「ああ……逆髪の結羅(さかさがみのゆら)!」
新垣美咲(あらがきみさき)は、妄想に耽っていた。美咲の服装は、上下とも、青いイルカ柄のパジャマ。自室のベットに横になった美咲の妄想の相手は、逆髪の結羅だ。
結羅は漫画『犬夜叉』に登場する鬼族の17歳くらいの女の子だった。結羅は出る所が出て引っ込む所が引っ込んでいるプロポーション抜群の肉体で、とても美しい少女だが、美しいのは見た目だけだった。結羅の性格は、残虐で非道だ。人間を獲物とみなしていて、人間狩りをして遊んでいる。狩った人間は、首を刎ねて自らの棲み家に持ち帰り、コレクションに加えていた。また、結羅には髪を操る能力があり、生首の髪を自在に操る事ができた。
そんな極悪非道の美少女である逆髪の結羅に、美咲は憧れていた。理由は簡単。美咲が学校でいじめられていたからだ。美咲の容姿は、美少女である結羅とはまるで真逆だった。美咲は、貧乳で、人相が悪く、出っ歯だった。そんな美咲は、自分の容姿がコンプレックスでいつも下を向いて歩いていた。そんな美咲がイジメに合わないはずがない。美咲は、イジメの格好のターゲットだった。
そのせいで、いつもいつも、美咲は妄想に耽っていた。逆髪の結羅になった自分のお話だ。結羅になった美咲は、気の向くままに村を襲撃し、村人たちを惨殺。その生首を集めて、コレクションに加える。
ある時は、お城のお姫様が紫色の綺麗な髪を伸ばしていると聞いて、城を襲撃。無数の髪を使い侍たちを斬り伏せて姫様の元に行き、首を刎ね、その紫髪を手に入れる。
さらに別の時には、人間を襲う結羅の噂を聞きつけた妖怪退治屋と交戦。弓や槍や刀で武装した妖怪退治屋たち数十人を見えない髪の罠にかけて、皆殺し。意気揚々とその生首を集めてコレクションを充実させる。
と、いう妄想だ。逆髪の結羅は自由で残忍で美しく、美咲の憧れの存在だった。だが、それはあくまで妄想の中の話。当然、現実になるなどとは思ってもみなかった。
ベッドの中、布団に潜り込んだ美咲は、逆髪の結羅についての自作の詩を書いたノートを開く。
『
逆髪の結羅は 地獄から這い出した 微笑みの鬼
逆髪の結羅は 春の風に乗って 血の香りを運ぶ
逆髪の結羅は 美しい断末魔を奏でさせる 死の配達人
逆髪の結羅は 夜空に輝く 一番星のように
逆髪の結羅は 夢に現れて 私に勇気をくれる
逆髪の結羅は 私の心の中に住む 希望の鬼』
『
髪は刃となり 人の命を刈り取る
髪は糸となり 人の心を操る
髪は巣となり 人の魂を集める
不死身の肉体 自信に満ちた笑顔
不死身の肉体 挑発的な言葉
不死身の肉体 傲慢な態度
櫛は命となり 髪を支配する
櫛は命となり 魂を宿す
櫛は命となり 弱点を隠す
不死身の肉体 破壊された櫛に驚く
不死身の肉体 破壊された櫛に絶望する
不死身の肉体 破壊された櫛に消える』
「うーん。どれもいまいちな完成度……。」
他にもまだまだ沢山、結羅についての詩がノートには書かれていたが、どれも似たような善し悪しだった。美咲はパタンとノートを閉じると、今度は漫画『犬夜叉』の2巻を開く。開いたのは、逆髪の結羅が死亡したページだ。それは美咲の一番お気に入りのページだった。そこでは、逆髪の結羅が絶望の表情を浮かべていた。結羅の、美しい肉体は、犬夜叉との激しい戦闘でズタボロにされていた。その両腕は切り落とされている、豊満な胸の谷間には、憎き犬夜叉が腕を突っ込んだせいで大穴が空いていた。それだけ傷つけられてもなお美しさを失っていない結羅の肉体が、陽炎のように消えて無くなってくシーンだ。結羅の本体である櫛が、日暮かごめに破壊され、結羅が死亡したのだった。大きなおっぱい。くびれた腰。スラリと細長い手足。美しい顔。絶世の美少女と言って差し支えのない逆髪の結羅は、このシーンで絶命したのだった。
「逆髪の結羅が……また、死んじゃった……。」
ベッドの中で、美咲は涙を流す。それは、結羅が死んだ悲しみから出る涙だった。だが、同時に、美咲は実は結羅への憧れが反転し、結羅の死に興奮するようにもなっていたのだった。
「ああんん」
知らず知らず、美咲は、その右手を自らの秘所へと伸ばし、自慰行為を始める。彼女は結羅の死に興奮しているのだった。
「結羅ぁ! 結羅ぁ!」
美咲は、興奮し、泣きながら眠りにつくのだった……。