※この作品はR-18です。

子供に戻ったと思ったら女体化させられるし女として生きるべきか男のまま生きるべきか分からない俺はスワンプマン   作:千佳のはんぺん

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トキソプラズマ

「はい、おつかれ〜」

 

 

 ビルまで運び出され、ベッドの上に雑に放られた。隣には、目隠しと猿轡を付けさせられた柳瀬川が居て、彼女は服を脱がされ下着姿のまま転がされていた

 

 

「うぅぅっ、ゔぅぅう!」

 

 

 柳瀬川が呻くように泣きながら体をしきりに伸ばして逃れようとしていた。手足を拘束されていて、視界も遮られていては上手く逃げ出すことなんて出来るはずない。

 

 俺が助けるべきだ、だが俺は柳瀬川の事を直視する事が出来なかった。

 

 

「惚れた女が隣で怯えてんのに何もしねぇんだ?」

 

 

 俺を捕まえに来た連中のリーダー格、咳渡と呼ばれた巨漢の肥満男がニヤけた顔でそう言ってきた。顔に拳を押し付けられる、グリグリと。それを見ていた酒田廻が「程々にしておけよ」と釘を刺す。

 

 

「あははっ、無理もないよ。辻井くん、私以外の女の裸を見れなくなったんだもん。ねぇ?」

 

 

 鹿狩が俺の少し伸びた髪を乱暴に掴み、柳瀬川の近くまで引っ張ってる。柳瀬川の肌色が見えると、すぐに胃の中が込み上げる感じがして口を慌てて抑える。それを見て愉快そうに嗤った鹿狩が、柳瀬川の目隠しに手を掛けた。

 

 

「柳瀬川さ〜ん、あんなに助けを求めてた白馬の王子様の登場ですよ〜」

「ゔぅ!? ぅ、ぺあっ! つ、辻井っ! 辻井っ、助けてっ助けてぇ!!」

 

 

 必死に俺に助ける柳瀬川の声がする。それに対して、俺は。

 

 

「つじ、い……?」

「おーい辻井くん。何で目を逸らすわけ? 大切な人なんでしょ? 人を殺すのも厭わないくらい、守りたかった人なんでしょ? なのに、なんでそんな"汚物"を扱うような態度を取るのさ」

 

 

 鹿狩に頭の位置を固定させられ、指で強引に瞼をこじ開けられた。

 

 

「うゔっ!?」

 

 

 喉を込み上げる熱があった。必死に耐える。

 柳瀬川の胸が、腰が、首筋、鎖骨が、二の腕が、臍が、少女の裸が。それらの景色が瞳に焼き付く度、脳が強い拒絶反応を示し腹の中で虫が蠢くように胃の内容物が逆流しそうになる。

 

 

「辻井くん。柳瀬川さんはね、辻井くんのしでかしたミスの責任を取る為に、今からここにいるゴロツキ達に輪される事になってる」

「は、離してくれ、鹿狩」

「違うよね? 離してくれ、じゃない。まず最初に言うべきは、柳瀬川さんに酷い事はしないでって懇願するべきだ。違う?」

「違わない、だが、辛いんだっ、もうっゔぉえっ!! た、のむ、鹿狩!!」

 

 

 頭を振って鹿狩の指から逃れ、強く瞼を閉じる。鹿狩が俺から離れると、飛び退いて俺は柳瀬川から離れた。破裂しそうな心臓の鼓動を抑える為に強く胸を押える。

 

 

「辻井、なんで……」

「こりゃ重症だね。ねえ、柳瀬川さん」

「な、なに。言っとくけど私、あんたの言いなりには」

「まだ辻井くんの事好き?」

 

 

 鹿狩の問いに柳瀬川の息が止まった雰囲気を感じ取った。しかし彼女は強い口調で、ハッキリと、鹿狩に向けて宣誓するように言い放った。

 

 

「好き、だよ。あんたが辻井になにしようが、それで辻井がどうなろうが関係ない! あんたらにこれ以上振り回されて、感情をかき乱されてたまるか!!」

「あはは。ゲロを顔面にぬりこまれて泣き喚いてた癖にやけに強気だね〜」

「なっ!」「ゲロ……?」

 

