翌日、夜明けと共に結羅は起床した。昨日の四魂の玉が爆散した地点付近へと向かう。
その爆散地点の近くには村があり、川もあった。
そして、川岸では日暮かごめと犬夜叉がいるのが見えた。
二人は何やら、口論している。しばらくすると、かごめが「おすわり」を発動。犬夜叉を地面に叩き付けた後、かごめは森の中へと歩いていく。そんな日暮かごめの手には、四魂の玉のカケラを入れたお守りの袋が握られている。
「ふふふ。予定どおり、二人は喧嘩別れしたわね。それに、四魂の玉のカケラもある……。」
結羅は髪を使って跳躍すると、森へと先回りする。そして、森の中に髪を張り巡らせていると、枯れ井戸を発見する。
「くすくす。これが例の井戸ね? じゃあ、この井戸には、たっぷりと髪の毛を張っておいてあげないと。」
結羅は宣言どおり数百本もの髪を枯れ井戸の中に張り巡らせる。この枯れ井戸こそが、未来の世界の女子中学生であるかごめを戦国時代にタイムスリップさせた、時空の裂け目なのだった。
かごめは現代社会で生まれ育っただけあって、ストレスへの耐性が無い。お風呂もまともなトイレも暖かな布団も何もかもが無い戦国時代になど一刻たりとも長居したくない。それが初期の頃のかごめの心情だ。だから、かごめは元の時代に戻ろうと、この井戸へとやってくるのは間違いない。原作漫画でもそうなっているからだ。
だが、井戸に罠を張った今、かごめが井戸を通れば、日暮かごめはサイコロステーキの様にバラバラになって絶命するのは確実だった。
後は、かごめがやって来るのを待ち構えるだけだ。
逆髪の結羅は、手近な木の陰に隠れると、日暮かごめを待ち伏せする。
予想どおり、かごめはすぐにやって来て、枯れ井戸に近づく。
「私の出てきた枯れ井戸……。」
かごめの独り言が聞こえる。
「きっとここから現代に戻れる……。」
そう言いながら井戸を覗き込んだかごめは、なぜか、井戸には入らず、急にその場にへたり込む。
「やだ……。骨がある……。それに蜘蛛の巣もいっぱい張ってる……。入るの怖い……。でも……どうすれば良いの……?」
日暮かごめの情け無いセリフは、風に流されて結羅にも聞こえる。それは結羅を苛々させるのに十分だった。こんな根性無しの雑魚ゴミ女に、このあたしが殺されたと言うの!?
そのとき、変化が起こった。
チュッチュと、空を飛んでいた小鳥が一匹、髪に引っかかり、バラバラになって墜落したのだ。
「なっ!?」
ズタズタに墜落した小鳥を見た日暮かごめは、驚愕の声を上げる。
「髪……?!」
あ、これは原作どおりの展開だ。逆髪の結羅に憑依した美咲は、原作どおりの展開に満足する。このままストーリーを進行させれば、かごめは井戸に落ちていく。そこで結羅は、かごめに声をかける事にした。
「ふぅーん、あんた……あたしの”髪籠(くしのかご)”が視えるんだ。」
そう言うと同時に、結羅は跳躍。高さ五メートル程のところに貼ってあった髪の一本の上に着地。自信に満ちた声をかけ、かごめを傲然と見下す。
しかし、結羅の精神である美咲は、内心で、ヒヤヒヤだった。こんな高い所に立ったら、かごめ視点だとスカートの中が見えてノーパンなのがバレるんじゃないか? それにそもそも、さっき髪の上まで跳躍した時、大きすぎるおっぱいがプルンと震えたんですけど!? ミニスカートもめくれたりしてないでしょうね!? 美咲は、背筋に冷たい汗を流しながら、それを意志の力で強引に封じ込めると、傲慢な台詞を続ける。
「でも、視えるだけじゃ駄目よ?」
「誰!?」
かごめの質問がとんでくる。
「あたしは逆髪の結羅。覚えなくてもいいよ。あんた、もう終わりだから。」
結羅はそう答えると、ザッと、右手を振る。
このときも、美咲の精神は冷や冷やだった。腕を振った反動でミニスカートがひらりと捲れたからだ。
『見られた! 絶対見られた! おまんこ見られちゃった!』
そんな美咲の内心を他所に、結羅の命令を受けた髪が動き出す。髪は、かごめにピシピシッと向かうと、かごめの服の中から四魂の玉のカケラを入れた御守りを盗み出す。そして、結羅の手元へと御守りを届ける。
「あ!」
四魂の玉のカケラを盗られたかごめが、驚きの声を上げる。
