこと言ってたの」
「は……? 女……? お前何を……」
「ピアッサーじゃ耳たぶか軟骨くらいしか開けられないでしょ? だからっつって、その子めっちゃ沢山ニードルを持ち歩いてたの。化粧ポーチに入れてね。で、その子をイかせた後に果てて、騎乗位だったから私が寝てる状態なわけじゃん? 寝返りしたの。そしたら、肘にブスっと」
ズブリ、そんな音が聞こえてきたと思った。先程空けられた傷を避けるように、何の負傷も折っていなかった肋骨付近の肉に彫刻刀が刺さる。
「あ、ああぁ、あぁぁあああっ!!」
「あはは、ねっ? 大袈裟に痛がっちゃうよね〜! わかるわかる、感覚が研ぎ澄まされてるもんね!」
鹿狩は彫刻刀を引き抜くと、血の流れる傷跡に舌を這わせる。
「思えば、こんな事もされたなぁ。吸血鬼みたいにね、思い切りガブってされたあと、血をチューチュー吸われたの。キスマをつける時の痛い感じと、中から血が勢いよく出てく感じ、その二つが合わさってゾクゾクするんだよ。こんなふうに」
「くはっ、ああぁ!!?」
Uの刃によって付けられた傷。Uの頭部分に当たる無事な肉を鹿狩は舌で強引に上に持ち上げ剥がし、逆三角錐状に出来た傷を舌で舐め掘った後、周囲の皮膚にピッタリと唇をつけて思い切り息を吸った。
ジュッ、ブブブッ!! と、皮膚が弛んで空気が入ったり入らなかったりする特有の音がなり、吸引による痛みを感じる。それと同時に中を確かに何か、細長い物が通過し外に出ていくような感覚がして、生理的な気持ち悪さを抱いて背中がむず痒くなった。
「んくっ……んぁえ、血ぃってマジクソ不味いよね〜。こんなん飲んだら病気なりそう」
「もう、やめてくれ……」
「あはは。まだまだ」
額の汗が垂れてきて目に入り染みる。もう嫌だ、降参だ。そう言いたいのに鹿狩がそれを許してくれない。
天井を見上げて現実から逃避していたのに、鹿狩の顔が覗き込んでくる。俺を見下している。
「こんな事もされたっけなぁ〜」
鹿狩の顔が降りてくる。彼女は俺の顔のすぐ横に手をつくと、キスをした時よりも上の位置、丁度俺の眼球の前に口が来るように頭を下ろした。
「その子ねぇ、少女椿って漫画が好きなの。知ってる? 少女椿」
「……知らねえよ。なんだよそれ」
「ピュアな恋愛ハートフル漫画だよ。ラブコメ。でね? その作中に眼球舐め、っていうエッチプレイが出てくるの」
「眼球……? 待て。やめてくれ、頼む!」
「んふふっ。やめなぁい」
すぐ目の前で舌がチロチロと動く。決死の思いで瞼を閉じ暗闇の世界へ逃げると、鹿狩は囁き声で俺の脳に言葉を刻むように、ゆっくりと説明していく。
「初め舐められた時はね、力も強かったしグイ、グイッて黒目を押すように舐められたから痛かったの。間違って勢いよく目に指が当たっちゃった時に似てるかな。ジュワッ! て感じの痛みが走って、涙が出てくるの。でも、まぶたは閉じれないんだ」
「頭おかしい、やめろ、やめろぉ!」
「黒目と白目には僅かな膨らみというか、引っ掛けられるポイントがあってね? 基本ツルツルしてるから滑って終わりなんだけど、そこに舌先が当たるとあら不思議。舌の動きに合わせて、眼球がギョロギョロ動かされちゃうの」
「聞きたくない、鹿狩! 頼む、頼むから!」
鹿狩の語りに身震いが止まらなくなり歯がガチガチと鳴り出す。そこまで来ても鹿狩は少しも加減する気なく、どころか余計に楽しくなってきたのか、俺の瞼を指で強引に開けて説明を続けた。
「大丈夫。互いに慣れてくると痛みは無くなるの。代わりにくすぐったくなってくるんだよ。目をやさしぃ〜く舐められるとね、頭の後ろの方、骨の中が痒くなるの。指じゃ絶対かけないところが、ムズムズして、それが気持ちよくなってくるの」
「あ、あ、ごめんなさい、ごめんなさい……!」
「わたひぃ、お前の血ぃ飲んだかぁ。もひかひたら、目ェ病気になるかもえ?」
舌を出したままだらしなく喋った後、鹿狩の口がグンッと近くなった。
ヒタッ。と、眼球に柔らかく、生暖かい肉の感触が当たる。
「ああああうわあああああっ!!?」
鹿狩の舌が、俺の眼球を舐めている。白目をグルグルと、黒目の周りを回るように舐めまわしている。