 

 焦った心がこちらまで伝わるほど、柳瀬川はハッキリと動揺を口にした。

 

 

「辻井くんの負担にならないように」「やめてよ鹿狩!!!」

「やめないよ? 辻井くんが私を殺しに来たんだもん。責めるなら辻井くんを責めて?」

「殺しに……って?」

「辻井くんを守る為に、辻井くんの負担にならないために柳瀬川さんが頑張ってたように、辻井くんも柳瀬川さんの為に色々頑張ってたんだよね。その結果、頭が壊れちゃって」

「えっ……」

「で、まあ紆余曲折あったんだけど。私を殺しに来たの。失敗しちゃったんだけどね」

「なに、それ」

「二人とも、やってる事全然無駄だったって事やね。相思相愛なわけだわそっくりなんだもん。相手を守ろうとしてから回ってる感じ」

 

 

 ガチャガチャと工具の入った箱を漁るような音がした。不良の一人が鹿狩にマイナスドライバーを手渡していた。

 

 鹿狩は柳瀬川の上に覆いかぶさり、その目のすぐ前にドライバーの先を差し向けていた。

 

 

「辻井くん。何腰抜かしてんの、愛しの彼女未満友達以上が危機に瀕してるよ?」

「ひっ、や、やめっ」

「ほら、辻井くん。私を殴り倒して助けないと。自分が嫌った隻眼キャラに、柳瀬川さんがなっちゃうぞ〜」

「辻井、助けて、辻井……!」

「た、頼む。鹿狩、もう」

「口じゃなくて手を動かせ。おら来いよ、私気ぃ長くねぇぞ?」

 

 

 鹿狩の腕が上がり、ドライバーは柳瀬川の眼球ではなく手のひらを刺した。

 

 柳瀬川の悲鳴が聞こえる。けれど、暴れる柳瀬川の裸体が見えると吐き気を催すから直視出来なかった。

 

 なんで、と柳瀬川は嘆く。どうしてと柳瀬川が問う。その言葉はどれも俺に向けて放たれた言葉で、しかし俺はそれに対して何も答えることが出来ない。

 

 無理なのだ。鹿狩に逆らうなんて、もう俺には出来ない。俺も、柳瀬川も、もう蟻地獄に捕まった蟻なんだ。反抗はおろか、抵抗する事さえ出来ない、気まぐれに生かされてるだけの獲物に過ぎないんだ。

 

 

「つーじーいーくん」

「ごめんなさい、ごめんなさい」

「その、壊れた人間みんななぜかごめんなさいを繰り返す理論を地で行くのやめようね。普通に話そう、普通に」

 

 

 柳瀬川の元から離れた鹿狩が、俺の目の前に胡座で腰を下ろし、手をパンっとねこだましの要領で叩く。放心していた意識が強制的につなぎとめられた。

 

 

「前にも言ったけど、今泉さんへの報復ごっこは主に辻井くんに動いてもらいたいんだ。必要な時が来るまで私が黒幕だって知られたくないし、以前彼女を虐めてた辻井くんならきっと少しやりすぎてもまあ妥当だろうで済むと思うからさ」

「わかった、今泉相手になら何だってやってやる。だから、柳瀬川はもう許してやってくれ」

「じゃあ人殺せんの?」

「人、は?」

「復讐とかそういうの関係なしに、自分にとって悪人でもなんでもない、ただの一般人を命令一つで迷いなくぶっ殺せる? ぶっ殺せるんなら、柳瀬川さんを解放してもいいけど。どう、出来る?」

 

 

 顎を掴まれ、顔が動かないようにさせられ、至近距離から鹿狩が俺の目を見ながらそう問い掛けてくる。

 

 生理的な嫌悪感の度合いで言えば明らかに今こそ目を逸らしたり瞑ったりするべきなのに、鹿狩の瞳からは拒絶の感情よりも強い引力があるようで離れる事は出来なかった。

 

