その夜。彼、業天愚は森の中を歩いていた。森は木々が鬱蒼と繁っていて、歩くのに少し邪魔ではあった。だが、彼は体長三メートルの巨人。肌は鋼のように硬く黒光していて、刀や槍で斬りつけられても、刃の方が折れてしまうほどの恵体だった。その頭部には怪しげな緑色の瞳が一つ、爛々と輝く。彼は、「一つ目」族だった。業天愚は、その強靭な肉体を利用して強引に木々や岩や蜘蛛の巣を薙ぎ払いながら、森の中を進んでいく。
普段の彼は、以前は人間たちが住んでいた廃村を住処にしていて、滅多に森には立ち入らない。だが、今回は森へと侵入していた。
彼の目的。それは四魂の玉のカケラだった。数日前に彼は、四魂の玉という非常に強力な魔道具が砕け散ったという噂を耳にしていた。その砕けた玉は、カケラの一つでも大いに強大な恩恵を妖怪に与えてくれるらしく、カケラ一つで死者すら蘇らせるらしい。あくまでも噂での話なので、多少は割引いて考えないといけないだろうが、それでも強大な魔道具だ。そこで、業天愚は四魂の玉のカケラを集めることにしたのだった。
噂によると、この森の中には「逆髪の結羅(さかさがみのゆら)」という鬼の娘が住んでいて、その鬼は四魂の玉のカケラを持っているらしい。業天愚はそのカケラを狙っているのだった。
「逆髪の結羅とか言う鬼が美女なら、オラの性奴隷にして生かしてやっても良いかもしれねえなあ……。」
もし結羅が不細工なら殺して喰ってしまおう。業天愚はそんな身勝手なことを考えながら、森を進んでいく。
と、そのとき、
「このあたしを性奴隷にするですって? 髪の毛が一本もない禿げ頭の癖に、随分と勝手なことを考えてるのね?」
女の声が、天から降ってきた。
業天愚は、声に釣られて視線を上へとあげる。すると、一人の女が空中に浮かんでいた。
女は途方も無い美女だった。黒髪おかっぱ頭に、挑発的な紅い瞳。巨乳を自慢するかの様に大きく谷間を露出した黒い衣装。さらには、ミニスカートを履いている。月あかりによる逆光でスカートの中は見通せないが、業天愚は直感した。この娘は下着を身に付けていないと。
「するってぇと、オメエが逆髪の結羅か?」
業天愚の問い。そう問いながら彼は確信している。この娘が結羅だと。これ程の極上の美人なら、四魂の玉のカケラを奪った後は、その子宮に種付するのがいいだろう。業天愚は早くも、結羅を倒し、その子宮に種付けする自分を夢想して、その股間をギチギチと膨張させる。
⭐️⭐️⭐️⭐️
その夜、逆髪の結羅は、結羅の巣の中で睡眠をとっていた。しかし、結羅の手に繋がっている髪から異常が伝えられて、彼女は起床する。
「あら? "髪籠(くしのかご)"が破られている? 」
結羅の隠れ家を中心に、直径数キロの広さを持つ髪の結界、 "髪籠"。その外周部で髪が引き千切られていく感触が結羅に伝わってきた。
どうやら何者かが結羅の森に侵入し、鋼をも切り裂く頑強な結羅の髪を逆に引き千切っている様だった。
「ふふふふ。頑丈な奴ね? 今度の狩りの相手は面白そう。」
舌舐めずりした結羅は立ち上がり、巣を出発。侵入者の元へと向かう。
⭐️⭐️⭐️⭐️
侵入者。それは身長三メートルの一つ目の巨人だった。
逆髪の結羅は、空中に張った髪の上に立ち、侵入者を観察する。侵入者に毛髪は一本もない。服も着ておらず、全裸。
だが、どうやら、侵入者は物凄く頑丈な様だ。その巨人は、髪も木も岩も、全てを薙ぎ払いながら歩いている。
と、巨人が独り言をつぶやく。
「逆髪の結羅とか言う鬼が美女なら、オラの性奴隷にして生かしてやっても良いかもしれねえなあ……。」
これに、結羅はカチンとくる。
