夏休みといえば、そうエロゲーの季節である。夏を舞台にした作品は数えきれない。
そして、クリアに時間を要するエロゲーを一気にプレイするのに夏休みはうってつけなのだ。
翔太郎はパッケージからディスクを取り出し、パソコンのドライブにセットした。画面に表示された指示に従ってインストールを開始する。この瞬間のワクワクは筆舌に尽くしがたいものがある。
プログレスバーがじわりじわりと進むのをじっと見つめていると、
――――ガチャッ
「お兄ちゃんこれ、続き貸して」
突然部屋に入ってきた優衣が手に持っているのは昨日貸した漫画。最近の優衣は以前にも増して遠慮が無くなったように感じるが、それは距離が縮まったからこそなのでむしろ好ましい変化といえた。
「あー、本棚にあるから持ってっていいよ」
「ん、ありがと」
後ろで優衣が本棚を物色している間にインストールは完了した。そしてゲームを起動したところで後ろから声がかかる。
「またエッチなゲームやってるの?」
「そう、ちょうど今から新しいの始めるところ。やっぱりまとまった時間が取れるのは貴重だからね」
「その貴重な時間の使い道がそれって…………あ、そうだ、ちょうど今から始めるんだよね?」
「ん? うん、そうだよ」
「じゃあ、ちょっと失礼して…………」
「え?」
優衣が急に膝の上に座ってきた。
「えっ、なに?」
「だって、今なら私も最初から一緒に見れるじゃん」
「は? え? なに、一緒に見るつもり?」
「そうだけど。だって面白いんでしょ?」
「いや、そりゃ面白いと思うけど……」
「じゃあ私も見たい。いいでしょ?」
「…………まぁいいか」
抜きゲーならともかく、これからプレイする作品はシナリオゲーの色が強いのでまだ許せた。
膝に乗せた優衣のお腹に後ろから片手を回して、肩越しに画面を見る。良い匂いがする。
もう片方の手でマウスを握って、New Gameの文字をクリックした。
「このゲームって古いやつなの?」
優衣が聞くのもそのはず、解像度は低くてウィンドウが小さいし、キャラクターのデザインも少々古めかしい印象を受ける。
「そうだね、確かもう15年ぐらい前のだった気がする」
「めっちゃ古いじゃん。なんでそんな昔のゲームやるの?」
「実はエロゲー業界って今結構厳しくてなぁ……。この頃が全盛期だったから、名作と言われる作品をやろうとすると昔のものが多かったりするんだよ」
「へぇ、なんか色々大変なんだね」
このゲームの舞台は真夏のとある小さな離島。そこに暮らす少年――
「ちなみに攻略対象は四人だけど、どの子攻略したい?」
翔太郎が机の上にある四人のヒロインが描かれたパッケージを指して聞く。
「真ん中が今転校してきた水波ちゃんで、右の二人が隣の家の姉妹、左が親友みたいな子だよね。ちなみにお兄ちゃんはどの子攻略したいの?」
「やっぱり水波がメインヒロインだし楽しみかな。俺は全員攻略するけど、時間的に今日は一人で精一杯だと思うから優衣が選んでいいよ」
「それじゃあ、せっかくだから水波ちゃんかな」
「おっけー」
初め病者で大人しい水波は自分からコミュニケーションを取ることができずにいるが、明るく分け隔てない性格の希に手を引かれ、少しずつ島の生活に馴染んでいく。
「水波ちゃん可愛いなぁ。守ってあげたくなる」
「わかる。結局こういう萌え要素の塊みたいなキャラが可愛いんだよね」
「というか、思ってたよりも選択肢って出てこないんだね。選択肢の内容もどれを選んだらどの子と絡む話になるか分かりやすいし。もっと好感度がーとか、そういうイメージだった」
「そうそう、こういうゲームって攻略が難しいみたいなイメージあるけど、全然そんなことないんだよね。むしろこれでも面倒な方だよ。もっと簡単なのだとキャラの名前選ぶだけのとかも多いし」
優衣が興味ありげに相槌を打つので、翔太郎はその反応を内心意外に思いながらシーンを先へ進めた。
話は進んで、ようやく水波にも笑顔が増え始めた頃、何やら不穏な雰囲気になり始める。
どうやら人類が滅亡するほどの巨大隕石が降ってくるらしい。幸いながら希たちの暮らしているような、田舎の小さな島では目立った混乱は起こらなかった。しかし、それでも希は徐々に不安を募らせていく。