 

「なあ、殺せんの? ただの一般人を、私の一存で」

「む、むりだ。そんなの」

「だよねぇー……?」

 

 

 こんな状況なのに、隣に柳瀬川がいるのに。鹿狩の吐息が当たって、脳を蕩かす優しく妖しい声で囁かれて、肩の力が抜けてしまう。

 

 

「はぁ、はぁっ」

 

 

 体が熱くなる。胸が苦しくなり、呼吸が段々と荒くなる。パブロフの犬のように、俺は鹿狩が顔を寄せるだけで理性が溶融しグズグズの本能がむき出しになってしまう。

 柳瀬川がいてもそれは変わらず、俺はいつの間にか鹿狩の犬に成り下がっていた。

 

 

「つ、辻井……?」

「柳瀬川さんが見てるよ、辻井くん」

「はっ、はっ。み、見るな、柳瀬川っ」

「辻井……」

「いいじゃん、見てもらおうよ。私と辻井くんがラブラブな所。ねっ?」

 

 

 チュッ、と鹿狩の唇が俺の口の端に当たると、何も考えられない無意識の間に俺は鹿狩を押し倒し服を脱がせに掛かっていた。

 

 

「鹿狩っ、鹿狩っ!!」

「あははっ。あんっ、ちょっと、柳瀬川さんが見てるのに激しいよー」

 

 

 棒読みでそう言う鹿狩だったが、彼女の方から俺の頭を抱き寄せ自分の胸に押し当てていた。二人してベッドの上に折り重なり、体を擦り付ける。鹿狩の甘い匂いが鼻腔に溶けて頭を埋めつくしていく。小さくて柔らかい体に触れる度に加虐的、性的欲求が増幅される。

 

 

「嘘、やめてよ、辻井……」

「ひゃははっ、いいね! ねぇ、柳瀬川さん?」

「なによ!?」

「まだ、辻井君のこと、好きぃー?」

「っ、この、性悪女っ!!!」

 

 

 鹿狩に飛びかかろうとする柳瀬川だったが、脇に控えていた不良達に取り押さえられ、その場でうつ伏せに組み伏せられる。そうこうしているうちに俺は鹿狩を裸にさせ、その股に自身の一物をあてがった。

 

 

「前戯もなしでするのー?」

「もうっ、ドロッドロに濡れてんじゃねえかよ」

「擬音がなんか汚いよ! ドロドロなんかしてないもっ、んぉお゛っ!? あ゛っは、いきなりナマで一番奥まで突っ込まれちゃったー!」

「っ!? なんでっ、辻井!?」

 

 

 柳瀬川はさっきから何度も何度も俺の名前を呼びかけるが、最早目の前の女しか意識の中に留めておけなかった。

 

 可愛い、鹿狩は世界一可愛い。蹂躙してやりたかった、もっと俺を見てほしい。俺だけの物になって欲しい。腰が止まらない、鹿狩を手に入れたいという支配欲求が俺の身体を自動操縦してくる。

 意思で止められる物ではなく、俺は乱れる鹿狩の胸を吸いながら、力強く抱き締め自分の女であると周りに誇示するように犯し続ける。

 

 

「いや、だ、辻井……やめてよ、なんでなの」

「あははははぁんっ!? あ゛っ! ち、ちょっとっ、お゛っ! ぎもちっ、ぐっ、あ、あのっ、1回煽りたいからっ、腰止めっ、グチャグチャしなひでっ、い゛っ!?」

 

 

 鹿狩の体が大きく跳ね、仰け反りながら身を震わせていた。相変わらず感じ初めてから絶頂するまでは早い、堪え性のない女だ。体を覆うようにしっかりと抱きしめて腰を押し付けると、それだけで鹿狩の「お゛、お゛ぉぅ……」という汚い嬌声が耳元を撫でてきた。

 

 

「はぁ、はぁ。ど、どう、柳瀬川さん。どうやら辻井くん、君より私の方を選ぶみたんぅんんっ!!? 喋り終わるまで待ってっ、あっあっあ゛っいぎだくないっ待って待ってはやいはやいはやいはやいっぐっいくっやぁっ!!?」

