子供に戻ったと思ったら女体化させられるし女として生きるべきか男のまま生きるべきか分からない俺はスワンプマン 作:千佳のはんぺん
……ぱちり。
昨日廻君と堀口さんと、三人で酒を飲み交わした後色々あって結局皆で体を交わらせる事になり。四時頃までハメ倒した後眠りにつき朝7時。まさかの三時間睡眠で俺の目はパッチリと覚めてしまった。
若さって偉大だな、起床の習慣が付いた時間帯になると自動的に意識が覚醒するらしい。俺の上に覆いかぶさり……てか、股にイチモツをぶっ刺したまま眠りこけている廻君を押し退けて体を起こす。
「ん〜! ふぅ……」
酷く喉が渇く、声がガラガラだ。体の節々が痛いし重い。本気を出した廻君、ちょっとトラウマになったわ……。
堀口さんは別のソファに毛布を敷かれ静かに寝息を立てていた。俺は早々に気絶カマしたから廻君が毛布をかけてあげたのだろう。
……ん? 起きた時俺の股にぶっ刺さってたって事は、俺が流れ星見ながら意識トんでる間も俺を使って盛ってたって事だろうか?
俺、オナホかなんかか? 人の尊厳とは果たして。顔面に屁でもしてやろうかな。
「……うえぇ」
深呼吸すると部屋に充満する色んな液体の匂いに噎せそうになった。愛液、精液、汗に涙に、ついでにお小水。後片付けの事に意識向かなかったなぁ。ごめんね赤池、ちゃんと学校行く前には綺麗にしとくから許してくれ……。
「掃除するかぁ」
俺は部活動には所属していないので朝練も無い。まだ時間に余裕はあるし、てか多少遅刻しても問題ないか。
人汁でびっちょびちょのカーペット類を洗濯機に入れ、ソファに付いたのは濡らした布巾で拭き取っていく。
「ふわぁっ……鹿狩さんだ……おはようございます……」
「おはよぉー」
ファブリーズをシュッシュして換気しようとしたら堀口さんが欠伸をしながら体を起こしてきた。堀口さんはこういう爛れた生活に不慣れなのか、他人の家ですっぽんぽんである事を恥じて服を着ようとする。
「待って待って。そのまま着たら汚れちゃうから。お風呂入りなよ」
「そうだね……あっ!! もしかして鹿狩さんも一緒!?」
「え。いやいや。流石に狭いし別々だよ!?」
魅力的な提案だが。魅力的"すぎる"提案だが!
こんな朝早くから仲良くなったばかりの女友達と一緒に風呂とか、心のちんこガン勃起するわ。男の子として興奮しちゃってチンポコロストに膝を打つわ。シコ欲はあるのに物理的に存在しないから永遠オナ禁なんですよ。女体男としては、やはりチンポコが喜ぶスケベは避けていきたいのです。
「えー! 一緒に入ろうよ鹿狩さんっ!!」
「いやぁ……一般家庭のお風呂を、中学生二人で入るのはちょっと……むぶぶっ」
そう言うと、堀口さんがすごい剣幕で俺の頬をブニュッと指で挟んできて唇が尖らされた。この人も俺のほっぺを弄るのか。なんなんだ、どいつもこいつも。
「駄目! 禁止! 入るの! あたしが洗うから!」
「いやいやいやいや! 時間は全然余裕あるし! いいよ1人ずつ入ろうよ!」
「そんなに嫌なの……?」
「い、嫌っていうか……」
分からんよな〜、堀口さんには男の気持ち。例えるならそう、風俗に高い金払って施術受けて限界まで高まってるのに時間が来て最後まで行ききらなかった気持ち。それがね、ずーっと続くの! ちんこ、無いから! たはーっ!