眼球の下の方、骨との間に舌が入りそうになる。隙間など空いてないので入らないが、例えようの無い妙な感覚が骨周辺の神経に現れ涙が出てくる。
鹿狩は1度舌を離すと、ペットボトルを開けて水分補給を始める。
「ふぅー。目ん玉って、舐めるとプニプニしてて面白いな。芯のある硬い水飴みたい」
「はぁっ、う、おぇっ!!」
眼球を舐められた余韻が、目の端に溜まる鹿狩の唾液が気持ち悪くて吐きそうになる。あまりにも酷い拷問に正気を保つのもやっとだ。
「さてさてさぁて」
「もうやめろっ、解放してくれ! 金ならいくらでもやるからもう許してくれ!!」
「沢山金をくれた後、また私に復讐しに来るでしょ? それなら金貰わずに、もっともっと奥の奥のずーっと心の奥底まで傷付けて、嬲って、弄んだ方が私的にはお好みかなぁ〜」
「わ、わかった! もう復讐はやめる、だからっ!」
「じゃあ柳瀬川さんにも手を出すことにするね?」
「えっ? ぐああっ!?」
言いながらも鹿狩は微塵も躊躇う様子なく俺の胸板にまた一つ彫刻刀で穴を開けた。どころかそこに舐めて唾液を付けた指を突っ込み、くちゅくちゅして傷の深部を広げていく。
「辻井くんには私を蹂躙出来るくらい憎んでもらわないといけないからね〜。こんな程度で心が折れるなら、もっと大切な物を汚していくよ? いいの? 辻井くんのもう一つの宝物が壊れちゃっても」
「あ、痛っ! ぐっ……なんでなんだ!?」
「あ〜?」
問いを投げると、ヘラついたまま鹿狩が首を傾けた。その間もズキズキと鋭い痛みが胸の中を抉り続けている。
「もっ、もういいだろ!? もう十分だろ!? なんでこんな回りくどいことをする、憎かったら殴れよ! 思い切り刺すなりしろよ!! なんでこんな、じっくり痛がらせるような真似をするんだよ!?」
「いや別に殴りたいわけちゃうし。殺したいわけでもないから思い切り刺すのもなぁ……」
「お前が俺に憎まれたいってんなら安心してくれ、世界で一番憎いから! だから後輩達や柳瀬川には手を出すな!! 俺が悪い、アイツらは関係ないんだ!!!」
「関係ないんだって文言を使うくらい、俺が悪いって自分を盾にするくらい大切。"だから"手を出すんだよ? 初めから『アイツらなら好きにしていいから俺は見逃してくれ!』とでも言ってくれれば、他の人に手を出すなんて発想すらおきなかったのにね」
「そん、な」
「今度は眼球舐めながら胴体ほじほじ、いってみようか〜」
「ああぁ、ぁあああぁあ!!! うわあああぁぁぁああぁぁぁああっ!!!」
傷穴を指でほじくられの眼球舐めが再開される。脳みその後ろが痒い、全身に脂汗が滲む。熱い、暑い。後輩達が狂っていく声が聴こえる、俺の狂ったような叫びが聴こえる。眼球を通し、脳みそをすすり食われているかのような錯覚に陥る。肉体が危険信号を発しアドレナリンが大量分泌されているのか、腰が跳ね勝手にブツの中身が撒き散らされる。
頭がガクガクする。目を閉じたいのに閉じられない、薄めになる。鹿狩が自らの体も俺に擦り当ててくる。熱っぽい声がする、鹿狩は俺を使って自慰に耽っていた。
上瞼が捲りあげられる。胸の上を刃が滑り、薄く一本線の傷が伸びていく。玉のような血が点々と現れ、鹿狩はそれを手で塗り広めて俺の胴体を血に塗れさせていく。
呼吸が浅くなる。致命傷には至らないと分かっていても、あまりにと光景が凄惨すぎて脱力する。
殺される。その前に殺さなきゃ。思考が完全にそうフェーズ移行しているが、全身を拘束された状態では抵抗できる訳もなく。頭に血が上りすぎて、目の前がチカチカと明滅する。
「うっ、ううおおおあああああっ!!!」
「えっ……!?」
火事場の馬鹿力、というやつなのだろうか。それまで全く外すことなど適わないと思っていた左腕の拘束具を、俺は力ずくで千切っていた。
右腕はそもそも肩から外されているため使えないが、そんな事考えている暇はなかった。驚いてる様子の鹿狩を思い切り殴ると、芯に手応えと共に鹿狩が勢いよく顔からベッドに落ちた。
鹿狩は小刻みに痙攣していた。何も言わない、気絶したのだろうか?