 

 

 再び鹿狩の体が、俺を挟む筋肉が激しく震えた。目がトロンとした鹿狩が俺の首の後ろを掴まえ、半開きの潤んだ目で俺を見つめてくる。顔を近付けると、鹿狩の方から貪るように唇を合わせてきて、舌を練り合わせ、ジュルジュルと下品な水音が立つ。

 

 他人の事など一切気にせず、二人だけで溶け合うように体を貪り合う。この場に集まった不良達は呆れた様子でため息を吐き、各々勝手にゲームを始めたり、トランプを始めたり、酒を飲んだりし始めた。

 

 結局いつもの乱交と変わらぬ光景が始まりつつあった。ただ違うのは、柳瀬川というイレギュラーが1人交じっているという点だけ。

 

 柳瀬川は俺と鹿狩の情事を、それを微塵も気にしない周りを見て混乱していた。目が焦点合わなくなるほどに様々な思考が溢れているようだった。

 

 

「辻井……」

「いいっ、きもちぃっ、だして、だしてっ、もっと私をグチャグチャにしてぇ!!」

「出すぞっ、中で出すぞっ、孕んじまえっ!! 俺の子供孕んじまえ鹿狩っ!!」

「ゔっ、ゔぉぐおーー〜〜っ!? じぬじぬじぬっ、作る、子供つくるぅぅあぐっいひぃあ゛ぁー〜っい゛ぐお゛おぉーー〜……」

 

 

 快楽から逃れようと身をひねらせる鹿狩を側位の姿勢にし、チョークスリーパーのように首を肘で挟むことで逃げ出すことが出来ない状態にして腕、腰に力を入れる。

 

 ぐぐぐ、っと力が腕に入ることで首が絞まり同時に奥の奥まで一物が刺さると、鹿狩は狂ったように身を震わせて無様な声を上げる。そういう性癖らしい。

 

 狙った訳でもないが、側位で寝転んだ先には柳瀬川がいた。俺と鹿狩の両方の表情が見える位置に居た柳瀬川の顔を暗く、信じられないものを見ているような顔をしていた。

 

 そこで、俺の興奮が急激に後悔へとすり替えられた。俺は、柳瀬川の目の前で、他の女と抱いてしまった。

 

 

「んぁっ、はぁっはぁ。うぅ、お腹ん中あったかい……」

 

 

 一物を鹿狩の股から引き抜いて慌てて毛布で下半身を隠す。

 

 

「……さいってい」

「ち、違うんだ柳瀬川! これは……」

「不可抗力なんだよ、柳瀬川さん」

 

 

 そこで話に入ってきたのは、俺にたった今犯されて伸びていた鹿狩だった。鹿狩は自分の股から滴る白濁液を指で掬いとって、それを柳瀬川の前に出した。

 

 

「嫌っ、汚いっ!!」

「いらんの? 君の好きな辻井くんの精子やけど」

「ひっ! 近付けないで!!」

 

 

 手で払われた鹿狩が指に着いた液を毛布に付けて落とした。今ので何か確信を得たようで、「やっぱりね〜」と言いながら鹿狩は俺のすぐ前に座り直した。

 

 

「柳瀬川さん、処女でしょ?」

「っ!? そ、それがなによ!」

「いや、処女には刺激が強い行為だったなと。そりゃ、さいっていだとも思ってしまうなと。でもね、仕方ないんだよ柳瀬川さん」

「何の話よ……?」

「辻井くんの話だよ。辻井くん、私に報復されすぎて脳みそおかしくなっちゃったって言うじゃん? その最たる例がこれだったりするわけ」

 

 

 言いながら、鹿狩が裸のまま抱きついてきた。三回も出して体力もかなり使ったというのに、またMAXまでエネルギーが充填される。

 

 