「うるせぇな……頭いってぇ……」
「あ、廻さん! 廻さんも説得してください! 鹿狩さんがあたしとお風呂入ってくれない〜!」
「入ってやれよ。女同士だろ」
「廻君は黙ってなさい!」
「えぇ……」
すかさず廻君にチョップして黙らせ、俺はドスンと胡座をかき腕を組んでここから動かんぞ! の姿勢を取る。
「お風呂なら一人で行く事! シャンプーとかボディーソープとか勝手に使っていいからね! タオルは右の棚、下着は私の貸したげるから!」
「サイズ合わんやろ。君ら胸全然ちゃうやん、山と丘じゃん」
「「デリカシー!!!」」
堀口さんと二人で廻君をボコボコにする。ヤった女に対する男の軽薄さはなんなんだ! 全く、デブ扱いしたらマジで殺してやる。
「兎にも角にもです。私は待ってるから、先入ってきて!」
「ちぇー……」
口を尖らせながらも、俺との話し合いで根負けした堀口さんは浴室へと向かっていった。
*
「あ、の……」
「なに?」
ニコニコニコニコ。堀口さんが笑顔で俺の対面に座っている。裸で。
ここはお風呂場。日本で言うバスルーム、海外で言う所の入浴場。逆か。所謂体の汚れや老廃物を落とす為に湯浴みと洗体をする場である。
俺は堀口さんと別々にシャワーを浴びて行為の残り香を落とすつもりだった。
最初は堀口さんもそれで納得していたと思ったのだが、うたた寝していたらいつの間にか脱衣場まで引きずられていて、服を脱がされていた。で、今に至るわけですな。
胸を手で隠し、足を閉じて横に向ける。
「なんで恥ずかしがってるの? 昨日散々エッチな事したじゃない」
「いや……なんて言えばいいのかな。ほら、あるやんか。興奮するとそういうのあんま感じなくなって、後からさ……」
「鹿狩さんにも羞恥心とかあるんだ?」
「ないと思ってた???」
「そりゃ。股緩いじゃん鹿狩さん」
「口悪っ!? それが素なの!? 緩くないだろー!」
「うーん……」
堀口さんは腕を組み考え込む。何を思案する要素がある。
「股緩くなんかないし、羞恥心が無きゃ失禁した時ガチ泣きなんかしなかったっての」
「あれ演技じゃなかったんだ」
「演技でもスカート履いたまま小便の上でペタン座りはしたくないなぁ!?」
「鹿狩さんも人間なんだねぇ」
「え、もしかして私の事人外扱いしてた?」
泣きもするし怒りも笑いもしますよ? 見た印象のまま受け取ってくれて構わないよ。僕は人間のど真ん中スタンダードですよ。
「ねぇ……こっち見るのやめない? 湯船、先に浸かりなよ」
「じー」
「……絶対手ぇ退かさないからね」
胸を手ブラで隠したまま睨む。なんでこんなギリシャ神話モチーフの彫刻みたいなポーズ取らなきゃならないんだ。アフロディーテか。
「鹿狩さん」
「え?」
胸を置いていた両手に堀口さんの手が重なる。何事か、未発達の少女の裸体がチラチラ見えるので出来ることならあまり動いて欲しくないのだが。
「バーン!」
突如、堀口さんに思い切り両手を上に持ち上げられた。両腕を掴まれた事で胸が支えを無くし重力に引っ張られる。
「ぎゃああ!?」
「あははっ! あたし女だよー? 女に裸見られた反応じゃないよそれー」
「女だろうが男だろうが裸見られるのは抵抗あるだろ!」
「裸のまま辻井くんの事ボコボコにしてたじゃん?」
「あれはっ! ……相手が裸の女ってなるだけで男は大分手を抜くというか、侮るというか。だから作戦なわけで!」
「はいはい。うわ〜、やっぱりおっぱい大きいね〜! 体は小さいのに、他の栄養全部ココに集まってるのかな?」
「そんなジロジロと見ないでよ!!」
いやはや、服を着ている状態なら全然自慢の武器として胸を大っぴらにアピールしてやれるが、こと全裸状態となると話は別なわけで。
なんつーか、普通にさ。元が男だったし今も中身は男の人格のままだしさ。男時代の胸板に慣れ親しんだせいで、このやたらデカい胸肉もぷっくりした乳首もあまり直視されると小っ恥ずかしくなる。恥ずいコスプレさせられてるのを見られたような気分だ。
まあ小刻くんの時は俺から胸を見せつけに行った訳だが、だってあれ一応上に服着てたし。全裸と全然違うし。布一枚あるか無いかはやっぱり大事ですよ。
「ハリツヤすご〜い! ぷにぷにだね!」
「御自分のもそうでは無いかと……」
「あたし胸がやわっこいからさ。ほら、離れ乳」
「いいぃ〜!?」
堀口さんがこっちに体を向け、そのささやかな大きさの互いが少し離れた乳房を俺に見せつけてきた。
男というアイデンティティを失って以降久しぶりの女のエロ。それをじゃんじゃん供給してくれる堀口さんに感謝が尽きないです。棒を喪ってるから永遠に生殺しだけどね(怒)!