「このあたしを性奴隷にするですって? 髪の毛が一本もない禿げ頭の癖に、随分と勝手なことを考えてるのね?」
結羅は空中から、傲然と巨人を見下ろす。
「するってぇと、オメエが逆髪の結羅か?」
結羅を見つけた巨人の問い。巨人は、結羅の美しい肉体を視線にとらえると、興奮したのだろう。その股間をギチギチと膨張させる。
この巨人の反応に、結羅の不快感が深まる。
「そうよ。あたしが逆髪の結羅。でも、いくらあたしが美少女だからって、初対面でいきなり勃起するなんて、躾のなってないオスなのね?」
逆髪の結羅は、業天愚の勃起した股間を見て、艶然と微笑む。彼女は、自分の美しさに惑わされる男たちを見下していた。
「小娘がなに言ってるだ? オメエはこれから、肉便器になるだ! ギャンギャン泣かせてやるから覚悟するだ!」
巨人の宣言。
「くすくすくす。身の程をわきまえない馬鹿な巨人ね。あんたみたいに、ただデカいだけの妖怪があたしに勝てるわけないでしょ。」
結羅逆髪の結羅は髪を櫛で梳く。結羅の命令を受けた髪は、巨人に襲いかかった。
巨人には結羅の髪が見えない。次次に鞭のようにしなった髪が、巨人を襲う。
だが、巨人は頑丈だった。傷ひとつ付かずに結羅の攻撃を耐える。
「んだぁ? 今のが攻撃かぁ? 蝿が飛んでるのかと思ったど」
巨人の挑発。しかし、結羅は動じない。
「ふっ、やっぱりあんたは髪だけじゃ殺せないみたいね。」
結羅は先ほどよりも多数の髪を操作。数百の髪が巨人の四肢を拘束し、身動きできなくさせる。
そして、結羅は腰の刀を抜くと、巨人に向け跳躍。巨人を切り付ける。
ズバッ!!
巨人の胸が袈裟懸けに切られ、血が吹き出す!
「ぐお! この小娘め! 何でオラの体を切れるだ!?」
巨人は怒りを爆発させる。
「良かった。これでも切れなかったらどうしようかと思ってた。」
そう言って結羅は、刀に付いた巨人の血を、その舌で舐めとる。
結羅は思った。不味い、と。所詮は下級妖怪の血か……。巨人の血は、まるで人間の血のように不快な味しかしなかった。
「これはあたしの愛刀”紅霞(べにがすみ)”。これはね、髪を斬らずに肉と骨を断つ鬼の宝刀。」
逆髪の結羅は、自らの愛刀の性能を自慢する。
「つまり、縛ったまんまあんたを斬り刻めるってわけよ。」
冷酷な表情を浮かべた結羅は、巨人へと飛びかかる。
「うおおおお!! オラを舐めるでねぇ!!?」
巨人の咆哮。巨人は力任せに結羅の髪を引き千切って、逆髪の結羅へと右腕を振る!
だが、その攻撃を結羅は、軽やかな身のこなしで回避する。
そして、刀を一閃。結羅の刀は、巨人の右腕をブシュっと根元から切断する。
愛刀・紅霞は再度、巨人の血に染まった。
「うごおおお!! 腕が!? オラの腕がああ!?」
巨人の絶叫。巨人は、右腕を押さえてその場にうずくまる。
「くすくすくす。いい気味ね。あたしを肉便器にして、ギャンギャン泣かせてくれるんじゃなかったの?」
結羅は軽蔑しきった表情で巨人を見下ろす。
「あんた、もう死んでいいよ。」
結羅の死刑宣告。巨人の死刑は速やかに行われた。結羅の刀が再び振られ、巨人の首を刎ねる。
ごろごろ、ごろ。
巨人の巨大な生首が地面を転がる。
「ふふふ。やっぱり、あたしは最強ね。こんな弱い相手じゃ、物足りないわ」
結羅は、地にふした巨人の胴体を蹴り付ける。
「まあ、髪はないけど、あんたの生首もあたしのコレクションに加えてあげるわ。」
結羅は巨人の首を持ち去った。彼女は巨人の生首も、自分の住処に飾る。
彼女は次の強い相手を探しに出かけた。
彼女は自分が無敵だと信じていた。