「ほら。抱きつかれるだけでこんなにも興奮しちゃって。辻井くんね、私の裸を見たり、私に言い寄られたり、密着されたりするとね。人間から猿に退化しちゃうんだよ」

「なによ、それ」

「認めたくないよねぇ。気持ち悪いよねぇ。純愛だと思ってたのは自分だけで、隠れて私と何度も体温を交換し合ってただなんて信じたくないもんね。真実だから、信じるも何も無いんだけどさ?」

「……っ!!」

 

 

 強く歯ぎしりする音が聞こえた。ギリギリと。柳瀬川を見る。その目には、一筋の涙が伝っていた。

 

 

「柳瀬川……」

「幻滅した? 自分が頑張ってる間、私の肉体を貪ってた辻井くんに」

「……違う。あんたが誑かしたんでしょ、鹿狩。笠原くんの時みたいにっ!!」

「っ。……なに、なんでそんな話になんの。挑発?」

 

 

 柳瀬川が鹿狩にとっての地雷に触れたっぽかった。それまで飄々としていた鹿狩の瞳に、明確な敵意が宿る。

 

 

「菊池さんに嫌われる原因になったあの動画、結局編集された物ってのは分かったけどさ。男との距離感が近いのは本当じゃん。天然でビッチやってたのは事実でしょ? 前から皆噂してたよ、あんたクラス中の男を食おうとしてるって」

「へぇ、そんな話してたんだ。道理でやたら女から避けられ、男からジロジロと見られてばかりだったわけだ」

「真実でしょ? 今がまさにそうじゃん、辻井を誑かして、ここにいる他の男とも関係を作ってんでしょ! 最低な女。あんたみたいな奴が病気を持ち込んでくるんだよ! 不潔な女、あんたなんて」

「殺すぞ」

 

 

 不潔、と言われた瞬間に鹿狩の目が大きく開き、マイナスドライバーを持つ手に強く力を入れて柳瀬川の髪を掴んで頭を持ち上げると顎下にマイナスドライバーを充てた。

 

 

「今泉さんへのごっこ遊びに、辻井との関係を持ってるからって理由でお前も利用してやろうかと温めておいたんだけどさ。別に辻井一人にやらせてもいいんだよ? お前の生き死にはこっちが握ってんの、ちゃんと自覚してる?」

「……鹿狩さん、顔を近付けて」

「? なにがっ」

 

 

 顔を僅かに寄せた鹿狩に、勢いよく身を起こした柳瀬川のヘッドバットが命中する。鹿狩はそのまま仰向けに倒れると、鼻から血を流し笑った。

 

 

「あはっ、ひゃっはははっ!!! 前々から思ってたけど、本当に心折れないよねーお前! カッコイイ女だよなぁ、ムカつくなぁ!! 何をすれば自殺したくなるのか試したくなっちゃった〜!!!」

 

 

 ぎゃははと1人で笑い続けると、グジグジと手の甲でテキトーに血を拭いとった鹿狩が身を起こし俺を見て言った。

 

 

「辻井くん、柳瀬川さんを今から抱け。そしたら二人とも解放してやるよ」

「え、いや、それは……」

 

 

 色のない目をした鹿狩からの提案、聞かなければ罰が確定してる時の目だ。しかしその要求は飲めるわけが無かった。

 俺は、柳瀬川の裸を直視できない。抱くなんて、どう考えても無理だ。

 

 

「私はただ柳瀬川さんの処女膜をぶち破って欲しいだけだから、優しくすればいいよ。柳瀬川さんだって、ムードもクソもないこんな場所で初めてを散らすのはムカつくだろうけど、相手が好きな相手である辻井ならそこは文句ないでしょ?」

「……まあ」

 

 

 柳瀬川は控えめに肯定すると、俺の方を向き俺に向けて言葉を発した。

 

 

「……初めてだから、鹿狩みたいに上手くは出来ないだろうけど」「ソイツ上手いんじゃなくて雑魚いだけやぞ」「殺されたいの? めぐっちゃん」

 

 

 柳瀬川の言葉を遮るように酒田廻が茶々を入れ、鹿狩が本気で目を尖らせて注意していた。

 

 