そんな中でも水波は意外なほどに冷静で、曰く、
『もともと体の弱い私は、とっくに死ぬ覚悟ができてますから』
希は今まで守ろうとしていた彼女が、自分よりもずっと強いことに気付かされる。
そして、水波は言う。
『恋をしましょう。きっと不安なんて忘れてしまうぐらい、素敵な恋をしましょう』
今までは病弱な体のせいで学校に通うこともままならなかった彼女は、初めて恋をしたことを希に打ち明けた。
こうして希と水波は、終わる世界で恋人になった。
「お兄ちゃん……私、水波ちゃん好きになっちゃった……」
「俺も……こんなん惚れるでしょ……。今まで弱いと思ってた子が実はすごく強い子で、しかもこんな劇的な告白されたら、もう好きになるに決まってる……」
それから希と水波は学校の図書室や海でデートをして、そして遂に行為に及ぶ。
夕日に染まった水波の部屋で、希が彼女を押し倒す。
翔太郎と優衣は画面をじっと見つめて生唾を飲む。気まずさよりも興味や興奮の方が勝っていた。
希は衣服がはだけた水波と情熱的なキスを交わす。希の大きくなったペニスが水波の膣に挿入されて、
――――ピクッ
優衣は尻に当たる固いものが動くのを感じた。
「お兄ちゃん……おちんちん、おっきくしてるでしょ」
「……まぁそりゃ、そういうシーンだしな」
「それじゃあ……お兄ちゃん、ちょっと……」
優衣は膝から降りて立ち上がると、いきなり履いていたズボンとパンツを脱ぎ捨てた。目の前に突然姿を現した陰毛の茂る妹の秘部が、翔太郎の視線を独占する。
「えっ?」
「え、じゃなくて。はい、お兄ちゃんも立って」
「まさか……」
「うん、私達もエッチしよ」
手を引かれて立ち上がると、翔太郎も優衣にパンツを脱がされてしまう。
「はい、じゃあ座っててね。えっと、ゴムは……これをくるくるーっと」
妹にされるがままに準備は完了。椅子に座っている翔太郎に向き合うように優衣が跨がって、ペニスをヴァギナにあてがった。
「ちょ、もう入れるの? 濡らしたりとか……」
「エッチなシーンを見て興奮してたのはお兄ちゃんだけじゃないし。それに……」
優衣の手が肩に回されて、
「……期待してたに決まってるじゃん……ずっとお兄ちゃんのおちんちん欲しくて、濡れちゃってたんだから……」
熱を含んだ吐息と淫らな囁きが聞こえて、ペニスは妹の膣に咥え込まれた。
「んんっ……きたぁ…………ほら、なにぼーっとしてるの、先進めて」
「お、おう」
優衣に言われてマウスを握るが、いちいちクリックしている余裕は無くてオートに切り替えた。
画面の中ではヒロインのヴァギナにペニスが挿入されていて、現実でも翔太郎のペニスが優衣のヴァギナに挿入されている。頭が混乱しそうだった。
優衣はゲームから聞こえる喘ぎ声とともに腰を動かしながら、挑発するように吐息混じりの小声で言う。
「……ねぇ、水波ちゃんのおまんこと……んっ……私のおまんこ……どっちが、あ、あっ……気持ちいいかな……?」
「そんなのっ……優衣に決まってるじゃん……」
「んふふ……んっ……そう言ってもらえると……は、ぁっ……悪い気はしないね」
翔太郎に跨がった優衣が腰を振って、いやらしく膣とペニスを擦り合わせる。その間に優衣は舌を絡めてきて、しかし腰の動きは止めない。
「ん、ふっ……ちゅ……ふー……ん、ちゅ……」
聞こえてくる喘ぎ声も徐々に激しさを増して、翔太郎はチラと横目で画面を窺う。優衣はその視線の動きを捉えて言う。
「んっ……エロゲー見ながらっ……妹のおまんこをオナホみたいに使って……はぁっ……贅沢だね、お兄ちゃん」
優衣の言葉は咎めるというよりも、からかう意味合いの方が強いようだった。
そんな優衣に、翔太郎はお返しとばかりに、
「オナホなんだったら……好きに使わせてもらおうかなっ……」
そう言うと、優衣に任せていたところから一転、下から突き上げ始めた。
「あんっ! おにぃ、ちゃんっ……あぁっ、うっ! わたしのおまんこぉっ……ほんとにっ……オナホみたいにっ……んっ、んっ!」