「ねえねえ、おっぱい触ってもいい?」
「ダメって言っても触るでしょ……?」
「もちろん!」
「何でなんだろうね。他人の脂肪にそんな興味わくかね」
「あたしのも触っていいからさ」
「全然触ってくれて構わないよ。ドンと来い」
歯茎をニカッと出して笑ってやる。ああいけね、欲望が先行しちゃった。仕方ないよね、野郎とばっかエロい事してきたんだもん。俺ホモじゃないし、普通に女の子とエッチしたいもーん!
「じゃあ鹿狩さん。そのまま手を上げててね」
「え? 手を? キツすぎない……?」
「じゃあ頭の後ろで組んで」
「捕虜???」
意味分からんが、言われた通りに頭の後ろで腕を組む。……待て、何だこの姿勢。羞恥プレイか? 胸も脇もさらけ出しじゃないすか。エロ人質じゃないすかこんなん。
「前屈みにならないよ! 背筋ピン!」
「勘弁してくれ〜。別に触るだけなら普通にしててもいいでしょ! ……出来れば手ブラしたいけど」
「そんな事言ってたらあたしの触らせないよ? さっき唾飲んでたじゃん、触りたいんでしょ?」
聴こえてたんだ、固唾飲んだ音。バリ恥ずいやん。
「ほら、背中伸ばして!」
「うぅ……」
渋々背筋を伸ばす。堀口さんの貧乳プルプルおっぱい指でぷにぷにしたいから。
「おー。ねねっ、突っついてもいい?」
「んー……優しくね」
「強くした方が好きなんじゃないの?」
「好きじゃない! 指ブスッ! とかやめてよ!?」
「あはは、おっけー。えいっ」
堀口さんは面白そうな顔で、俺の胸の頂点辺りの肉を突っつく。ツンツン、ツンツンと胸を指先でつつかれ、変にくすぐったくて声が出そうなのを必死に耐える。なんなのこれ。
「うぅ〜、恥ずい……なんのプレイなんこれ……」
「安心してよ。廻さんみたいに乱暴にはしないからさ」
「もし乱暴にしたら本気めに殴るからね……?」
「え!? 殴ってくれるの!?」
「いぃだだだだっ!!? なんでそこで捻りあげるの!? 頭おかしいの!?」
胸の先端を摘まれて思い切り捻りあげられた。乳首って取れても再生するらしい。だからなんだ、再生するからいいってもんじゃないのよ。捻りあげてくる腕をバチンと叩いてやった。
「痛いでしょーが! 伸びるわ胸が!」
「伸びるの?」
「伸びねえよ!!! 何しやがるのさ!!?」
「殴ってくれるんでしょ? 鹿狩さんのお仕置パンチ、はやく!」
「しないよ。よくある軽口でしょうが。私の事すぐ暴力振るうバイオレンス女とでも思ってるわけ?」
「うん。バイオレンスビッチ女だと思ってるよ」
「なんで本人を前にしてそんな事澄んだ目で言える??」
「傷ついた? じゃあお仕置だねっ!」
「しません。てかいつまで人の胸触ってるの! 次私の番って契約でしたよね!」
「そっか。どうぞ〜」
堀口さんは俺と向かい合った状態のまま、手を後ろで組んで胸を俺に見せつけてきた。
片手で収まりそうな大きさの、でも丸みのある小ぶりな胸肉。寄せれば谷間を作れるぐらいの大きさはあるものの、押さえがないと離れ離れになるくらいの囁かな可愛らしいちっぱい。
年齢の事もあって、これは些か……。
「背徳的だ……」
「ん? なに?」
「なんでも!」
「駄目! なんか言ったでしょ? なんて言ったの!」
「え、えぇ? えーと……その、エロいなって……」
「そう? こんな小さなおっぱい、鹿狩さんのに比べたら全然」
「ふむ。おっぱいのエロさは大きさで決まるわけじゃないですよ。堀口さんの胸の方が私は好きだし」