「い、今のうちだ。今のうちに、これを外さねえと!」
左手で右腕の拘束具を外す。アドレナリンのおかげか脱臼の痛みはさほど大きく感じなかった。続いて足の拘束を外し、自由の身になると俺は急いで後輩達の元へと駆け寄った。
「お前らっ!! クソッ!」
自分に嫌気が差す。まさか、軽い気持ちで報復してやろうと思ったら、後輩達をこんな目に遭わせる羽目になるなんて。
「おいおい。戻ってきたら何。八尋は泡吹いて蟹になってるし、栗頭は自由の身になってるし。計画頓挫か?」
「っ! 酒田、廻!!」
最悪だ。鹿狩にトドメを刺すのを後回しにして後輩の元に来たと言うのに、席を外していた酒田廻はもう帰ってきやがった。
急ぎベッドに近付き彫刻刀を奪い、鹿狩を人質に取ろうと手を伸ばす。
「ソイツ、本当に気絶してると思ってんのか?」
「っ!」
酒田の問い掛けに身が硬直する。
……今まで、俺は散々鹿狩の無力さを装った嘘に騙されてきた。確かに、コイツは無害そうに見せた時こそ危険な奴だ。
今だって、好機を狙いわざと気絶したフリをして、俺が体に触れた途端にその手を巻き込みへし折って制圧してきてもおかしくは無い。
と、俺に思考させ迷わせるのが酒田の目的であった。酒田は俺が逡巡している一瞬の間に距離を詰め、俺の顔面に前蹴りを放ってきた。
「ぐはっ!?」
「脳内麻薬だけじゃ喧嘩にゃ勝てんよ。ココ、使わねーと。八尋との差も詰まるところソコの違いだぜ?」
酒田に彫刻刀を取り上げられ、ついでに腕を捻られベッドにうつ伏せに拘束される。
「さあ、どうする? 俺はアイツみたいに他人の体ぶっ壊しても何も感じない訳では無いし、むしろ痛そうなのを見ると力が抜ける性質だ。だが、命令された事は出来る。八尋に、お前の事は殺さない限り何をしてもいいと言われてる。両腕脱臼させてもいいが?」
「あああぁお前らなんなんだよ!? 何がしたいんだよ!!?」
「さぁな。俺だって分からんよ。八尋の考えてる事はイマイチ掴めん」
腕を締め上げる力が増す。
「案外何も考えてないのかもな。ただ、二度と報復しようだなんて思わないよう、過剰な暴行を加えているとか?」
「常軌を逸してるだろ!?」
「常軌の基準は人それぞれだからなあ。人殺した俺でさえも常軌を逸してるとは思うが、お前からしたら同類にするなって感じだろ? そんなもんだ。常軌とか常識とかあんまアテにすんな」
「いっ……たぁ〜……」
酒田とやり取りを交わしている内に恐るべき事態が起こった。鹿狩が気絶から復活し、殴られた箇所を擦りながらこちらへやって来るのだ。
「廻君が助けてくれたんだ。ありがとー。いやー、流れ的にさっきのは死んでたねー私」
「全くだ。お前、何考えてんだよ……」
「なーんにも。さっ、辻井くん」
鹿狩は酒田廻の背中をポンポンと叩く。酒田の力が緩む。その瞬間に俺は全力を盛って鹿狩に掴みかかろうとしたが、彼女が屈むと胴体に当たった彼女の身は血のヌメリによって流され、捕獲に失敗してしまった。
後ろから膝裏に蹴りを食らい、強制的に床に手を付けさせられ、うなじの位置に刃が当てられた感触がした。
