武蔵の国には、逆髪の結羅という鬼の妖怪が住んでいた。彼女は美しい容姿と恐ろしい妖力を持ち、人間や妖怪を狩ってはその首をコレクションにしていた。
結羅は獲物の髪を操ることができ、その髪は見えない糸のように相手を切り裂いたり、操ったりすることができた。
彼女は自分の肉体を不死身にするために、自らの魂を櫛に移しており、その櫛は彼女の隠れ家に隠してあった。彼女は四魂の玉のカケラを探しており、その情報を得るためにさまざまな妖怪を拷問していた。
ある日、とある森の中の沼地にて。
逆髪の結羅はカッパの妖怪を捕まえて、四魂の玉のカケラについて尋ねた。
「あんた、四魂の玉のカケラって知ってる?」
結羅の問い。
「四魂の玉いうたら、妖力を強くするという噂の?」
カッパの返答。
「そうよ。四魂の玉はどこにあるの?」
「どこにあるって、なにが?」
「だから、四魂の玉のカケラよ!」
カッパの返答に、結羅はだんだんイライラしてくる。
「四魂の玉いうたら、妖力を強くするという噂の?」
カッパの返答は、まったく会話が成立しない。
「もう、ダメね。あんたにみたいな無能には、何も期待できないわ」
カッパの拷問を諦めた結羅は、その首を刎ねて、その首を髪に吊るす。
そして、その場を去った。
「次はどこに行こうかしら? 四魂の玉のカケラがあるとしたら、どこにあるのかしら?」
結羅は考えながら森の中を歩いていた。すると、小川が見えてきた。河岸には桃色の花が咲き乱れ、美しい光景が広がっていた。
「あら、川ね。水浴びでもしようかしら」
結羅は最近水浴びをしていないことを思い出した。そこで、小川で水浴びすることに決めた。
結羅は河岸で服を脱ぎ、岩の上に置く。川に入った結羅は、水しぶきを上げながら楽しそうに泳いでいた。
と、その時、猿がやってきて、結羅の服を盗んで去って行くのが見えた!
「なっ!? あの猿! あたしの服を!」
全裸になっていた結羅は、慌てて川から上がる! 服を取り戻すべく、猿を追いかける!
⭐️⭐️⭐️⭐️
ピィーーー!
男は、口笛を吹く。
この口笛は、彼の猿の家来日吉丸(ひよしまる)を呼ぶ合図だった。
口笛からほどなくして、猿は彼の元に戻って来た。
その猿の手には、布が握られていた。
「よしよし。ご苦労であったな、日吉丸」
彼は、荷物を持って来た猿の頭を撫でて、その功をねぎらう。
彼はもう三日も何も食べていなかった。
そこで、猿に食べ物を取ってくるよう命令していたのだった。
「どれどれ?」
彼は、猿の持って来た荷物を改める。
だが、
「こ、これは!? 食べ物ではない!」
それは、食べ物ではなかった。どうやら服、それも、若い女用の服のようだった。
「甘い香り……」
その布は食べ物ではなかったが、甘い香りがした。食べ物に飢えていた彼は、布だと分かっていても、それを口にしてしまう。
くんか、くんか。その布は、あまりに良い香りなので、大きく鼻で息をする。
そこに、声がかけられた。
「あんた、あたしの服で何してんの?」
⭐️⭐️⭐️⭐️
逆髪の結羅が猿を追いかけた先。
そこには一人の青年が座っていた。その青年は、結羅の服を口に含み、その匂いを嗅いでいた。
「あんた、あたしの服で何してるの?」
青年の姿を見た結羅は、激怒した。結羅は全裸なのも忘れて青年の前に姿を見せると、仁王立ちして青年を睨みつけた。
「ふぐ!? ごほぉ!」
結羅の姿を見た青年は、盛大に大量の鼻血を噴出。股間を抑えて、その場にうずくまる。
「あんた……。」
結羅は心の底から青年を軽蔑した。なぜ、青年は鼻血を出したのか? なぜ、青年は股間を抑えてうずくまっているのか? その理由が、あまりにも明白だったからだ。
「女の裸を見るなんて最低ね。死になさい! このゴミ屑男!」
結羅の怒声。結羅は髪を動かし、青年の首を刎ねる。
「それに……。」
結羅は視線を横に向ける。そこにいたのは猿。結羅の服を盗んだ張本人だ。
「キッ! キキッ!!」
結羅の視線に気付いた猿が、慌てて逃げ出そうとするも、もう遅い。結羅は再び髪を振り、猿の首も刎ねてしまう。
二人は死亡したが、それだけでは結羅の腹の虫はおさまらない。結羅は、怒りに任せて青年の死体をゲシゲシと繰り返し蹴り飛ばす。
結羅は、青年と猿の死体を蹴り飛ばしながら、自分の服を拾い上げた。
「なにこれ……。汚らしい……。」
結羅の服、それは青年の唾液と血で汚れていて、ひどい匂いがした。
だが、結羅にはこれしか服がなかった。彼女はいやいや服を着ると、先程の小川に服を着たまま入り、汚れを落とすことにした。
川から出て、結羅は周囲を見回した。彼女は一つの建物に目を留めた。それは、山の中腹にある城だった。
「あれは……城?」
結羅は不思議に思った。
この辺りは、人里離れた森の中だ。
こんな場所に城があるなんて、不自然だ。それに城の周りには、モヤのような妖気が漂っていた。
「もしかして……。四魂の玉のカケラがあるかも?」
結羅は思いついた。
「うふふふ。もしそうだとしたら、あたしにとっては大当たりね。さあ、行ってみようかしら」
結羅は笑みを浮かべた。彼女は、自分の髪に吊るした生首たちを見て、満足そうに頷いた。
「あんたたちも、楽しみでしょう? 城に人間が居れば、新しい仲間が増えるかもしれないわ」
結羅はそう生首たちに話しかけると、城に向かって歩き出した。