「……上手く出来ないけど、それでここから逃げ出せるなら、私はあんたに体を差し出すよ」

「や、柳瀬川。でも……」

「仕方ないでしょ、鹿狩はやばいやつだけど」

「ん?」

「発言した以上、形式的に約束を守ってくれそうな気はする。こいつは、よく分からないから……ここから逃げられるならそれでいいでしょ」

「……女にとっての初めては、男と比較にならないくらい大事な物なんだろ。今後来る貴重で尊い未来が来た時の為に取っておくべきだ」

「そんなの私は全然っ」

「あ、エモコミュニケーション取ってる所悪いけど、辻井くんが柳瀬川さんを抱かなかったら普通に集団レイプのルートに移行するからね? そのために不良の皆さんにはスタンバってもらってるんだし」

 

 

 鹿狩は、悪魔でも思いつかなそうな邪悪な事を言っていた。なんだよ、それ。そんなの、どのみち柳瀬川はここが初めてを散らすことになるってことじゃないか。こんな、誘拐まがいの事をされ、怪我を負わされ、尊厳を破壊された流れで処女喪失なんて、そんなの残酷すぎるだろ!?

 

 

「何か言いたげだけど辻井くん。言っとくけど、君が頑張れば全部丸く収まる話なんだよ?」

 

 

 肩にポンっと手を置かれる。柳瀬川は、俺を拒否していない。本人からの反応的に抱くことはOKを出されてる。けど。

 

 今の俺は、エロ本すらまともに読めないくらい鹿狩以外の女体を気持ち悪がっていて、それが柳瀬川の前でも現れないか不安で仕方なかった。

 

 

「……さっさと決心付けないと、さっさと犯させるよ? なんなら、孕ませようかな」

 

 

 耳元で囁かれた言葉のラインナップに正気を疑う。何故こいつはこんなにも、同じ女である柳瀬川にこんな酷い事が出来るのか。共感性が欠如しているどころではない。

 

 

「わ、分かった。分かったから」

「じゃあさっさと柳瀬川さんの前に立てよ。ほらほら、手伝ってやるから」

 

 

 鹿狩に背中を押され、強引に裸の柳瀬川の前に立たされる。

 

 

「つ、辻井」

「……うっぷ!?」

 

 

 柳瀬川の身体を眺めて勃たせようとしても一物は微塵も反応せず下を向いたままだった。

 

 というか、そんな事に意識など向いていなかった。俺は必死に嘔吐の衝動を抑えていていたから、性的興奮など二の次だったのだ。

 

 

「や、柳瀬川」

 

 

 少しずつ手を伸ばす。大丈夫だ、まだ我慢出来ている。柳瀬川の皮膚に触れるか触れないかまで近づき、その程よいサイズ感の胸が視界に映るも、そこで吐かなかったのならもう大丈夫だというある種のプラシーボを抱き気が緩んだ。

 

 一瞬の出来事だった。

 

 鹿狩が俺の背中をトンっと押して、中腰になっていたせいでバランスを崩した俺は柳瀬川の裸体の上に思い切り手足を突いてしまった。

 

 

「うお゛ぇっ、ゔぉぇぇえええーー〜っ!!?」

 

 

 ビチャビチャビチャ、と音を立てて吐瀉物が俺の口から柳瀬川の腹に注がれる。それを見て柳瀬川は泣き叫び、嗚咽し、追うように胃の中身を戻した。

 

 再びビチャビチャと水音が鳴る。柳瀬川の体とシーツがゲロまみれになる。

 

 

「はい、罰ゲーム。辻井くんは柳瀬川さんを抱けなかったので、他の全員で好きにレイプしまーす」

「ま、待ってくれ! 後生だから頼む!!!」

「知らね〜よ。ほら皆、現役JCだよ召し上がれ〜」

 

 

 鹿狩が手を広げてそう言うが、彼女の言う事を守って柳瀬川を犯そうと動く者はいなかった。

 

 