「え!? わ、私の事好きなの!? きゃー! いいよ鹿狩さんっ、あたしは鹿狩さんの物だよ!! 好きにしてっ」
「胸の話だと思ってたんだけどな。日本語って難しいね」
堀口さんが唇を尖らし、金魚のような口を作った後俺に少しずつにじり寄りながら「ん〜!」とブチュブチュ唇を鳴らしながら迫ってきた。口に手を当ててガードした。
モミモミフニフニ、堀口さんの胸を堪能する。あぁ、本当に久しぶりだなー他人の胸を揉むの。気持ちが男の頃に戻れたようで嬉しくなる。
「はーい。10秒経ったから交代〜」
「え、10秒!? そんな約束した!?」
「あたしも鹿狩さんのおっぱい堪能したいから交代!」
「横暴って言葉がこんなにも似合うだなんて」
堀口さんのミニミニおっぱいを揉んだり手の側面で挟んで擬似谷間を作ったりして遊んでたら攻守交替させられた。
あぁ、マシュマロおっぱいの柔らかい感触が名残惜しい。自分の胸じゃ何も感動が無いから、もっともっと堪能したかったのに!
「ねーねー鹿狩さん」
「はい」
「ぎゅー!」
「!? ぐおおぉ試練か!? チンロス男への試練なのかこれは!?」
裸の堀口さんが全力でハグしてきた。よくないよくない、濡れたモチモチ肌が引っ付いてくる!!!
「えいっ」ふにょん。
「んっ……ちょっ、なに?」
手を使って胸を寄せ上げられた。体を密着させた状態で。堀口さんは姿勢を更に低くして俺と顔同士を近づけると、そのまま寄せ上げた胸の方に顔を移動させる。
「なにしてんの……?」
「おっぱい吸ったら母乳出るかなって」
「!? 出るかぁ!!! ピル飲んでるっつってるでしょ!! てかなに、出たら飲むつもりなん!?」
「うん! 鹿狩さんのミルク飲みたい!!」
「おげぇ! 怖い怖い怖い。出ないし出ても飲ませないよ!! 母乳って元を正せば血液ぞ!? 他人の体液を飲んじゃいけません!」
「でも鹿狩さん、廻さんの精液飲んで」「だーー!!!! とにかく出ないから!! 無駄だから吸っても!!」
「え〜?」
「離れなさい! あわわっ、堀口さん肌スベスベやぁ!!」
自分も女だからなぁ。接触し合う肌と肌の摩擦抵抗が少なくてフニフニやモチモチが余すこと無く体に広まっていく。心と、ついでに心のちんぽがドキドキ跳ねる。
「ねえ、ダメ……?」
「ううぅぅうっ! どこでそういうの覚えたの!」
「鹿狩さんの真似」
「じゃあ私には文句言う資格ないな! 知るか! 文句言ってやる! 離れろー!」
「鹿狩さん……おねがい」
「くううぅぅ……! な、なんでそこまで……。あーもうっ! わかった! いいよ、何も出なくても良いなら吸えば!?」
堀口さんが上目遣いでそうお願いするので、俺はもう許してやる事しかできなかった。俺から許可を得ると、堀口さんは嬉しそうに「わーい」と言ってそのまま近くにあった俺の左胸をパクッと口に頬張った。
「んっ……」
「はむ、あむっ……ん〜。無味……」
「よかった。シャワーで汗流してて」
「ん〜、でもなんか仄かになんか……これが、鹿狩さんの味……?」
「きもぉ!? キモすぎるし、恐らく美味しくもなんとも無かったんだろ! そう言ってくれた方が気が楽じゃ!」
「お次はぁ」
「もういい加減にしない!?」
結局その後、暴走する堀口さんを20分かけて制圧し事なきを得た。静かにしてくれる代償としていつでも堀口さんに胸を揉まれるという条件を飲まされてしまったが。なんでだろうね。
*
「ってら〜」
「「いってきま〜す!」」
ソファに寝転がったままの廻君に見送られ、堀口さんと二人で家を出る。なんかいいな、日常系アニメの最終回みたい。