「続きしようぜい」
「はぁ!?」「お前……えぇ?」
酒田も鹿狩の言葉に困惑して顔を顰めていた。敵味方両方にそんな反応をされた鹿狩も話の流れが悪かったのは理解しているようで、ですよね〜などと言いながら頭をポリポリとかいていた。
が、それでも彼女は俺から刃を引っ込めず、むしろ困ったような顔のまま少し刃を押し付けた。
「言いたいことはあるだろうけど、あんまり時間ないよ〜? そろそろ後輩くん達の内、誰かは舌を噛み切りそうな勢いだし?」
後輩達の様子を見ると、確かにほぼ全員が最早泣き声とも判断のつかない呻きを上げていた。一刻の猶予もない状況なのは明白だった。
「八尋……お前、マジの変態なん? ちょっとこれはサド趣味がどうこうで済む話じゃないやろ」
「好きでこんな事してねぇわ! つか相手がこのいがぐりの時点でデロキモだっつ〜の。余計な口挟まんくていいのよ廻君は!」
「いや、だがこれ以上は時間が……」
「……っ!!!」
思い切り拳を自分の太ももに振り下ろす。何度も、何度も、ドスドスと音が鳴り鈍痛は痺れとなって拳と共に感覚が薄れるほど殴り続ける。
「どうせ逆らっても、無駄なんだろ」
「うん〜。そろそろ余計な事言ったら辻井くんじゃなくて、あっちの子らの誰か刺そうと思ってた」
「やめろ。分かった。なんでも言う通りにするから、アイツらには一切手出ししないでくれ」
「それは辻井くん次第だな〜」
何も言葉は返さず、ただ黙って目の前の床を睨む。鹿狩のペースを乗せられないためには、鹿狩の言葉に何も返さないのが1番だ。
「……じゃ、今から辻井くんには私をレイプしてもらうけど」
両肩に手を乗せられる。振り向くと、鹿狩はベッドの上にゴロンと寝転がっており、俺に来るように手招きしていた。
鹿狩の指示通り、俺は彼女の両足を持ち、腰と腰を合わせる。
今までの常識が壊されるような壊滅的な拷問に遭ったというのに、俺のブツは鹿狩が無抵抗を示すだけで痛いほど固くなっていた。その行為の訪れは、全くなんの抵抗もなくすんなりと開始出来てしまった。
「んっ……! 顔を殴るのと、刃物使う事以外なら何してもいいよ。ね、辻井くん。もう性癖十分とち狂い始めてるでしょ? 思いついたやつ、全部私にぶちまけてよ」
「黙れ」
「あっ!? ん……痛、奥っ……んぅっ!?」
要望通り、俺はそれまでされた事を返すかのように、鹿狩にされた全身舐め回すやつや目玉舐めをやり返し、首を絞めたり腹を殴ったり、とにかく思いつく限りのアブノーマルプレイをしながら鹿狩を犯した。
最初は鹿狩も痛がっていたし、アブノーマルプレイから入ったこともあり半ば本気で泣いていた所もあったが。段々と快楽に沈んでいった鹿狩は気付けば淫らな声を出して俺をひたすらに求めていた。
思考を行う体力はほぼ底を尽いていた。他事を考える余裕もなく、ただ目の前の女を蹂躙する事しか頭の中に残っていなかった。
この日。俺の中身を埋めていた野球と、柳瀬川の存在の他に無理やりねじ込まれる形で鹿狩が乱入し、他二つを押し潰していく事となり。俺は文字通り、この女に破滅させられる道の一途を歩み始めるのであった。