「ゲロなら拷問部屋で綺麗にすりゃいいよ。そしたら抱き放題ですよ?」

「それもそうか。よし、じゃあ田辺、その女引き摺ってこい」

「えっ、嫌っ、やめて離して! お願い助けて辻井っ、助けっ」

「続きしよ〜。……って、辻井くんの口ゲロ臭い! ゆすいできて!」

「……分かった」

 

 

 俺は急いで水道の方まで行き口をゆすぐと、すぐさま戻って鹿狩のいるベッドに近付く。

 

 

「このベッドもゲロ臭いから、あっちのベッドでしようよ」

「あぁ」

「えっ? なんで従ってんの、ねえ辻井!!」

 

 

 柳瀬川の横を通ろうとすると、柳瀬川に手を掴まれ止められた。

 

 

「待ってよ辻井!! 違うよね、弱みを握られてるんだよね!? 言いなりになってるのは自分の意思なんかじゃっ」

「……もう俺に弱みなんてないよ。鹿狩が全部、ぶっ壊しちまった」

「えっ……」

「野球選手になる夢も、お前との未来も、お前も、みんなみんな、鹿狩に粉々にされたよ。……そして、その代わりにアイツは、俺の空っぽの中に自分を埋め込んだ」

「何、言ってるの。全く分からない」

「アイツに逆らって大切なものが破壊される度、アイツの事を好きになるんだ。そう錯覚してるだけなのかもしれないが、アイツの事を考える比率が大きくなって行くんだ。俺はもう、アイツ無しじゃ生きていけないんだ」

「つじ、い……」

「だから、ごめん。俺の事は憎んでいいから、もう、離してくれ。我慢の限界なんだ」

「我慢の……?」

 

 

 俺を掴む手が離れると、うずうずとした全身を制止させておくことができなくなりました俺は鹿狩に思い切りぶつかりに行くと彼女を力づくでうつ伏せにさせた。

 

 

「あんっ、あははっ、早速だねつじっああぁまた奥までいぎなりっ!?」

 

 

 何の用意もせず一物を再び突っ込むとまたしても鹿狩のナカはトロトロに濡れていた。

 寝バックの姿勢でがっちりとホールドし、グリグリと腰を押し付けると快感と共に気持ちよさそうに呻く鹿狩の声が耳に入ってきた。

 

 

「はぁっ、はぁっ、鹿狩っ、鹿狩っ!!」

「い゛っ!? ぃつもよりっ、い゛づも゛よ゛り゛いぃぃーー〜激しっ」

「好きだっ、好きだっ、俺の物になれっ、鹿狩鹿狩鹿狩鹿狩鹿狩っ!!!」

「ダっ、それはっ、私彼氏いるっ」

「俺のになれっ、俺のになれ鹿狩ぃっ!!!」

「あぞごぞりぞりだめぇえっ!!! うぎっ、いぎゅっ!? いっ、いぎゅぅっんあぁあああぁおおお゛お゛お゛っほぅあっ、いぐいぐいぐっ!?」

 

 

 俺達は獣だった。条件が揃えば獣の交尾をし相手をよがらせる、それが俺らだから、初めから、柳瀬川が居ようが何も意味なんて変わらなかったんだ。

 

 今日鹿狩に襲撃をして失敗した時点で、もう二度と俺は鹿狩に逆らえないと分からされてしまった。暴力の面で負けたら、今度は性暴力の面での戦いになるのは理解していた。

 

 柳瀬川に目もやれず、俺はただ目の前の女を自分のものとするために蹂躙する事しか頭に無かった。

 

 執心する俺を見て、その心には自分の存在なんて残ってなくて鹿狩へのドロドロとした感情で満ちてる事を察したのか、柳瀬川は俺に対する目線を酷く冷たいものへと変えていた。鹿狩はそんな柳瀬川に何か言いたかったようだが、俺に抱かれてそれ所ではなくずっと動物のような声で喘ぎ続けていた。

 

 

「……もう、なんでもいいや」

 

 

 最後に聴いた柳瀬川の声には、落胆と諦観しか残っていなかった。心が折れた人間のこぼす声音のものだった。柳瀬川の心にトドメを刺したのは、俺だったようだ。

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