強引に手を恋人繋ぎさせられてるのは解せないが、それを除けばとてもとても平和な朝である。柔らかいなぁ、堀口さんのおてて。
「いや〜昨日は突然ごめんね堀口さん。初めてなのに廻君なんかとヤらせちゃって」
「あはは……鹿狩さんがそうさせたんだし、あたしからは文句無いよ!」
「全肯定すぎるな」
「それに、廻さんとしたから鹿狩さんと棒姉妹? になれたし」
「こら! そんな下品な単語、どこで覚えたの!」
「廻さんが言ってたじゃん。……あ、その時にはもう鹿狩さん意識無かったね」
「人が気絶カマしてる間に何言い放っちゃってんのあの人」
純粋無垢な女子中学生に教えていい単語じゃねえだろ。変態のっぽめ。
堀口さんと軽い雑談しながら歩いていたらスマホがブルブルと震えた。ポッケから出して内容を確認する、小刻くんからだ。
「……ふふっ」
「わ、嬉しそう。どうしたの?」
「嬉しそうになんかしてないけど、小刻くん……あ、今彼からLINE来てさ」
「え! 鹿狩さんって今彼氏居たんだ!?」
「本当につい最近出来ました!」
ピースサインを作ったら堀口さんがキー! っと高い声で鳴き出した。なんだ、男を知った翌日に早速彼氏が欲しくなったのだろうか。やっぱり女子は心境の変化が早いな。
「鹿狩さんは私のご主人様なのにぃ!」
「ご主人様。なにその変態調教師が呼ばせてそうなあだ名。ちょっと嫌かもな」
「あたしは鹿狩さんの物なんだから、つまり鹿狩さんはあたしのご主人様なんだよ?」
「逆説的だなぁ。まあご主人様でもなんでもいいけどさ、それは誰かと付き合うのと同時並行でやっちゃいけないことなん?」
「駄目!」
「即答」
「それじゃ浮気だよ! 愛人になっちゃう! あたし愛人なんて不純のものになりたくないよ!」
「愛人。同性なんだけどなぁ。不純。昨日今日してた事って世間的に見たら相当不純な行為だと思うけどな」
「うぅ〜! あたしというものがありながら……」
「ここ数日で距離縮めすぎだな……私と堀口さんって最近仲良くなったばかりじゃん。そんな事で目くじら立てないでよ」
「仲良く……ふふ」
なんか、堀口さんが驚いた顔をした後嬉しそうに笑っていた。よく分からんけど可愛い笑顔。頭を撫でてあげ……背が高ぇのよ。しゃがめ。
「まあ、鹿狩さんが誰かと付き合うとかは本人の自由ですし、あたしからは何も言いませんけど!」
「言ってたじゃん。てかなんで怒ってるんだろうこの人」
「あたしや鷲見さんや柳瀬川さんにあんなことしておいて、無責任だなと思う権利くらいはあると思います!」
「何股も掛けてるヤリチンみたいに言われてるけども。この体になってから女の裸見たのはまだ堀口さんしか……。マトモな裸を見たのは君しかいないのにおかしくない?? 一人の裸しか知らないとか全然童貞と呼んでも差し支えない程度の女性経験だと思うのですが」
「エッチな事してなくても! 鹿狩さんに沢山酷いことされたからあたしってもしかして特別なのかなって思ったのに……思ったのにぃー!」
「特別感の獲得方法が特殊すぎる」
この人、報復として酷い事されるのを愛情表現だと思ってんの? じゃあもう二度と愛情向けられないやん、かわいそ。
「ねえ、ずっと鹿狩さんに聞きたかった事があるんだけど、聞いてもいい?」
「いーよー」
信号待ちしていたら大人しくなっていた堀口さんが俺の制服の袖をツイツイと引っ張ってきた。中高生のなりたてカップルみたいで可愛い。頭でも撫でてやろうかn……背ぇ高すぎだろ。しゃがめ。