優衣の腰の動きと突き上げるタイミングを合わせて、より深いところへ刺激を求める。
「おっ、奥……きてるっ……! んぅぅ……!」
「はっ、あっ……優衣のおまんこっ……気持ちいっ……!」
優衣の膣が締まって、膣壁とペニスの擦り合う快楽が一層高まったところで、
「はぁはぁ……ねぇ、どうせオナホなんだから……あんっ、ん……水波ちゃんのおまんこだと思ってしていいよ……?」
「っ…………」
優衣に言われて息を呑む。
今、確かに自分のペニスは女性器に挿入されている。その感覚が優衣のそれによるものなのか、それとも水波のそれによるものなのか、一言で一気に境界線が曖昧になる。
優衣が追い打ちをかけるように耳元で囁く。
「ほら想像して……いまっ、はぁ……おちんちんを、水波ちゃんのおまんこに突っ込んでるんだよ……ふ、んっ。……それで、そのまま水波ちゃんのおまんこに……あ、あっ……中出ししちゃうの……」
画面の中のヒロインを貫いているのは自分のペニスなのだと頭が認識すると、現実ではありえないはずの相手とのセックスが実現していた。
それと同時に、妹の女性器を
「水波ちゃんのおまんこにぃ……お兄ちゃんの精液注いじゃえっ……」
優衣に焚き付けられて、翔太郎はもうすっかりその気になって腰を突き上げた。
「ふぅんっ……! は、ぁんっ!」
画面の向こうの行為がいよいよ大詰めを迎え、現実での動きも激しさを増す。ギシギシと椅子が軋みを上げた。
「ああっ……! んんぅぅっ! ……はっ、ふぅんんっ……!」
「くっ……で、るっ……!」
「あ、あっ、あっ! 出し、ちゃえっ!」
画面の向こうで水波の腟内に白濁液が注がれるのと同時、
「いくッ……!」
「んっ、ああぁぅんっ!」
水波がそうであったように、翔太郎と優衣は抱き合って果てた。
ペニスは優衣の膣の中でビクビクと震えて、白濁液を全て出し切った。
「……お兄ちゃん……ちゅ……じゅる……はぁ……」
ゲームの場面は先に進んでいたが、翔太郎と優衣はしばらく見向きもせずにキスをしていた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
物語は最後のワンシーンを迎えていた。
地球最後の瞬間を控えた夜、島では盛大な宴が開かれた。島民全員が集まって酒を飲み交わし、身を寄せ合って最後のひとときを過ごした。それは、人類滅亡の瞬間には酷く場違いで、温かな光景だった。
そんな中、希と水波はこっそりと宴の席を抜け出して、二人きりで寝転んで星を見上げていた。
星が降ってくるせいで自分たちは死ぬはずなのに、二人で見上げた星空はそんなことどうでもよく思えるぐらいに綺麗だった。
他愛もない話をしていると、いつの間にか水波は幸せそうな顔で眠っていて、希も手を握ったまま眠りにつく。
夢の中でも水波に逢えたらいいのに、来世でもまた水波の隣にいられたらいいのに、希はそんな叶うか分からない願いを胸に抱いて、でも、最期の瞬間まで水波の隣にいたという事実だけは確かで、それだけで一点の曇りも無い幸せだった。
かくして世界は終わりを迎えた。
「え、なにこれめっちゃ切ないんだけど……」
優衣はティッシュを手に、目からスーッと流れた涙を拭っていた。
「優衣、俺にもティッシュ取って……」
「うん……。これさ、二人はもう死んじゃうのに、なのに、なんでこんなに綺麗なんだろう……」
「世界が滅ぶ絶望的な状況だったとしても、愛する人が隣にいればその絶望さえも二人を彩る儚さに変わるんだな……愛ってすごいよ……」
「……お兄ちゃんはさ、明日世界が滅ぶとしたらどうする?」
優衣は手を握って尋ねてくる。前を向いて膝の上に座っているので、その表情までは窺い知れなかった。
「俺は最期まで優衣と小春と、三人で一緒にいたいかな。それこそこのお話みたいに、特別なことはなくても、三人でのんびりできればそれだけで幸せな気がする」
「そっか……まぁお兄ちゃんだけじゃ心もとないけど、小春ちゃんもいれば怖くないかもね」
こちらに振り返った優衣は笑顔で、最期の瞬間にこの顔が見られるなら、怖いものは何もないだろうなと思った。