だが、結羅はそんなかごめを無視する。先ほどの、スカートの下のおまんこを見られた衝撃から立ち直ってなかったからだ(本当の所は、日暮かごめにはそんな事を気にする精神的な余裕が無かったので、結羅のマンコは見られてなかったのだが、その事に美咲は気づいていない)。
それはとにかく、マンコを見られた衝撃で余裕のない美咲は何度も繰り返し読み、丸暗記していた結羅の台詞と行動を再現していく。
彼女は、手に入れた御守り袋から四魂の玉のカケラを取り出すと、しげしげとそれを見つめる。
「んまー。四魂の玉、こんなにしちゃって……。」
結羅は、細かな破片に砕けてしまった四魂の玉を見て、呆れた声を出す。
「かっ、返してよ!」
気丈にも、日暮かごめは、結羅に反論。近くの髪をムンズと掴むと、それを引っ張って、結羅を引きずり落とそうとする。
それに美咲は慌てるが、それは一瞬だけのこと。結羅は、かごめの引っ張る力を逆用してかごめへと突進。同時に腰の刀を抜く。
「あんた、もう死んでいいよ。」
残酷な宣言と共に、結羅はかごめへと刀を振る。だが、そのとき、かごめは恐怖から急にへたり込み、その場で転けてしまう。そして、枯れ井戸へと落下する。
「あああーーー!!」
悲鳴を上げながら井戸に落ちていくかごめを、結羅は追撃する。
「逃げたって駄目!!」
結羅は、井戸の中に向けて、刀を投擲。シャッと鋭い音で空気を切り裂く刀は、かごめへと突進!
だが、何故か手応えがない。
「ん?」
なぜ手応えがないのか? 井戸の中には、数百本の髪が張ってあるし、かごめが井戸を通過できる筈がないのに。疑問に思った結羅は、井戸の上で大きく股を開き、井戸の両端を跨ぐ形で着地する。そして、体操選手の様に柔らかな上半身を前に折り曲げ、井戸の中を覗き込んだ。
足を大きく開いて、前屈するなんて……!? 自らの格好に、結羅の中の精神である美咲は、気が気ではなかった。
『こんな格好!? 中に日暮かごめがいたら、おマンコ見られちゃうじゃない!! 大体、ミニスカ姿見でお尻も思いっきり突き出してるし、後ろに誰かいたらどうするのよー!! えええ!? こんな格好ありえない!? 原作漫画の結羅には、一体全体どうして貞操感というものがないの!?』
だが、美咲は同時に結羅としての演技も続ける。傲慢で、お尻の事などどうでもいいといった風情で、井戸を見下ろす。
「んー?」
覗き込んだ井戸の中。そこは予想どおり暗い。
が、逆髪の結羅の鬼の視力を以ってすれば見通す事ができた。
井戸の底、そこでは、バラバラのサイコロステーキになった日暮かごめの遺骸が散乱していた。日暮かごめは、目から光が消えて、絶望の表情を浮かべながら死んでいた。
投擲した刀に肉を裂く感触が無かったのは、どうやら、かごめサイコロステーキが無い箇所に偶々突き刺さったからのようだった。
「くすくすくす。いい気味。ゴミ屑女にふさわしい末路だわ」
逆髪の結羅は、傲然と呟くと、その華奢で美しい右手を自分のミニスカートの中へと入れていく。この動作は美咲が無意識のうちに行なっていて、彼女は自分の行動に気付いていなかった。美咲には、興奮すると、クリトスをいじって自慰行為に耽るという、無自覚の癖があるのだった。
「ああ、気持ちいいわあ!」
きっと、憎敵である日暮かごめを討伐したことによる快感なのだろう。
結羅は、その秘所からポタポタと愛蜜を流す。それは井戸の底へと落ちていき、かごめの遺骸を淫らに汚していく。
液体が滴り落ちてる? その様子を見て、彼女は初めて気付く。自分が自慰行為を行い、膣液を分泌している事に。
「んー?」
結羅の身体で自慰するなんてあたしのバカ! と、心の中で自分を殴りながらも、彼女は表面上は冷静を装って、残忍な独り言を続ける。
「あ、でも、処女のまま死んじゃったのは残念ね。男も知らないままに死ぬなんて、ゴミ女でも可哀想だし、村人のオスでも操って強姦させてやれば良かったかしら?」
少しも可哀想とは思っていない、むしろ馬鹿にした独り言を結羅は漏らし、可愛らしく首を傾げる。
だが、次の瞬間、結羅の時間が停まる。
「誰が死んだって?」
いきなり、背後から男の声が聞こえてきたからだ。