「鹿狩さんって、あたし達一人一人捕まえていじめの報復してるけどさ。面倒くさくないの? 証拠は沢山掴んでたじゃん。動画を偉い人に見せたらどこかであたしら全員まとめてやっつけれたんじゃないの?」
「え。やっつけられたかったの? マゾすぎない?」
「なんでそんな面倒くさそうな事してるのって聞いてるのー!」
堀口さんが頬を膨らませる。あざといなあ。可愛い、ツンツンしてやった。
「んー、そういう復讐系のドラマとか、あと掲示板とか? なら武勇伝としていじめ動画を出して全員に復讐したった! みたいなのはあるけどさ。実際それで止まるんかね」
「どういうこと?」
「どうって。だって皆にまとめて復讐するって事はさ? 復讐される側は仲間が沢山いる訳だよ。確かに反省したり、二度と関わって来ないようにする人もいるだろうけど、望んでいじめてた人達はきっと仲間がいる時点でそんなのダメージにならないと思うんだよ」
連帯責任とかで怒られてもあんまり何も響かなくて、ミスった仲間相手を小突き弄りながら怒ってきた相手を裏で愚痴るみたいな話だよな。
不特定多数の人間を相手取る時に、やった事の大小を問わず全員まとめて悪として摘発するのは効率的かもしれないけど、その一回が効果薄くてまた同じ事を繰り返されたらやった意味が無くなってしまう。
「堀口さん、なんで私がこんな目にぃ! って言ってたよね?」
「う、うん。言ったね」
「そう思うのが普通なんだよ。人間皆、悪い事をしてる自覚があったとしても、自分だけじゃない、こんな事大した事ない。そういう風に逃げ道で蓋をしてるから怒られたりしても中々響かないというか」
「自分だけじゃないっていうのは、確かに気持ち的には楽になるね……」
「そーそー。仲間がいれば悪い事をやっても免罪符になるんだよ。だから数人纏めた時点で、人生終わるくらいの報復をしても人生終わった人ら同士で結託して何とか持ち直す事は出来る。でも、報復される側に格差を作ればさ、お互いに手を取り合うってのにも抵抗が生まれると思うんだよ」
青信号になる。
この話もなあなあで終わらせられるかなと思ったが、堀口さんがジーッとこっちを見ているので何とか文章を考えて口を動かす。実の所、あんまり考えて報復ごっこしてた訳じゃないから全部この場で考えた出任せだが……。
「他にも悪い事してる人はいるのに自分だけ先生に怒られるのは納得いかないでしょ? どんな大切な友達でも、いざとなれば責任を負ってもらって自分の代わりになってほしいのが人間のオーソドックスなんだよ」
「嫌な価値観を持ってるなあ鹿狩さん……」
「うるさいやい! 堀口さんも鷲見さんも柳瀬川さんも、他の人達も皆『アイツだって!』って言ってたじゃん!」
「それはそうだけどさ……」
「だから、その逃げ道を完全に潰して、自分一人にだけ全部のしかかるってなったら加速度的に心が参っちゃうよね? 少人数相手にするのに拘るのはそういう理由だよ。ぶっちゃけ人を追い詰めるのとか面倒いし、さっさと自殺二歩手前くらいの精神状態にして言いなりに出来りゃなんでもいいかなって感じ」
「悪人だ……そんな所も素敵だよ、サイコパス……!」
「普通に良心の呵責はあるんだよなあ。日夜泣きながら神様に謝ってるっての」
多少酷い事したらすぐサイコパス認定してくるの、年相応の中学生らしくていいな。
現実世界のサイコパスやソシオパスなんて、二つ合わせてやっと出現率はぐれメタルくらいのレアドロップキャラクターじゃないの?
俺、サイコパスの枠でいいんか? 鬼かっこいいやん。ナイフとか舐めちゃお。
「野球が大好きな辻井くんの腕を使えなくしたり、美容師になりたい鷲見さんをオシャレ出来ないくらい散髪しちゃったのはやり過ぎなんじゃないの? そういう所がパスってるというか」
「んー……それくらいの事なら私じゃなくても皆しそうなものじゃない? 明らかな弱点ぶら下げてんだよ? 攻撃するでしょ。モンハンだって肉質柔らかい所とかに攻撃当てに行くじゃん。理論としてはそれでしょ」
「ゲーム感覚なんだなぁ」
「うんそれは悪く言い過ぎだな? ゲーム感覚では無いのよ」
絶対俺を悪者に仕立て上げたいマンじゃんこの人。急に仲良くなったと思ったら人の事非難したがってるのか? 相手を尊重する気持ちを育んでほしいものです。
あらかたテキトーに語り終え、人数が多くなってくる緑道前の小道で堀口さんとは別れる事とした。一緒に登校すると学校でのいじめられムーブに支障を来たしかねないし、用心に越したことはないからね。
「今日は昼後に場島くんの所に行くからさ。お昼の時間になったら私トイレ行くから、戻ってくる前に鞄漁ってこれ壊して机の上に置いといて」
「なにそれ?」
「レーザーディスクよ」
鞄の中から『エルム街の悪夢』、『フランケンシュタイン』、『ロボコップ』の三枚のレーザーディスクを出して見せる。デカイからなぁ、これなら嫌でも目立つゾ。
「なにそれ? レコードみたいなもの?」
「まあ私も使い方はよく知らないけど、映画が見れるらしいよ。ほら、私って映画好きじゃん?」
「そうなの?」
「そうなの。て事にしてるの。小鞠や紗理奈、蝶田ちゃん、あと佐藤辺りならよく知ってると思う。だからこれを壊してくれれば私が大絶望カマしてショックのあまり家に帰っちゃったって解釈してくれるでしょ」
「なるほど……でもいいの? なんかこういう骨董品みたいのってレアじゃない?」
「ホビーオフにめっちゃ在庫あったし、同じやつ持ってるから全然いいよ。昨日買った後そのまま持ってきちゃった、みたいな感じにすりゃ違和感も無いだろうし」
「へぇ。鹿狩さんって、映画好きなんだね」
「好きというか、まあ暇潰しに丁度いいしね」
「覚えとく! じゃ、また学校で!」
「はーい。……っ!?」
別れの間際、堀口さんにチュッてキスされた。何故。
歩き去っていって小さくなっていく堀口さんの背中を見送り、完全に見えなくなった所で俺も歩き出す。さてさて、今日は一体どんな酷い事されるのかな。
緑道に入り、うちの学校の生徒達が群れを成して歩いている所に合流する。雑踏の中、ヒソヒソと俺に対するウワサ話が耳に入ってきた。クラスメートが近くに居たらしい。まあ教室以外では手を出される事も少ないから無視で良いか。
「ちょっとあんたら、鹿狩くんの悪口言ってるでしょ」
「……ひょっ?」
久しぶりの声。冷たさの中に熱を孕んだ幼馴染の声がした。振り向くと、制服に身を包んだ都子がそこに立っていて、クラスメートの女子二人に詰め寄り睨んでいるのが見えた。
「都子!」
「あ、鹿狩くん久しぶり。元気してた?」
「してた、けど。何してるの?」
「なんでもないよ。ね〜?」
都子に詰められた二人が首をぶんぶんと縦に振っていた。余程絞られた後に見える。一体何を言われたんだ……?
「モデルの仕事、終わったんだ?」
「モデルだけじゃないけど、まあ色々とね。また学校復帰する事になったから、よろしく」
「う、うん」
やばいなぁ。やばい気しかしないなぁ。
都子が学校復帰かぁ、いつかは絶対戻ってくると分かっていたけど、都子は劇物だ。教室の雰囲気がまた一変するのは明らかだし、菊池さんと正面からぶつかりあったら派閥が細分化されて面倒になるぞ……。
「何してんの? ほら行くよ」
「あ、うん。待ってー」
都子に脅えている二人をチラッと見ると、その二人は俺を見て睨むでもなく頭を下げてきた。
あちゃー……いじめを辞める感じになってるぞ。
正しくいじめられっ子にとってのヒーローだな都子。
さて、どうしよう。余計な事をされたら仲間を増やせないぞ。どうにかして都子を大人しくさせなきゃだな……。